FINAL FANTASYⅡ 怪奇幻想譚    作:虚夢想

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ep12 エギルの松明

 

   [Ⅰ]

 

 

 カシュオーンの堅牢な城塞門を潜ると、そこは城下街であった。

 ゲームと違い、城の外周部分は街になっているようだ。

 だが、完全に廃墟となっているので、人がいたという痕跡のみ残っている。

 街の中には埃被る白骨化した遺体が幾つもあり、その周囲には破壊された木製の椅子や机、生活用品を入れていたであろう壺や網カゴが散乱していた。

 パラメキア軍の侵攻の爪痕が色濃く残る街であった。

 滅ぶ前はそこそこ賑わっていたのだろう。

 侵攻後はパラメキア軍もほったらかしのようである。

 その姿は無残の一言であった。

 ゴードンはその様子を見て、暫し呆然と立ち尽くしていた。

 

「カシュオーンがこんな事になっていたなんて……パラメキアの侵攻があって以降、初めてきたが……もう以前の姿は見る影もない。私達の国はもう滅んだんだね……悔しいよ。なんでこんな事になったんだろう……パラメキアが憎い。でも私は無力だ……」

 

 ゴードンはがっくりと肩を落とし、悲し気にそれらを眺めていた。

 生まれ故郷の無残な姿を見たならば、こうなるのも無理はない。

 

「ゴードン……悲しんでるところ悪いが、先を進もう。我々の任務は太陽の炎を持ち帰る事だ。それがゆくゆくは、帝国へ打撃を与える事になる。それを忘れるなよ」

「ああ、そうだね。行こう、カザマさん」

 

 俺達は廃墟の街の大通りを奥へと進んでゆく。

 その先は、この国の王がかつて住んでいた居城、カシュオーン城であった。

 壁面の至る所に生々しい戦火の痕や草の蔓が巻き付いてるが、無人にしとくにはもったいない白く美しい城である。

 

(カシュオーン城か……ゲームでは結構複雑で面倒くさい城だったよな。本来は女神のベルを手に入れてから来るところだが……なんでこんな事になったんだか。口は災いの元とはよく言ったもんだよ。とはいえ、ゲームと違う展開だから、女神のベルは必要なくなったかな。ン? 女神……いや、考えるのは後にしよう。まずはエギルの松明を探さないとな)

 

 程なくして俺達は、カシュオーン城の大きな玄関扉の前へとやってきた。

 両開きの大きな赤い扉で、その中央にはカシュオーン王家の印である太陽を象った紋章が描かれていた。

 

「カザマさん、これが封印されている扉だ。ちょっと待っててくれるかい」

「え? ここからなのか? ゲームじゃ中だったのに……」

「へ、ゲーム?」

「いや、なんでもない……君に任せるよ」

 

 危ない危ない。もう余計な事は言わないようにしよう。

 というわけで、ここからはカシュオーン王族の出番である。

 ゴードンは扉の前に行き、槍の先で親指の腹を少し切った。

 恐らく、封印を解くのに王族の血判が必要なのだろう。

 

「我が名はゴードン・ジョシュア・フィンドナ・オン・カシュオーン。カシュオーン王家の第二王子なり。ここにその証を掲げる」

 

 ゴードンは血が出る親指を扉に押し付けた。

 するとその直後、扉の紋章は淡く輝いたのだった。

 ゴードンはそこで扉に手をかけ、ゆっくりと開いていった。

 

「これで封印は解けた。行こう」

 

 俺達はカシュオーン城の中に足を踏み入れた。

 中はかなり広いフロアで、壁面に彫像や絵画がある所為か、美術館のような装いである。

 また、ここはパラメキアの侵攻の影響が少なく、そこまであらされた形跡はなかった。

 とはいえ、幾つかの彫像は倒れてるので、全くの無傷ではないのだろう。

 そして、フロアの中央には聖火台のような厳かな祭壇が設けられており、今も静かに紅蓮の炎が燃え盛っているのだ。

 それは不思議な炎であった。ユラユラと炎が揺らめいているにも拘らず、モノが燃えるニオイがまるで無いからだ。

 ファンタジーらしく、普通の炎じゃないのだろう。

 

「これが太陽の炎だよ。だが……このままでは持ち出せないんだ。エギルの松明を探そう。この城内に必ずある筈だから」

「ゴードン、ちなみに訊くが……在処は思い出せないか? スコットも知らないと言ってたが……」

「すまない。こればかりは僕もわからない。おまけにこの城は、僕が言うのも何だが、結構複雑なんだよ。だから……一緒に探すしかないよ」

 

 ゲームと同じく、やはり知らないようだ。

 スコットも知らないのが困ったところだが、彼等は王族だし、そういう国宝管理は配下の者達がしていたのだろう。

 

「仕方ない。じゃあ行くぞ。まずはどこからだ」

「あの左奥の扉からだ。行こう」――

 

 

   [Ⅱ]

 

 

 俺とゴードンはカシュオーン城の中を探し始めた。

 城内は骸骨剣士やゾンビのようなアンデッド系の魔物や、知性を感じない粗暴な野人系の怪物ばかりであった。

 ゲームだと骸骨剣士はレイスやシャドウという名前だった気がする。野人はオーガだったか。まぁ何れにしろ、日常会話が期待できないタイプの魔物ばかりであった。

 それもあり、ある意味、お化け屋敷状態なのである。

 そして、俺達は今もそんな奴等と出くわし、絶賛戦闘中なのであった。

 

「ゴードン、死体の魔物は炎の魔法が有効だ。それ使って援護しろ。魔力回復薬は一応、買ってあるから」

「わ、わかってるよ」

 

 俺はフォース……じゃなかった、念動力を使い、敵の動きを少し封じながら、炎の弓と剣での応戦をする。

 まぁそんな感じで戦いを進めてゆくのだが、ここでアクシデント発生である。

 最後の1体である紫色のオーラを放つ骸骨剣士に向かい、両手で力を籠めて一刀両断したら、長剣が折れてしまったのだ。

 前々から刃毀れもしかけてたので、嫌な予感はしてたが、ここにきて寿命が来たようだ。

 パッキーンってな感じである。

 

「あ~あ……折れたな。やっぱ粗悪な鉄を型に流し込む量産品の片手剣だと、こんなもんか。両手で扱うような強度がないんだろうな」

「ど、どうするんだい? この先まだまだ敵はいるよ」

 

 ゴードンは心配そうに、折れた剣を見ていた。

 コイツは今、自分の護衛者としての戦力ダウンが心配なんだろう。

 

「仕方ない。ゴードン、槍を貸してくれ」

「え? ああいいけど」

 

 俺はゴードンの槍を借り、試しに軽く演武をしてみた。

 日本の十文字槍しか使った事はないが、まぁなんとかなるだろう。

 

「この程度の重さや長さなら、何とかなるか……」

「カザマさんは槍の腕も凄いんだね。こんなに素早い槍裁き初めて見たよ……何者なんだい?」

 

 忍びは一通りの武芸に、ある程度通じている。

 武士で言う武芸十八般は当然の事、それに加えて火術等の知識も豊富なのである。

 まぁ現代では使う事がない廃れた技術なので、今となっては伝統としての技術継承ではあるが。

 

「そんな事はどうでもいいよ。さ、行くぞ、第二王子」

「あ、ああ」

 

 俺達はその後もカシュオーン城を探索していった。

 その途中、ミシディルの盾や、ミシディルの剣といった武具や、ゴールド聖闘士のような金色の盾や鎧を発見したりもした。

 そして、そこで装備を整えたりしつつ、俺達は城内を隈なく見ていったのである。

 戦闘も大変だった。特に、アダマンタイマイと思われる緑色のデカい亀と遭遇した時は、倒すのに苦労もした。が、ゴードンの氷の魔法と、俺の弓の腕で奴の目を射抜き、なんとか事なきを得たのである。

 物理攻撃が厳しい敵は、ちょいと辛いところだ。

 とはいえ、煌びやかな水晶の盾をその亀から手に入れたので、良しとしよう。

 また、ゴードンも戦いの中で少しづつ自信がついてきたのか、魔法攻撃に関しては躊躇なくやってくれるようになった。

 たぶん、魔物と距離感があるからだろう。

 ちなみに俺は今、ミシディルの剣を装備しており、槍は彼に返したのだが、それを使うところをまだ見た事はない。

 魔物とガチンコで戦う事は、まだ無理みたいである。

 まぁそれはさておき……いよいよ最後の部屋だ。

 

「あと、見てないのはこの部屋だけだね。じゃあ……扉を開けるよ」

「ああ、行くぞ」

 

 俺達は扉を開き、部屋の中へと入った。

 するとそこは10畳ほどの小部屋であった。

 奥には祭壇があり、金色や赤色の厳かな装飾が施された箱が置かれていたのである。

 だがその手前には、炎を纏う化け物が通せんぼするかのように立ち塞がっていたのであった。

 

「あの化け物がいるって事は……アレがそうなんだろうな」

「ああ、恐らくそうだよ。兄さんも言っていた……エギルの松明を守る為に、王である父は秘術を使い、祭壇に炎の呪いをかけた筈だって……しかも、呪いを解く方法は、それに打ち勝つ以外ないそうだよ」

「面倒が続くな、ったく」

 

 エギルの松明を守る炎の魔物……レッドソウル登場である。

 

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