FINAL FANTASYⅡ 怪奇幻想譚    作:虚夢想

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ep11 カシュオーン

 

   [Ⅰ]

 

 

 翌日の早朝、ミンウと共にフリオニール達はサラマンドに向けて旅立った。

 フリオニール達なら、セミテの滝の奥深くにあるミシディルとやらを無事確保してくる事だろう。

 とはいえ、ゲームだと、あの素材を使った武器や防具は弱いのが気掛かりなところだ。

 中盤以降に出てくる強力な武具の前には、霞んでしまうからである。が、兵士達へ大量供給する武具用素材だと考えれば、今よりは優秀なのかもしれない。

 戦争はやはり、数の力が大事だからである。

 まぁそれはさておき、俺はフリオニール達を見送った後、なぜかヒルダ王女に呼び出されていた。

 嫌な予感はしたが、俺は今、アジトの会議室にやってきたところである。

 

「ヒルダ王女、おはようございます。今しがた、使いの者より連絡を頂きましたので、馳せ参じました。それで、話というのは何でしょうか?」

「カザマ殿、貴方は凄腕の戦士だそうですね。フリオニール達から聞きましたよ」

 

 また面倒な雰囲気だ。

 反乱軍への勧誘だと思うが、適当に断ろう。

 

「そんな大層な者ではありませんよ。それに私は、あまり戦いは好きではありませんのでね。あくまでも護身用の術とお思いください」

「そうですか。ですが……この街で過ごすには何かと入り用でしょう。昨日、報酬として渡したギル程度では、貴方も心許ない筈。それに私も、我が国の民でない貴方に、無理に反乱軍へ入れとも言えません。ですので、その腕を見込んで頼みがあるのです」

「頼み?」

 

 また妙な事を言ってきた。

 要は仕事を依頼したいという事だろう。

 

「ここより北の地には、どの国にも属さない独立した地域があるのを知っておりますか?」

「独立した地域?」

 

 初めて聞く話だ。

 

「サラマンド・ポフト・バフスク……この3つの大都市の連合の事です。フィンやカシュオーンとも親交が厚く、我等とも友好な関係を築いておりました。ですが、今から1年前、帝国は都市連合に侵攻し、その1つであるバフスクを攻め落としたのです。そこでは今、空を飛ぶ巨大な戦艦が建造されております。我々は大戦艦と呼んでいますが、それが完成したら、帝国は空からの攻撃手段を持ってしまう事になるのです」

 

 なんで俺に大戦艦の話をするんだ。

 それはフリオニール達の役目だろう。

 

「それは大変ですね。で、頼みとは?」

「貴方にお願いしたいのは、バフスクへ行き、大戦艦の弱点を探ってほしいのです。マリアから聞きましたよ。貴方は非常に冷静で機転が利き、敵地に潜入するのが上手だそうですね。マリアが雄弁に、貴方の事を語っておりましたから」

 

 マリア、余計な事を喋り過ぎや。

 今度会ったら、忠告しとこう。

 次やったら、抱きしめるだけじゃなくて、胸を揉みしだいて、インサートするぞって。

 

「買い被り過ぎですよ。そんな事は全然ありませんから。それに、そもそも飛空船は、太陽の炎と呼ばれるモノを動力としている乗り物と聞きます。飛ばせたくないなら、そこを制御不能にすればよいだけでは? 太陽の炎は制御が難しく、相当な技術が必要だそうです。ですので、それ以外の弱点はないと思いますよ。ま、反乱軍が同等の大戦艦を持っているのなら、話は別ですがね」

 

 ヒルダ王女は目を大きくした。

 

「え? 太陽の炎……そういえば、ミンウからその話を聞いた事があります。太陽の炎とは恐らく、カシュオーン城の1階で燃え盛る、あの炎の事ですね。ちなみに貴方は……飛空船の構造について知っているのですか?」

「知りませんよ。そういう話を聞いた事があるだけです。飛空船に詳しい人物に訊いたらどうでしょうか?」

「となると、その昔、我が国の白騎士団団長をしていたシドという男しかおりませんね。これについては、私の方で調査してみましょう」

「その方が良いかと。他に話はありますか? ないなら、私は……」

 

 と、俺が言いかけたところで、ヒルダ王女はそれを遮ってきた。

 

「お待ちください。では、カザマ殿にお願いがあります」

「なんでしょう?」

「今の話が本当ならば、恐らく今後、太陽の炎が必要になると思います。この街にゴードンというカシュオーンの王子がおります。彼を説得して、太陽の炎を持ち帰ってほしいのです」

「ええ? 私がですか? 他の者に頼んだ方がよいのでは?」

 

 おいおい、なんかイベント前倒しになってるぞ。

 フリオニール達にやらせろよ。

 

「太陽の炎はエギルの松明というモノでないと、炎を移せないと聞いた事があります。エギルの松明はカシュオーン王家のモノでないと在処はわかりません。しかも、カシュオーン城は今、扉に封印がされており、一族の者以外では開くことは出来ぬ状況と聞きます。ですので、カシュオーンの王族の助けがどうしても必要なのです」

「ならば、この街の水路の付近で、毎日塞ぎ込んでるゴードン王子に直接言えばよいのでは?」

「私が言って聞くなら、もう既に彼は反乱軍として行動しております。戦地から逃げ帰ってきたりはしませんよ。ですが、貴方のように武に秀でた者なら、説得に応じるかもしれません。お願いできませんか?」

「ガルテアの湖で保護された事に関しては感謝してますが、この仕事は受けたくないですね……ちなみに、報酬は如何ほどを考えておられるので?」

「危険な任務なので、報酬は50000ギルで、どうですか? 最高級の秘薬を買えるくらいのギルです。これだけあれば、長きにわたってこの地で過ごせるでしょう」

 

 さてどうするか。

 50000ギルもあれば、確かに生活には困らないだろう。

 だが、俺はギルではなく、帰る為の情報が欲しい。

 ポールが言ってたフィン城の書庫とやらも気になる。

 とりあえず、取引してみよう。

 

「50000ギルねぇ……それでは足らないな」

「では幾らが欲しいのです?」

「ギルはその額で良いですが、私が欲しいのはそれだけではありません。私はガルテアの湖にある月の女神の祠について色々と調べたい事があるのです。つまり、何を言いたいのかというと……フィン城が解放された暁には、城にある書物等の文献の数々を自由に読ませて頂きたいのです。どうでしょうか?」

「書物? それは構いませんが……フィン城が解放されるかどうか、保証はできませんよ。良いのですか?」

「ええ、確かに、今はまだ無理でしょうね。ですが……潮の目とはいつ変わるか、わからぬモノ。何れ、その時が来るやもしれませぬので。さて……では契約成立という事で、この件はお引き受けしましょう」

 

 ヒルダ王女は安堵の息を吐いた。

 

「本当ですか! 引き受けて頂き、ありがとうございます。しかし……変わったお方ですね、カザマ殿は。良き報告を待っております」――

 

 

   [Ⅱ]

 

 

 ここはカシュオーンの森の奥深く。

 何を思って、カシュオーン王家はこんな森の中に王朝を築いたのかわからないが、あまりに進みづらい僻地である。

 おまけにここは一応、カシュオーンへ続く森の街道らしいが、国が滅んでから結構経過してるのもあり、手入れされてない雑木が多い。その為、道に飛び出た蔓や枝が服に引っ掛かりまくりだ。

 おまけに薄暗くて、陰気な感じになる森なのである。

 俺はそんな森に嫌気が差していたが、さらにイライラする存在が前にいるのであった。

 それは勿論、案内人であるカシュオーンの王族である。

 言わずと知れたカシュオーンの第二王子、ゴードンだ。

 コイツは本当に臆病で、何か物音がしたくらいで木の陰にすぐ隠れ、頭を抱えて塞ぎ込むのである。

 ある種のパニック症候群ともいえる症状を持つ男であった。

 今も魔物を見て、木の陰に隠れているところだ。

 

「はわわわ……魔物だァァ!」

 

 前方には腐臭漂うゾンビと、血を吸う茨の化け物バンパイアソーンがいる。

 ゴードンはさっきからずっと、こんな感じなのである。

 大した敵じゃないので、俺は炎の弓と剣、そして、ケアルの魔法書でなぜか得られたテレキネシスモドキを駆使して、コイツ等を殲滅していった。

 ちなみに、テレキネシスのような力はかなり効果的だった。

 敵に念じて使えば、動きを制限する事ができるからだ。

 自分に使えば、身体能力を向上させることも可能なのである。

 とはいえ、今はまだ熟練度が低いのか、そこまで飛躍的でもない。

 だが、汎用性の高い力ではあるので、極めれば、なかなか使えそうな魔法であった。

 まぁそれはさておき、戦闘も終わったので、俺はゴードンに呼びかけた。

 

「おい、第二王子! いつまで隠れてんだよ! 終わったから出てこい!」

 

 弱々しく、木陰からゴードンは顔を出した。

 スコットに似てイケメンだが、弱々しい。

 一応、槍を装備しているが、俺は一度も戦いで使ってるのを見た事がない。

 この槍は奴にとって、疲れた時用の杖なのである。

 一度、性根を叩き直さんと駄目なようだ。

 ハ〇トマン軍曹並みの鬼のしごきが必要である。

 

「お、終わったのかい……君は凄いんだね。1人であれだけの魔物、全部倒しちゃうんだから」

「お前が臆病すぎるだけだ。なんで俺が1人で戦わなくちゃいけないんだよ! どうなってんだよ、お前……キンタマついてんのか、本当に」

「ごめんよ。一応、これでも男なんだよ」

「ったく……顔はスコットに似てるが、性格全然違うな、アンタは……」

「兄さんは武人だからな。僕にはそんな素質はないよ」

「そうやって、何でも自分で決めつけるからだよ。兄貴も言ってただろ、もっと自分に自信をもてと」

 

 実はゴードンを説得する際、俺はスコットに彼を引き合わせたのであった。

 なかなか首を縦に振らなかったので、最終手段を取ったのである。

 まぁそんなわけで、スコットの説得により、ゴードンは来てくれたのだが、予想以上の臆病っぷりで俺も驚いているところだ。

 ゲームじゃ、もう少し戦えた気がするが、なんじゃこりゃである。

 

「そうは言われても、自分が一番信用できないんだよ」

「ああ、もう……ポフトで飛空船乗るのケチるんじゃなかったよ。1500ギルをケチったお陰で、こんな目に遭うとはな」

 

 ヒルダ王女から着手金で10000ギル貰ったんだが、ちょっと慎重になりすぎたようだ。

 まぁそうなった原因は、魔法や装備をコイツの為に投資したり、回復道具の類を購入したりして、金を使った所為でもあるが、まさか、コイツがここまで使えない奴だったとは……。

 

「わかったよ……次は頑張るよ」

「次っていつだよ! その言葉、5回は聞いたぞ。ったく……で、後どのくらいなんだ、カシュオーン城は?」

「たぶん、もうそろそろだと思うよ」

「じゃあ日も傾いてきたし、行くぞ。こんな所で夜を迎えるのは御免だ」

「あ、ああ、そうだね。でももうちょっと休んだ方が……」

 

 俺はそこで握り拳を作り、ゴードンに見せた。

 

「僕は君が泣くまで、殴るのをやめない。それでも、いいか?」

「よし、行こう」――

 

 俺達は移動を再開した。

 ゴードンの案内で森の街道を暫く進んで行くと、俺達は開けた場所へと到着した。

 そこは木々もなく、見通しの良い緑豊かな平地であった。

 そして、付近にはそこそこ大きな湖があり、その中央には白く美しい西洋風の城が佇んでいたのである。

 絵になる美しい光景だが、今からする任務を考えると気が滅入るところである。

 

(なんで俺はこんな所に来てんだ……やっぱ断ればよかったかな。まぁでも、帰る手掛かりを得る為だ。やるしかないか……このアンポンタンと)

 

 城の上空には、飛び回る魔物らしき姿があった。

 見るからに良い事なさそうな気配である。

 

「アレがカシュオーン城だよ。国が滅びて2年が経過してるから、中がどうなってるか、僕もわからない。恐らく、魔物だらけだよ。それでも行くのかい?」

「行くんだよ。お前も帝国が憎いなら、少しは意地を見せろ。それと、せっかく魔法を幾つか覚えさせたんだから、ちゃんと使え。そして逃げるなよ、いいな?」

「わ、わかったよ」

「逃げたら、俺がお前をシバくからな」

 

 さてどうなる事やら……。

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