人を治さばベッドが二つ   作:あいいろのふとん

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第11話 他愛もない話 その2

 またしてもアタシは不運に襲われる。

 ちょっと装備を一新して支払いに追われた時期があった。

 

 そこであるパーティーから臨時の誘いを受けた。

 何でも若くしてBランクに到達した魔剣士が率いるパーティーの斥候が大怪我を負ったらしい。

 そのためやり手の斥候を探してるんだと。

 

 アタシは4つのパーティーを抜けてからずっとソロだったから良い金稼ぎになると思ったんだ。

 臨時なら何も問題は起きねぇだろってな。

 

 若くしてCランクの壁に躓かない奴らってのはまぁ人が出来てた。

 アタシとは大違いさ。

 斥候の仕事を理解し労わってくれた。

 それぞれの関係も良好でダメ出しをしても悪い雰囲気にならない。

 これが高ランクになる奴らかぁなんて思ってた。

 居心地も良かったし今ここにいない斥候に多少嫉妬したりもした。

 

 でもな、やっぱり神様ってのはいねぇんだ。

 

 冒険者は仲良しこよしじゃやっていけないらしい。

 

 本当に一瞬だった。あの時みたいに。

 

 安全地帯(セーフティ)を出てすぐアタシ達は翼竜(ワイバーン)に囲まれた。

 こいつらはもっと深層に出るはずの魔物だ。

 飛びながら遠距離でちまちま削りながら集団で狩りをする。

 アタシのような斥候が1番役に立たねぇ魔物の1つだ。

 

 アタシ達の中で翼竜(ワイバーン)に有効な手段を持っているのはリーダーだけ。

 メンバー全員で翼竜(ワイバーン)の遠距離魔法を受けながらリーダーが魔剣で魔術を飛ばす。

 だがそれで撃退できるのなら翼竜(アイツら)はもっと狩られている。

 

 段々とリーダーの動きが悪くなりついに魔剣の魔術が翼竜に届かなくなった。

 アタシ達も何とか翼竜の攻撃を捌いていたがついに突破される。

 

 一瞬のことだった。

 

 その風の刃はリーダーの両足を切り落とす。

 

 盾役が魔剣士を抱えてまた走り出そうとした。

 だがそんなもの無謀でしかない! 

 

「何やってんだ! アレスは置いていけ! どの道その傷じゃあ治らない!! おいヴォルキア!! レナも何か言ってくれ! アタシ達にそんな余裕はねぇ!」

 

 今考えてもあそこは置いていくのが最善手だった。

 だけどなぁ、あの時のアタシはつい情が移っちまった。

 いつもなら確実に置いて逃げるはずがこいつらに死んで欲しくないって思っちまったんだ。

 

「あ〜ッたく! ヴォルキア! 今から10秒後、アタシがこいつらの攻撃を全対応する! その間に飽和攻撃の範囲から出ろ! 

 レナは薄くてもいいからとにかく障壁を張ってくれ!」

 

「でもそれじゃあサルサが!」

 

「ッるせぇよ! それ以外あんのかよ! アタシとレナはアレスを担いでここから逃げれない。それが最善手だ!」

 

「さぁ行けッ!」

 アタシはもう後ろを見る余裕なんて無かった。

 付き合いはほんの数日。

 それでも全員で生き残りたかったんだ。

 

 翼竜(ワイバーン)は賢い。

 離脱しようとする獲物を逃がすはずがない。

 アタシ達への飽和攻撃は減り、アレスを担ぎながら森へ逃げるヴォルキアに攻撃が集中し始める。

 

 もうどうしようも無かった。

 

 アタシ達への飽和攻撃が解消されふと後ろを見た時には…………

 

 既に2人はズタズタに切り裂かれ絶命していた。

 ここで振り返ったのがいけなかった。

 アタシに釣られレナも後ろを振り返ってしまった。

 

 一瞬、これも本当に一瞬だった。

 

 翼竜(ワイバーン)から意識を離し、障壁が消えた瞬間、風の刃がレナの腹を無惨に貫く。

 

 アタシはとうに助からないレナを抱えながら背走した。

 両手が使えない状態で飽和攻撃を捌ける訳もなく1本の風の刃がアタシの左手を落としそのまま首に直撃する。

 貫通はしなかったがいつ意識が飛んでもおかしくない重傷だ。

 

 結局アタシはレナを捨てて敗走した。

 

「何が果断のサルサだ! 何もかも後回しでみんな死んじまったじゃねえか!」

 

 そう心の中で叫びながらダンジョンを駆け上がる。

 

 ポーションを飲み干し眠気覚ましの豆を全て口に入れ何とか意識を繋ぎながらアタシは1人ダンジョンを後にした。

 

 うちの都市にはいくつかスラムの診療所があるが欠損などの重傷に対応出来る話は聞いたことがない。

 薄れ行く意識の中どうにかこうにか教会に辿り着きギルドカードと貯金情報を渡しアタシはそこで倒れた。

 あの時のクソ修道女《シスター》の下卑た笑顔は忘れられず今でも偶に夢に出る。

 

 まぁあれだ。さすがに交渉もできない死にかけが金だけ出して意識を飛ばしたんだ。いくらでも言い訳はできる。

 

 その通りに

「最善は尽くしましたが……手遅れです……」

 なんて抜かしやがった。

 

 ただそこについてはアタシが悪い。腹は立つがな。

 

 そのまま寒空の下に放り出された。

 

 だが気付くと左手は元に戻り、ふらつきも無く身体中の裂傷も消えていた。

 

 そんな感傷もつかの間。

 

「さて、そこの猫耳さん? 全部差し出すって言ったよね? 

 なんか寒さ凌げるところ無い?」

 

 アタシはそこで人生で初めて神様とやらに感謝したんだ。

 

 そこでシオに出会えたこと、それだけでアタシは今からでも修道女(シスター)になれるくらい神様って奴を信じてるぜ。

 

 

 

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