バニルと一緒にウィズをこき下ろす話   作:音猫だあく

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ある日の魔道具店と春キャベツ狩り

 「『バニル式殺人光線』!」「『カースドブラスター』!」

 

 「ほえええええええ!?」

 

 とある春の日のウィズ魔道具店にて。

 店員の僕とバニルによる怒りの攻撃をモロに喰らった店主──ウィズは半透明になりながら倒れ伏した。別にこれはいじめとかそういうのではなく、真面目な理由によるお仕置きである。

 というのもこの店主、呪われているのかと疑いたくなるほどに商才が皆無なのである。タチが悪いことに、本人はそれを全く自覚していない。ちょっと目を離した隙に売れるはずがない魔道具を山のように仕入れては利益のほとんどをオジャンにしてくれやがるのだ。しかも性懲りも無く何度も何度もやらかしてくれるので、僕とバニルは容赦なく強力な魔法をお仕置きとしてぶつけるし、平常時もウィズのことを名前や店長呼びではなく「ポンコツ店主、ガラクタ店主、へっぽこ店主、穀潰し店主、天災店主、お荷物店主、負債生成装置、疫病神」と呼ぶなどして徹底的にこき下ろしている。

 

 「全く…返品するのもタダではないのだぞ…。」

 

 「このままだと今月も赤字だよ…ハァ…。」

 

 僕とバニルが疫病神の所業に頭を抱えていると、来客を告げるベルが鳴り響き、いかにも冒険者といった風貌の青年が入店してきた。

 青年の名前はカズマ。僕と同じく日本からの転生者で、うちのお得意様である。僕のほうが先に転生してきた言わば先輩ではあるものの、同い年だったのと魔剣がすごいだけなのにそれを自分の真の実力などと自惚れているミカルゲ…じゃなくて…アララギ…でもなくて……カツラギだったけ?と違って普通の性格で話しやすかったのもあって彼とは先輩後輩という関係ではなく親友というフラットな関係である。

 

 「よぉバニル、リュウ。またウィズがやらかしたのか?」

 

 「ああいらっしゃいカズマ。その通りだよ。おかげで今月の売り上げがパァになっちゃったよ。」

 

 「相変わらずお前ら苦労しているな…。」

 

 「そういうカズマだって昨日例の信号機バカトリオせいでえらいことになったんでしょ?」

 

 信号機バカトリオとは、カズマとパーティを組んでいる『アクア』『ダクネス』『めぐみん』の3人のことである。それぞれ水を司る女神、鉄壁の女騎士、紅魔族随一の魔法使い、とスペックは非常に高いのだが……揃いも揃って性格とかが色々残念なのである。

 

 アクアは確かに女神ではあるのだが、低すぎる幸運と知能のステータスと自分勝手もしくは他人をバカにするような発言でトラブルをよく起こす。…というかアクアがカズマと共にいるのも彼女がカズマを煽った結果転生特典として選択するという形で道連れにされたからである。まさに自業自得。

 ダクネスはモンスターに自ら攻撃されに行くほどのドM。加えて超不器用なので剣が当たらない。一応『両手剣』のスキルを取得すればある程度は改善するそうなのだが、モンスターの攻撃を喰らえなくなるという理由で頑なに取得しようとしない。とはいえ貴族生まれということもあり、3人の中では比較的常識人ではある。

 めぐみんは確かに紅魔族随一の魔法使いなのだが、習得している魔法がネタ魔法とも言われる『エクスプロージョン』という爆裂魔法のみ。しかも他の魔法を覚えるつもりはない、怒りの沸点が低い、毎日一回は爆裂魔法を撃たないと気が済まない、爆裂魔法でほぼ周辺に被害をだす…等々3人の中で一番の問題児。カズマのことが好きらしい(恋愛的な意味で)

 

 「ああそうだよ!俺が余計なことはすんなって警告したのに駄女神が勝手に『フォルスファイア』で大量のモンスターを呼び寄せるし!それを見たダクネスが勝手に『デコイ』を使いながらモンスターの群れに突っ込んでいくし!挙げ句の果てにめぐみんが加減せずに最大出力で爆裂魔法を撃ったせいで余波に巻き込まれた王都行きの馬車の積荷がダメになってとんでもない額の借金を背負わされるし!」

 

 「…ちなみにその借金の具体的な金額は?」

 

 「6500万エリスだよクソッタレェ!」

 

 「こ れ は ひ ど い。」

 

 「なぁリュウ。俺何か悪いことしたか!?こんな目に遭わなきゃいけないほど悪いことしましたか!?」

 

 「してないね。にしても何でカズマが3馬鹿のやらかしの責任をいっつも取らされてるんだろうね。ダクネスはともかく、駄女神と爆裂バカが最大の原因なのに。」

 

 「リュウ…!やっぱり俺の苦労をわかってくれるのはお前だけだよ!」

 

 「カズマだっていつも僕を気にかけてくれるしお互い様だよ。」

 

 

 ◇

 

 

 「ところでカズマは今日はこの店に何をしにきたの?」

 

 適当に入れたあったかい緑茶を啜りながらカズマに尋ねる。

 

 「えっとな。そろそろ春キャベツが飛来してくる時期だろ?旬のキャベツはギルドが高く買い取ってくれるからここで稼いで借金を少しでも多く返済したいんだが、あんなことがあったから協力するのが駄女神達だけだと返済どころか借金が増えそうで怖いんだよ…。」

 

 「要するに…僕と手を組みたいってこと?」

 

 「そういうことだ。お前の店も今金に困ってるみたいだし、悪い話じゃないだろ?」

 

 確かに悪い話ではない。カズマは幸運のステータスが異様に高いからか彼が収穫するキャベツはどれも最高品質なので普通よりも高く買い取ってもらえる。そんなカズマと手を組めば今月の赤字の大半を補填できるかもしれない。 

 

 「その話、ぜひ乗らせてもらうよ。」

 

 「決まりだな。じゃあアナウンスがあったらギルドの食事処に集合な。」

 

 「おっけい。」

 

 

 ◇

 

 

 《緊急クエスト!緊急クエストです!街の中にいる冒険者の方々は、至急冒険者ギルドに集まってください!》

 

 数日後。待ちに待ったアナウンスが街中に響き渡った。早速僕はカズマ達の元へ向かう。

 

 「おはようさん。」

 

 「おっ来たなリュウ。早速だがいい感じの作戦は思いついたか?」

 

 「一応はね。」

 

 そう言って僕はカバンからタブレット端末を取り出して作戦を記した画面を表示してみんなに見せる。

 このタブレット端末は僕が転生時に貰ってきたもので、通常のものと同じ機能に加え、相応のコストがかかるものの天界経由でのインターネットショッピングや魔道具のレンタルが頼める優れものである。

 

 「バニルに見通して貰ったところ、どうやら今年の春キャベツは西の方角から飛来してくるらしい。」

 

 「はぁ!?アンタなにあの悪魔の悪感情目的の虚言を鵜呑みにしているのよ!どうせそれに従ったらキャベツは逆の方角からくるってオチに決まって「『バインド』」むぐぅ!?」

 

 女神は悪魔とは敵対関係にあるのでアクアがぎゃーぎゃー騒ぎ始めたが、カズマが『バインド』というスキルで口を塞ぐように全身を縄でぐるぐる巻きにして黙らせた。…全身ぐるぐる巻きにするあたり流石アクセルで一番の鬼畜男である。

 

 「むぐぅ!?むぐぐぐぅっ!?(ちょっとカズマ!?いきなり何するのよ!?)」

 

 「お前が騒いでると話が進まないからそこで大人しくしてろ!!」

 

 「むぐぐぅーっ!?(なぁんでよぉーーっ!?)」

 

 縛られているのに駄女神はまだぎゃーぎゃー騒いでいるが、これ以上は時間がないので無視することにした。

 

 「続けるね?今日は西風が吹いているからキャベツの飛行速度は例年より速くなるはずなんだ。だから今回は短期決戦を仕掛ける方向で動く必要がある。」

 

 「つまり私の爆裂魔法で吹き飛ばせばいいのですね!」

 

 「違います。」

 

 「なっ!?」

 

 「めぐみんは加減しないし、そもそもめぐみんレベルの爆裂魔法の火力だとキャベツが全部灰になって収穫も何もあったもんじゃなくなるからだよ。まさか紅魔族随一の天才魔法使いである君がそれぐらいのことも想定出来ないなんてことは…」

 

 「そ、そんなわけないじゃないですかっ!最初からそれぐらいわかってましたとも!」

 

 「じゃあめぐみんは爆裂魔法でキャベツを誘導する役割ってことももちろん職業『大賢者』の僕より賢い君ならわかっているよね?」

 

 「あ、当たり前じゃないないですか!」

 

 相変わらずちょろい。めぐみんはこういう煽りに結構弱いから誘導しやすくて助かる。

 

 「私は何をすればいいだろうか?」

 

 「ダクネスとアクアは誘導されてきたキャベツ達を『デコイ』と『フォルスファイア』で引きつけておいてほしい。カズマは僕と一緒にキャベツ達を撃ち落としていこう。」

 

 「「了解。」」

 

 やっぱりカズマとダクネスは素直で助かるなぁ。

 

 「むぐ!むぐぐぅ!(嫌よ!なんで女神である私が囮役にならなきゃいけないのよ!)」

 

 それに比べて本当にこの駄女神はじゃじゃ馬すぎる。騒ぎを起こすわツケや借金を勝手に作るわ素直にいうことを聞かないわでカズマに迷惑かけてばかりで碌なことをしない。今だって時間がないのにまだ不満の意を訴え続けている。…まあそれでも

 

 「そっか不満なのか残念だなぁ。頑張ってくれたらこの高級シュワシュワを報酬としてプレゼントしようと思ってたのに…」

 

 「むぐぐぐっ!(よーしみんな張り切って行くわよ!)」

 

 シュワシュワで簡単に買収できるんだけどね!

 

 

 ◇

 

 

 というわけでやってきましたアクセルの街西正門前。僕達以外にも多くの冒険者達がキャベツを獲得せんと集まっている。 

 

 魔導双眼鏡で遠くを見てみると、キャベツが飛来してきているのが見えた。だが南西や北西にも散らばっているためアクセルの街を通りそうなキャベツはそこまで多くはない。

 それを確認した僕は魔導トランシーバーを取り出して無線を飛ばす。すると

 

 ドゴオオオオオオオオオオン……

 

 と爆音と共に南西と北西の方角で盛大な大爆発が起こった。爆裂魔法である。南西の方にはめぐみん(と回収役として買収したゆんゆん)を待機させ、北西の方には同じく爆裂魔法を使えるうちの疫病神(とガラクタを買わせない為に付けた監視役のバニル)を待機させておいたのだ。

 目論見通り、爆裂魔法に驚いたキャベツ達が西正門前に向かって飛来し始めた。ある程度近づいて来たところで今度はカズマが指示を飛ばす。

 

 「アクア!ダクネス!引きつけろ!」

 

 「「任せろ!/わかったわ!」」

 

 カズマの指示に合わせて二人がスキルを使用する。するとそれに気づいたキャベツ達が勢いよく二人に突っ込み始めた。体当たり攻撃である。

 

 「『サンダーストーム』!」

 

 「『狙撃』『狙撃』『狙撃』…!」

 

 もちろんそんな隙だらけの行動を見逃すわけもなく、広範囲を攻撃できる魔法でキャベツ達を一掃する。幾らかは魔法が当たらなかった個体もいるが、それはカズマの精密射撃で撃ち抜いていく。

 とはいえそれでも撃ち漏らしている個体はまだまだいる。ドMで鉄壁のダクネスはキャベツ如きに群がられても問題ないが、打たれ弱いアクアはこれ以上は耐えきれない。まあ、もちろんそれも想定済みである。

 

 「『ライト・オブ・セイバー』!」

 

 突然飛来してきた魔力の刃がキャベツ達を貫いた。お待ちかねの増援である。

 

 「お、お待たせ!」

 

 「おっ!グッドタイミングだゆんゆん!」

 

 実はゆんゆんにはめぐみんの回収の他にもキャベツ狩りの手伝いも頼んでおいたのだ。彼女の代名詞とも言える魔法『ライト・オブ・セイバー』は威力範囲共に優秀なのでキャベツ狩りにもってこいなのである。

 

 「それじゃあ早速だけどゆんゆんは僕達が撃ち漏らした個体を処理してもらえる?」

 

 「わかったわ!」

 

 ゆんゆんが参加したことでキャベツ狩りの効率はさらに上昇した。

 僕達は順調にキャベツ狩りをこなしていき、最終的には1人あたり72万程の利益を得ることに成功したのであった。




・リュウ
本名は大銀 竜。名前の由来は千客万来の花言葉を持つダイギンリュウ(漢字:大銀竜)から。日本から転生してきた職業『大賢者』の冒険者でウィズ魔道具店の実質副店主。大賢者というだけあって非常に賢いため、カズマから悩みの種である3人娘に関してよく相談される。ステータスも優秀…なのだが本人は争いや暴力といった荒事(お仕置きは除く)を好まない優しい性格の持ち主なので、色々苦悩や葛藤があった末に最終的にはウィズ魔道具店で働くことに決めた。それでもウィズと同様一応まだ冒険者ではあるので有事の際には戦うこともあるかもしれないしないかもしれない。所持している神器の関係上、自身が転生者であることはバニルとウィズには他言無用と釘を刺した上でバラしている。好物はスイーツ全般。

・バニル
元魔王軍幹部にして地獄の公爵である仮面の大悪魔。ウィズ魔道具店の実質店主でもある。基本的には原作と同じだが、この世界ではリュウがいることで彼にのしかかるストレスや負担が少し軽減されている。リュウのカミングアウトによりリュウとカズマが転生者であることを知ったが、特に害はないどこかいい開発担当や商談相手になっているので全く気にしていない。

・ウィズ
現なんちゃって魔王軍幹部のリッチーにして実は昔は氷の魔女とも呼ばれた凄腕冒険者。(名目上は一応)ウィズ魔道具店の店主…なのだがこの世界でも原作と同じくガラクタだったり無駄に高価な商品を勝手に仕入れてくるので、一週間に最低一回はバニルかリュウ(または両名に)黒焦げにされている。そういうこともあって二人からは徹底的にこき下ろされている。店主なのに。リュウのカミングアウトについては最初こそ驚いたものの、その後すぐに受け入れた。


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