シャーレの先生は不死身な兵隊サン 作:富士見の山崎
「お待たせしました。・・・・?何かありましたか?」
「いや・・・、不良が一人入り込んでいたのだが・・・取り逃してしまった。すまん・・・。」
不覚である。
しかも、己のミスで逃した罪は重いだろう。
「そ、それは・・・・・いや、
七神が何処からか、板状の物を持って来た。
暗くて色や材質は分からないが。
「・・・・それが、連邦生徒会長からの贈り物って奴か?」
「はい。受け取って下さい。」
手渡されてやっと判明した。
白い樹脂かなにかの外装、片側は黒くボタンの様な突起が幾つかある。
最初はボール紙にニスを塗った位だと思っていたが、存外重い。
中は金属の電気部品でも詰まっているのだろうか。
もしそうであれば、雑誌程度の薄さしかない機械に感嘆するしかないだろう。
「これが、連邦生徒会長が先生に託した物・・・。
『シッテムの箱』です。」
「シッテムの箱・・・・。」
微かにだが、何処かで聞いた様な名前だ。
いや、気の所為だろう。
「普通のタブレット端末に見えますが、実は正体の分からない物です。」
「先ずタブレット端末とやらが分からないのだが・・・。」
「製造会社も、OSも、システム構造も、動く仕組みの全てが不明。」
「(無視されたな)」
「連邦生徒会長は、この『シッテムの箱』は先生の物で、先生がこれでタワーの制御権を回復させられるはずだと言っていました。」
「これが、俺の?」
「はい。私たちでは起動すら出来なかった物ですが、先生ならこれを起動させられるのでしょうか・・・・それとも・・・。」
「俺がこれを起動?自動車の発動機を掛けるのすら怪しいんだぞ、こんな物出来る訳・・・・」
突如頭の中に流れ込む記憶の奔流。
知らない、見たことの無い記憶。
端末の起動方法、パスワード。
これは
誰の記憶だ・・・?
「・・・・邪魔にならない様、離れています。」
七神がその場から消える。
記憶・・・いや誰かの
・・・
・・・・
・・・・・
『Connecting to the Crate of Shittim...
システム接続パスワードをご入力ください。
「・・・
『・・・我々は望む、七つの喇叭を。
・・・我々は覚えている、ジェリコの堅き城壁を。』」
『・・・・・。
接続パスワード承認。
現在の接続者情報は舩坂弘、確認できました。
...シッテムの箱へようこそ、舩坂弘先生。
静態認証及び認証書生成のため、メインオペレートシステム『A.R.O.N.A』に変換します。
・・・・・
・・・・
・・・
「・・・・誰だこいつ。」
見たことも無い教室で、一人の少女が机に突っ伏して寝ている。
オマケに教室は半分が崩壊しており、床は浸水して水が薄く張っている。
水平線は蒼く先が見えないのは普通であろうか。
しかし、見たこともない筈なのに、何故だかここは安全だと確信出来た。
「くううぅぅ・・・・・Zzzzz」
少女は気持ちよさそうに寝息を立てている。
「むにゃ、カステラにはぁ・・・・いちごミルクより・・・・バナナミルクのほうが・・・・。」
「・・・・。おい、起きなさい。」
カステラが何だとか言っているが、無視して揺すってみる。
「えへっ・・・・そんなに焦らなくてもまだたくさんありますからぁ・・・・。」
もう一度揺すってみた。
「・・・うへ・・・・ひへ!?」
少女が飛び上がるように起きた。
「むにゃ・・・・んもう・・・ありゃ?」
薄い水色の髪。
早瀬やこの少女もそうだが、どうもキヴォトスの人間は色とりどりな頭をしている。
「ありゃ、ありゃりゃ・・・・?」
何故だか困惑している少女。
「えっと、君は?」
なるべく優しく、威圧感を与えない様に話しかける。
「この空間に入って来たっていうことは、ま、ま、まさか舩坂弘先生・・・?!」
「ウン。そうだよ。で、君は?」
「う、うわああ!?そ、そうですね!?もうこんな時間!?」
なかなか質問に答えてくれない少女。
そろそろ答えて欲しい。
「うわ、うわあ?落ち着いて、落ち着いて・・・・えっと、その、あっ、はい自己紹介ですね!
私はアロナ!この「シッテムの箱」に常在しているシステム管理者であり、メインOS、そしてこれから先生をアシストする秘書です!」
「秘書。君が。」
「はい!よろしくお願いします!」
この少女・・・アロナの話だと、彼女はまるでこの
それを聞いてみると、
「それで間違ってないですよ!」
と否定しない。理屈は分からないがキヴォトスでは機械の中に人間を生み出せるのだろうか?
「もう訳が分からない・・・。」
「はは・・・。それはそうとして、私はここで先生をずーっと待っていたんです!」
「・・・・寝ながら待ってたと。」
「あ、あうう・・・もちろんたまに居眠りしたこともあるけど・・・。」
ちょっとこの子が可愛く思えてきた。
これのどこが機械だというのか。
「まあ、よろしく。」
この子のことは出来の悪い妹ぐらいに思っておこう。
そう心に止めると、故郷に残してきた家族や知り合いのことが頭に浮かんだ。
まさか、ガキ大将の三男が戦闘を生き残り、こんな場所で先生をやれなどと言われているとは、考えもするまい。
「・・・先生?」
「・・・・いや、何でもない。」
任された以上、
「・・・?」
戦場に比べてどうも決意が鈍る、と俺は溜息をついた。