「え? シオ…………その傷……血……」
アタシの眼前には怪我……怪我というにはあまりにも酷い、全身血だらけのシオが何かに怯えるように小さく蹲っていた。
床に広がる血の量を見るに予断を許さない状況ということ伝わってくる。
…………いや待て、シオは優秀な治癒士だ。
身体の欠損も毒も全部治してきたじゃないか。
………………もう治せない? …………
最悪の予測が頭をよぎる。
その途端、手から荷物がこぼれ落ちる。
そんなハズがない!
ならなぜ血は止まっていないのか…………
とにかく処置だ!
急いでシオを抱きかかえベッドに乗せる。
「あぁもう何でこんなに冷たいんだよ……」
そこにいつもの温いシオはいない。
シオをベッド移し急いでポーションやありったけの布類を持ってくる。
だがベッドに滲む血の量がどんどんとアタシに最悪の未来を突きつけてくる。
昔ギルドで出血時の対処を教わった。
『出血部位を心臓より高くすること』
シオの腰の下に持ってきた布類を詰めに詰める。
ダメだ、死ぬのはアタシが許さない。
『出血部位は清潔な布で抑え出血を止める』
ダメだ、死んじゃダメだ。
アタシはこの子に何もしてあげられていない。何も返してあげられていない。ダメだ、嫌だ、伝えたいことだっていっぱいある。まだ2人で行きたいところだって山ほどある。
けれど抑えても抑えても血は溢れるばかりで、ついにベッドの下に血だまりができるほどだった。
その時だった。
シオが少しだけ動いたのだ。
そしてアタシの顔を見てこう言った。
「ねぇ……サルサ…………」
いつもの綺麗なアルトボイスではない。
弱々しくて、掠れた死人の声だ。
「シオ! 血を……血を止めてくれ!」
「サルサ、いつもみたいに抱きしめて。もう僕目が……見えないんだ。でも感覚は残ってるからさ…………お願い……大丈夫だって………………いつも僕……いっぱい治してるでしょ?」
弱々しく伸びる手をアタシは無視できなかった。
「ふふ……ありがとう…………サルサにはいつも貰ってばっかり…………ごめんね……僕は何も返せてないや…………」
「ダメだ! シオ! 死んじゃダメだ! 頑張れ! 諦めるな……アタシを置いていくなよ! 何も返してないんだろ? 神様! シオを持ってかないでくれ! 頼む! 頼むよぉ……」
シオが助かるならなんだってやる。
だから神様お願いします。
この子を助けてください。
そしてアタシの命だって差し上げます。
だからお願いです。
アタシから大切なものを取らないでください。
そう願いながらひたすら止血を続けた。