FINAL FANTASYⅡ 怪奇幻想譚    作:虚夢想

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ep17 沈黙の大戦艦Ⅱ

 

   [Ⅰ]

 

 

 俺達はなぜかそのまま、調整弁の取り付けに付き合わされる事になった。

 とは言っても、設置する場所まで運ぶだけで、あとは魔法技術部門の帝国魔導師が、最終的な取り付けとチェックを行うみたいである。

 そんなわけで、設置さえすれば、俺達はお役御免なのだが……なぜかその作業をウボァー暗黒卿が見ているのであった。

 やりにくいったら、ありゃしないだ。

 ちなみに、ボーゲンは今、外の工事の進行具合を見に行ってるので、この場にはいない。

 コイツも一緒に行けばよかったのに、と思う今日この頃である。

 まぁそれはさておき、そんな作業も程なく終わりを迎える。

 そして後は、仕上げの施工業者である帝国魔導師達の出番となるのだ。

 これにて俺達は撤収である。

 

「よし、これで我々の作業は終わりだ。お前達、もうよいぞ。元の配置に戻るがいい」

「ハッ!」

 

 緑の兵士が俺達に解散を告げた。

 さて、撤収だ。

 我々は一旦、下に降りるとしよう。

 疲れ切っているゴードンに、俺はそっと耳打ちをした。

 

「おい、行くぞ」

「はぁはぁ……あ、ああ、わかった」

 

 だがその時であった。

 

「待て……そこの3等兵」

 

 何者かが声を上げたのである。

 声の出所を振り返ると、そこにはウボァー暗黒卿がいた。

 ちなみに暗黒卿は今、モロにゴードンを指さしているところだ。

 これはちょいとヤバい展開である。

 

「お前は本当にパラメキア兵か? 我が国の兵士と思えぬほど、足腰が弱い……なんだその内股で歩く姿は……キサマ、何者だ?」

「え? あ......」

 

 ゴードンは次の言葉が出ず、完全に固まっていた。

 顔を半分以上覆う兜を被っているので、その表情は窺い知れないが、恐らく、青ざめている事だろう。

 

(チッ……不味いな。たぶん、貧弱なゴードンの様子を見て、不信感を覚えたんだろう。仕方ない……)

 

 俺はそこで姿勢を正し、2人の間に割って入った。

 

「レオ様、申し訳ございません。実はこの者、先の反乱軍との戦いのおり、股間に強烈な一撃を貰い、負傷してしまったのです。お恥ずかしい話ですが、それ以来、なぜか内股気味で歩くようになってしまいまして……まぁその……何といいますか、所謂(いわゆる)、男の大事な部分をですね、かなり痛めてしまったそうなのです。今も小便の際には、奇妙な悲鳴を上げる始末です。誠に情けない話であります。ですが、この者は大事な部分を痛めても、帝国の為に頑張ろうと、私について来てくれました。これから私が責任を以って、帝国兵士の名を汚さぬよう、きつく指導致しますので、どうかお許しください」

 

 この話をした直後、周囲にいる他の兵士達から、クスクスと笑いが漏れていた。

 どうやら、下ネタ系の笑いは共通のようだ。

 暗黒卿も指をさしたまま、若干固まっているところである。

 恐らく、予想外の返しが来て、困っているのだろう。

 意外とシャイな部分もあるのかもしれない。

 

「ほら、お前も謝るんだ! レオ様にお見苦しい姿を見せたのだぞ!」

「お、おお……お見苦しい姿をお見せしてしまい、申し訳ございませんでした、レオ様! い、いいい、以後、き、気を付けます!」

 

 ゴードンは脅えたように体を震わせ、平身低頭で暗黒卿に謝罪した。

 迫真の演技である。

 というか、ガチでビビってるんだろう。

 すると程なくして暗黒卿は、蠅でも払うかのように、シッシッと手首を振ったのであった。

 

「もういい! 行け!」

「ハッ! では失礼いたします!」

 

 そして俺達は、そそくさと、この場を後にしたのである。

 世話掛けさせやがって、ゴードンめ!

 

 

   [Ⅱ]

 

 

 俺とゴードンは機関室の下の階へと移動し、通路の物陰に隠れ、一息ついた。

 近辺に人の気配はないので、まぁなんとかやり過ごせそうだ。

 ゴードンに視線を向けると、暗黒卿の指摘に肝を冷やしたのか、崩れ落ちるように地べたに座り込んでいた。

 まぁ無理もないところである。

 対応を間違えていたら、命のない状況だったからだ。

 

「ふぅ……ここなら、少し休めそうだ。しかし、危なかったな、ゴードン。もう少しでバレるところだったぞ」

 

 ゴードンはガックリと項垂れた。

 精神的に、相当堪えたようだ。

 

「ほ、本当だよ……なんで私は、君に付いてきたんだろう。幾らヒルダの気を引く為とはいえ、少し後悔してるよ。でも、礼は言おう。ありがとう、助かったよ」

「これに懲りたら、とにかく今は、パラメキア兵らしい動きをする事だな。俺も多少は疲れたが、あの程度で、そこまで疲れる方がどうかしてるよ。甘やかされてきた証拠だ。言っておくが、次は俺も見捨てるからな」

「そ、それは、わかってるよ。でも、今までそんな事をした経験がないんだ。すぐは出来ないんだよ。わかるだろ、君も?」

「だろうな。だが、意識はしろ。俺達は今、帝国兵に変装して奴等のド真ん中にいるんだからな。下手を打つと、命は幾つあっても足らないんだよ」

「それはわかってるよ……ン? ところでここはどこなんだい? 初めて見る通路だけど……」

 

 ゴードンはそう言って、キョロキョロしながら周りを見た。

 確かに見覚えのない通路であった。

 慌ててその辺の階段を降りたので、来たルートから外れたんだろう。

 

「さぁな、俺も知らんよ。折角だ。とりあえず、この先に進んで、宝探しでもしようじゃないか」

「宝探し? 君は本当に動じない男だな。よくこの状況で、そんな事ができるよ。というか、このデカ物を壊すんじゃなかったのか?」

 

 怖じ気づいて逃げそうな顔だが、意外にも目的は忘れてないようだ。

 少しは成長したようである。

 

「ほう……言うじゃないか。心配するな、忘れちゃいないよ。勿論、ぶっ壊すさ。だが……今はその時ではないんだよ」

「その時ではない? 私には君の考えがよくわからないよ」

「モノには順序っていうのがあるんだ。お前も覚えとけ。さ、行くぞ。行かないなら、置いてくからな」

「待ってくれよ。君は本当に性急だな……」――

 

 俺達は先に続く狭い通路を進んだ。

 ここもさっきの階と同様、金属製の壁や床に天井なので、冷たい感じがする通路であった。

 恐らく、大戦艦の機関室周りの区域は、全部こんな感じなんだろう。

 まぁそれはさておき、そんな通路を暫く進むと、鉄格子がある牢屋へと俺達は辿り着いたのである。

 どうやら通路は、ここで行き止まりのようだ。

 牢の中には大きな木箱が安置されているだけで、他には何もない。

 わけのわからない牢だが、俺は木箱を見て、歓喜に震えたのである。

 なぜなら、その木箱は見覚えがあるモノだったからだ。

 

「おお、あの木箱……さっき兵士達が、武具を仕舞ってた箱じゃんか。ラッキー」

「へぇ、そうなのか。何か良い物でもあったのかい?」

「そりゃもう、良い武器が沢山あったよ。しかも、超欲しい剣がな。んじゃ、早速、頂くとすっか。忍びの血が騒ぐわ」

 

 俺はとりあえず、鉄格子に触れ、まずはその構造を確認した。

 鉄格子には蝶番もなければ、上下に遊びもない。

 それは完全なハメ殺しの鉄格子であった。

 なるほど、といったところである。

 

「頂くって言っても牢の中だよ。どうするんだい?」

「どうもこうも、頂くつもりさ。つか、この鉄格子はフェイクだよ」

 

 そう、この鉄格子はフェイクなのである。

 扉のように開く蝶番もなく、上下に移動する構造もないからだ。

 まぁあくまでも俺の見立てだが。

 

「フェイクって何?」

「偽物ってわけじゃないけど、これは騙しの鉄格子って事さ。入口は別にあるんだよ。さてと……」

 

 続いて俺は、通路の壁へと移動し、そこをチェックした。

 確かゲームで、そういう部屋があったような気がしたからだ。

 暫く調べていると、壁に妙な隙間と、矢印が描かれた不自然な案内標識らしきモノを、俺は発見したのである。

 どうやら当たりのようだ。

 

「やっぱりな……これはたぶん、隠し扉だ。そして……コレが、仕掛けを解除する鍵なんだろう」

 

 俺はそこで案内標識に手を掛け、下げてみた。

 すると案の定だった。

 壁の扉は回転扉のように、クルリと180度回ったのである。

 

「おお! そういう事か、カザマさん。よく見つけたね」

「帝国も芸が細かい。だが……忍びにはこんなの通用しないんだな。うっしっし。では、お宝頂戴~」――

 

 俺達は中に入り、木箱から武具を幾つか頂いた。

 ちなみに得られたのは、眠りの剣とポセイドンが持ってそうな三つ叉の槍、それと盗賊の小手に暗闇の弓に氷の盾と、まぁ色々であった。

 荷物が多くなるのでそこが難点だったが、剣と小手と盾は俺が頂いておいた。

 まぁ言うても兵士だから、武器に布でも巻いとけば、そこまでは怪しまれんだろう。

 それから残りはゴードンに与え、俺達はこの場を後にしたのである。

 

 

   [Ⅲ]

 

 

 お宝を回収した後、上の階へ戻ると、慌ただしい雰囲気となっていた。

 なぜか知らないが、兵士達が計器類や装置に群がっていたのだ。

 そして、緑の兵士が大声で、兵士達に指示を出していたのである。

 

「反乱軍が来たそうだ! ボーゲン様とレオ様から『至急、大戦艦の始動準備にかかれ』との御命令である! 急げ!」

「ハッ!」

 

 機関室は一気に戦時体制といった感じだ。

 もう間もなく、当機は離陸するのだろう。

 アテンションプリーズ、この度は帝国エアラインをご利用いただき誠にありがとうございます。ってなもんである。

 まぁそれはさておき、これは良いタイミングかもしれない。

 

(しかし……反乱軍が来たって言ってるが、一体誰が来たんだ? もしかしてフリオニール達か? という事はもう、セミテの滝のミッションが終わったんかな。まぁ誰でもいいか……俺は粛々とぶっ壊すタイミングを待つだけだし。ン?)

 

 などと考えていると、機関室の奥の方から、ウボァー暗黒卿が取り巻きと共にやって来たのであった。

 俺とゴードンは暗黒卿に敬礼をし、そこで道を譲った。

 暗黒卿達は俺達を一瞥し、前を通り過ぎてゆく。

 だがその時であった。

 なぜか通り過ぎたところで、暗黒卿は突然立ち止まったのである。

 暗黒卿はそこで、俺達に振り返った。

 

「お前達……さっきの者達だな。名はなんという?」

 

 暗黒卿は嫌な事を訊いてきた。

 しかし、そこはそこ。

 風魔忍者の探偵舐めんなである。

 咄嗟の機転で、俺は適当にFF的偽名を名乗っておいた。

 

「ハッ! 私は2等兵のビッグスであります。そして、こちらの3等兵はウェッジと申します」

「フム……ビッグスとウェッジか。よかろう。お前達も付いて来い。反乱軍を返り討ちにするぞ」

「ハッ!」

「ハッ!」

 

 なんか知らんが、これは予想外の展開であった。

 まぁ何れにしろ、今は余計な事をせず、流れに身を任せるとしよう。

 ゴードンが余計な事したら、闇落としの刑で凌ぐのみである。

 さてさて、どうなる事やら……。 

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