FINAL FANTASYⅡ 怪奇幻想譚    作:虚夢想

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ep6 発見の地

 

   [Ⅰ]

 

 

 薄明りの中、マリアは鋭い目で俺を見ている。

 暫し沈黙の時が過ぎる。

 なかなか名案が浮かばないので、俺は当初の設定で押し切ることにした。

 

「困ったなぁ。直感じゃ納得できないかい?」

「納得できないわ。私は今まで、直感で断言する人を見た事がないもの。だから、それ以外の理由を知りたいの」

「それは困ったな。本当に直感なのに。じゃあ、賭けをしようよ」

「賭け? いきなり何を言うのよ」

 

 マリアは眉根を寄せ、怒ったように口を尖らせた。

 

「だって俺の直感を信じてないんだろ? なら賭けをしようよ。君のお兄さんがもし死んでいたなら、俺を好きにすればいいからさ」

「え? じゃあ、兄が生きていたら、私は何を賭ければいいのよ」

「そうだな……君自身てのはどう? 俺も自分自身を賭けるんだしね。だから、君の兄貴が生きてたら……俺がマリアの事を好きにさせてもらうとするよ。色んな事をしてあげよう。へへへ」

 

 俺は熊が威嚇するように両手をあげ、変態っぽく指を動かした。

 食べちゃうぞ~ってな感じである。

 セクハラもいいところだ。

 

「なッ!? い、色んなって……そ、そんな事……と、とと、突然何を言うのよ! そんな賭けに乗るもんですか!」

 

 マリアは慌てふためき、恥ずかしそうにそっぽを向いた。

 一応、どういう意味か、理解はしたようだ。

 

「いいじゃん、別に。どうせ、俺が何言ったところで、生きてるレオンハルトを見ない限り、君は信じることが出来ないよ」

「た、確かにそうだけど……でも、私、貴方の事がどうしても信じられないわ。最初はミンウ様と少し似た顔立ちだから、ミシディアの方かと思ったけど、違うらしいし。それと旅してて気づいたけど、貴方、やけに腕は立つし、冷静だし……最初会った時、変な服を着てるし、フィンでは当たり前の事を一杯訊いてくるし……ちょっと変よ。一体、何者なのよ」

 

 変な服とは失敬な。

 まぁこの世界では斬新すぎるか。

 でも、今の出で立ちは、ロード・オブ・ザ・リ○グのアラゴ○ン風だから文句あるまい。

 それはさておき、本音が出たな。

 

「その口ぶりだと……俺が帝国の回し者だと疑ってるね。そうだろ?」

「ええ……ちょっとね」

 

 マリアは腕を組み、物凄い冷ややかな流し目を送ってきた。

 これは否定しとこう。

 俺はウボァーの仲間ではない。

 

「ブッブー、外れですな。俺はパラメキア帝国なんて知らないよ。ただの流れ者さ」

「そんなの信じられるわけないでしょ」

「信じられなくてもそうなんだよ。事実だから」

 

 嘘は言ってない。

 実際、流れ者だ。流浪人である。

 そう……これは流浪人探偵異世界浪漫譚なのだ。本当の俺は暖かい布団の中にいるんだぁ! などと思いたい今日この頃である。

 

「だって……」

 

 マリアは何か言いたげだが、それ以上言葉は出てこなかった。

 

「あ、そうだ……良い機会だし、俺からも訊いていいか?」

「何?」

「君の兄であるレオンハルト君だけど……フィンでは何の仕事をしてたんだ?」

「何の仕事って……昨年あたりから、兄はフィン城で見習い騎士をしていたわ」

 

 ゲームにない設定な気がする。

 これは訊くしかないだろう。

 

「へぇ、見習い騎士か……じゃあ、フィンの騎士団に入りたかったんだ」 

「うん、そうよ。でも、帝国が動き出してからというもの、兄はよく上官と共に、パラメキア付近に調査に行ってたから、あまり家にはいなかったけどね。兄は見習い騎士達の中で、武術全般が抜きん出てたから、よく駆り出されてたわ。それがどうかしたの?」

「いや、どういう兄さんだったのかなと思っただけさ。こんな可愛い妹に心配かけさせるなんて、悪い兄だなと思ってね」

「い、いきなり、何を言うのよ……」

 

 マリアはぎこちなく慌てて俯いた。

 たぶん、照れてるんだろう。

 

「照れてんのか。可愛いねぇ、マリアって。まぁそれはともかく、フィンがパラメキアに襲撃された時、レオンハルト君は一緒にいたんだな?」

 

 マリアは少し恥ずかしそうに俺を見ると、質問に答えてくれた。

 

「んもう……調子狂うわね。そうよ。兄は家にいたわ。私やフリオニール、それとガイや両親と共に、一緒に食事中だったんだから」

「ふぅん……なるほどね。そういう経緯があったのか」

 

 コレが本当なら、レオンハルトはずっと前から、帝国と繋がりがあった可能性もありそうだ。

 

「それがどうかしたの?」

「いやどうもしないよ。ただ、襲撃された時、どういう状況だったのかなと思っただけさ。ちなみに、どの辺りで黒騎士団に襲われたんだ?」

「フィンとガルテアの湖の間にある森の中よ。黒騎士団はそこで、私達を前と後ろから挟み撃ちにしたの。あの時はもう、私達ここで皆死ぬんだと思ったくらいよ……」

 

 マリアは抱き締めるように両肩に手をやり、怯えたように震えていた。

 当時のことを思い出したようだ。

 相当怖かったんだろう。

 だが、俺は別の視点でそれを聞いていた。

 

「へぇ……挟み撃ちねぇ。パラメキアの黒騎士団って、一般人にも執拗に追いかけてくるんだね。そこまでして、君達を襲いたい何かがあったのかな」

「何かって……何よ」

「さぁね……俺にはわかんないよ。ただ……戦争というものは普通、指揮系統を潰すのを優先するもんだ。それが成功すれば、勝ったも同然だからな。君達がそうだったとは、とても思えない。ましてや……帝国の精鋭部隊と聞く黒騎士団が、君達を狙うとはね。反乱軍の最高指揮官はフィン城だろうに……」

「え? あ……確かに」

 

 マリアも少し違和感を覚えたようだ。

 黒騎士団が精鋭というのは、昨日、ミンウに教えてもらった。

 それを聞いて、俺は今の仮説を立てたのである。

 ま、ゲームでは語られてない部分だから、俺が適当にゲーム知識と照らし合わせて考察しただけの話だが。

 

「さて……それじゃあ、お話はこれで終わりにするか。俺はもう少し、村の中を散歩でもしてくるよ」

「あ、待って。私も一緒に行くわ。他にも訊きたいことがあるから」

 

 しつこいマリアであった。

 

 

   [Ⅱ]

 

 

 翌日の早朝、俺達は夜明けと共に、ガテアの村を後にした。

 ここからフィンまでは、ガテアの北にある広大な湖の畔を延々と進む事になるそうだ。

 ちなみに、この湖の事をここではガルテアの湖というらしい。

 つまり、俺が気を失っていたという曰く付きの湖だ。

 なぜこんな所に俺がいたのか理解できないが、ミンウから大体の発見場所は聞いたので、この旅の途中で調べてみるつもりだ。

 なんでもミンウが言うには、フィンへと続く街道付近の湖畔だそうで、大きな岩が門のように2つある場所らしい。

 もう少しでフィンへと続く街道に出るらしいので、そこで確認しようと思っているところだ。

 それから暫く進むと、街道らしきモノが視界に入ってくるようになった。

 馬車が走るのか、2本の轍が延々と伸びている。

 道に草花があまり生えてないところを見ると、襲撃前は結構人々が行き交っていたんだろう。

 だが、パラメキアの襲撃があった所為か、街道には人っ子一人いない。

 寂しい街道であった。

 

「ここからが街道ですね。このまま道沿いに北へ進めばフィンです」

 

 フリオニールはそう言って、街道の先を指差した。

 

「了解。だが……その前に、ちょっと良いか?」

「なんでしょう?」

「この辺りの湖の畔に、門のような2つの大きな岩があるらしいんだが、どこかわかるか?」

「大きな岩? ああ、アレの事か。すぐ近くですよ。向こうです」

 

 フリオニールは、やや離れた所に見える2つの小高い丘を指差した。

 そこは木々が生えており、上に登ると見晴らしが良さそうな場所であった。

 

「じゃあそこに、ちょっと寄り道させてもらっていいか?」

「いいですよ」

 

 俺はフリオニール達に我がままを聞いてもらい、そこへと移動した。

 近くにきて分かった事だが、その丘自体が、なんと岩であった。

 長い年月で苔や草木が生え、丘のように見えていたのだ。

 しかもかなり馬鹿でかい。学校の体育館ぐらいありそうだ。

 そして、それらが門のように2つ並び、鎮座しているのであった。

 

「こりゃまた、バカデカい岩だね。木が生えてるから全然わからなかったよ」

「そうですよね。遠くから見ると確かにわからないかもしれません。それはそうと、なぜここに来たんですか?」

「ああ、それはだな、ミンウが言うには、俺はこの岩の間にある湖の畔で倒れていたんだとよ。ま、俺もここに来た記憶が無いから、わけがわからんのだがな。ま、とりあえず、確認の為に寄ってみただけさ」

「記憶がないって……どういう事よ? 自分の名前や、他の事はよくわかるくせに……」

 

 マリアが怪訝な目で訊いてきた。

 そう思うのも、無理はない話だ。

 

「そのままの意味さ……俺はもしかすると、微妙に記憶を失っているのかもな。まぁ何れにしろ、俺はフィンなんて所に住んでないし、パラメキアなんて国も知らないんだから。もしかすると俺は、何者かに拉致されて、ここに放置されていたのかもな……」

 

 コレが一番納得のいく理由だが、恐らく違うんだろう。

 

(ゲームの世界に拉致って状況がありえないからな。本当に、何が起きているのやら……ン?)

 

 ふとそんな事を考えていると、水中にキラリと光るものが見えた気がした。

 俺はそこで湖に近づき、端から水面に目を凝らしたのである。

 すると、少し離れた先に、建物っぽいモノが水の中に見えたのだ。

 

「このデカい岩の間にある湖の底に、何か見えるんだけど……アレはなんだ?」

 

 マリアが隣に来る。

 

「あれは月の女神の祠よ。このガルテアの湖は、欠けた月のような形をしているから、ここは月の女神が造った湖なんて言い伝えもあるわ。だから水の中に祠を建てて祭っているのよ。それにその昔、この湖には、月の民が舞い降りたなんて言い伝えがあるくらいだもの」

 

 俺は今の話を聞き、少し引っかかりを憶えた。

 なぜなら、ファイナルファンタジーの別の作品で、月の民という単語が出てきたからだ。

 だが、FFⅡではそんな単語は出てこない。

 これは気になる話であった。

 

(確か……FFⅣに月の民って出てきたんだよな。しかも、あの作品にもミシディアという魔導師の街があった気がする。偶然かこれは? この世界と何か繋がりがあるんだろうか……まぁいい、後にしよう。今は先を急ぐとするか)

 

 謎は尽きないが、他には何もなさそうなので、今はこれでやめる事にした。

 

「さて、それじゃ行こうか。わざわざ付き合ってくれてありがとうな。色々と興味深い話を聞けたから、来た甲斐はあったよ」

「わかりました、では行きましょう。フィンはもうすぐです」――

 

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