勇気の律者   作:うどん米

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ゼンレスゾーンゼロ・聖剣のIFストーリーです。
あの日、影山がアポロを救うを願っていたら――。


プロローグ・終わりと終わりと終わり

 

 

 

聖剣――古の時代から存在し、今なお世界に残り続ける4本の願望機のカケラ、それらすべてを集めたものは願いを叶えることができる。

そして、とある世界――彼は最後の戦い、最強の敵を前に勝利を収めた。

 

「お前の負けだよ、影山」

「――はぁ、なんでぇ負けたんですかねぇ」

戦力差は圧倒的、本来なら影山と呼ばれた青年の勝利は確実だった。

なぜなら、一本ですら国を落とせると言われる聖剣を影山は3本所有していたのだ。しかし、彼を見下ろす青年によってそんな常識は打ち破られた。

 

 

「流石ですよア、ポローーさん。僕たちのヒーロー」

アポロと呼ばれた青年は冷たく、影山を見下ろす。その目には、何も映っていなかった。

己ごとツァーリボンバで吹き飛ばすという、頭がおかしい行動によって綱渡りながら勝利した。

 

 

「――最後に聞きたいんだが、何でこんなことをしたんだ?お前が裏切らなければ――」

「世界が救えたって言うんですか」

アポロはうなずく事実、影山が聖剣を盗み世界を滅ぼす大災害を起こさなければ――いずれ、世界を救うことができたと――信じている。

 

 

「――どうでもいいんですよ、僕は世界よりも“あなたを救いたかった”」

「そうか」

平坦な声、まるで空洞に話しかけているような印象すらあった。右手に光があふれ出し、一点に集中する。

 

「『ジ・アース』」

手刀を振り下ろし、渾身の一撃をすでに下半身が吹き飛んだ影山の首に打ち込む、それと同時に抵抗もなく――そのまま、影山の首は段差によってコロコロ転がっていった。

 

 

「―――」

背を向け、その場から去る。言葉はなく、この戦いに正直あまり意味はない。何かを得たというわけではないし、一応世界の危機を救ったと言えばそうなのだろう。

 

「――ッ」

頬を触る、そこには一筋の雫が頬を覆っていた。まるで、彼の表情を覆い隠そうとするように。

(まだ、泣けたのか)

 

 

 

最後に泣いたのはいつだろう、そうだ――他の仲間が死んだ時だった。そして今、自分の最後の仲間を手にかけた。

帰路につきながら、物思いにふけっていると久しぶりに町に帰ってきていた。

 

「あ、お兄さん。久しぶりですね」

下から声がしたので、視線を送ると布切れ一枚の服を着たぼさぼさ髪の少女がタバコを抱えてやってきていた。

 

「――リンか。どうしたんだ」

この町はいわゆるスラム街というやつだ。リンは、スラムにあった孤児院の少女だ。だが、そこに強盗が入り、火を放たれた。そこを、俺が助けたらなついていた。他の、孤児は死んだというのに中々したたかな奴で、今は少し離れたところで野菜を売っているおばちゃんの手伝いをしているらしい。

 

 

「お兄さん!今日は珍しくまともですね、それではこれをどうぞ」

確かに、この町に住み着いてからはずっとまともではなかったが――。リンは持っているたばこしかも一カートンをこちらに差し出してきた。

まあ、切らしていたので助かるが――。

 

 

「どうしたんだこれ?」

「お兄さんの為に買ってきたんです!お兄さん、これを吸ってるときだけすごくいい笑顔してるから――元気になってほしくて」

その瞬間、思わず膝から崩れ落ちる。リンを抱き寄せながら、声を殺しながら泣く。

 

「どうしたんですか、お兄さん!」

「――ッ。何でもない――ただ、このために――俺は」

仲間や家族が死んだとき意外で初めて泣いた。

リンの言葉に胸を打たれたのもそうだろう、もしくは28歳にもなって推定10歳ほどの少女にたばこを貢いでもらっている己が情けなくなったのかもしれない――いや、両方だろう1:9くらいの割合で。

 

 

「た、たばこのために生きてるんですか!お兄さんだ、だったらもっと買ってきましょうか?」

「いや――いいんだ。いいんだ、ただもう少しだけこのままいさせてくれ」

はたから見れば完全に事案な上、幼女にたばこを貢がせているどうしようもない奴だが、それでも周りを憚ってでも泣いてしまうほど、その時――アポロに感情は戻っていた。

 

 

 

 

その時に、気が付くべきだった。それは、ありえないことだと――異変は始まっていた。

 

 

 

 

その日の夜、久しぶりにあるビルの屋上で夜空を見上げながらリンからもらったピースをふかす。

 

「ふー、この先どうすればいいんだろうな」

周りには誰もいない、みんな死んだから。アポロの話を聞いてくれるのは、空に浮かぶ夜空と、今吸っているたばこと煙くらいだ。

 

 

影山は、俺から力の一部を奪い、その他3本の聖剣を集結させ願いを叶えた。

その結果が自分の思い通りなる世界だった。だが、それは皮肉にも結果的に常日頃から発生している、戦争や内戦、紛争――それらをピタッと止めて見せた。

 

 

 

きっと、この先世界が復興したとしてもまた争いが起こるだろう。

そもそも、国同士の同盟も古くからある社会主義と資本主義との軋轢によってうまくまとまらず、結果的に共倒れ――なんてことになった。

 

 

 

歴史は繰り返すというが、きっと――繰り返すんだろう。

世界を救える日は来るのだろうか、と言うか非常時の今ですら大国が倒れた代わりに昔では小国と呼ばれた国が幅を利かせているのだ――いつの時代も人間の欲と言うのは変わらない。

 

「――聖剣は破壊するべきだな」

色々なものが崩壊した現在、願いを叶える剣なんて放っておく奴の方がすくない、そして結果的に悪用に繋がるだろう。

それに、すでに各国には俺と影山が戦った場所の縮小がどういうことを意味しているのかも分かっているだろう。

当然、影山に何かあると踏んだ奴らは続々と軍を派遣してくるだろう。

「明日、朝一で出発するか」

 

軍用のミリタリーベストを装備し、そこに武器を入れていく。

「――流石に、毒ガスはいらないか」

閃光弾と銃と弾、手榴弾とありったけのピースをポケットに入れ、今日は眠りにつく。

 

 

 

 

 

――深夜2時異変は起こった。聖剣が集まっていた空間から光が空に伸び空を割いた後その光はアポロに降り注いだ。

だが、アポロは起きることはなかった。むしろ、安らかな顔でぐーすら寝ていた。

 

 

『世界代入を開始―――成功。勇気の律者と定義―――エラー、分離を確認――4分割を開始します―――成功―――エラー――座標の変化を確認――無視します。エラー――次元の変化を確認――無視します。エラー――魂の分割を確認――無視します。エラー――魂の汚染確認――無視します。転移開始、転移開始、転移開始、転移開始、転移開始、転移開始、転移開始、転移開始、転移開始、転移開始、転移開始、転移開始、転移開始、転移開始、転移開始、転移開始、転移開始、転移開始、転移開始、転移開始、転移開始、転移開始、転移開始。エラー――個体名アポロに魂の汚染を確認――勇気の律者との分離を開始――成功しました。エラー――勇気の律者が存在しません――無視します。エラー――アポロ以外の魂も汚染を確認しました――無視します。転移開始3―――2―――1』

 

 

 

その時、この世界から4本の聖剣は全て消滅した。

影山が最後に願ったあなたを救いたかったという願いを乗せて。

 

 

 

 




ちなみに、アポロは正史では死んでいます。あくまでIFストーリー!
ですが、アポロを知らないという人が多いと思うでここで紹介します。

アポロ

聖剣『ジ・アース』をその身に宿し、身に着けた戦闘技術と兵器で戦っていく主人公。
使える、必殺技はほぼ守る技、それゆえ守りがとにかく固い。
遺伝子レベルで巨乳好きの為、視線が乳に行きやすい。
仲間を失った後、酒とたばことパチンコにハマりどうしようもない生活をしていた。

使用可能技(わかる範囲)
ジ・アース


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