FINAL FANTASYⅡ 怪奇幻想譚    作:虚夢想

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ep13 赤い番人

 

   [Ⅰ]

 

 

 最後の小部屋に入った俺達は、祭壇の前で立ち塞がる炎の魔物に近づいた。

 レッドソウル……ゲームだとコイツは少々、厄介な魔物だった。

 なぜなら、基本的に魔法が効かないからである。

 ファイアやブリザド、そしてサンダーも、全て吸収してしまうのである。

 その為、物理攻撃で倒す以外、方法がないのだ。

 恐らく、ここにいるコイツもそれに準じたモノに違いない。

 今まで俺が倒してきた魔物共は、既にそういう傾向があるからだ。

 

(さて……どうすっかな。コイツはゲームだと、直接シバかないといけない魔物だった筈。仕方ない……ゴードンはあんま頼りにならんから、俺がやるしかないか。俺も幾つかの魔法を契約して、念力の力はアップしてるし)

 

 そう……あれから黒魔法も試してみたが、俺は全然、魔法が使えないのである。

 その代わり、魔法を契約する度に、念力みたいな力が徐々に強化されてゆくのだ。

 わけがわからない現象だが、便利な力には変わりない。

 とはいえ、使うと異常なほど疲れるので、多用できないのが痛いところであった。

 たぶん、コレがMP消費というやつなのだろう。

 まぁそれはさておき、後ろでオドオドしているゴードンに俺は指示を出した。

 

「おい、第二王子。チビリそうになってるところ悪いが、攻撃魔法をコイツに使うなよ」

「え? ど、どうしてだい? アイツには氷の魔法が効きそうなんだが……」

「見た目に惑わされるな。コイツには恐らく、魔法が通じない。アンタは癒しの魔法と分身の魔法で、後方支援に徹してくれ」

「ま、ままま、魔法が通じないだってぇ!」

 

 ゴードンはひきつけを起こすかのように、大きく仰け反り、後ずさった。

 嫌な予感がしたのは言うまでもない。

 

「いいから、言われた通りにしろ!」

「わわわ、わかったよ」

 

 そんなやり取りをした後、俺達は少しづつ、奴に近づいた。

 だが近づくにつれ、燃え盛る炎の中心に、黒い球体があるのを俺の目は捉えたのである。

 もしかすると、コレがコイツの心臓部なのかもしれない。

 まずは弓でココを狙って様子を見てみよう。

 程なくして、俺達は奴の付近へと差し掛かる。

 するとそこで異変が現れたのであった。

 なんと、炎に目と口が現れ、唸り声を上げると共に、奇妙な言葉を発したからだ。

 

「グォォォ! ワレハ……ココヲシュゴスル……ホノオノセイレイ……ヒキカエスガヨイ!」

 

 番人っぽい口振りである。

 

「へぇ、引き返さなければ?」

「ナラバ、ヤケシヌガイイ!」

 

 炎は一気に大きく燃え上がり、俺達に向かい、襲い掛かってきたのであった。

 この突然の豹変に、俺達は炎の魔法を喰らってしまった。

 だが、素早く避けた事もあり、俺はそこまでダメージはない。

 しかし、ゴードンはそういうわけにはいかなかった。

 

「ギャァァ……アツイアツイィィ……もう嫌だぁァァ」

 

 炎が直撃したのだった。

 だが、魔法に対して防御を上げる装備をさせたので、そこまで酷い火傷は負ってない筈だ。

 ちなみにゴードンの装備は、槍・銀の胸当て・黄金の盾で、俺はミシディルの剣と銀の胸当て、それと、アダマンタイマイから手に入れたダイヤシールド? かどうかわからんが、半透明でキラキラとした水晶の盾、それと背中にある炎の弓である。

 銀の胸当ては、ここに来る途中、夢遊病住民の街であるバフスクへ寄った際、購入したシロモノだ。

 ゲームでは序盤にお世話になった、軽くて優秀な防具である。

 見た目は、心臓あたりまでを覆う、薄くて軽い銀色の胸当てだ。

 

「ゴードン、すぐに癒しの魔法で回復しろ。また次が来るぞ!」

「ヒィィ……わわ、わかったよ」

 

 ゴードンはかなり苦しそうだったが、なんとか気力を振り絞り、自分に癒しの魔法を掛けていた。

 とりあえず、コレで凌いで倒すしかない。

 さて、反撃に移るとしよう。

 俺はまず弓に持ち替え、奴の中心にある黒い球体を狙い、矢を射った。

 次の瞬間、矢は球体に命中する。

 するとその直後、炎の顔は苦しそうに歪み、呻き声を上げたのであった。

 ゲームだと、中盤以降の武器である炎の弓は、攻撃力がかなりある。

 なので、相当なダメージを負ったに違いない。

 

「グギィィィィ……キサマァァァ……オノレ!」

 

 奴は歪んだ表情のまま、また広範囲に炎を放ってきた。

 だが今度の炎は避けれそうにない。直撃である。

 

「クッ……不味い」

「も、もうもう嫌だぁァァ!」

 

 俺とゴードンに強力な炎が襲い掛かる。

 咄嗟にダイヤシールドで防いでみたが、結構キツい火力であった。 

 皮膚が焼け付くような感じで、癒しの魔法で治療しないと、全身火傷を負いそうである。

 俺はそこでゴードンに指示を出そうとした。が、しかし……ゴードンは部屋の隅で、亀のように身体を縮こませ、必死に自分へ癒しの魔法を掛け続けていたのであった。

 とても俺の回復を頼めそうにない感じだ。

 もうゴードンは、完全に戦意喪失状態である。

 

(こりゃあゴードンの奴、アテに出来んわ。チッ……しゃあない。さっき矢を射った感じだと、あの黒い球体が弱点なのは間違いない。ならば、念力を利用して身体能力を上げ、一気にカタをつけたほうが良さそうだ。炎の魔法に突っ込んで、奴の懐に潜り込んでやろうじゃないか! 踏み込むべきところで、踏み込まねば……勝ちはない!)

 

 俺は覚悟を決め、ミシディルの剣を抜くと、脇に構えながら、奴に突進した。

 そして、俺はそこで念動力の力を上乗せして、居合の如く、素早い斬撃を奴に繰り出したのだ。

 その刹那、球体は豆腐の如くスパッと両断される。

 魔物の顔がムンクの叫びのように大きく歪んだ。

 

「グギャァァ……アァァァァァ! カラダガキエテユクゥゥゥ!」

 

 その直後、レッドソウルは断末魔のような叫びと共に、消え去ったのであった。

 どうやら、これで終わりのようだ。 

 最後はかなり火傷を負ったが、これで良しとしよう。

 俺はゴードンに振り返った。

 ゴードンは驚きの眼差しで俺を見ている。

 

「君……一体、何者だ。今、何をしたんだ? 魔物を斬ったのか? み、見えなかったよ。凄まじい速さの剣捌きだった……」

 

 パニクってたが、意外にも戦いは見ていたようだ。

 

「なんだ、見てたのか。ビビッて部屋の隅で漏らしてたのかと思ったよ。まぁそれより、癒しの魔法を頼むわ。奴の魔法を受けたんでな。最後にそれくらいはしてくれよ、ゴードン」

「あ、ああ、わかったよ」

 

 ゴードンの癒しの光が俺に降り注ぐ。

 それは心地良い光のシャワーであった。

 火傷を負った皮膚から痛みと赤みが消えてゆく。

 素晴らしい治癒効果であった。

 それと同時に、羨ましい気持ちになったのは言うまでもない。

 やはり、自分には出来ない芸当だったからだ。

 

「ふぅ……助かったよ。俺はなぜか、魔法を習得出来ないんでな」

「え? そうなのかい? 意外だね……」

「意外? なぜだ?」

「普通は契約さえすれば、誰でも使えると思うんだよ。私もそこまで魔法に詳しいわけではないけど……」

 

 ミンウも首を捻っていたので、俺だけの現象なのかもしれない。

 俺はこの世界の住民じゃないから、恐らく、ここのシステム通りにいかないんだろう。

 

「誰でも、ね……まぁいい。それじゃあ、あの箱を開けるぞ」

「あ、ああ」

 

 傷が回復したところで、俺とゴードンは宗教的な祭壇の上にある金色の箱を開いた。

 するとそこには、赤い杖のようなアイテムが納められていたのである。

 それは炎のように赤い杖で、先端には金色の厳かな装飾が施され、なんとなく、オリンピック聖火リレーのトーチみたいなアイテムであった。

 ゴードンはそれを見るやいなや、大きな声を上げた。

 

「カザマさん、それだ! それがエギルの松明だよ! さぁ一刻も早く、コレに太陽の炎を移して、アルテアに戻ろう! 私はなるべく早く、ここから出たいんだ! ヨカッタァ、見つかったよ。あるかどうか不安だったんだ。さぁ早く帰ろう。すぐ帰ろう。やれ帰ろう。もう我慢の限界なんだよ! こんな魔物だらけの城、自分の家でも嫌なんだよ!」

 

 ゴードンは興奮した目で、そうまくし立て、エギルの松明をガン見していた。

 

「おいおい、落ち着け。どうしたんだ急に」

「落ち着いてられるか! 早く一階に行くんだよ! 何してんだよ! 早く帰るんだよ! とっとと帰んだよ! 帰るんだってばよ! もう嫌なんだよ! 森のチョコボで帰るんだよぉォォ! ウガァァァ!」

 

 ゴードンの目は血走っていた。

 目的のモノが見つかったので、パニックを起こしてるようだ。

 

(コイツぁやべぇ……目が完全にイってやがる。緊張の糸が切れて、おかしな心理状態になってるに違いない。とりあえず、正気に戻そう)

 

 俺は問答無用で、強烈なビンタを一発お見舞いしてやった。

 

「とりあえず……闘魂注入ゥゥゥゥ!」

「ドヴェェェ!」

 

 ゴードンは妙な奇声と共に、勢いよく床に倒れ込んだ。

 すると程なくして、ゴードンはゆっくりと起き上がり、ポカンとしながら周囲をキョロキョロと見回したのである。

 そこで俺と目が合った。

 

「あれ……ここはどこだい? なんか懐かしい感じがするぞ。あ、貴方は……そうだ、カザマさんだね。知っているよ、スコット兄さんを助けてくれた人だ。今日はどうしたんだい?」

 

 闘魂注入によって、記憶も少し飛んでしまったようだ。

 まぁとりあえず、コレで良しとしよう。

 その後、俺達は太陽の炎を回収し、この城を後にしたのであった。 

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