FINAL FANTASYⅡ 怪奇幻想譚    作:虚夢想

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ep10 今後の行方

 

   [Ⅰ]

 

 

 会議室での報告の後、ミンウには真相を話しておいた。

 そして宿に行き、ミンウをスコットと引き合わせたのである。

 正直言って、俺達だけじゃ抱えきれない問題だからだ。

 亡国とはいえ、軍事同盟を結んでいた国の王子である。

 かなりデリケートな話なのであった。

 ちなみにミンウは真相を知り、かなり困った表情であった。

 ヒルダ王女を騙すのに加担するので、致し方ないところである。

 そして、その後、彼等は次のミッションに向け、旅支度に入ったのだった。

 だが、その別れ際、マリアが悲しげな表情で俺を見ていたのが、少し気になるところであった。

 なにか言いたそうだったが、恐らく、反乱軍への勧誘に違いない。

 マリアには悪いが、コレばかりは勘弁してもらうとしよう。

 というわけで、俺はここから自由時間だ。

 色々と今後の事をゆっくり考えるつもりである。

 

(さて……なぜかフリオニール達の序盤イベントに付き合うハメになったが、ようやく落ち着いて考えられる。とりあえず、俺が今すべき事は、このわけわからん世界からどうやって脱出するかだ。この状況をどうやって打破するか……まずはガルテアの湖について、もっと調べる必要があるな。俺が倒れていたという月の女神の祠とやらが気になる。この街にもフィンからの避難者がいる筈だから、訊いてみるか……ン?)

 

 ふとそんな事を考えながら、アジトの前にある広場を歩いていると、黒い装束を着た若者が俺に近づいてきた。

 ポールという名の盗賊だ。意外とフレンドリーなやつで、ゲーム同様、帝国以外からは盗みはしないという、反社の割に妙なポリシーを持つ男であった。

 ちなみにコイツの着ている黒装束だが、忍者のモノとは微妙に違う。

 まぁその辺は土地柄という事にしとこう。

 

「よう……カザマさんといったっけ? アンタ達、フィンに行って帰ってきたそうだな。やるじゃないか」

「色々と大変だったがな」

「ところで……フィンはどんな感じだったんだ? 俺はフィンに家があるんだが、やっぱりパラメキア兵は結構いたか?」

 

 たぶん、盗品が心配なんだろう。

 

「わんさかいるよ。なんだ、貯め込んだお宝が心配なのか?」

「へへへ、まぁな。って……なんで俺が貯め込んでるって知ってんだよ!」

「やっぱり、貯め込んでんのか?」

 

 ポールは苦笑いを浮かべた。

 

「カザマさんも人が悪いな……そうだよ。でも、まだ暫く帰れそうにないなぁ。仕方ない。また帝国の奴等から盗みでもして、食い扶持でも得るか。とりあえず、フィンの北西にあるセミテの滝の鉱山に行ってみるかな。あそこも今や帝国の占領地だけど、最近は警備も手薄って聞くし」

 

 そういえばコイツ、ゲームではセミテの滝の奥で、囚われたサラマンドの住民と一緒にいた筈だ。

 なるほど、こういう風にリンクしてるのか。

 

「そんな遠くに行くのか?」

「ああ、シドの飛空船で行けばすぐだからな」

 

 シドの飛空船か。

 一度乗ってみたいが、今はやめとこう。

 

「へぇ、飛空船ね。ところでポール、ガルテアの湖に、月の女神の祠ってあるの知ってるか?」

「ああ……あの水の中にある古い祠か。もちろん、知ってるよ。それがどうかしたのか?」

「あれってどういう祠なの。色々と曰くがあるみたいだけど」

 

 ポールは腕を組み、首をひねった。

 この様子だと、大したことは知らなさそうだ。

 

「う〜ん、どういう祠と言われると、俺も困るな。ありゃ相当前からあるって話しだし。それに、あの祠を造ったのは月の民とかいう伝説もあるんだよ。詳しい事は、フィン城の書庫か、ミシディアにあるという、古代の文献を幾つも揃えた『知恵と知識の館』に行けばわかるんじゃないか」

 

 ゲームでも、ミシディアには図書館があった。

 フィン周辺で手掛かりが掴めない場合は、行った方が良さそうである。

 とはいえ、問題もある。

 それは、俺がこの世界の文字を読めないという事だ。

 つか、俺は今、何語話してんだろうか。

 言葉だけ通じるのが、解せないところである。

 

「なるほどね……確かに、過去の記録を探った方が早いか」

「カザマさんは、妙なモノを調べてんだな。学者か何かか?」

「いや、ただ単に興味があるだけだよ。さて、それじゃあ頑張れよ、ポール。セミテの滝に行くなら、フリオニール達によろしく言っておいてくれ」

「え、なんで? 俺は基本、単独行動だぜ」

「なんとなくだ。じゃあな」――

 

 そんなやり取りをしつつ、俺は街の中を進む。

 擦れ違う人々はどこか暗い表情の者ばかりだ。

 こんなご時世だし仕方ない事だが、晴れた穏やかな空模様の下にもかかわらず、住民の心はなかなか晴れないようだ。

 そんなアルテアの街を歩いていると、暫くして見知った者と出くわしたのである。

 それはマリアであった。

 彼女は今、道の端で立ち止まり、難しい表情で何かを考え中のようだ。

 

「ン? おお、マリアじゃないか。どうしたんだ、難しい顔して?」

「あ、カザマさん……」

 

 マリアは何とも言えない表情で、俺を見ている。

 反乱軍に入らなかった事に気を揉んでいるのかもしれない。

 

「買い物か?」

「ええ……まぁ……そんなところです」

 

 マリアの他には誰もいない。

 フリオニール達は別行動のようだ。

 

「そうか。俺が言うのもなんだが、サラマンドの件、頑張れよ」

「勿論です。それはそうと……カザマさんは、これからどうするの?」

「これからか……ま、それを今から考えようと思ってるところかな」

「反乱軍には入らないの?」

 

 やはり勧誘しにきた。

 断るとしよう。

 

「入らないよ。俺はこの国の人間じゃないから、内政干渉みたいな真似はあまりしたくない。俺がしたいのは、自分がいた国に帰るという事だけさ。まぁとはいえ、その方法がわかんないんだよね。だから、それを考えようと思ってな」

「自分がいた国……カザマさんはどこの国から来たの?」

 

 パラメキア出身と誤解されるのも不味いので、正直に言うことにした。

 

「日本という国だよ」

「ニホン? 聞いたことない国だわ。どこにあるの?」

「それがわからないから困ってるんだよ。旅の途中で話したが、ミンウが言うには、月の女神の祠がある湖の畔で、俺は倒れていたそうなんだ。その状況が本当なら、もしかすると俺は、何らかの方法でこの国に拉致され、連れてこられたのかもな。だから、ここがどこかすらわかんないんだよ」

 

 こうでも言わないと信じないだろう。

 

「そういえば……そう言ってたわね。本当なの?」

「本当だよ。嘘をつく理由がない。ま、信じるかどうかは、マリアに任せるよ」

 

 マリアは俺をジッと見た後、優しく微笑んだ。

 

「信じるわ。カザマさんは信じられる人な気がするから。それに……カザマさんて、少しだけレオンハルト兄さんに似てるのよね。見た目とか雰囲気は全然違うんだけど……」

「なんだそりゃ」

「だって……この間、私を助けてくれた時、子供の頃の兄さんを思い出しちゃったもの。兄さんも子供の頃、虐められていた小さな私をあんな感じで助けてくれたのよね。だから……貴方が近くにいると、凄く心強いなって思ったんだから」

 

 マリアはそう言うと、少し恥ずかしそうに俺を見たのである。

 

(おお、なんか知らんけど、信頼というか、意外と落とせそうな感じか? まぁいい、ちょっと冗談っぽく、スキンシップをとってみよう)

 

 というわけで、俺はそんなマリアに接近し、彼女を優しく抱きしめたのであった。

 

「そうかい。じゃあ、見つかるまで、俺を兄さんと思ってくれてもいいよ。本当に可愛いところあるね、マリアって」

「え?」

 

 マリアはこの突然のスキンシップに、少し顔を強張らせたが、意外にも抵抗はなかった。

 受け入れたのだろうか?

 

「カザマさん……兄さんはこんな事しないよ……でも、ありがと……」

 

 するとマリアは、俺の腰に手を回し、胸に顔を埋めてきたのである。

 

(おおう、マジか。これイケるんじゃね? でも後が怖いから、今はやめとくか。まぁ今後はわからんけど……)

 

 意外にも脈がありそうだが、いきなり深みにはまると不味いので、この辺にしておこう。

 

「さて、それはそうと、マリアは旅支度しなくて良いのか」

 

 抱擁をやめると、マリアは少しキョトンとしていた。

 名残惜しかったのかもしれない。

 

「え? も、勿論、するわよ。じゃあ、カザマさんも少し付き合ってよ。そのくらい、いいでしょ。街の中を散歩してるくらいだし」

「はいはい、で、どこ行くんだ?」

「じゃあ、まずは魔法書のお店に行こうかな。ヒルダ様から給金も頂いたし、黒魔法を少し習得しようと思うの」

「それは良い考えだ。いずれ必ず、役に立つよ」

 

 マリアはニコリと笑い、俺の手を取った。

 

「行きましょ。あっちよ」――

 

 そんなわけで俺は、マリアの買い物に付き合う事となったのである。

 俺とマリアは魔法書の店へと向かい、移動を始めた。

 すると、程なくして前方に、フリオニール達の姿が視界に入ってきたのであった。

 フリオニール達の周囲には、何人かの街娘が集っていた。

 反乱軍に入った期待の若手らしいので、唾つけに来たのかもしれない。

 

「おお、フリオニールはモテモテだねぇ」

「そうみたいね」

「フリオニールはイケメンだし、マリアは気をもむんじゃないか?」

「え、なんで?」

 

 マリアは首を傾げていた。

 

(あれ……マリアって、フリオニールとそういうシーンなかったっけ? あれは女海賊とだったっけ? ど忘れしてるわ)

 

 とりあえず、訊いてみよう。

 

「なんでって……フリオニールに気があるんじゃないの?」

「ないわよ。だって血は繋がってなくても、フリオニールは家族だもの。ガイもそうだし。言ってなかった?」

「いや、君の両親が、小さなフリオニールとガイを引き取って、育てたとは聞いたけど……」

「だからそういう事よ。私達は物心ついた時から、兄妹なんだから。そういう感情は流石にないわよ」

 

 ゲームではあまり気にしなかったが、よくよく考えると、設定上、確かに彼等は兄妹なのである。

 すとんと落ちる話であった。

 

「ふぅん、そういう事ね。勉強になったよ」

「そんな大袈裟な話じゃないわよ。さ、行きましょ」――

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