シャーレの先生は不死身な兵隊サン 作:富士見の山崎
「これから先、頑張って色々な面で先生のことをサポートしていきますね!」
「お、おう。」
彼女はバッチリ決め込んだつもりだろうが、こっちとしては妹と決めたばかりなので、どうにも締まらない。
そんなこと知らずに元気よく喋るアロナ。
「あ、そうだ!ではまず、形式的ではありますが、生体認証を行います♪」
「生体認証・・・・とは?」
「指紋や声、顔などのその人にしかない特徴で人を判別する方法なんですが・・・・。」
「・・・?」
「うう・・・少し恥ずかしいですが、手続きだから仕方ないんです。こちらのほうに来てください。」
「?わかった。」
言われた通りに近寄る。
50cmくらいか。
「もう少しです。」
20cmくらいまで近寄って立膝になる。
顔までの距離もそんなにない。
少女の小さな指が目の前に突き出される。
「さあ、この私の指に、先生の指を当てて下さい。」
「お、おう?」
さっきからやらされていることがまるっきり分からないが、白くて小さな指に己の太くて汚い指を重ね合わせる。
「うふふ。まるで指切りして約束するみたいでしょう?」
「そうだね。まぁ小指じゃなくて、人差し指だけど。」
「こ、細かいことはいいんです!実はこれで生体情報の指紋を確認するんです!」
「へぇ。」
理解できないので生返事。
情けない声で返す。
「こう見えて目はいいので・・・すぐ終わります!」
「(目がいいとかの問題ではない気がする・・・。)」
「どれどれ・・・。(うーん。よく見えないかも・・・。まぁ、これでいいですかね?)」
少しキツい目でアロナを見ると、途端に焦り始めた。
「(ば、バレました?)はい!確認終わりました!(汗」
「へぇ。本当にそんなこと出来るのか。凄いな。」
「(ば、バレてない?)」
確認に手を抜かれた等とは露知らず、舩坂は己の事情を話し始めた。
・・・・・
「なるほど・・・、先生的にはカステラにはほうじ茶が一番・・・と。中々渋いですね。」
「俺そんな事言ってないよ。」
「じょ、冗談です!連邦生徒会長が行方不明になって、そのせいでキヴォトスのタワーを制御する手段がなくなった・・・・。」
「連邦生徒会長については何か知ってる?」
「私はキヴォトスの情報の多くを知ってほいますが・・・連邦生徒会長についてはほとんど知りません。
彼女が何者なのか、どうしていなくなったのかも・・・。」
「・・・・ふーん。」
これは俺の推察だが、彼女は連邦生徒会長を
シッテムの箱の性能的に連邦生徒会長、つまり以前の持ち主、或いは以前近場にいた人物の情報を全く得てないのは考え難い。
なら、何故知らないと言うのか。
彼女は機械だ。人間の為に生まれ、人間の為に働く。
この愛らしい姿を見た後では考えられもしないが、一個人であっても誰かしらの人間の下につく存在だ。
なら、誰かに情報を操作された可能性はあるまいか。
連邦生徒会長又は第三者の手によって、そいつの都合のいい様に。
なら、俺がここに来て先生となるのも、『シッテムの箱』を手に入れるのも、全て誰かの掌の上で踊らされてのことなのか。
嫌な想像はよそう。
「お役に立てず、すみません。」
「いや、大丈夫だ。」
「ですが!サンクトゥムタワーの問題は私が何とか解決できそうです!」
「じゃあ、頼むよ、アロナ。」
何故タワーの利権がある事で行政が復活するのか全く理解できないが、それで事故解消になるなら、と半ば投げやりに頼んだ。
「はい!分かりました。サンクトゥムタワーのアクセス権を修復します。」
・・・
・・・・
ウイイィィィィンーーーー
・・・・
・・・
「サンクトゥムタワーのadomin権限を取得完了・・・・先生。サンクトゥムタワーの制御権を無事に回収できました。今サンクトゥムタワーは、私アロナの統制下にあります。」
特に大した事もせずに回復する制御権。
キヴォトスの管理は杜撰なのだろうか・・・。
「今のキヴォトスは先生の支配下にあるも同然です!」
「あ、別にそう言うのはいらん。」
「即答ですね!」
別に何も欲がない訳じゃない。
金だってくれるなら欲しいし、煙草だってあるなら欲しいし、家だって武器だって欲しい。
だが、政治権力という物は『分隊長』という肩書きの俺には余りにも重すぎる。
そんな現実味が無くて大きすぎる物位だったら、煙草一本飴玉一個で十分である。
「当初の予定通り、制御権は連邦生徒会に返してくれ。」
「・・・・分かりました!これよりサンクトゥムタワーの制御権を連邦生徒会に移管します!」
・・・・・・
・・・・・
・・・・
「・・・・はい、分かりました。」
ガチャ
「サンクトゥムタワーの制御権の確保が確認できました。これからは連邦生徒会長がいた頃と同じ様に、行政管理を進められますね。」
「そうかい。」
「・・・・本当にお疲れ様でした、先生。キヴォトスの混乱を防いでくれたことに、連邦生徒会を代表して深く感謝いたします。」
「(もう既にかなり混乱してなかったか?)いや、なんてことのない。」
本音を仕舞い込んで返すと、七神は不安を顔に浮かべながら聞いて来た。
「・・・・その、腕は・・・、」
「ウン?ああ、もう
「・・・え?」
「ほら。」
左腕上腕の傷は血が殆ど止まり、ピッタリと傷口も塞がっていた。
「・・・・は?」
「やはり栄養状態がいいと治りもいいな。まあ、塩水だんごくらいしか食べてなかったが。」
「(まさか、連邦生徒会長は
「おう。」
そう交わしながらまた、進み出す。