FINAL FANTASYⅡ 怪奇幻想譚    作:虚夢想

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ep19 帝国のプチ逆襲

 

   [Ⅰ]

 

 

 大戦艦は、地鳴りが響くくらいの轟音と共に弾け飛んだ。

 爆心地には大きなキノコ雲が上がっている。

 想像していた事だが、かなり派手な花火であった。

 俺がいる草原地帯は、爆心地から300mくらいは離れているが、それでも幾つかの大戦艦パーツが周囲に降り注いだくらいだ。

 近くにいたら、かなりヤバかったところである。

 周囲を見回すと、沢山の帝国兵が蜘蛛の子を散らしたようにワラワラといた。

 この感じだと、殆どの帝国兵は逃げ出せたんだろう。

 俺はそこで、帝国兵の兜を被り、変装し直した。

 

(ふぅ……これで大戦艦は破壊できた。とりあえず、ヒルダ王女に大戦艦破壊の報告をして、報酬を頂くとするか。それから……月の女神の祠について、まずは調べてみるとしよう……ン? ゲ!?)

 

 するとその時であった。

 凄まじい速さで俺に迫る黒い騎士がいたのである。

 それは暗黒卿であった。

 どうやら見つかってしまったようだ。

 

「そこにいたか! 見つけたぞ、オノレェェェ!」

 

 暗黒卿は腰に帯びた赤い両刃の大剣を抜き、素早く俺に斬り掛かってきた。

 フルアーマーにも拘らず、それは凄まじい素早さの斬撃であった。

 避けないと死ぬレベルである。

 

「オワッ! いきなりかよ!」

 

 生命の危険を感じた俺は、地面を転がりなんとか斬撃を回避した。

 そして俺がいた地面が、ザスッと音を立て、暗黒卿の斬撃を受け止めたのだ。

 おーこわッ。

 

「クッ……キサマァァァ! ちょこまかと! ぶっ殺してやる!」

 

 暗黒卿はガチギレしていた。

 今までの余裕が感じられない。

 大戦艦が木っ端微塵になったので、形振り構ってられないんだろう。

 爆破テロの実行犯である俺の首を取らない限り、矛先を治められないに違いない。

 俺は背中に掛けている眠りの剣を抜き、すぐに構えた。

 この剣をチョイスしたのは理由がある。

 それは、奴の大剣の間合いに対応する為だ。

 腰にあるミシディルの剣より、眠りの剣の方が30cmほど長いからである。

 

「いきなりかよ! ちょっと落ち着こうや、レオンハルト君」

「その名を呼ぶなぁァァ!」

 

 すると暗黒卿は更に逆上し、凄い速さで間合いを詰めてきたのだ。

 それは俺の想像を超える速さであった。

 

(ちょっ……なんだこの速さ! ヤバい! 逃げれん……受けないと死ぬ!)

 

 避ける間が無い為、俺は念力も使って剣で斬撃を受け止めた。

 だがしかし、それは想像を超える凄まじい力だったのである。

 その為、俺は剣で受け流して軌道を逸らすしかできなかったのだ。

 

(なんという剛剣だよ。嘘だろ……人間の力とは思えない……)

 

 とてもではないが、俺では受けきれる斬撃ではなかった。

 ヤバい剛剣の使い手である。

 

「アレを裁くか……ならば!」

 

 暗黒卿はそこで更に踏み込み、剣を大きく振りかぶる。

 だが俺は、その隙を見逃さなかった。

 俺はそこでフルパワーの念力を使い、暗黒卿の顔面に見えないパンチを見舞ってやったのだ。

 すると暗黒卿は顔を仰け反らせ、少し体勢を崩したのであった。

 ジ○ダイのようなフォースクラッシュ攻撃である。

 

「グッ、なんだこの力は……貴様」

 

 俺はそこで、念力を使って後方へ大きく飛び、間合いを広く取った。

 そして剣を霞に構え、奴を見据えたのである。

 

(それにしても……信じられん力だ。コイツ、魔法でドーピングでもしてんのか? 念力の力を上乗せしても、捌ききれんかったぞ。柔よく剛を制すじゃないけど……コイツの剣を正面から受けるのは不味い。コイツ、こんな強かったのか。チッ、仕方ない……一旦間合いを広く取ろう)

 

 これはちょいと不味い展開だ。

 こんな所で、命のやり取りするような真剣勝負は御免である。

 

「貴様……妙な力を使えるようだな。今のは魔法か? この私の剣をそのようにかわすとはな。何者だ、貴様……」

 

 暗黒卿は少し警戒してる風であった。

 まぁその方が好都合である。

 

「俺か? 俺はただの探偵さ。大した者じゃねぇよ」

「またそれか……食えぬ奴だ。まぁいい。何者か知らぬが……殺すことに変わりはないがな」

 

 暗黒卿はそんな俺に向かい、赤い刃の大剣を正眼に構えた。

 

「逃がすつもりはないってことね」

「当たり前だ。貴様は必ず殺す。そう……必ずな」

 

 暗黒卿は剣を構えたまま、ジリジリと間合いを詰めてくる。

 

(さて……どうするか。何れにしろ、ここは剣ではなく、盾で凌ぐか……って……あ、しまった! あちゃあ……)

 

 俺はそこで痛いモノを目にした。

 なぜなら、地面を転がり避けた時に、水晶の盾をそこに置いてきてしまったからだ。

 危険を察知して、無意識に手放していたのである。

 頭の痛い状況であった。

 とはいえ、今は平静を装うとしよう。

 

「へぇ……必ずか。俺もとんだ奴に目を付けられたもんだ」

「帝国をコケにした報いだ。我等はソレを許すほど甘くはない」

 

 暗黒卿はそう言って間合いを詰めてくる。

 そして俺は、少しづつ後退し続けた。

 しかし、見れば見るほど、奴の赤い剣は凄そうな武具であった。

 刃にはオレンジ色のオーラのようなモノが纏わりついている。

 さぞかし立派な剣なんだろう。

 

「アンタ、凄い剣もってるな。なんだそれ……」

「フン、これは皇帝陛下から賜った太陽の剣よ。それだけではない。この鎧もすべて、皇帝陛下の魔法が永久付加されて強化されたモノだ。その辺の兵士が使っているモノとはわけが違うのだよ。優秀な使い手が身に着ければ、恐ろしい力を得られるのだ! さぁ……観念するんだな、ビッグスとやら」

 

 太陽の剣……もしかすると、ゲームではサンブレードとかいう名前の剣かもしれない。

 それはともかく、コイツの装備はすべて、皇帝が魔法を付加したモノのようだ。

 つまり、ヘイストやバーサク、プロテスにシェルのような補助魔法が、幾つも付加されてるのだろう。

 

(ったく、こんなドーピング装備の化け物騎士と真剣勝負なんてやってたら、命が幾つあっても足らんぞ。逃げるしかない。逃走経路は……とりあえず、アレだな……)

 

 周囲を見回すと、少し離れた所に森があるのが見えた。

 とりあえず、あの森まで何とかして逃げるしかない。

 おまけに、俺達に気付いた帝国兵の姿もあったので、早急に撤収しないと不味い状況なのであった。

 

(事態は刻一刻と悪くなる。コイツだけでもきついのに、帝国兵まで来たら、もうどうにもならんぞ。隙を見て、なんとかトンズラしないと。でもコイツ……隙が無いんだよな。少しでも気を逸らせられると……ン? アレだ! とりあえず、アレで虚を突いて一気にあの森まで逃げよう)

 

 俺はそこで、奴の後方にある水晶の盾に目を向けた。

 すると、そんな俺を見た暗黒卿は、いつでも動けるように、腰を落として身構えたのだった。

 

「フン……逃げ道でも探してるのか? 逃がさんぞ! 貴様を見逃しては陛下に顔向けできぬ! 死んでもらうぞ!」

「へぇ……そうかい。では俺も本気を見せてやろう……風魔流忍術の真髄をな! 喰らうがいい!」

 

 俺はそう言って、意味ありげに剣を地面に突き刺した。

 

「ムッ!」

 

 暗黒卿は剣を下段に構えた。

 一応、警戒しているようだ。

 いい感じである。

 そして、俺は両手で印を素早く組み、九字護身法を行ったのであった。

 

 「臨・兵・闘・者・皆・陣・列・在・前! ハァァァ!」

 

 最後の印を切ったところで、俺は念力を使い、水晶の盾を暗黒卿の後頭部に思いっきりぶつけてやった。

 ガコン! という鈍い衝突音と共に、暗黒卿はよろける。

 俺は心の中で(ヨッシャァ!)と、ガッツポーズをした。

 

「グッ!? な、何だ一体!」

 

 この不意打ちに、暗黒卿は背後を振り返る。

 そして、俺はその隙に水晶の盾を念力で回収し、一気にこの場から撤収したのであった。

 

「なッ!? アァ! キ、キサマァァァ! 逃げるなァァァァ! オノレェェェ!」

 

 俺は振り返らず、大きな声で暗黒卿に別れを告げた。

 

「ごめんよ、レオンハルト君! 僕、これから大事な用事があるんだ! だからもう行くよ! アディオス!」

「ふざけんなァァァ! オイ、お前達! アイツを捕まえるんだァァァ! 絶対に捕まえろ! 逃がすなァァァ! なんとしても捕まえろォッ! なんとしてもだァァァッ!」

「ハ、ハッ!」

 

 暗黒卿の絶叫に近い命令に従い、帝国兵達の大集団が一斉に俺を追いかけ始めた。

 それは物凄い逃亡劇であった。

 捕まったら、確実に死あるのみである。

 

(こ、こいつぁやべぇ……捕まったら最後、ゲロ以下の目に遭うニオイがプンプンするぜ! というわけで、令和の風魔小太郎はこのままクールに去るぜ!)

 

 とまぁそんな感じで、かなりヤバい状況ではあったが、俺はこの後、森の中に隠れて移動し、なんとか奴等を巻く事ができたのであった。

 本当に死ぬかと思った今日この頃である。

 

 

   [Ⅱ]

 

 

 大戦艦を爆破し、帝国兵の執拗な追撃をなんとか免れた俺は、ようやく港湾都市のポフトへと辿り着いた。

 森の中で一晩明かす羽目になったが、とりあえず、生きて街に着けたので良しとしよう。

 ちなみに、さっき帝国兵の鎧を脱いで変装を解いたので、今は普通の一般剣士風の姿である。

 流石にあの姿で街に入るわけにはいかないからだ。

 まぁそれはさておき、ポフトは以前来た時と同様、バフスクのような赤レンガ調の建物が多い街だ。

 加えて、至る所で笑い声や威勢のいい声が聞こえる活気のある街だった。

 今は日が暮れ始めた事もあり、人はまばらだが、それでも活気は感じられる。

 やはり、港に海の男が多いからだろう。

 また、このポフトは北部都市連合の1つだが、人口はバフスクの方が多いようだ。

 ここは運輸系の業種が盛んなので、工業力が必要な街ではないからだろう。

 それと、今はまだ帝国に浸食されていない唯一の街でもある為、人々の表情もそこまで暗くはなかった。

 ただ、港街全般に言える事だが、荒くれた海の男が多いので、治安自体はあまり良くなさそうである。

 とはいえ、ゲームだとこの街は、大戦艦があのまま航行してたら、大きな被害を受けていたので、今のような街の姿ではなかったに違いない。

 そういう意味では、俺は非常に良い事をしたんだろう。

 とはいえ、原作改変なので、この先の展開は未知数だが……。

 

「旦那、ミシディルの剣の買取は900ギルだ。それでもいいかい?」

「じゃあ、それで」

「毎度あり」――

 

 俺は武器屋でアイテムを幾つか売り払った後、街の入口近くにある酒場へと向かった。

 そこにはゲーム同様、飛空船輸送業を営むシドという男がいるからだ。

 カシュオーンに行く時は懐具合もあって断念したが、今回は利用するつもりである。

 もう徒歩は勘弁だからだ。

 酒場へとやってきた俺は、西部劇のようなスイングドアを潜り、中へと足を踏み入れた。

 すると酒場内は沢山の人々がおり、活気に満ちていた。

 幾つもある丸テーブルから祝杯の声が聞こえてくる。

 

「帝国の大戦艦が爆発したらしいぜ! こんなに嬉しい事はない! さぁ飲もうぜ!」

「ああ、こんなめでたいこたねぇや!」

 

 よくわからんが、大戦艦が爆発したので盛り上がってるようだ。

 それはさておき、酒場内を見回すと、奥にあるテーブル席に、赤い服を着た髭面のオッサンがいた。

 この男がシドである。

 数日前に来たときも思ったが、なかなかダンディーな雰囲気を持つ、ちょい悪親父であった。

 フィンの元白騎士団団長という肩書きがあるとおり、腕っ節の強そうな身体をしている。

 今は足を汲みながら横にイイ女を侍らせ、渋く酒を飲んでいるところだ。

 俺はその男の前に行き、用件を伝えた。

 

「アンタが確か、シドさんだよね?」

「ああ、そうだが……飛空船に乗りたいのか?」

「アルテアまでお願いしたいんだけど、今からは無理かい?」

「残念だな。もう夕暮れだ。今からは飛ばせねぇよ。明日の朝にしな」

 

 ゲームでは昼と夜の概念がなかったが、このリアル世界だと、こういう事情も出てくるのだ。

 歩くと疲れるし、魔物は厳ついし、倒してもギルは得られないし、リアルFFは大変である。

 まぁそれはともかく、飛ばせないなら言うとおりにするしかないだろう。

 

「そうか。なら、明日の朝、出直してくるよ」

「ああ、そうしてくれ。ン?」

 

 するとその時であった。

 

「カ、カザマさんじゃないですか! 生きていたんですね!」

 

 後ろから驚く声が聞こえてきたのである。

 それはなんとフリオニールであった。

 その傍らには、マリアとガイ、そしてミンウの姿もある。

 あの後、上手く逃げて来れたのだろう。

 

「おお、フリオニール達じゃんか。元気にしてたか?」

「何言ってるんですか、カザマさん。あの後、ずっと心配だったんですよ。でもやりましたね! 大戦艦を爆破したのってカザマさんなんでしょ?」

 

 その直後、周囲の目が俺に集まる。

 そして、この場はなぜかシンと静まりかえったのであった。

 シドも俺をガン見していた。

 なんというか、居心地の悪い空気である。

 というわけで、シドの前で指導する事にした。

 

「な、何を言ってるのかな、フリオニール君。僕はそんな事してないよ。誰かと勘違いしてるんじゃないかい」

 

 俺はそこでフリオニールに耳打ちした。

 

「おい……今はその話をするな。ヒルダ王女に報告もしてないんだからな。口を慎みなさい」

 

 意図を理解したのか、フリオニールはバツが悪そうに口元を押さえた。

 

「す、すいません、そうでしたね」

「そうだよ。ン?」

 

 するとそこで、フラフラとした酔っ払いが俺に近づいてきたのである。

 目が座った感じになっているが、それは間違いなく、ゴードンであった。

 ゴードンは酒瓶をラッパ飲みしながら、馴れ馴れしく、俺の肩に手を回してきた。

 

「ああ、カザマさんだぁ……ひどいよ、アンタァ……帝国兵の前で俺を突き飛ばしてさぁ。でも、大戦艦は無事破壊できたようだねぇ……ヒック……でも、オイラもちゃんと太陽の炎を手に入れるの頑張ったんだからさぁ、ヒルダに良いように言っといてくれよぉ……ヒック……頼むよぉ……カザマさんさぁ……ヒック」

「ちょ……おま、何言ってんだよ。違うって……あれは俺じゃないの」

「またまた、そんなこと言っちゃって……オイラ知ってるんすよ。カザマさんが凄いの……ヒック……でも、帝国に突き出すのは勘弁してくださいよぉ。お陰で、お漏らししちゃったじゃないっすか。あのあと股が擦れて大変だったんすよ……今もヒリヒリすんですよ。勘弁してくださいよ」

「何言ってんだよ、この酔っ払いが……俺の方が勘弁してほしいわ。つか、飲みすぎだ」

 

 するとそこで、シドがニヤリと笑ったのであった。

 

「ほう……お前が大戦艦を破壊したのか。やるじゃないか」

 

 ゴードンの馬鹿の所為で、面倒な事にならなきゃいいが……。

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