オリ設定も少し出ます。が、一応原作見てて思い付いたのでそこまで矛盾は無い、はず?
太一が怒り狂います。
〜〜7月30日八神家〜〜
「なあ、ヒカリ?」
「どうしたの、お兄ちゃん?」
「お前、何か隠し事してないか?」
7月も後わずか、といったとある日の朝は八神兄妹のそんなやり取りから始まった。
「隠し事なんて、無いよ?」
「本当に? だとするなら……何で最近、お前苦しそうなんだよ?」
「!!」
隠していたはずの苦しみを見抜かれて驚愕するヒカリ。
「ここんとこ、お前どんなときでもどっか陰が在るんだよ。話をしているときも、飯を食ってるときも、笑っているときですら!」
「そ、そんなこと、ないよ……」
「じゃあ、何でもっとちゃんと言い返せないんだよ! そんなに苦しそうに! 今にも泣きそうな顔して!! そんなお前の何処がそんなこと無いんだよ!!!」
余りにも苦しそうな顔をしながらも、安心させようと笑いかけてくるヒカリに苛立ち声を荒げる太一。
そんな太一の怒りと、そこに込められた想いを感じ取りながらもヒカリは何も語る事は出来なかった。
何故なら、
(言えない、言えないよ……! だって、私が人間では無いかも知れないなんて、もしもお兄ちゃんに知られて嫌われでもしたら、耐えられない……!)
ヒカリはただ、怖かったのだ。
自分が人間では無いかも知れないことが、それを知られて太一に嫌われるかもしれないことが、ただ怖かったのだ。
そんなヒカリを辛そうに見ながら太一はすがるようにヒカリに聞いた。
「俺じゃヒカリに何もしてやれないのか? 俺じゃヒカリを助けてやる事は出来ないのか?」
「ち、違う! そんなことは無いよ!」
そんな太一の様子に違和感を感じながらもヒカリは太一の言葉を必死に否定する。
「じゃあ、何で−−」
そう太一が叫ぼうとしたとき、
ピンポンピンポンピンポンピンポンピンポーン
呼び鈴が連続して鳴らされ、
「太一君、居るのは分かってるのよ! 出てきなさい!」
明らかにふざけて叫ぶ折紙の声が八神家に響いた。
「「………………」」
「……ヒカリ、ちょっと待っててくれ」
「……うん」
勢いを削がれ酷く微妙な気持ちになり、一先ず話は後回しにして玄関に向かう太一。
「突撃! 隣の八神さん! って、どうしたの? 何か、凄い微妙な顔してるわよ?」
怒られたり苦情を言われたりは想像していたが、酷く微妙な顔をしている太一に驚く折紙。
「……折紙」
「なに?」
「今回、お前が悪くないことは分かってる」
「はい?」
「いくらお前でもこのタイミングを狙ってこれる訳がないんだから、お前に悪気が無いことも分かってる」
「あの〜、太一君?」
「分かってはいるが、一つ言わせてくれ」
「どうぞ?」
「ありがとう。なら……」
許可を取り太一は全力で息を吸いそして、
「少しぐらいは空気を読めーーーー!!!!」
抑えきれない思いを、全力で吐き出した。
〜〜10分後、八神家リビング〜〜
「アハハハハハ! 私、何か凄いタイミングで来たんだ!? スッゴーい!」
自分が実に変なタイミングで来たことを知り大爆笑している折紙。
「あー、まあな。つーか、いい加減笑うのは止めろ」
「ゲラゲラゲラゲラ」
「馬鹿にしてんのか!」
「失礼な! からかってるのよ!」
「て・め・え・は!」
ひたすら自分をからかってくる折紙に、太一は自分の堪忍袋の緒がブチブチ切れていく音を聞いた気がした。
「アハハハハ! まあ、冗談はこのくらいにして本題に入りましょうか」
「本題だぁ?」
「ええ。簡単には言えば結果発表で答え合わせ、っていった所ね」
その言葉にヒカリはビクッと震えた。
「おいっ、ヒカリがいるんだぞ!?」
「ああ、ヒカリちゃんにも少し話したから♪」
「はぁ!? てめ−−」
「良いじゃない、無関係でも無いんだし。それとも別々に話そうか?」
あっさり返してくる折紙に太一は苦虫を噛み潰した様な顔をした。
その後、ヒカリの方へ数秒間視線を移し、なにかを葛藤した後に、
「……わかった、一緒でいい。ヒカリも、それでいいか?」
覚悟を決めたかのように了承した。
そんな太一の様子を見てヒカリも覚悟を決めた。
「うん、私も、いいよ」
例え、太一に嫌われることになろうと真実から逃げない覚悟を。
「じゃ結果発表〜♪ ジャジャン!」
そんな二人の覚悟を感じ、折紙は自らがたどり着いた真実を語った。
「大〜正〜解〜っていった所ね。思った通りだったわ」
「……つまり……」
「やっぱり、まともな人間では無いみたいね」
そして、その言葉を聞いた瞬間ヒカリの意識は一瞬途切れかけた。
「……それは確かなのか?」
「間違いないわよ〜? 詳細は面倒だから2日後に纏めて話すけど、大体7割位は純正の人間だけど3割位普通じゃ無かったから」
「…………そうか」
もはやヒカリの耳には二人の会話は殆ど聞こえてはいなかったけど、最後の太一の呟きだけは聞こえた。
諦めを含んだ、暗い溜め息混じりの呟きだけは……。
(やっぱり、私は、人間じゃ……ないのね。私は、やっぱり、お兄ちゃんの、側には、いれないよね。……私は、兄妹としてすら−−)
「あ、ヒカリちゃん? ちょっといい?」
「……何、ですか……?」
絶望に呑み込まれそうになっていたヒカリに掛けられた折紙の言葉。
それはヒカリの考えを根本的に打ち砕いた。
「勘違いしている気がするから言っとくけど。さっきの話、太一君の事よ?」
「………………え?」
「だーかーらー。まともな人間じゃ無いのは太一君の事よ、って言ったの♪」
「……………………え?」
ヒカリは今、何と言われたのか、理解できなかった。
(まともな、人間じゃ、無いのは、お兄、ちゃん? え? どういう、こと?)
理解の範疇を越え、完全に混乱の極みへと到った。
そんなヒカリを置いて、折紙は急いで帰ろうとしていた。
「まあ、詳細は8月1日にね♪ んじゃ、待った−−」
「まあ、ちょっと待てよ折紙♪」
そんな折紙を引き止めたのは凄まじい笑顔を顔に張り付けた太一だった。
「な、何かしら? 太一、君?」
「一つ、疑問が在るんだ。ちょっと答えてくれ」
「し、詳細は8月1日に纏めて−−」
「何でお前はヒカリが“勘違いしている”なんて思ったんだ?」
「そ、それは−−」
「まさかとは思うが、ヒカリにちゃんと説明せずに“意図的に”情報を小出しにした、なんて事は無いよなぁ?」
「あ、あははははぁ……」
「なあ、折紙? 俺は前に言ったよな? 悪意でヒカリを傷つけたりしたら、その時は覚悟しとけって」
「い、言ってたねぇ……」
「そうか、なら覚悟は出来てるよな?」
「え、え〜と……」
言葉を交わすたびにどんどん増していく太一の殺気に、さすがに怯えてジリジリと後ろに下がる折紙。
そして、
「往生しやがれ!!! この、糞外道がぁーーーーー!!!!!」
太一の怒りが爆発した。
「てぇ! ちょ! 危なぁ!」
「避けんなぁ!!! 蹴り飛ばされろ!!!」
「そんなの食らったら大変な事になるって!」
「ヒカリを苦しめた奴には当然の報いだ!!! てめえのせいで、ここ最近のヒカリがどれだけ苦しそうな顔してたと思ってんだ!!!」
「私にも私の考えが合ったんだって! 一応、悪意とかは無かったから!」
「関係、あるかぁーーー!!! つーか、悪意も無しによくもこんな最低な事ができたなぁ!!!」
嵐のような、まさしくそんな言葉がぴったりな凄まじい太一の蹴りを、拳を、これまた凄まじい身のこなしで紙一重で避けていく折紙。
そのまま暫くの間、二人の攻防は続いた。
〜〜1時間後〜〜
「「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ……」」
約1時間の間、殆ど休む事なく繰り広げられた太一と折紙の攻防は二人の体力が尽きた事によってようやく止まった。
「ご、ごめんなさい。でも、本当に、悪意とかは、無いから……。それなりに、考えが、あったのよ……」
「はぁ、はぁ……。……本当、だな?」
「ええ、本当、よ」
「……………………わかった。今回は、見逃して、やる」
「本当? あ、ありがとう……」
そこまで話したのが限界だったようで、折紙は床にベシャッと音を立てて倒れた。
同時に、太一も後ろに倒れた。
ちなみに、ここまでの二人の攻防で発生した周囲への被害は、ほぼ“零”という驚異的な結果だった。
……二人とも、空手部にでも入部すればいい。
〜〜更に1時間後〜〜
「ああ〜、ほんっとに疲れた〜」
「それはこっちの台詞だ。お前のせいで無駄に疲れたわ」
「あはははは……。本当に、ごめんなさい」
「もういいよ。一応は考えがあっての事なんだろ?」
「ま〜ね〜」
ようやく体力も戻ってきた二人はとりあえず椅子に座っていた。
ちなみに、ヒカリはここまでの間に倒れた二人の顔に冷たいタオルを乗せてあげたりと動き回っていた。
「で? これからどうすんの?」
「あ〜まぁ、とりあえず今日は帰るよ」
「そうか」
「うん」
そして折紙は帰り支度を整えて帰ろうとした。
〜〜八神家玄関〜〜
「じゃあね〜。ヒカリちゃん」
「はい、あの……。気を付けて、くださいね?」
さすがに意味がわからなすぎてどんな反応をしていいのか分からず、とりあえず無難な対応をするヒカリ。
「あ、そうそう。ヒカリちゃん、ちょっといい?」
「はい? 何ですか?」
玄関で靴を履き今まさに帰ろうとした折紙は思い出したようにヒカリに聞いた。
「私がヒカリちゃんに最初にした質問って覚えてる?」
「えっと……」
「んじゃ〜ね〜。ばいば〜い」
「はい!? えっと、折紙さん!?」
質問に答えようとしたら唐突に帰っていく折紙。
本当に意味が分からずにヒカリはポツリと呟いた。
「何だったの……?」
〜〜八神家リビング〜〜
「お兄ちゃん、折紙さん帰ったよ」
「あぁ、そうか」
机に突っ伏したまま太一はヒカリに返事をした。
そしてそのまま太一はヒカリに一つ聞いた。
……どうしても聞かなければならないことを。
「……なあ、ヒカリ?」
「どうしたの、お兄ちゃん?」
「やっぱり、嫌か?」
「? 何が?」
「血も繋がってない、人間ですらない奴が“お兄ちゃん”だなんて、やっぱり嫌か?」
「……え?」
そこまで聞いて、ヒカリはようやく気がついた。
太一が、まさしく自分が今日まで苦しんでいたことで、今まさに苦しんでいることに。
(何で……! 私は……!)
ヒカリは自分の愚かさにぶん殴ってやりたい気持ちになった。
(お兄ちゃんが苦しんでなかったわけないのに……! 何で気づいてあげられないの!?)
そもそも今初めて苦しんでいる、なんて訳がないのだから。
なにしろ、
(折紙さんが調べていたのがお兄ちゃんの事なら、私が折紙さんと初めて話したときにはもうずっと苦しんでた筈なのに……!)
それなのにヒカリは気がつかなった。
と、そこまで考えた所でヒカリは気が付いた。
(違う! お兄ちゃんは多分本当に、そこまでは苦しんではなかったんだ!)
太一がヒカリの事をよく見ているように、ヒカリも太一の事をよく見ている。
太一がずっと前から苦しんでいたなら、ヒカリは絶対に気づく。
ならば今太一が苦しんでいるのは、
(私の、せいだ……! 私が自分の事しか考えなかったから……!)
悔やむヒカリの頭には、今日太一に感じた違和感が蘇っていた。
朝、苦しむヒカリにすがるように助けてやれないのか、と聞いてきた太一の姿が。
折紙が話をしようとしたときにみせた、太一の葛藤が。
(何で……! 私は……! お兄ちゃんを苦しめる事しか、出来ないの!?)
ヒカリは悲しかった。
未だに太一を苦しめてばかりな事実が。
「……ヒカリ?」
何の反応も返ってこない事を不審に思い太一は顔をあげた。
そこには、
「ごめん、なさい……、ごめん、なさい……! お兄、ちゃん……!」
大粒の涙をぼろぼろと流しながら謝っているヒカリがいた。
「どうしたヒカリ!? 何を謝っているんだ!?」
先程までの葛藤なんか一瞬で吹き飛び、太一はヒカリの側まで駆け寄った。
「どうしたんだヒカリ? 何をそんなに泣いてるんだ?」
「ごめ、なさい……、ごめん、なさ……い!」
「……やっぱり、俺が“お兄ちゃん”なんて嫌−−」
「違う!!! 違うの!!! そうじゃないの!!!」
それだけは絶対に違うと、ヒカリは声を張り上げた。
「じゃあ、何でヒカリは泣いてるんだ……?」
僅かに躊躇った後、ヒカリは静かに語りだした。
「だって、ヒカリのせいでしょ?」
「え?」
「ヒカリのせいで、今お兄ちゃんはそんなに苦しんでるんでしょ!?」
「ヒカリ……?」
「ヒカリの考えが足りなかったから、お兄ちゃんをそんなに苦しめてるんだよ!? もっと考えられたら! もっとお兄ちゃんを頼っていたら! お兄ちゃんを苦しめずに済んだかも知れないのに!」
「ヒカリ……」
「なのに……! ……っ! ごめんなさい、お兄ちゃん! ごめんなさい……!」
再び泣きじゃくるヒカリ。
太一はそんなヒカリを少ししてからそっと抱きしめた。
「お兄、ちゃん……?」
「なあ、ヒカリ? 俺はヒカリの“お兄ちゃん”でいてもいいのかな?」
「……! そんなの、当たり前だよ! だって、お兄ちゃんは、ヒカリの一番大好きな“お兄ちゃん”なんだもん! 他の誰よりも大切な“お兄ちゃん”なんだもん! ヒカリの一番、一番、一番! 大、好きな−−」
「もう、いいよ、ヒカリ……」
涙を堪えながら、必死に言葉を重ねるヒカリを太一は思いっきり抱き締めた。
「ん、お兄ちゃん。ちょっと、苦しい……」
「ごめん。ごめんな、ヒカリ。ちょっとだけ、こうさせてくれ」
「……うん。いいよ、お兄ちゃん」
「あり、がとう、ヒカリ。本当に……! ありが、とう……! ヒカリ……!」
先程までの立場を交換したように、今度は太一がヒカリを抱き締めながらぼろぼろと大粒の涙を流していた。
ありがとう、ありがとう。と子供の様に泣きながら……。
(お兄ちゃん、大好き……)
そんな太一に抱き締められながら、ヒカリは心の中で自分の思いを呟いた。例えそれが誰にも認められないとしても……。
『私がヒカリちゃんに最初にした質問って覚えてる?』
ふとヒカリの頭に先程された質問が響いた。
(最初にされた質問……?)
何故かそれが気になってヒカリは思い出した。
『ヒカリちゃん、太一君の事好きでしょ。異性として』
(そう、私は、お兄ちゃんが……好き。でも……)
それは叶わない願い、と思ったときさっき聞いた太一の言葉がヒカリの頭に響く。
『血も繋がってない、人間ですらない奴が“お兄ちゃん”だなんて、やっぱり嫌か?』
(……え?)
ヒカリの頭にもう一度同じ部分が響く。
『血も繋がってない……』
(え? 待って、もしかして……)
ヒカリの頭に次は折紙の言葉が響く。
『だーかーらー。まともな人間じゃ無いのは太一君の事よ、って言ったの♪』
折紙はヒカリの事に何も触れなかった。
ヒカリの事も何かあったなら報告するはず。
なにしろ、何か分かったら教えてくれると言っていたのだから。
つまりヒカリに関しては特に触れるほどの事は無かったと言うことで、それはつまり、
(まさか……まさか……!)
それに気が付いたとき、ヒカリの太一を抱き締めている力は少し強くなった。
次は太一の出生の秘密話。オリ設定です。