僕は今サルサと一緒に冒険者ギルドにいる。勿論登録のため。
僕はサルサの追手を撒くためにしばしばダンジョンにスラムの裏道からの違法探索をしていたのだが…………勿論怒られた。
そして今サルサに連れられて冒険者ギルドにいる。
お決まりのギルドカードはダンジョン内での居場所がバレるためできるだけ作りたくなかったのに…………
ダンジョンというものは名前を聞いただけで心が踊る。
男の子だから仕方がないね。
少し深く潜れば未知の植生や魔物たち、僕の心をくすぐるのだ。
ただこの世界に来て初の身分証明書、結構楽しみなのは秘密。
「サルサさん、こんにちは!
……そちらの子は?」
受付嬢が訝しげに話す。
そりゃそうだろう。
今まで男っ気1つ無かった獣人が人間の、それも男を連れてくるのだから。
「拾った」
「は?」
「だから拾った」
僕は頭を抱えた。
「えぇっと、サルサの同居人のシオと言います。いやあの拾ったっていうのは当たらずも遠からずというかなんというか……
まぁいいです。拾われたということで……」
「はぁ、分かりました。
本日はそちらの……シオさんの登録でよろしいですか?」
「はい、お願いします」
さすが来る者拒まず去るもの追わずの冒険者ギルド。
そこからは簡単な質問やギルドについての諸事項などの説明を受けた。
サルサは保証人のはずなのだが既に僕の元を離れギルドの酒場で何かを呷っている。
得意技はナイフにしておいた。
最近シャノやサルサに教わってるしまぁ大丈夫だろ。
それに魔力の作用かは知らないけど僕の身体能力は飛躍的に伸びた。
速く走れるし疲れない。
とにかく身体が軽くて少し頑張れば簡単に数回建ての屋根に登れる。
シャノとかも同じことできるんだけどね……
それと死亡時の捜索の有無など僕に何かあった時の処理についても聞かれた。
瀕死の患者を既に何人か見ているのにこうも死を身近に感じると不思議な感覚に襲われる。
なんて言うか心臓からゾワゾワが広がる感じ。
そこからはランクの説明や依頼の受理や完了の説明を受け見事僕はこの世界で初めての身分証をゲットしたのだ。
シオ・コオリ
ランクF
今更だけど僕の同居人サルサ。
サルサ・カルッサ、Bランクの
なんで斥候なのに
身体能力と直感、状況判断に優れた猫獣人。
罠の処理から中型魔物の討伐までをソロで完遂できる。
能力は高いが協調性が低く、これまで4つのパーティーを抜けている。
ギルドからするとちょっとした問題児だ。
「あのシオさん?」
「なんです?」
「サルサさんの能力に我々は疑問を持ってはいません。正直これは個人の疑問なのですが彼女との生活本当に大丈夫ですか? 何か弱みを握られたり……」
今更だけど僕とサルサってそういう風に見えるのか?
「大丈夫ですよ。むしろ僕が彼女の家に住まわせてもらってるんですし。そもそも屋根あるだけで十分ですし。普通にご飯食べて掃除して、屋根の下で寝られて。僕は恵まれてますね」
「そうですか……でももし何かあったらお姉さんに相談してくださいね?
私はエリサ。私たち冒険者ギルドはいつでもあなたがたを歓迎します。是非とも良い一日を!」
「ありがとうございました。
サルサ! 終わったよ!」
「んー」
そう言いながらコップに入った赤い液体を一気に飲み干しサルサはひとっ飛びでこっちに来てくれた。
最近思ったけどちょいちょい過保護だよね。
今回も1人でダンジョン内駆け巡るの心配してくれた結果だし。
「サルサはこの後依頼受けるの?」
「いや? 今日飲んじゃったから帰る。シオは? 時間あるなら何か食ってこうぜ?」
「僕この後ヴェーラさんのとこ行かなきゃいけないんだ」
「えぇ? またあの女のとこ? アタシあいつ嫌い! いっつもシオに匂いベタベタくっつけてくる」
ンなマーキングじゃないんだから。
サルサはヴェーラさんのことを言うといつも露骨に不機嫌になる。仕事なんだから勘弁してくれぃ。
「そんなかかんないから終わったら夜ご飯行こ?」
「しょーがねーなぁ。いいぜ」
「んじゃまた後でねー」
そんな他愛もない会話をしながら僕たちは2手に別れた。
僕の名はシオ。
身分証を得たただの闇医者さ。