シャーレの先生は不死身な兵隊サン   作:富士見の山崎

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鬼神

 

「え、えっと・・・舩坂先生でいいですか?」

 

「・・・・まぁいいよ。」

 

先生と呼ばれることに対する違和感は拭えそうもない。

人殺しを先生と呼ぶことなど・・・。

 

 

「あ、改めましてこんにちは先生。私はミレミアムサイエンススクールの「そのうるさい方は気にしなくていいです」誰がうるさいって!?わ、私は早瀬ユウカ!覚えておいてください!先生!」

 

「・・・早瀬か。よろしく。」

 

「・・・・続けますと、先生は元々連邦生徒会長が立ち上げたある部活の顧問として招かれました。」

 

「部活?」

 

「連邦捜査部『シャーレ』。」

 

「捜査部、というと警察や憲兵の様な物か?」

 

「ケンペイ・・・・・というものは分かりかねますが、『シャーレ』の持つ権限は警察機関を大きく上回ります。単なる部活ではなく、一種の超法的機関。連邦組織のため、キヴォトスに存在するすべての学園の生徒たちを、制限なく加入させることすら可能で、各学園の自治区内で制約なしに戦闘活動を行うことも可能です。」

 

・・・・・確かにそれは超法規が過ぎる。

全ての自治区から反社会勢力だけをかき集めて連邦生徒会とやらやその他学園にまで反旗を翻すことすら可能になってしまう。

只の分隊長如きに見合う権限ではない。

 

「・・・・そんな()()を俺に持たせて連邦生徒会長とやらは、俺に何をさせたいんだ?」

 

「・・・分かりません。そもそも何故連邦生徒会長がこんな機関を作ったのかすら・・・・・シャーレの部室はここから30㎞離れた外郭地区にあります。今はほとんど何もない建物ですが、連邦生徒会長の命令で、そこの地下に『とある物』を持ち込んでいます。」

 

「俺にそこに行けと?」

 

「はい。モモカ、シャーレの部室に直行するヘリが必要なんだけど・・・・。」

 

七神は誰かと通信を始めた様子である。

ビル群と言い、此処の技術力は米国すらをも上回っているようだ。

 

『シャーレの部室?・・・・ああ、外郭地区の?そこ、今大騒ぎだけど?』

 

すると、少女の声と共に光が宙に浮き出たかと思うと、光は見知らぬ少女の姿となって顕現した・・・。

 

・・・・宙に映画が出現するなら超化学(SF)上の想像の範疇であったが・・・・キヴォトスの科学力は想像の遥か先を行くようである・・・。

 

 

「大騒ぎ・・・?」

 

『矯正局を脱出した停学中の生徒が騒ぎを起こしたの。そこは今戦場になってるよ。』

 

「・・・・うん?」

 

『連邦生徒会に恨みを抱いて、地域の不良たちを先頭に、周りを焼け野原にしてるみたいなの。巡航戦車までどっかから手に入れてきたみたいだよ?』

 

「戦車・・・・死人がでるぞ・・・。」

 

『それで、連邦生徒会所有のシャーレの建物を占拠しようとしているらしいの。そこに何か大事なものでもあるみたいな動きだけど?』

 

「・・・。」

 

『まあでも、もうとっくにめちゃくちゃな場所なんだから、別に大した事な・・・・あっ、先輩、お昼ごはんのデリバリーが来たから、また連絡するね!』ブツッ!

 

通信が切られる。

ついでに七神も切れる。

 

「おい、大丈夫か。少し深呼吸でもしたらどうだ。」

 

「・・・・だ、大丈夫です。・・・少々問題が発生しましたが、大したことではありません。・・・・・・・・・・・!」じー

 

「・・・・?」

「な、何?どうして私たちを見つめているの?」

 

「ちょうどここに、各学園を代表する立派で暇そうな方々がいるので、私は心強いです。」

 

「・・・・えっ?」

 

「キヴォトスの正常化のために、暇を持て余した皆さんの力が今、切実に必要です。・・・行きましょう。」

 

なりふり構わず歩き出す七神。

 

「ちょ、ちょっと待って!?ど、どこに行くのよ!!?」

 

「おい、俺まで置いてくつもりか。」

 

七神はどうも任務を遂行するためか、独断専行型なきらいがあるようだ・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・

 

 

 

 

 

 

 

・・・・

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ドカアアァァァァン!!

 

 

着弾の轟音が地面を揺らす。

脳に染みついて離れない、土煙と鉄の匂い。

 

 

 

「なんで私たちが不良たちと戦わなきゃいけないの!?」

 

「サンクトゥムタワーの制御権を取り戻すためには、あの部室の奪還が必要ですから・・・。」

 

「それは聞いたけど・・・!私これでも、うちの学校では生徒会に所属してて、それなりの扱いなんだけど!なんで私が・・・!」

 

目に焼き付いた、硝煙弾雨の修羅場。

 

間違いなく、此処は戦場だ。

 

 

 

ズタタタタタタンッ!!

 

 

軽機関銃か何かの弾が目の前を走り抜ける。

咄嗟に物陰に身を隠す。

 

「いっ、痛っ!!痛いってば!!」

 

早瀬が弾を貰ってしまった!!

包帯か真綿をと焦って見やれど、

 

「?!傷がない?」

 

よく見ると少し赤くなって痣が出来ているようであった。

()()()()である。

普通なら即死である。

 

「これはいったい・・・?」

 

「私たちは銃弾程度では傷も負いませんが・・・今は先生が一緒なので、その点に気を付けましょう。」

 

「おい、今なんつった?」

 

「?先生が一緒なので気を付けましょう?」

 

「そこじゃない。その前だ。」

 

銃弾程度では傷つかないだと・・・?

 

「・・・私たちキヴォトス人はこの頭の上に浮かんでいる『ヘイロー』のおかげで、体がとても頑丈なんです。」

 

「そんな・・・・・そんな事があって良いのか?」

 

 

そんな物が・・・・・・。

 

 

 

 

何もかもが違う

 

 

銃に対する意識も

 

 

倫理観も

 

 

そりゃあそうだろう。

 

俺たちにとっては銃は人殺しの道具だ。

しかし、彼女らにとっては只の()()()の道具に過ぎないのだ。

 

 

 

俺の首筋がヒヤリとする。

 

とんでもない所に来てしまった・・・・・

 

 

 

「先生を守ることが最優先。あの建物の奪還はその次です。」

 

「ハスミさんの言う通りです。先生はキヴォトスではないところから来た方ですので・・・・。」

 

「私たちとは違って、弾丸一つでも生命の危機にさらされる可能性があります。その点にご注意を!」

 

 

護られる?

 

俺が?

 

この少女たちに?

 

 

いや、確かに彼女たちは銃弾程度では傷つかない。

俺が護られる方が合理的だ。

 

 

「先生は戦場に出ないでください!私たちが戦っている間は、この安全な場所にいてくださいね!」

 

 

しかし、そうされようとすることに、俺の中で大きな抵抗があった。

 

 

俺は大人だ。

大っぴらには言えないが、責任を負うべき人生の先駆者だ。

 

俺は軍人だ。

非力な銃後の女子供を護るべき肉盾だ。

 

 

「・・・先生?」

 

 

俺は大人であり軍人だ。

子供を責任持って護らなくてはならない。

 

そんなキヴォトスでは通用しないような理屈が俺の中を駆け巡る。

 

 

そして、

 

「ッ!?先生!?駄目です!!前に出ないで!!『ズドガンッ!』きゃあっ!!」

 

 

砲撃が早瀬の目の前に着弾する。

直撃を免れたことに安堵しつつ、俺は弾幕の奥へと駆け出していた。

 

 

 

 

 

 

 

「うおおおおおォォォォォ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

砲煙が引いたときには先生はすでに20m以上先まで駆けていて、私、早瀬ユウカは青ざめた。

 

「舩坂先生!!駄目です!!戻って!!」

 

 

「うわ!?何だこいつ?!」

「大人だ!?ヘイローが無いぞ!?」

「気にするな!ヘイローが無いなら好都合!早く撃て!」

 

しかし、焦った不良たちの弾丸は先生とは全く違う方向へ飛んで行く。

あるいは、ヘイローが無い人物を撃つのに抵抗があったのかもしれない。

 

しかし、遅かれ早かれこのままだと先生は死んでしまうかもしれない!

 

 

「ウオオオォォッ!!!!!!」

「ヘイローも無ぇ大人があたしらに勝てるかよ!!」

 

とうとうアサルトライフルの銃口が先生に向けられる。

 

気付けば私は叫んでいた!

「先生!止めてぇぇぇぇ!!!」

 

「オラァ!死ねぇ!」

 

不良が引き金に手をかける。

しかし、

 

ガッ!

タタンッ!!

 

「なッ!?」

 

先生は銃を蹴り上げて射線を上へ逸らしたのだ。

弾は何もない虚空へと消えていく。

 

「く、くs「ラァッ!!」ぐぼッ!?!?」

 

先生の右拳が不良の顔面に鋭く突き刺さる。

気絶して倒れる不良からアサルトライフルを奪い取ると、

 

ダダンッ!!ダダンッ!!

 

と断続的に射撃して一瞬で二人を無力化してしまった。

 

「ちっ、畜生!!」

 

まさか目の前の二人が一瞬で制圧されるとは思ってもいなかった不良が慌てて銃口を向けるも、それより先に先生のアサルトライフルが火を噴く。

 

ダダンッ!!

 

「ぐえッ!!」

 

「く、くそ!?」

「数人でかかれ!!一人で相手にすると瞬殺されるぞ!」

 

瞬く間に三人に囲まれる先生。

 

「絶体絶命だな。」

「おとなしく投降しな。」

「いまなら銃弾一発で許してやるよ。」

 

「・・・。」

 

すっと銃を下す

 

・・・ように見せかけて先生は銃を真上に放り投げた!!

不良の視線が投げられた銃に向かう。

 

「な、何!?」

 

「ウオラァッ!」

 

「ぐはッ!!」

 

先生が隙をついて一人に相撲の様に体当たりをかます!

 

「そ、それがどうした!!」

 

不良の銃が火を噴くも

 

ダダンッ!!

ビシッ!バシッ!

 

「仲間を盾にしやがった!?」

 

不良の体で弾丸を受け、射撃を凌ぐ先生。

そのまま盾にした不良を投げつけ、一人を倒す。

 

「う・・うわあああ!!」

 

ダダダダダダダダッ!!!!!

 

遂に最後の一人になった不良が銃を乱射する、

が先生はその不良の腰に飛びつき、押し倒してそのまま馬乗りになった。

 

「どっ、どうか見逃してッ!矯正局にはッ、戻りたくないッ!」

 

とうとう命乞いを始める不良。

哀れなほど惨めだった。

 

「駄目だ。」

 

舩坂先生が極めて冷酷に告げる。

 

「なッ、何でッ!」

 

「お前らは矯正局だか刑務所だかを脱獄してきたんだろう?お前が刑期を満了した、つまりは罪を償った、せめてもの誠意のあるやつだったら見逃してたかもしれない。だが、お前は脱獄した。お前は罪を償ってない。そんな奴に情など無用だ。」

 

「やだッ!やだっ!!」

 

「煩い。」

 

先生が拳骨を振り落とす。

 

ゴキャッ!っと鈍い音が響いた・・・。

 

 

 

「・・・強い。」

「先生・・・貴方は・・・・いったい・・・・。」

 

 

私たちからは先生の表情は見えなかった・・・が、

 

誰が呟いたか、私たちには先生がこう見えた・・・

 

 

 

 

 

 

 

「・・・鬼神・・・。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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