勇気の律者   作:うどん米

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第1話・世界は変われど人は変わらず

 

 

 

「ッ!」

異変を感じると同時に跳び起きる。単純にそれは寝ていた場所、質感の変化だった。先ほどまで感じていた冷たいコンクリート感覚は消え、少し温かみがありつつも血なまぐさい木造の感触に変わったのだ。

辺りを見渡す―――。

 

「は、はぁ?」

そこには机、椅子、黒板――まさに、どこかの教室だった。

(この際教室にいるのはいい――だが、空気が違いすぎる)

先ほどまでは涼やかな風が、頬なでていたはずなのに――針に常に刺されているような感触を感じる。要はピリピリしているのだ。

その上、窓の外を見ても今の時間帯は太陽の傾き具合から10時程だと推測できる、だというのにここには人っ子一人いないどころか、血だまりまで存在していた。

 

「――吸うか」

 

だが、状況変われど人は変わらず、とりあえず起きたからたばこを吸おうとボケッとに手を伸ばし慣れた手つきで一本取り、ライターで火を――。

 

「あっ」

付けようと思ったが、天井にはまるでお天道様が覗くがごとく火災警報器が備え付けられていた。流石の俺も、こんなのがついているタイミングで吸おうとも思えず、そもそも学校で吸うことすらやばいのだが。

 

 

「屋上行くか」

そんなことは、ヤニカスに考えられるはずもなくアポロは教室の開けっ放しの扉をくぐり廊下に出た。

 

「アアァァァ」

 

バンッ

出るとすぐに目と目が合う瞬間に好きだとは気が付かないのだが、間違いなく己の命を脅かす存在と認識し、後ろに跳び発砲する。

弾丸は着弾と同時に飛び散り、敵の顔面を粉々に砕いた。

 

「――炸裂弾のままか」

うっかりしていたと反省し、弾を返る。殺した敵の前に近づくが――どう考えても人間じゃない、いわゆるゾンビの類だ。

少し、考えた後廊下に取り付けられた窓を覗く。

 

 

「ここは、俺がいた世界じゃない」

目の前の惨状をまじまじと見て、そう確信した。

少なくとも、街をゾンビが闊歩する世界にいた覚えはない。前戦っていた化け物もある一定の空間からは出られない制約があったが、ゾンビはそんなの知らぬ存ぜぬという感じだ。

 

 

「タバコ吸おう」

そんなことはともかく、屋上への移動を再開する。道中にも、おそらくこの学校の生徒と思われる死体はゴロゴロ落ちていた。

 

 

(おっ――財布持ってんじゃんラッキー!)

 

 

すっと懐に納めもし、それを咎めるようにゾンビも現れた。最初の方は銃弾でいちいち倒していたが、弾の無駄と判断し首を折りながら階段を駆け上がっていく。

 

「どけぇ!!」

半分白目をむきながら、全力で屋外へと進む。

そして、屋上まで到達すると扉を蹴破り、外に出る。

 

「はぁ、はぁ――たばこぉ――!!」

完全に逝っちゃった人の目をしながら、朝の乾杯たばこを取り出し、やっとライターで火をつけ吹かす。

 

 

「ぷはぁ――酸素が染みわたるぅーー」

肺にやっと酸素を取り込み、まるでこの世の娯楽を全て味わうかのようにたばこをむさぼる。あっという間に一本吸い切り、足りないため。再び、たばこを出そうとすると――。

 

「あなた、何しているの?」

目が合った。間違いなく人間だ、ゾンビの類ではない――着用しているのは制服で、ここの制服と同じ――つまり少女なのだが。その身にまとう気配はただものではないと予感させるには十分だった。

 

 

「――いや、たばこを吸いに来ただけだ。と言うか君こそ何をしているんだ、そんなところに立っていたら危ないぞー」

少女が立っている場所は屋上の際も際、ちょっと驚くだけでも落ちてしまいそうだ。と言うか、胸デカいな。

 

「そう、いいの。もう――」

(――目が死んでる)

確かに、ここに来るまで絶望と言う言葉が似あうくらいの惨状が広がっていたが――まあ、それで人生にあきらめをつけるのも多少うなずける。

 

 

「自殺ならやめと――いや、いいんじゃないか、自殺。生きてたら嫌なこともたくさんあるしな、それらをいっぺんに忘れる方法だ、死は救いなんてよく言ったものだが、君がそれを望むのなら俺は止めない」

一応、自殺を止める伝統的な方便を述べようとしたが、完全にブーメランで帰ってきたため方針を変え、自殺を進める。胸デカいな。

 

「止めないのね――」

「止められたいのか?」

首を振る、それにしても胸がでかい。少女はすでにこちらを向かず、空に身を任せるように身を投げた――。

 

バン

何かが蹴破られたと同時に――。

落ちることはなく彼女の身は空に浮かんでいた。否、つかまれていたのだその腕が――。

 

 

「ど、うして――止めないんじゃなかったの」

 

何かが流れ込んでくる嫌な感覚を覚えながら、アポロは確かに彼女の腕をつかんでいた。

 

「――はぁ、くっそ体が勝手に動いたんだ。――まあ、何だ自殺見た後だとたばこが不味くなるんだ――こいつを吸い終わるまで死ぬのは待ってくれないか」

口にくわえた煙草を舌で動かしながら見せる。そうして、彼女を俺は引き上げた。

自殺しないように、屋上の端ではなく扉近くに座らせ、再び煙草をふかした。

 

 

「――君、名前はなんていうんだ?」

「言う必要があるのかしら――どうせ死ぬのに」

まあ、さっきまで背中を押してきた奴が急に豹変して助けたなんて怪しすぎるし、俺がこのたばこを吸い終えたら死ぬつもりなのだ――胸デカい。

流石に、こんなシリアスな場面で胸を凝視するのはまずいと考え空を見上げながらたばこをふかす。

 

 

すると、再び扉が蹴破られ誰かが入ってくる。

「あっ、芽衣先輩大丈夫!?」

「キアナちゃん?」

どうやら、先ほどまで自殺しようとした少女は芽衣、今入ってきた銀髪の少女はキアナと言うらしい胸はでかい――うむ、眼福かな。

 

「ちょっと、あんた誰よ!芽衣先輩に近づかないで!」

まるで、犬かと錯覚するようにキアナと呼ばれた少女はぐるぐると喉を鳴らしながら威嚇してくる。

「キアナちゃん、待って――その人は」

「大丈夫!芽衣先輩、私が守るから!!」

 

(一般人じゃないな。毛が生えた程度だがしっかりと鍛えれてはいる――うーむ)

この世界はもしかしてどこもゾンビが闊歩しているのか?そんな疑問を抱きながら、弁明のために手を上げる。

 

「俺は――怪しいものじゃない。うん、本当にね」

「嘘つき!学校に軍服着ている奴が怪しくないわけないでしょ!!」

凄いもっともなことを言われてしまった。結構、頭悪そうなのにもうゾンビがはびこってるし、軍服に銃弾とか詰めて、タバコ吸ってる奴くらい見逃してくれないかな、おっぱいデカ。

 

 

「本当に大丈夫だからキアナちゃん――その、私を助けてくれたの」

ちらっと俺に目配せをする。どうやら、自殺云々は言いたくないらしい、それにキアナと会ったからだろうか彼女からあまり絶望の感情を感じない。決心が揺らいだと見える。

まあ、死ぬか死なないかでは死なないほうがいいとも一概には言えない、しかしこのきょにゅ――若人が失われるのは悲しい。

 

 

「本当に?それはあ、ありがと――でもどうして芽衣先輩を助けたの?」

「え?そりゃあ、おっぱい大きかったし――あっ」

この数秒後、キアナの『死ね!変態!』という言葉と同時に蹴りが俺の顔面にめり込んだのは想像に難くないだろう。

ちなみに、よけることは容易だったが甘んじて受け入れるべきだと判断した。それに、パンツの柄もきっちり見えた。うむ、眼福かな。

 

 

 

 

 

数分後、右も左もわからない俺は二人から色々情報を聞いていた。

まず、銀髪の少女の名前は、キアナ・カスラナ。

そして、最初に俺が自殺を止めた紫髪の少女は雷電芽衣、ME社と言う企業の社長令嬢様らしい。最初にキアナが俺のことをものすごく警戒していたのは彼女が学校でのいじめに遭っていて、怪しい奴が近くにいたため警戒していたようだ。

 

「俺は――アポロ。気づいたら、この学校の校舎に倒れていたんだ――ともかく、キアナと芽衣に危害を加える気はない」

「ふーん、そんなこと言って実は芽衣先輩に何かしようとしてるんじゃないでしょうね!!」

「キアナちゃん!ちょっと落ち着いて――」

どうやら、おっぱい発言でかなりの信頼を失ってしまったようだ。

 

 

ともかく、記憶がないという理由で様々な情報を俺は二人から聞いた。

この世界では崩壊と呼ばれる現象が跋扈している。時々見た、ゾンビやでかい怪獣もその副産物つまり、今まさに俺達がいる場所で崩壊と呼ばれる現象が発生したのだ。

 

 

 

しかも、ここまでの規模の崩壊現象はいわゆる、大崩壊――もしくは、律者と呼ばれる――まあ、要するに超強化ゾンビが現れると発生するらしい。

 

その他もろもろ色々話を聞いた。

 

「とにかく、この町から脱出しないといけないの!!」

「――なるほどねぇ」

もちろん、脱出することにも納得した。だが、ちらりと律者と言うワードが出てから気まずそーにしていた――なるほどなぜ自殺しようとしたのかも理解した。

 

雷電芽衣こそが、この崩壊の原因――律者なのだ。おそらく、そのことを自身が理解しているし、キアナもわかって言っているのだろう。

 

 

「わかった――脱出しよう。ここら辺の、具体的な地――危ない!!」

二人を抱え跳躍する、先ほどまで俺達が固まって話していた場所には見事な大穴が開いており、下の階が丸見えだった。

 

「あ、ありがと」

「なあ、ところで――まさか、背中に機甲が浮かぶ時代なんてなぁ――」

こちらの世界はあまり軍事技術は発展していない――まあ、ここに比べれば、なぜなら相手は人間同士だったからだ。

 

「なあ、何でこんなことするんだ?不意打ちなんて、今時やったら国連から散々叩かれるんだぞ!!」

「?生体反応数――3。崩壊兆候スキャン開始。―――スキャン完了。回収ターゲット『対象A』。対応プランの実行――」

兵器の発射口から光が漏れる。

 

「――逃げるか」

少なくとも、こんな狭い屋上であんなのとやりあう気にはならない。もちろん、俺の戦法的に狭い方が今回は戦いやすい、しかしそれではキアナと芽衣を巻き込んでしまう。

 

「回収を開始します」

 

 

「舌噛むなよ!!We can fly!!」

「う、うそでしょ!!」

蹴りで屋上のフェンスを蹴破り二人を抱え、空に身を任せる。それと同時に頭頂部に熱いものを感じたが気にしないようにする。背中を校舎の壁に沿わせながら落下し摩擦で衝撃を抑える。

地面ギリギリまで落下すると壁を蹴り、滑るように地面に着地した。

 

 

(結構距離を離せたな――でも、なんかスキャンしてたってことはすぐ居場所はバレるか)

「大丈夫か?」

「大丈夫かじゃないわ!死ぬかと思ったわよ!!」

「私も、心臓が――」

キアナはなんとなくわかるが、芽衣は先ほどまで同じことをしようとしていたのだ。

 

 

「ここでじっとしておいてくれ――あれとは俺が戦う」

「あれって――あの機甲と!?」

 

「丸腰のお前らよりはマシだろ」

そう言い、銃を取り出す――。と言っても、技術力はかなりの差がある。あの機甲から、何が出てきてもおかしくない。だというのに、こちらが使えるのはオーソドックスな拳銃一本。

それでもなお、戦うと主張する二人を説き伏せ、俺は戦いに向かった。

 




小話
アポロが吸っている、たばこはピースと言います。コンビニで買える出がるさの割に、タールとニコチンの量がどちらも多いです。ちなみに、種類は複数あって主人公が吸っているのは金ピースです。
それにしても、平和を求めて戦ってそれでも得られなかったピースを吸って消費するってなんか皮肉ですね。


――あと、もう少しくらいゼンレスゾーンゼロ・聖剣の更新さぼっても良くね?
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