シャーレの先生は不死身な兵隊サン 作:富士見の山崎
シリアスを期待されている方、すみません。
「ハスミ!砲手を狙撃してくれ!照準中は油断している筈だ!スズミは確か
「了解。」
「分かりました!先生!」
「腕が鳴りますね!」
「先生、無理だけはしないで下さいね。」
かつて分隊員にやっていた様に、矢継ぎ早に指示を出したが、すぐに飲み込んで行動へ移す生徒たち。
キヴォトスの様な場所であり、彼女らは生徒会だ何だのお偉方らしいから少なからず経験があるのであろう。流石と褒めてやりたい。
「それはお前らも同じ事だ。ヤバかったら直ぐに下がれ!」
「「「「はい!!」」」」
こう言う時に軍刀でも有れば格好が付くのだろうが、生憎捕虜の分際でそんな物持っている筈が無い。
あるのはさっき不良から強奪した拳銃である。
野盗の如き浅ましい行為だが、悲しいかな俺はアウンガルでこんな事を毎日の様にやっていた。
弾や飯はおろか、水や武器本体にも困った我々はこんな鹵獲や盗品を『ルーズベルト給与』と呼んで一喜一憂していたのだ。
まぁ、いまはそれより、だ。
ズドゴォンッ!
「ぎゃっ!?」
「迫撃砲、沈黙。」
「よくやった!」
「これは痛いですよっ!」
ピガドンッ!
「がっ!?目がァァ!?」
「おい、どうした!?」
ズタタッ!!
「ぐえっ!」
「ふふっ、計算通り。」
「主に俺のね。」
流るる川の如く、俺たちの攻撃は行われた。
もはや不良にこれを堰き止めるだけの力は無いだろう。
「お、おい!どうした?狙撃か!?く、くそ!仇はアタシが「取らせないぞ」グボァッ!?!?」
仲間が狙撃され狼狽えた弾込要員を殴り倒す。
迫撃砲鹵獲である。
「先生、迫撃砲を使えるのですか?」
「いや、使った事ない。」
「え。」
「まァ、擲弾筒や臼砲と似た様な物だろう?表尺さえあれば、大体のものは撃てるさ。」
「ええ・・・(汗」
前方の敵を見定め、照準をつける。
これは擲弾筒でも同じ。
「目標0時!距離150!」
「・・・?」
「・・・復唱だよ、復唱。」
「も、目標0時!距離150!」
「先ずは一発だけ・・・装填!よーいッ!テェッ!」
カコッ!
ズドムッ!!
擲弾筒より遥かに大きい砲弾が、爆音とともに発射される。
使い方がほぼ勘頼みなので、試射もかねて一発だけだ。
チュドンッ!!
「おわッ!?何だ何だ?!」
「やられたァ!!」
「迫撃砲が鹵獲されたのか!?」
「初弾、命中!思ったよか簡単に当たるな。」
「・・・・先生の技量が高すぎるだけでは?」
「そんなことは無いよ。」
「(初めて使う様な兵器をこんなに容易に・・・・どんな才能を・・・・いや、見知らぬ兵器を扱うことに慣れている・・・?)」
「ぼさっとするなよ次弾だ。次弾。」
「・・・はっ、はい!」
「はっ、迫撃砲が鹵獲されたぞ!逃げろ!逃げるんだ!」
「逃すか!目標0時!距離185!五発連続装填!よーいッ!テェッ!!」
カコッ!
ズドムッ!!
カコッ!
ズドムッ!!
カコッ!
ズドムッ!!
カコッ!
ズドムッ!!
カコッ!
ズドムッ!!
勢いに任せての五発斉射。
擲弾筒や迫撃砲は何門も並べて撃った方が効果があるのだが、そういうわけにもいかない。
しかし、弾が無くて只の筒となり果てていたアウンガルの擲弾筒に比べれば遥かに贅沢である。
間髪入れずに弾が連続で着弾する。
チュドンッ!!チュドンッ!!チュドンッ!!チュドンッ!!チュドンッ!!!!
「ぎゃあ!」
「ひええっ!」
「ぐほッ!」
何人もの不良が吹っ飛ぶ。これでも手足が千切れないどころか血すら流れぬキヴォトスの住人が羨ましい。
「全弾命中!よろしい。」
見渡せば不良たちはユウカ、スズミの突撃で逃散しており、俺とチナツの迫撃砲撃はそれに追い打ちをかけるような格好となった様で、あっという間に敵は壊滅してしまった。
ハスミの先制狙撃から10分足らず。まだ道は長いが一部でも終わってみれば、実にあっけないものであった。
「・・・局所的な戦闘終了か・・・・。」
ひとまず胸を撫でおろす。
左腕は痛みで気が気でなかったが、栄養状態が改善されたからか何とか支障なく動いてくれた。
ただ動き周ったため、血で包帯が黒ずんで固まっており、正しい止血の処置を受ける必要があるだろう。
「なんだか、戦闘がいつもよりやりやすかった気がします・・・。」
「・・・・やっぱりそうよね?」
「先生の指揮と援護のおかげで、普段よりずっと戦いやすかったです。」
「・・・?そうか?俺は、いつもやっていたことをお前たちに教えて、やらせただけだが?」
「なるほど・・・・これが軍人の先生の力・・・・。まあ、連邦生徒会長が選んだ方だから当たり前か・・・。」
「それでは次の戦闘もお願いします、先生。」
「おう。分かった。」
迫撃砲を担ぎ、弾を雑嚢に詰めるだけ詰めながら答えた。
「えっ、持っていくんですか?!それ!」
「え?持ってかないの?」
「え?じゃないですよ!!一応不良の持ち物なんですから、せめて使った後に元に戻しとかないと窃盗になっちゃいますよ!!」
確かに彼らの持ち物かもしれないが、どうせどっかから持ってきた盗品だろう。それに彼らはどうせまた矯正局に入って、武器は没収されるだろうし大して変わらんだろう。
そんな言い訳が浮かんだが、そこまで食いつく理由もないので置いていくことにする。
しかし、人間とは正直なもので、
「・・・もったいね。」
と心の声が漏れてしまった。
少女たちに引かれた気がしたが、気のせいだと信じたい。
「と、取り敢えず先を急ぎましょう・・・。」
なんだか締まらないまま、我々はシャーレへと続く次の戦場へと向かったのであった・・・。