「シャーロット・ファースト」が生まれて1年――
それは存在する事そのものが恐ろしいと人々は言う。
それの機嫌を損なう事を人々は恐れる。
なぜならそれは菓子の為に〝国〟さえ攻め落とすからだ。
それは火炎を放ち――
それは雷を落とし――
邪魔者を消す。
そして多くの菓子がその腹に消えていった。
それこそが――
生まれついてのモンスター――
〝国喰らいのリンリン〟
――その女海賊が率いる海賊団の帆船が穏やかに航海していた。
その船上に数人が立ってて――しかし、その雰囲気はなぜか緊張していた。その数人の視線は船内に続く扉に掛かり――そして人々の中の1人の看護婦が抱えている赤ん坊に掛かっていた。
その赤ん坊――ファーストは不機嫌そうに見受けられた。その様子を見た人々は小声で不安そうに呟き合った。
「おい、何でお坊ちゃまは不機嫌なんだ?」
「――船長があんまり構ってやれないからな……」
「……なるほどな」
人々のそんな会話中、イラつきが大きくなってきたファーストが何となく――暴れようとし――
オギャアアアアアア!!!
「「「!!!」」」
突如響き渡る大きな声に船上の人々はハッとする。続いて――
「マ〜〜マママハハハハ…!!」
それはまた大きな笑い声が響いた。その声に人々は状況を察した。
「――生まれた!!」
「あぁ!!2人目の子の誕生だ!!」
「――お坊ちゃま!行きましょう!」
呆気に取られたファーストを連れて人々は船内に入っていった。
●
船内で堂々と座っているリンリンはやって来たファーストの姿に笑みを浮かべた。
「ハ〜ハハママママ!!――ファースト!お前の弟だ!」
笑ったリンリンは自身が抱えている赤ん坊をファーストに見せた。泣き続けている赤ん坊――「弟」にファーストは目を丸くする。
そんなファーストに微笑んだリンリンはふと眉を上げた。
「あぁ、名前を付けねばねぇな……」
そう呟いたリンリンは少し思案に耽り――やがて
「――「ペロスペロー」!「シャーロット・ペロスペロー」だ!!」
思いついたリンリンは息子にその名を与えた。
「ハ〜ハハママママ!!――ファーストォ!お前が守るんだよぉ!」
リンリンがそう言う中、「ペロスペロー」――「弟」を凝視したファーストの心になんともいえない何かが湧き出てきた。
――それは「シャーロット・ファースト」に「弟」に対しての情、そして――自身が「兄」であるという実感が湧き出た瞬間であった……
――「シャーロット・ファースト」に初めて「弟」が生まれた事で彼は「兄」になった。
●
「シャーロット・ペロスペロー」が生まれて6年――
あれからファーストに初めての「弟」ペロスペローが生まれただけに留まらずに、彼に続いて次の年に初めての「妹」――「シャーロット・コンポート」が生まれてきた。しかも、それで終わる訳でもなく――
その次の年に
3男「シャーロット・カタクリ」。
4男「シャーロット・ダイフク」。
5男「シャーロット・オーブン」。
さらにその次の年に
次女「シャーロット・モンデ」。
3女「シャーロット・アマンド」。
4女「シャーロット・アッシュ」。
5女「シャーロット・エフィレ」。
さらにさらにその次の年に
6男「シャーロット・オペラ」。
7男「シャーロット・カウンター」。
8男「シャーロット・カデンツァ」。
9男「シャーロット・カバレッタ」。
10男「シャーロット・ガラ」。
さらにさらにさらにその次の年に
11男「シャーロット・クラッカー」。
6女「シャーロット・カスタード」。
7女「シャーロット・エンゼル」。
さらにさらにさらにさらにその次の年に
12男「シャーロット・ズコット」。
生まれきた子供達も合わせて――20人の大家族となったのだ。
大家族だけはあって――すごく騒がしかった。
その騒がしい子供達をまとめている少年が1人。
その少年は黒い衣服を着ている紫がかった銀髪の巻き毛のコーカソイド的イケメンだった。
その少年こそが――
7歳になったファーストであった。
「――そろそろおやつの時間だ!まず手を洗うんだ」
「「「はーい!」」」
オレの言葉に騒がしい弟妹達も元気よく反応したのにオレはつい頬を崩した。
――〝国喰らいのリンリン〟の血を受け継いでいるだけはあって傲岸不遜で曲者揃いの子供達でも長男の言葉には背筋を伸ばして聞くのだ。
――これも兄を持つ弟妹達の性なのだろうか……?
曲者である筈の弟妹達の真面目臭い態度にオレは苦笑してしまう。そこに――
「ハ〜ハハママママ……よく「兄」しているじゃないか……ファーストォ〜」
「お、お母さん……」
つい出かけてきたお母さんが帰ってきた。彼女の姿にオレはまたしても苦笑してしまう。
――菓子が大好きなお母さんだからこそ、おやつの時間には間に合うように帰ってくるのだ。
菓子に執着しているお母さんに苦笑するオレはふと――お母さんに問いかけた。
「それで……次はどこに行く?」
「あーん?……〝海賊島〟だ」
「〝海賊島〟?」
知らぬ名に首を傾げるオレにお母さんは解説してくれた。
「あぁ――あそこはつつけば、すぐさま大勢の海賊が出てくる―まるで〝蜂の巣〟のようになぁ……だから――」
リンリンはついに口にするのだ。きっかけとなる言葉を。
「――〝ハチノス〟だ!!」
――こうしてリンリン率いる海賊団は海賊島〝ハチノス〟に向かった。
――そこでファーストは目にするどころか――居合わせる事になる。
――「世界最強の海賊団」の名をほしいままにした伝説の海賊団の誕生に。
――そして、それが〝ジェネラル〟と讃えられる「シャーロット・ファースト」の始まりになる。