「ああ、そうしてやる。正直、あいつにははらわたが煮えくり返っているからな。まあ、死んでしまったから煮えるはらわたももうないが」
「そいつはどんなモンスターなんだ? そもそも、モンスターか?」
光希が尋ねると、ツバキは答える。
「そうさ。名をヴェレンディと言う。いけすかない死霊術師だ」
「死霊術師?」
「ああ、死体集めが趣味な、気持ち悪いゾンビ使いさ。……それだけじゃなく、凶悪な攻撃魔法を使うから、油断してはいけないがな。……私はそれで殺された」
「そいつをお前の代わりにやっつけてやれば、地上へ案内してくれるんだな?」
「案内どころじゃないさ、一瞬さ。ヴェレンディのやつ、
光希にとって、初めて聞く名の魔導具であった。
だが、ミシェルは知っていたようで、自分のウサギ耳の手入れをしながら言った。
「物質と物質の位置を入れ替える魔道具だな。だがあれの射程範囲はせいぜい50メートルといったところだろう? ここは地下十五階、地上までは数百メートルはあるぞ?」
ツバキはふっと笑っていう。
「だが階と階のあいだは距離のあるところでもせいぜい30メートルだ。垂直方向に繰り返し移転していけばあっという間さ」
光希は少し考え込んで、
「なるほどな、だが移転した上の階が壁の中だったらどうするんだ」
「馬鹿だな、
確かにツバキの言う通りだった。
光希は頭の中でシミュレーションしてみる。
現状は光希とミシェルと
まともな探索者は光希だけで、あとは
こんないびつなパーティで、SSS級ダンジョンの最下層、討伐難易度Lv30超えのモンスターがゴロゴロしている地下十五階から自力で帰還を目指すのと、ヴェレンディとかいう死霊術師を倒して
そして、なるべくなら凛音の魂のために『
そうなると……。
死霊術師……ゾンビ使い、か。
「……状態の良いゾンビがいれば、そこに凛音の魂を入れられるか……?」
:リャンペコちゃん〈
:見習い回復術師〈うーん、ゾンビかあ……。まあでもこのまま死ぬよりはましか……?〉
:音速の閃光〈え、ちょっとまって、グロすぎるんですけど〉
:エージ〈しかしまあいっときゾンビに憑依してもらえば、そのあとなにかの手は打てるかもしれない〉
:Kokoro 〈なにもせずに4日たてば絶対的な死だからな〉
光希はツバキの顔をじっと見つめる。
古式ゆかしいいかにもな魔法使いの格好をしているツバキは、その三角帽子のつばをくいっとあげてにやりと笑う。
「どうだい? いい話だろう? 私は復讐が果たせ、お前らはあのリンネとかいう魔法使いの魂をとりあえずはこの世にとどめておけるし、それにそこの小学生も地上に返せる」
「……そうだな。お前の言うとおりだ。そっちのが確率が高そうだ。だが、お前のその言葉が真実ならばな。たとえばヴェレンディとかいう死霊術師を倒した瞬間、お前が裏切る可能性もあるし、そもそもヴェレンディという存在そのものが嘘で、お前が俺達を罠にはめようとしているだけかもしれない。なにか、担保がほしい」
「……ほう、発情濡れ濡れウサギと違って、お前は頭がいいな」
それを聞いたミシェルが胸元をキュッと直して言った。
「失礼なことを言うな。濡れていることがあるのは認めるが、私は頭脳明晰だぞ」
それを聞いて、光希は一言だけポツリと言った。
「草」
:積乱雲〈え?〉
:区分変更申請書〈光希が草っていったぞ〉
:きジムナー〈草〉
:コンタクトケース〈おいおいマスターに草って言われてるぞウサギ〉
:コロッケ台風〈wwwwwwwwwwwwwww〉
:seven〈ナッシーたまにおもしろいよな〉
と、そこで今まで黙っていた
「あの……それならば、魔法契約書を交わせばよいのではないでしょうか?」
「ああ、その手があったか」
そう光希が言うのと、
「待て、敵だ。すごい魔力がこちらへ向かってくる」
ツバキがそう言うのとは同時だった。