FINAL FANTASYⅡ 怪奇幻想譚    作:虚夢想

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ep3 謁見

 

   [Ⅰ]

 

 

 俺はミンウの癒やし魔法とやらを眺めながら、色々と思考を巡らせていた。

 なかなか今の状況の整理がつかないからだ。

 ちなみにだが、フリオニール達も俺の傍で、階下の様相を眺めているところである。

 これは本当に芝居なのだろうか? 本当にわけがわからない。

 いや、だとしても、俺にそれを見せる意味が分からない。

 加えて、練習してる風でもない。

 最初はドッキリかと思ったが、この俺にそれをする理由がそもそも見当たらない。

 目覚めてからというもの、パニック状態が継続中である。

 

(あ〜あ……本当に何なんだよ、この状況は……理解不能だぞ。それになんとなくだが、これは芝居ではない気がするんだよな。おまけにこの建物、電気設備というモノが全くない。今、階下を眺めているが、照明は燭台やランタンレベルだ。となると……夢か?)

 

 というわけで、俺は自分の頬を力強くつねってみた。

 勿論、痛かったのは言うまでもない。

 どうやら夢ではないようだ。

 さて……どういう事だろう。

 やっぱり、芝居か?

 と、そこで、マリアの声が聞こえてきた。

 

「ねぇフリオニール……ヒルダ様の所へ行こうよ。向こうにある会議室にいるから」

「え? ここにヒルダ王女が!? その前に、ここは一体どこなんだ?」

「ここはフィン王国の最南端、辺境の街アルテアよ。そして、この建物は反乱軍のアジトなの。さっき軍の偉い人達が会議室から一杯出て行ったわ。だから、会議も終わってる筈よ。ヒルダ様も今なら会ってくれると思うわ。私……帝国が許せない。だから、反乱軍に志願しようと思うの」

 

 フリオニール達の口から出る単語は、間違いなく、FF2に出てくる固有名詞ばかりだ。

 辺境の街アルテア、懐かしい名前である。

 ゲームでは始まりの街だった。

 話の整合性はとれているが、あれはフィクションであり、且つ、ゲームの話。

 現実のモノではない。

 よって、今のところは茶番にしか聞こえないが……。

 

「そうだな……行こうか。俺達にも何かできる事が有るかもしれないしな」

 

 フリオニールがそこで俺を見た。

 

「カザマさんはどうされますか? 僕達みたいな者が会えるかどうかわかりませんが、我々はフィンの王女、ヒルダ様に謁見してみるつもりです」

 

 さて、どうしよう。

 正直言うと、わけわからん状況すぎて、正常に判断しかねるところだ。

 今までの展開から考えると、フリオニール達と一緒に行けば、恐らくまた、FF2の寸劇モドキを見せられるに違いない。

 とはいえ、どうも腑に落ちない点もある。

 もしかすると俺は、トンデモ世界に迷い込んでしまった可能性が有るかもしれないからだ。

 そんな事有るわけないと思うが、古来より日本には、神隠しというファンタジーな忌まわしき言葉もある。

 加えて、風魔の忍びであった先祖の古い迷信にも『常世(とこよ)の国』という妙なのがあるくらいだ。

 科学が発達した現代に置いて、ファンタジーを肯定する奴は馬鹿と思われるかもしれないが、何事も全否定だと判断の柔軟性に欠ける。

 俺も探偵を生業としている以上、そこは慎重にいきたいところである。

 それに、これがもし本当に演劇ならば、そろそろボロも出てくるだろう。

 今は流れに身を任せ、少し様子をみた方が良いのかもしれない。

 というわけで、彼等に暫し付き合う事にした。

 

「へぇ……そうなのか。じゃあ、俺も君達と一緒に行くかな。少々、気になることもあるんでね。一緒に謁見させてもらうよ」

「では行きましょうか。マリア、案内してくれるかい?」

「コッチよ、ついてきて」――

 

 

   [Ⅱ]

 

 

 マリアは重厚な木製の扉の前に、俺達を案内してくれた。

 扉には薔薇のような花の紋章が描かれている。

 その手前には西洋風の金属鎧に身を包む兵士がいた。

 だが意外にも兵士は、ボディチェックもなしに、俺達をすんなりと中に通してくれたのである。

 ゲーム同様、セキュリティーが甘い反乱軍のアジトであった。

 まぁそれはさておき、扉の向こうはかなり広い空間となっていた。30畳は優にあるだろう。

 全面に赤いカーペットが敷かれており、部屋の奥には、立派な背もたれの大きな椅子が2脚置かれていた。

 それはまるで玉座のような装いの椅子であった。

 そして、その椅子の1つには今、妙な衣服を着た若く美しい女性が腰掛けているのだ。

 恐らく、この女性がヒルダ王女だろう。

 

(さて、ヒルダ王女とのシーンを拝見させてもらうか。所々、微妙にゲームと違うが……ディティールの問題だ。それにしても変わった服着てんな……ゲームでこんな格好だったか? どうだったか、覚えてないわ。まぁフリオニール達にしてもそうだが。にしても、王族が着るような服にはとても見えん。奇抜なファッションショーに出てきそうな衣装だよ……)

 

 年は20歳前後。若干ウェーブがかった肩より長いブロンドの髪で、白い素肌と鋭い目をした気の強そうな女性であった。顔立ちはフリオニール達同様、欧米系だ。

 ただ、頭にかなり変わったモノを装備しているので、それが一際目を引いた。

 奇妙な角が左右に伸びる、ウザったいバイキングヘルムみたいなモノを被っていたからだ。

 その角は青と白を基調に彩られており、よくわからん代物であった。

 あんなの被ってたら、さぞや肩が凝るに違いない。

 というか、意味分からん装飾品である。

 だが、俺はそれよりも別のところに目が行ってしまった。

 なぜならこの女性は、ラッシュガード並みにピチッと吸い付くような、水色の衣服を着ていたからだ。

 この衣装のお陰もあり、ボン・キュ・ボンのエロい肢体なのは容易に見て取れる。

 うん、凄く良い。ビューティホーなナイスバディだ。

 ちょっと踏まれたい気にさせる女王……じゃなかった、女性なのである。

 そんなアホな事を考える中、フリオニール達はその女性の元へと向かい、歩を進めた。俺もそれに続く。

 室内には数名の兵士と侍女、そして上級国民らしきオッサンや老人が何人かいた。

 この上級国民の役柄は恐らく、落ち延びた大臣とか老中みたいな肩書の連中だろう。

 そしてヒルダと思わしき女性はというと、今は侍女と話をしながら、俺達へと視線を向けているところだ。

 特に俺の方をチラチラと見ており、やや警戒してる風であった。

 まぁわからんでもない。

 俺だけ浮いた服装なのは間違いないからだ。

 ある意味、雰囲気破壊魔である。

 まぁそれはさておき、フリオニール達は女性の少し手前で立ち止まると、そこで跪いた。

 俺もとりあえず、彼等の所作を習っておいた。

 今は郷に入ったら、郷に従えである。

 

「おや、貴方達は……元気になったのですね。よかった。私はフィン王女のヒルダです。今は父であるフィン王の代理であり、そして反乱軍の指揮を預かる者でもあります。よろしくお願いしますね。今日はどうしましたか?」

 

 するとそこで、フリオニールが力強い声を上げたのであった。

 

「ヒルダ王女、私達を反乱軍に加えてください!」

 

 フリオニール君、いきなりかい。

 緊張してるんだろうが、もっと手順踏めよ。

 まずは自分の名と挨拶やろ、要件はそれからだ。

 まぁどうでもいいけど。

 

「ダメダメ! 貴方がたの力では、無駄に命を落とすだけです。お家へお帰りなさい」

 

 ヒルダ王女は溜め息と共に、大きく(かぶり)を振った。

 信用されてないのがよくわかる仕草だ。

 

「私達の家はもうないんです。フィンにあったので。そして両親も……」

 

 マリアの重い言葉で、ヒルダは罰が悪そうに口元を手で覆った。

 

「ごめんなさい……そうだったわね。あ、そうだわ! 良かったらアルテアで暮らしなさい。合い言葉さえ覚えておけば自由に暮らせます。合い言葉は『のばら』です。忘れないように」

 

 ゲームなら効果音があるが、何も聞こえなかった。

 ま、当たり前だろう。

 

「のばら……」

 

 ヒルダ王女は遠くを見つめるように目を細めた。

 

「のばらは、フィン王国の紋章です。フィン……ああ、フィンはどうなるのでしょう。捕らわれた人々がフィンに集められているのを見たという者がいます……そういえば、マリアのお兄さんのレオンハルトも、行方知れずでしたね 。もしかすると、フィンの街にいるかもしれません」

「え? それは本当ですか?」

「そういう情報が私の耳に入っております。ただ……今のフィンは魔物がうろつく危険な街になっているそうです。簡単には近づけないでしょう。さて、そういうわけです。悪いことは言いません。貴方達はこの街で今は静かに暮らしなさい。私から言えるのはそれだけです」

 

 フリオニール達はガクッと深く肩を落とした。

 落胆したのだろう。

 まぁそれはともかく、ゲームとほぼ同じようなやりとりであった。

 

「そうですか……残念です」

 

 フリオニール達は立ち上がる。

 するとその時であった。

 

「ヒルダ王女、少し宜しいでしょうか?」

 

 後方から声が聞こえてきたのだ。

 そこにいたのは、先程階下にいたミンウという白魔導師であった。

 

「なんでしょう、ミンウ?」

「差し出がましいようですが、私から彼等に助言があるのです。宜しいでしょうか?」

「良いでしょう」

「ありがとうございます、ヒルダ王女」

 

 ミンウはそこで、俺達の方へとやってきた。

 少し俺達を見た後、静かに言葉を発した。

 

「私には君達の運命が見える。それは、私の運命とも大きく関わっている……まず、フィンへ行きなさい。それが運命を切り開く道になる筈だ」

 

 フリオニール達は大きく目を見開いた。

 

「え? フィンに?」

「どういうことです、ミンウ?」

 

 ヒルダ王女もそう言って眉根を寄せた。

 

「王女……私は彼等に賭けてみたくなったのです。それから……」

 

 するとミンウはそこで言葉を切り、俺に鋭い視線を投げかけたのだった。

 

「どうやら元気になったみたいだ。君と少し話したい事がある……今から私に付いて来て貰えるだろうか?」

 

 言い方は丁寧だが、有無を云わせぬ迫力があった。

 さてさて、これはゲームにない展開である。

 面白い。付き合うとしよう。

 

「ええ、構いませんよ」――

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