FINAL FANTASYⅡ 怪奇幻想譚    作:虚夢想

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ep14 大きな鳥

 

   [Ⅰ]

 

 

 カシュオーン城を後にした俺達は、北のバフスク方面へ向かわずに森を南下した。

 本当は北に向かわねばならないのだが、さっきパニクっていたゴードンが懐かしい事を言っていたからだ。

 それは勿論、FFでは定番の乗り物なチョコボである。

 チョコボ……初登場はFF2からだそうだ。

 まぁ要は本当にいるのかどうか、興味本位からの行軍であった。

 ちなみにゴードンは噂でしか聞いた事がなく、実物は見た事がないそうだ。

 ただ、カシュオーンにいる者達から、森の南にいるという噂は聞いていたそうである。

 火のないところに煙は立たないので、これは期待大だ。

 

「ところでカザマさん、太陽の炎を使って大戦艦を破壊するって聞いたんだけど、そんな事ができるのかい?」

 

 森の中を歩いていると、ゴードンがそんな事を訊いてきた。

 信じてないようだ。

 

「さぁな。ヒルダ王女はそう考えてるんじゃないの」

「でも、破壊するといってもね……もしかして太陽の炎を使って大戦艦に放火するのかい? それじゃあ、パラメキア兵にすぐ見つかるし、鎮火させられるよ。それに放火なら、炎の魔法を使った方が早いと思うんだけどね」

 

 コイツは飛空船の原理を知らないのだろう。

 無論、俺も知らん。

 ゲームの設定を知ってるだけだ。

 

「放火じゃねぇよ。大戦艦の動力源をぶっ壊すつもりなんだろ。シドの飛空船と同じで、太陽の炎で動いてるらしいからな。しかし、やけに食いついてくるな。もしかして、大戦艦をぶっ壊しに行きたいのか?」

「ちょ、ちょっと、やめてくれよ、そういう言い方! そういう意味じゃないよ。困るなぁ……」

 

 ゴードンは慌てて否定してきた。

 やはり、現場に行くつもりはないようだ。

 

「だと思っていたよ。それはそうと、ゴードン……女神のベルって知ってるか?」

「女神のベル? 女神の鍵の事かい? それなら知ってるよ」

 

 また微妙に違う名前が出てきた。

 

「へぇ……女神の鍵か。で、どういうものなんだ?」

「女神の鍵は、カシュオーン城の封印を解く鍵だよ。王族以外の者が封印の扉を開くには、それしか方法が無いからね。ちなみにカシュオーンの伝承によると、美しい音色を出す鐘だそうだ」

「ふぅん……なるほどね。ちなみに、他の伝承とかあるの?」

「他の伝承? そうだね……そういや言い伝えでは、女神の鍵を使うと、封印そのものが完全に解かれるらしいよ。それと、北にある雪原地帯の洞窟に眠っているという伝承もあるね。後は……どこかにある女神像の前で女神の鍵を鳴らすと……ええっと……なんだったか……」

 

 これは聞き捨てならない話だ。

 なんとなく、重大な事のように思える。

 

「鳴らすと、どうなるんだ?」

「ええっと……すまない、カザマさん。忘れちゃったよ。スコット兄さんにでもまた聞いてみてくれ」

「忘れたのかよ……期待して損したわ」

 

 肝心なところで使えない奴であった。

 とりあえず、アルテアに戻ったらスコットに確認してみよう。

 しかし、この世界は微妙にゲームと名前が違う。

 おまけに、ゲームでは気にならなかったが、ここでは女神という単語が、妙に耳に付くのである。

 月の女神の祠、街の女神像、女神のベル、これは果たして偶然なのだろうか?

 前者はともかく、他の2つはゲームじゃ特に関係性はなかったと記憶している。が、なんとなく、無視してはいけない事のように、俺は感じるのであった。

 とはいえ、今は判断材料が少なすぎるので、女神の鍵に関しては、とりあえず保留にしておこう。

 それよりも今はチョコボだ。

 

「おい、第二王子、結構南に来たけど、チョコボの森って、どの辺だ? 聞いてないのか?」

「それは流石に私もわからないよ。私はこう見えて王族だし、パラメキアが攻めてくる前は、そんなに外に出たことなかったからね。言っとくけど、私が聞いたのは噂なんだよ。それに、行こうと言いだしたのは君だからね。君が強引に私を連れてきているんだよ。このカシュオーン王家の王族たる私をだ!」

 

 俺に慣れてきたのか、イラつく事を言ってくるようになった。

 ゲームでは多少、同情する事もあったが、実物はシバいてやりたい奴である。

 たぶん、兄のスコットが生きていたので、ゲームのような前向き思考じゃなくなったんだろう。

 俺はもしかすると、余計な事をしてしまったのかもしれない。

 あまり調子に乗るようなら、もう一度、闘魂注入してやるとしよう。

 

「はいはい、悪かったよ。元カシュオーン第二王子のゴードンさんよぉ。嫌なら、1人で帰ってもいいんだぜ。俺1人でもなんとかなるから」

「やだなぁ、カザマさん。もしかして怒りました? そういう意味で言ったんじゃないよ。やだなぁ、茶目っ気ってやつですよぉ。困ったなぁ……また変なふうに捉え……って、オワァァァァ!」

 

 するとその時であった。

 俺達の眼前を黄色くてデカい何かが、凄い勢いで横切って行ったのである。

 それはまるで、競走馬のように大きい何かであった。

 

「か、カザマさん……今の何! ねぇ、今の何! パラメキア帝国の新しい魔物なのかい! はわわ……」

「知らねぇよ。でも……もしかするとアレがそうかもな。追ってみよう」

 

 一瞬だったが、嘴のようなモノが見えたので、なんとなく鳥のように思えたからだ。

 

「えぇ……行くのかい?」

「俺は行く。お前はここにいればいいぞ。1人で帰ればいい」

「い、いい、行くよ。行くってば!」――

 

 俺とゴードンは、デカい何かが走り抜けた方向へ、慎重に歩を進めた。

 そして暫く進むと、俺達は開けた場所に出たのである。

 そこは背の高い木々が殆ど無く、イネ科の雑草に覆われた緑のブッシュ地帯であった。

 その為、日の光もよく届く。

 陰鬱なこの森の中で、解放感が若干得られるところだ。

 

「へぇ……この森にこんな場所があるんだな」

「そうだね……あ、そういえば、城の者達は森にある木々の生えていない場所にチョコボがいると言ってたよ。ここがそうなのかもしれない」

「かもな……て!? そこに何かいる!」

「なんだって!?」

 

 やや離れた所にある茂みが、ガサガサと揺れていた。

 するとその揺れは、こちらに向かって移動してきたのである。

 そして、次の瞬間! 

 

「クエェェ!」

 

 大きな奇声と共に、馬鹿デカい黄色い鳥が、俺達の前に姿を現したのであった。

 それはダチョウよりも大きく、馬のように大きな黄色い鳥であった。

 黄色い鳥は俺達を見るや、威嚇するように翼を広げだした。

 どうやら、コイツで間違いないだろう。

 

「コイツが恐らく、チョコボだ。捕まえるぞ」

「つ、捕まえるって言ったって、こんな大きな鳥どうやって……」

「そんなもん、こうするに決まってんだろ!」

 

 俺はすぐさま念力を使って高くジャンプし、鳥の背に一気に飛び乗った。

 だがしかし、チョコボは俺を振り落とそうと、左右に大きく身体を振ったのである。

 俺は負けじと首に手を回し、それを踏ん張った。

 すると程なくして観念したのか、鳥は「クウクウ」と鳴きながら、徐々に大人しくなっていったのだ。

 俺は馬をあやすように、鳥の首を撫でてやった。

 

「どうどうどうどう……フゥ……観念してくれたようだ」

 

 そうやって少し落ち着かせたところで、俺は軽く調教してみる事にした。

 

「さて……じゃあ、ちょっと練習だ。まず、まっすぐ進んでみようか」

 

 俺は優しく首を叩き、前を指さした。

 すると意味が分かったのか、鳥は前へゆっくり進み始めたのである。

 ほうほう、なかなか賢い鳥のようだ。

 そんな感じでその都度指示を出すと、この鳥はそこへ方向転換してくれるのである。

 なんかよくわからんが、意思の疎通も、その内出来そうに思える鳥であった。

 

「君、凄いね……もう手懐けたのかい?」

 

 ゴードンはポカンとしながら俺を見ていた。

 

「まぁよくわからんが、言う事は聞いてくれそうだよ。さて、それじゃあ、俺は帰るかな」

「ちょ、ちょちょ、ちょっと待ってくれよ! こんな所に、私を置いていかないでくれ!」

「冗談だ。さ、お前も乗れよ」

 

 しょうがないので、手を差し伸べてやった。

 ゴードンは俺の手を取り、不安気にチョコボの背へ乗った。

 

「うわ……本当にデカいな、この鳥……振り落とされないか、ちょっと心配だよ」

「なら、ちゃんと捕まってろ、行くぞ」

 

 俺はチョコボを勢いよく走らせた。

 

「あわわわ、ゆゆゆ、揺れるぅ!」

 

 そしてゴードンの悲鳴が森に響き渡ったのだ。

 

 

   [Ⅱ]

 

 

 チョコボで森を抜けた俺達は、そのままポフト辺りまで行こうかとも思ったが、バフスクに寄ることにした。

 なぜ寄る事になったのかというと、それは俺の独断的判断によるものであった。

 というか、これから先、俺は帰る手段を探さないといけないので、ゲームのようなお使いイベントを整理する為でもあるのだ。

 まぁ要は、脱線してみる事にしたのである。つまり、原作破壊だ。

 そんなわけで、バフスク付近の平原で、俺達はチョコボから降りる事にした。

 

「さて降りるぞ」

「でも、降りると、チョコボはどこかに去って行くと聞いたよ……良いのかい?」

「良いよ、別に。コイツのお陰で、かなり早く移動できたしな。感謝しかない。さぁ自分の家に帰るがいい、それとこれは餞別だ」

 

 俺はチョコボの首を撫でた後、旅用の携行食である味気ないクッキーを食べさせてやった。

 するとチョコボは、それを見るや、「クェクェ」と嬉しそうに鳴き、むしゃむしゃと食べだしたのである。

 道中、コイツにあげたら、美味しそうに食べていたからだ。

 

「さてと……」

 

 俺はそこで、バフスクの街に視線を向けた。

 小高い丘の上に、建造中の大きな船が見える。アレが大戦艦だろう。

 

(昨日、バフスクへ寄った時にアイツがいたな。ダースベ……じゃなかった、ダークナイトがな。今も住民に催眠術を使って指揮をしているんだろう。ある意味、好都合だ。やるか……)

 

 俺はゴードンに視線を向けた。

 

「さて……それじゃあ、俺は行くわ。お前はどうする?」

「本当にやるのかい? 大戦艦を破壊なんて……」

「ああ、そうだよ。俺は今から大戦艦をぶっ壊す。お前も、ヒルダ王女の気を引きたいんなら、来るか? 道中言ってたじゃないか。好きなんだろ、ヒルダ王女の事?」

「ま、まぁね。でも兄さんが求婚してるからなぁ……そんなところに私が……」

 

 ゴードンは優柔不断モードになり、うじうじと面倒な表情になっていた。

 こういう奴は放っておくとしよう。

 俺は奴を無視し、街へと移動を始めた。

 

「じゃあな」

「ちょ、ちょっと、待ってよ! なんで君はそう性急なんだ!? もう少し考える時間をくれても良いじゃないか!」

「俺は無理にとは言ってない。それに……自分の事くらい、自分で判断しろ。生きるという事は決断の連続なんだ。時と場合によっては、直感に従って判断しなきゃならない時もある。判断が遅れれば、命取りになる場合もな。だから……結果として、カシュオーンは滅んだんだよ。今はフィンも危ないがな。というわけで、ゴードン……自分で決断しろ。俺からはそれだけだ」

「わ、わかったよ。私も行くよ」――

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