シャーレの先生は不死身な兵隊サン   作:富士見の山崎

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ぼちぼち更新再開していきます・・・
次回はたぶんアビドス編


D.U.さんぽ

 

 

「・・・・少し一息つくか・・・。」

 

キヴォトスへ来てから早一週間が経つかという頃、やっと備品確認や引継ぎ書類が片付いた。

 

「散歩でもしてみるか・・・?」

 

思えば『シャーレ』の建物から出たのは、初日と米を求めて出歩いた時のみである。

 

ここいらでキヴォトス観光と洒落込むのも良いかもしれない。

 

「よし、少しうろついてみようか。」

 

決まれば早いのは俺の長所だ。

 

弾帯(太めのベルト)に後盒と前盒二つ、銃剣差を差し込む。水筒と雑嚢を肩からかけて後ろへ回す。

その上から弾盒を巻きつける。

略帽の上から鉄帽を被って顎紐を締めれば、一端の日本兵の出来上がりだ。

 

出来ることなら緒戦を共にした八九式重擲弾筒を連れて行ってやりたいが、如何せん弾が嵩張るので持って行くのは三八式歩兵銃と銃剣、手榴弾三つとする。

 

因みにキヴォトスでは裸で出歩く人より銃火器を持っていない奴のが少ないらしい。

 

つまり初日の俺は

『銃器も持たずに丸腰で敵を殴り倒す変態』だった訳だ。

我ながらよく死ななかったものである。

 

銃剣を収めて、小銃を背負う。

因みにこの銃剣は刃の付いてない新品だが、この新品の銃剣だけでも100本以上、弾薬ならアウンガル島の守備を担う我が後藤大隊が半年は全力で戦える量が『シャーレ』の地下室やオフィスの物置には埋蔵してあった。

 

正に火薬庫であり、連邦生徒会長に対する疑念は深まるばかりだ。

 

 

「さて、出発するか。」

 

シャーレのオフィスの扉に

『外出中。入用ノ場合ハ書置キサレタシ。』と書いて貼り、適当な紙とペンを留守番代わりに据える。

 

戸締まりをして、建物から出た。

 

 

 

 

 

 

 

『D.U.』

 

学園都市キヴォトス及び連邦生徒会の中枢。

 

日本で言う東京、米国で言うワシントンD.Cの様なものである。

 

連邦生徒会本部や空港などの要所が集中し、その一つには『シャーレ』も存在する。

 

物の目新しさでミレミアムに劣り、街の賑わいで百鬼夜行に劣る。

特に態々キヴォトスの住民が観光に来る様な場所でも無かったが、舩坂にとっては目新しい物ばかりであった。

 

 

「どこもガラス戸・・・しかも自動で開くのか・・・。」

 

「シッテムの箱の様な通信端末が一般的に使われているのか・・・交換手の要る日本の電話とはえらい違いだ。」

 

「こんなに発色の良い印刷が一般的、しかも大量印刷出来るなら文化水準も上がるだろうなぁ。」

 

 

殆ど全てが見たこともないものばかりで、嫌が応にも気分が高揚する。

 

色々と購入して手に取って見ていたいが、金には制限がある。

そこで、俺は新聞や雑誌、専門書等の『情報』を集中的に買い漁った。

 

『インターネット社会概論』だとか『オススメ傑作銃百選』とか『キヴォトス全学園及生徒会』とかである。

 

これからキヴォトス(ここ)でやっていく以上・・・というか新天地へやって来たならば先ず情報と常識を叩き込む必要があると感じたのだ。

 

 

無知で未知に臨むのは、素っ裸で戦場に飛び込むのと同じなのだ。

 

 

 

取り敢えず新聞を手に取る。

 

「えーと、『連邦生徒会長失踪、シャーレの先生就任により混乱は回復の見通し。〇日午後トリニティ生徒会ティーパーティー、ゲヘナ生徒会万魔殿(パンデモニウム・ソサエティー)はそれぞれシャーレの動向を見守る旨の声明を発した。シャーレの動向に注目が集まっている』、ティーパーティーと万魔殿って何だ・・・・。」

 

 

今度は『キヴォトス全学園及生徒会』を取り出す。

 

「ティーパーティー・・・トリニティ総合学園の各派閥の首長が集まって成されるトリニティの生徒会・・・・か。」

 

 

内閣・・・とは違うだろう。どちらかというと少人数国議会のが近いか。

 

 

「万魔殿・・・ゲヘナ学園の生徒会・・・・現在は羽沼マコトが議長を務めるが、ゲヘナ学園は投票率が異常に低い(4%未満)ためゲヘナ風紀委員会に比べ関心は薄い・・・いやどういうことだ・・・?」

 

ゲヘナ学園・・・・キヴォトスにおいては『学園=国家』という性格が強いのではと俺は睨んでいるが、恐らく普通投票でここまで投票率が低いというのは学園として崩壊しかけているのではなかろうか。

 

続けてゲヘナ学園自体の説明を読む。

 

「自由と混沌を校風としており、粗暴な生徒が多い為、治安が悪く教育機関としての能力は殆ど喪失している。・・・・いや、もはや学校じゃないだろう・・・それは・・・。」

 

行ってもいないのに先入観だけで語るのは避けたいが、率直に言えば無法地帯も同然であろう。

 

 

さらにトリニティの説明も読んでみた。

 

「えー複数の学園が纏められたことによって成立した学園。所謂、お嬢様学校の体をとっている。校舎は宮殿のような姿であり、礼拝堂等の施設も存在する。・・・成程ゲヘナとは対照的だな。」

 

さらに読み込めば、長年ゲヘナとは確執があるという。

まあ、校風が全くの逆で互いに覇権を争うマンモス校ともなれば、そうもなるだろう。

 

 

「(そう言えば、初日に連邦生徒会に押しかけていた奴らはどうしているだろうか・・・。元気にやっているといいのだが・・・。)」

 

 

ユウカ、ハスミ、スズミ、チナツ・・・。

 

幹部クラスであれば忙しいだろうが、会える時にじっくり話してみたいものだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ズガアアアアアアン!!

 

 

 

「はっ!リーダーやりましたね!」

 

「ああ!銀行強盗なんか無論初めてやったが、案外なんとかなるもんだな!」

 

「つってもネット掲示板で手取り足取り手口を教えてくれた人のお陰でしょ。」

 

「うっせぇな・・・・ってか、何者だったんだろうな・・・覆面強盗狼ネキ・・・・・。」

 

 

綿密な計画により銀行強盗を成した3人の不良。

現金を大量に詰め込んだ鞄を抱えて逃走している。

 

 

 

 

タァンッ!

 

 

 

 

突如として放たれた弾丸にリーダーと呼ばれた不良の足が射抜かれ、跪く。

 

 

「痛ってぇ!」

 

「おい!大丈夫か!」

 

不良達の足が止まる。

 

 

 

 

 

そこに1人の男がボルトアクション式の小銃を持ったまま近づく。

 

 

「おい、今盗った金を返す気は無いか?」

 

 

静かに語りかける男、それに対し怒りながら不良が反論する。

 

 

「は、はぁ!?か、返すわけねぇだろ!!」

 

 

男が銃のボルトを引く。

弾き出された薬莢がカランという音と共に落ちた。

 

 

男の目が鋭く光る。

 

 

「良いのか?そんなまっくろに染まった金を持ってても、後悔するだけだ。檻の中で・・・いや、檻から出ても、一生な。」

 

「な、何だよお前!撃っちまうぞ!」

 

「盗ったからにはアタシらの金だ!返すものか!」

 

「そ、そうだ!」

 

 

男は一つ溜め息をつくと、腰に提げていた銃剣を抜く。

 

 

 

カチンッ

 

 

 

金属音が小さく響いて、男が口を開く。

 

 

 

「そうか。・・・なら返すと言うまで()()しなくてはな。」

 

 

 

 

ズムッ!

 

 

 

 

「ぐぅ・・・?!」

 

鈍いパンチが不良をふわりと持ち上げる。

男の拳を腹に受けた不良はあまりの痛みと不快感に悶絶する。

 

「うぅ・・・。」

 

 

 

ガスッ!

 

 

 

「ガギャッ!!」

 

男は何の躊躇もなく不良の顎を蹴り上げる。

軽い不良少女の体が後ろにポーンと跳ね、ドサッと音を立てて落ちた。

 

「こ、このやろぉぉぉ!!」

 

リーダーを倒された事でハッとした不良が銃を構える。

 

「はっ!」

 

 

 

カチン!

 

 

 

「何ィ!?」

 

が、銃剣の鍔を銃身に引っ掛けて銃口を押しのけることで射撃を阻止する。

 

「ふっ。」

 

「あぁっ!?」

 

そのまま不良の銃を跳ね上げ、振り上げた銃の床尾板を叩き込む。

 

「ぶっ!!」

 

床尾板打撃を喰らった不良は、あっさり沈黙してしまう。

 

銃を使う間もなくやられていく仲間を見て、最後に一人残った不良が戦慄する。

 

「糞ッ!・・・もうヤケだ!喰らえぇ!!」

 

 

 

ズドドドッ!

 

 

 

半ばヤケクソにミニガンの弾丸をばら撒く。

いい加減な照準だがそのうちの数発が男に向かって飛んでいく。

 

「ははっ!死ねええええ!!!!」

 

男が小さく呟く。

 

「・・・・すまん。」

 

 

 

ドッ!ドッ!ドッ!

 

 

 

相次ぐ着弾音。

 

「やっ、やったか!?」

 

不良はにわか喜びするが、着弾したのは男の肉体ではない。

 

 

「・・・悪いが仲間を盾にさせてもらった。・・・まあ、自業自得だろうが。」

 

ダランと垂れた不良を肩から抱える男。

不良の背中からは何発かの弾丸が転がり落ちる。

 

「お、おい!?大丈夫か!」

 

「くうぅ・・・痛い・・・。」

 

「ふぅん!」

 

男か盾にした不良を振りかぶって投げ飛ばす。

そしてそのまま、()()()()()()()()()()()()()()

 

「ぎゃっ!・・・くそ、おい!『カランッ!』大丈・・・夫・・・か」

 

投げ飛ばされた不良のポケットから落ちる手榴弾。

 

落ちた衝撃で叩かれた信管が煙を吹き出しながら作動する。

 

「うっ、うわぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

 

 

チュドォォン!!!

 

 

「ちく・・・しょう・・・。」

 

最後の不良が倒れた。

 

 

 

傾いた鉄帽を正しながら起き上がる男・・・改め舩坂は辺りを見回す。

 

「・・・やりすぎたか・・・?」

 

手榴弾の爆心地の地面が黒く焦げ、不良の放った弾丸が壁に穴を開けている。

 

ついでに不良が捨てた銃や弾倉が転がっている。

 

「・・・・不良のせいにするか・・・。」

 

「う・・・うぅ・・・。」

 

「!」

 

リーダーと呼ばれた不良が意識を取り戻しかけている。

 

 

中々にしぶとい奴である。

 

「おい。」

 

「ぐっ!・・・。」

 

不良の襟首を掴んで体を無理やり引き寄せる。

 

「金・・・・返すよな?」

 

「かっ・・・・返す!返すから!これ以上は!止めてください!」

 

「・・・よろしい。」

 

 

返すと吐いた不良を突き放す。

 

話して説得して済むならそれがいいだろうが、ここは直ぐ銃に訴えかけようとするからいけない。

これは何か、教育方針的にも、武装的にも改善が必要だろう。

 

 

 

 

「まったく、物騒な場所だな・・・・キヴォトス(ここ)は・・・。」

 

 

俺は天を仰ぎながらほざいたのであった・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 




〇三八式歩兵銃

言わずと知れた日本軍の傑作ボルトアクション。
6.5㎜×51弾の三八式実包を使用する。
初速が早く命中精度や頑丈さにおいて世界最高レベルの性能を持つが、7㎜以上の口径が一般的であるキヴォトスでは6.5㎜弾は少々威力不足である。

舩坂氏以外の軍人も出すべき?

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