FINAL FANTASYⅡ 怪奇幻想譚    作:虚夢想

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ep19 沈黙の大戦艦Ⅳ

 

   [Ⅰ]

 

 

 俺の言葉を聞き、暗黒卿は鼻で笑った。

 

「フッ……大戦艦を破壊しに来ただと……貴様1人でなにが出来るというのだ? そんな事など出来るわけがない。それと、後ろを見るが良い」

 

 暗黒卿はそう言って、俺の背後を指さした。

 後ろにある入口をチラッと見ると、沢山の兵士達が陣取っていた。

 それどころか、他の通路入口にも、兵士達の姿があったのである。

 つまり、状況的に俺は袋の鼠ということだ。

 

「なるほどね……既に手は打ってあるわけか。抜かりないねぇ」

「機関部に怪しい人影があると報告があったのでな……兵を向かわせておいたのだ。これで貴様にはもう、逃げ道は無い。フッ、終わりだな。如何に貴様が素早いとはいえ、逃げ道がなければどうにもなるまい」

 

 確かに、このままならそうなるだろう。

 このままなら……。

 そこで、下品な笑い声が響き渡った。

 

「グハハハ、流石はレオ殿だな。しかし、しぶとい奴だ。反乱軍にも、ここまで大胆に侵入する奴がおったとはな。だがそれもコレで終わりだ。ざまぁみろ!」

 

 現れたのはボーゲンであった。

 相変わらずの間抜け面である。

 

「誰かと思えば、そこにいるのは、フィンを裏切ったボーゲン元伯爵じゃないか。噂は聞いてるよ。サラマンドの人質は解放され、挙げ句に、セミテの滝のミシディルは反乱軍に押さえられたそうだね。ご愁傷様」

「な!? 人質とセミテの滝鉱山が、反乱軍の手に落ちただと……デマカセを言うな!」

 

 ゲームでは、ボーゲンがサラマンドにちょっかいだしてた気がしたので、とりあえず、言ってみた。

 この反応を見る限り、ここでもそうなんだろう。

 

「コイツの言ってることは本当かもしれない、ボーゲン将軍。つい先日、手の者から連絡があったからな……」

「グッ、なんと言うことだ……私は皇帝陛下になんと申し開きすれば……」

 

 ボーゲンは怯えたようにガタガタ震えだした。

 

「やらかしちゃったねぇ、ボーゲン元伯爵。次は元将軍になるのかな。噂通り、有能なんだね」

「貴様……私の事を知っているのか?」

「知らんよ。というか、知りたくもない。信用を失くした哀れな奴など、俺にはどうでもいいからな。これからお前は、皇帝にも信用されず、捨て駒にされるんだろう。裏切り者はずっと信用されんからな。ま、せいぜい頑張れや」

 

 ボーゲンの顔が険しくなる。

 

「オノレェェ! オイ、お前達! この者を逃がすな! 即刻始末しろッ!」

「ハッ!」

 

 兵士達は武器を構え、通路へと足を踏み入れた。

 ちなみに4方向からの挟み撃ち状態なので、弓のような飛び道具は使ってこないようだ。

 同士討ちの危険があるからだろう。

 ある意味、ラッキーである。

 というわけで、俺も行動を起こした。

 

「へぇ、そう来るのか。じゃあ仕方ない。俺も手を打つとしよう!」

 

 俺は筒を覆う透明の蓋に向かい、念力の力を上乗せして、剣を勢いよく振り下ろした。

 その刹那、透明の蓋は無数にヒビ割れ、砕け落ちたのであった。

 やはりガラスだったようだ。

 

「なッ!?」

 

 そこで帝国兵の足も止まった。

 どうやら意表を突く行動だったのだろう。

 

「貴様ァ! いきなり何をする!」

 

 そして暗黒卿も慌てていた。

 この反応を見る限り、これが重要な設備なのは間違いないようだ。

 さて、では続けるとしよう。

 俺はそこで、ずっと腰に仕込んでいたある物を取り出した。

 今はわからないように布に巻いてあるが、これは勿論、あのアイテムである。

 そう、エギルの松明だ。

 俺は布を解き、エギルの松明を露にした。

 

「悪いな、レオさん。この蓋が邪魔だったから割らせてもらったよ。コレを投げ入れたいんでね」

「貴様……それは、まさか!?」

 

 勘のいい暗黒卿は気付いたようだ。

 さて、ここからは俺のターンである。

 というわけで、俺は大きな声で奴等に警告した。

 

「はいはい、お前達もそこから動くなよ! 一歩でも動いたら、コレをここに投げ入れるからな!」

「フン、何を抜かしている、この反乱軍のゴミめ! おい、お前達、こんな奴の言う事など無視して、とっとと殺してしまえ!」

 

 ボーゲンは怒声を上げた。

 状況を理解できていない有能なボーゲンは、お構いなしのようだ。

 

「ま、待て! ボーゲン将軍! 待つんだ!」

 

 暗黒卿は慌ててそれを静止した。

 ボーゲンはポカンとしている。

 まだ気づいてないようだ。

 

「レオ殿、どうしたのだ慌てて?」

「コイツが今手にしているのは、恐らく、エギルの松明……つまり、太陽の炎だ! コレをそこに投げ入れられたら、大戦艦は制御不能に陥り、大爆発を起こしてしまいかねん! 今は待て!」

「ナァニィィィ! だ、だだだ、大爆発だとぉォォ!」

 

 ボーゲンの絶叫が響き渡る。

 そして、他の兵士達も状況を理解したのか、この場は一気にざわつき始めたのであった。

 良い感じである。

 こちらのペースで交渉できそうだ。 

 

   *

 

 話は変わるが、この太陽の炎……実は変わった特性があり、物を燃やす力はない。

 まぁそれは、エギルの松明にしか炎を移せない事からも、当たり前の話だ。が、しかし、熱は発せられているのである。

 そして、このエギルの松明もかなり特殊であり、宿した太陽の炎の熱を遮断する機能を持っているのであった。

 その為、触れても全然熱くない。

 現実世界ならありえない事だが、ここは異世界にしてゲームを模した異世界。何でもアリである。

 で、俺は何を言いたいのかだが……要は、太陽の炎が宿るエギルの松明を布で巻いても、全然大丈夫という事である。

 大事な事なので、もう一度言おう。

 布でエギルの松明を巻いておいても、燃えたりもしなければ、熱を感じたりする事もないのだ。

 気にしたら負けだし、考えたらダメなのだ。

 考えるな! 感じろ! である。

 というわけで、話を戻そう。

 

   *

 

 周囲がざわつく中、俺は暗黒卿にお願いをしてみた。   

 

「さて、レオさん。ここにコレを投げ入れれば……大戦艦はボンッだ。そこでお願いがあるんだが、まずはこの大戦艦を今すぐ着陸させてもらえるかな? 着陸してくれなければ、コレを投げ入れるよ」

「着陸だと……貴様! するわけないだろう! それに、お前も一緒に吹き飛ぶのだぞ! できるモノか!」

「あらら、そういう事を言うかな。じゃあ仕方ない。コレを投げ入れるとしよう」

 

 俺は遠慮せず、投げ入れるフリをした。

 すると、暗黒卿は慌てて手を振ったのである。

 

「ま、待て! クッ……いいだろう」

 

 暗黒卿は近くにいる1等兵を指さした。

 

「オイ、お前、操舵室に行き、大戦艦を緊急着陸するように伝えろ!」

「ハッ!」

 

 兵士は足早に駆けて行った。

 そして暗黒卿はワナワナと握り拳を作り、俺を指差したのだ。

 

「貴様……これで済むと思うなよ。今は言う通りにしてやる……だが、許さんぞ! パラメキア帝国を舐めるなよ!」

「はいはい、わかりましたよ」――

 

 

   [Ⅱ]

 

 

 俺のお願いを聞き入れてくれた暗黒卿のお陰もあり、暫くすると、大戦艦はようやく地面に降り立った。

 その時の衝撃で、ここも大きく揺れたところだ。

 そして、ここからはまた、奴等との交渉が始まるのである。

 

「ありがとう、レオさん。俺の言う事を聞いてくれて。アンタ、意外と良い奴かもな」

「そういう貴様は、我等をイラつかせるのが上手い奴だがな。さて……どうするつもりだ? 今なら命は助けてやる。それを我々によこせ!」

 

 暗黒卿はそう言って、手を前に出してきた。

 コイツは意外と馬鹿なのかもしれない。

 

「はぁ? 黒騎士団新参謀のレオ様ともあろう方が、そんな見え透いた嘘ついちゃダメっすよ。交渉ってのはさ、相手の前においしいモノをぶら下げて、信じさせるか、関心持たせてからじゃないと成立しないよ。本当に、生真面目な人だなぁ、アンタは」

「クッ……本当に貴様は、俺をイライラさせやがる……」

 

 暗黒卿は肩をワナワナ震わせていた。

 怒りに打ち震えているようだ。

 と、そこで、ボーゲンが話にログインしてきた。

 

「おい、お前! 何が欲しい? ギルか? それとも宝か? 言ってみろ! 私がやろうじゃないか。おいしいモノがほしいんだろう?」

 

 ボーゲンがなぜか喰いついてきた。

 コイツは欲に塗れた馬鹿野郎だから、このフレーズが刺さったんだろう。

 

「そうだねぇ……俺が欲しいのはパラメキア帝国の皇帝の座かな。くれるんなら貰うよ、ボーゲン元伯爵」

「な!? 貴様、何という恐ろしい事を……」

 

 ボーゲンは俺の要求を聞き、後ずさった。

 恐らく、骨の髄まで皇帝に恐怖しているんだろう。

 

「貴様、確かビッグスとか言ったか……お前は皇帝陛下の恐ろしさを知らぬようだな」

 

 暗黒卿はそう言って腕を組んだ。

 名前が間違ってるが、このままにしとこう。

 

「ああ、知らんよ。会った事ないし」

「何者だ、貴様……今の世で、そのような事を言う奴を初めて見たわ」

「俺か? 俺はただの探偵さ」

 

 とりあえず、ケイシーラ○バックばりに答えておいた。

 

「タンテイ? フン、なんだソレは。まぁいい。だが、お前は知らぬのだ。地獄から屈強な魔物を召喚し、強力な魔法を幾つも操れる、恐ろしいほどまでの魔力を持つ、あのお方の恐ろしさをな。楯突いた事を後悔するぞ……必ずな」

「へぇ、地獄から魔物を召喚か。どこでそんな方法を知ったんだろうねぇ……」

「どこで? フッ、どこでも何も、パラメキアは元々、古代魔法都市ミシディアがあった地。古代の魔導師が記した古の書物が幾つもあるのだよ。今のミシディア以上にな」

「へぇ、古代魔法都市ミシディアねぇ……」

 

 古代魔法都市ミシディア。

 初めて聞く単語であった。

 ゲームにも出てこない名前である。

 

「さて……お喋りはここまでだ。お前との下らん交渉は、これ以上するつもりはない。さて、答えを聞こうか? ソレを我等に渡して、命からがらココから逃げるか……ここで死ぬか、だ。どちらか選ぶがいい」

「そうだな……じゃあ、逃げ道を作ってくれるかい? 今のままじゃ、逃げられないからな」

「ほう……という事は、それを渡すという事だな。よかろう。お前達、通路を開けよ」

「ハッ!」

 

 四方にいる兵士達は、通路から出て行った。

 道が開けたようだ。

 さて、では迅速に立ち去るとしよう。

 俺は暗黒卿に向かい、笑顔で別れを告げた。

 

「ありがとう、黒騎士団新参謀のレオさん……色々と為になる話をありがとう。いや、正式にはレオンハルト君だったか。では私からの贈物だ。大戦艦にコレを渡すとするよ!」

「なッ!? 貴様……」

 

 暗黒卿は俺が名前を言った瞬間、動きが止まっていた。

 少し動揺したのだろう。

 そして、俺はその隙に、エギルの松明を筒の中に放り込んだのである。

 

「アァァァ!? き、貴様なんて事を!」

「じゃあなぁ、帝国兵の皆さん! 死にたくなかったら、とっとと逃げた方が良いよ! すっごい爆発が起きるからねぇ! では、ご武運を!」 

 

 俺は念力を使って身体能力を上げ、一気に通路を駆けぬけた。

 背後では阿鼻叫喚の怒号が飛び交っている。

 

「あの野郎、やりやがった!」

「だ、大戦艦が爆発するぞ! 逃げるんだァァァ!」

「大変だァァァ!」

「逃げろォォォ!」

「ウワァァァ」

「ヒィィィ」

「WRYYYY」

 

 俺は脇目もふらず、一気に大戦艦の中を駆け抜けた。

 そして、俺が大戦艦を脱出して暫くの後、緑の大地に盛大な花火が上がったのであった。

 めでたしめでたし……か、どうかはわからないが、今は素直に喜ぶとしよう。

 

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