FINAL FANTASYⅡ 怪奇幻想譚    作:虚夢想

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ep15 バフスク

 

   [Ⅰ]

 

 

 ここはバフスクの街。

 この街は産業革命時代の欧州を思わせる、赤レンガの建造物が多い街並みであった。

 ゲームではただの街だったが、この世界ではちゃんとプロフィールがある。

 港湾都市ポフトの東に聳えるバルク山脈。その麓に栄える工業都市という位置づけだ。

 以前、ヒルダ王女が言っていた北にある都市連合の1つである。

 ゴードン曰く、バポーサ通商都市連合というのが正式名称らしい。名前からして、EUみたいなモノなのかもしれない。

 人口もそこそこ多く、1万人以上はいそうである。

 また、炭鉱が近くにあるのもあり、鉄鋼業が盛んだそうで、街の至る所から黒い煤煙が上がっていた。

 その為、衛生的にあまり綺麗な街ではない。

 俺的には、どちらかというと、長居はしたくない街であった。

 恐らくパラメキア帝国は、大戦艦を建造する為、バフスクの工業力を目当てに攻め込んだのだろう。

 また、ここもご多分に漏れず城塞都市であり、人々は囲われた街の中で過ごしている。

 この世界は城塞都市が多いが、周囲に魔物が多いというのもあるに違いない。

 まぁそんなどうでもいい事はさておき、俺達はこの街に来て、今日で4日目である。

 情勢を探る為、少し様子を見ているところだ。

 ちなみに、バフスクの街は相も変わらず、夢遊病のように動く住民達だらけであった。

 虚ろな目で前を向き、ロボットのように行き来している。

 街の広場には、キャプテンと思わしき緑の兵士に加え、サージェントやソルジャーと思わしき青や茶色の鎧を着たパラメキア兵の姿があった。

 コイツ等は、住民達を監視する兵士である。

 今も羊飼いの如く、夢遊病具合を見てるところだ。

 というわけで俺とゴードンは、そんな住民達に混じり、虚ろな感じを演出しながら、適当に移動をするのである。

 ここ数日の調査の結果、夢遊病患者の如く街を徘徊するのが、一番怪しまれない移動法だと悟ったからだ。

 見回した感じだと、黒い甲冑に身を包むダークナイトと思わしき騎士は、今日はいないようだ。

 あの黒騎士はかなり目ざといので、正直いないのは助かる。

 見慣れない俺とゴードンに対し、夢遊病を装っても、少し疑っている素振りがあったからだ。

 

(ダークナイトみたいなのは今日はいないな……それにしても、どうやってこれだけの住民に催眠をかけたんだ? 目は虚ろだけど、店屋は普通に商売してるし、わけがわからん。やっぱ、魔法か、何かかな……まぁいい、とりあえず、街の様子をまずは探ろう。ゲームだと確か、地下道が大戦艦に通じてるんだったか……ン?)

 

 するとその時であった。

 細い路地裏に、1人佇む青い兵士の姿が視界に入ってきたのである。

 見た感じだと、ダルそうにしてるので、サボってるのかもしれない。

 俺はそこで名案がピコーンと浮かんだ。

 というわけで、行動開始だ。

 俺は虚ろな目のままその路地裏へ向かった。ゴードンも俺に続く。

 程なくして、青い兵士は俺に気付き、悪態を吐いてきた。

 

「おいおい、もしかしてハグレ住民か。ったく……夢の霧の効果が弱まってきたかな。新しく来た黒騎士団のお偉いさんに報告すっか」

 

 俺は虚ろな表情で兵士に近づくと、擦れ違いざまに首に手を回し、闇落としをした。

 

「な!? ウグッ……」

 

 ものの数秒で、兵士はグッタリと力が抜け落ちた。

 上手くいったようだ。

 戦国時代はこんな風に潜入してたんだろう。

 

「君……容赦ないね。一体、何をしたんだ?」

 

 ゴードンが小声で訊いてきた。

 

「気絶させただけだよ。さてそんな事より、コイツの鎧を脱がせるぞ」

「え? な、何をするつもりなんだ?」

「決まってるだろ、変装するんだよ。パラメキア兵にな」

「き、聞いてないよ……今日も下調べするんじゃないのか?」

 

 どうやらコイツは気楽にいたようだ。

 モノにはタイミングがあるという事を教えよう。

 

「誰がそんな事を言った? 今、街には、あの面倒な指揮官がいない。動くなら今なんだよ。お前の分もほしいから、もう1人分、確保するぞ」――

 

 

   [Ⅱ]

 

 

 俺とゴードンはパラメキア兵の身包みを剥がし、変装して大戦艦へと潜り込んだ。

 ちなみに、俺は青い帝国兵で、ゴードンは茶色い帝国兵だ。

 ゲームで言うならサージェントとソルジャーである。

 俺は探偵という職業柄、潜入はたまにするのであまり抵抗はないが、ゴードンは初めてなのか、かなりぎこちない感じだ。

 とはいえ不安なので、潜入する際、ゴードンには一応、こう言っておいた。

 

「お前がポカしたら、俺は見捨てるからな。だが、成功すれば、ヒルダ王女はお前を見直すはずだ。いや、それどころか……成功したら、ヒルダ王女はお前に靡くかもしれない。下手するとモノにできるかもしれんぞ。『ゴードン、貴方、こんなに勇敢だったのね……素敵……私を好きにして』なぁんて感じでな。だから、くれぐれも余計な事はするなよ。俺の言う通りに動け。いいな」と。

 

 するとゴードンは、緊張した面持ちでコクコクと頷き、こう告げたのであった。

 

「わ、私を好きにしてなんて……ヒルダはそんなこと言うかなぁ。でも、頑張ってヒルダに良いところを見せるよ! そして私に振り向かせて見せる!」

 

 頑張る方向性はともかく、理解はしてくれた事だろう。

 してなかったら、ガチで見捨てるつもりだ。

 そんな感じで潜入したわけだが、大戦艦へはゲーム同様、地下道を通って向かった。

 パラメキア兵達は下水道と言ってたが、この街は水洗便所がないので、ただの生活排水である。

 その為、臭い地下道だったのは言うまでもない。

 このイベントが終了したら、二度と来ることはないので、今は我慢だ。

 まぁそれはさておき、大戦艦は建造中ではあるが、ほぼほぼ完成してるようであった。

 全体的な見た目は、木と鉄で造られた大型船といった感じだ。

 艦内には、虚ろな目をした住民や兵士達が、物資の積み込みをしているところであった。

 俺とゴードンも、今はそれに混じって行動中である。

 するとそんな中、俺達に声を掛ける者がいたのであった。

 

「おい、そこの2等兵と3等兵! 仕事がないなら、ちょっとこっちに来てくれるか? 手を貸してほしい」

 

 声を掛けてきたのは、緑の兵士キャプテンであった。

 今は従うとしよう。

 俺はそこで、今まで見てきたパラメキア兵の敬礼を真似した。

 ちなみに敬礼は、選手宣誓の仕草である。

 

「ハッ、何でございましょうか!」

「こっちに来てくれ」

「ハッ!」

 

 緑の兵士は艦内の一室に俺達を案内した。

 そこは物置のような場所であった。

 大小さまざまな木箱が置かれている。

 兵士は一際大きな木箱の前で、俺達に振り返った。

 

「これだ。この大きな荷物を機関室に運ぶんだが、手が足らないのだ。かなり重いんでな」

 

 それは軽自動車くらいある大きなモノで、今は馬鹿でかい台車に乗せられているところだ。

 その周囲には俺達のような兵士が何人かいる。

 どうやら、これを移動させるのに人手が足らないようだ。

 見たところ相当重そうだが、丁寧に扱っているところを見ると、大戦艦の重要な部品なのだろう。

 何か気になるところである。

 

「今、パラメキア北軍のボーゲン将軍と、黒騎士団新参謀のレオ様が、機関室にて待っておられる。さぁお前達も位置に着け。運ぶぞ」

「ハッ!」

「ハッ!」

 

 コレはまたラッキーな展開だ。

 機関室の場所を調べる手間が省けるってもんである。

 

(へぇ、ボーゲンにも会えそうだな。どんなマヌケ面か拝ませてもらうとしよう。レオ様は、恐らく街にいた黒騎士だろうな。面白い展開だ。とはいえ、ゴードンの顔が引きつってるのが、ちょい不安だ。が、コイツは臆病だから、まぁそう無茶もせんだろう)

 

 そして、俺達は木箱運搬業務に取り掛かったのであった。

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