FINAL FANTASYⅡ 怪奇幻想譚    作:虚夢想

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ep8 森の中で

 

   [Ⅰ]

 

 

 マリアの癒しの魔法で、スコットの治療をできるだけした後、俺達は酒場を撤収する事にした。

 ちなみにスコットは気を失ったままで、今はガイの背中にいる。

 彼はたくましいので、力仕事をお願いしたのだ。

 また撤収する際、俺達は部屋にある木箱から、彼の所有物と思われるモノを幾つか拝借してきた。

 一応、ゲーム的に言えば、宝箱イベントである。

 木箱の中には、彼の装飾品と癒しの魔法薬があった。

 手に入れた時は「タータタタ、ターターター」という音楽が流れるの期待したが、無音であった。

 当たり前か。鳴ったら、寧ろ怖いわ。

 そんな冗談はさておき、とりあえず、スコットが目を覚ましたら、後で返すとしよう。

 その後、俺達はそろりそろりと階段を登り、上の酒場へと移動した。

 サッと確認したところ、酒場内には誰もいなかった。

 周囲にパラメキア兵の姿が見えないところを見ると、まだ西の方へ遠征中のようである。

 結構距離があるので、暫くコッチには戻ってこないだろう。

 などと思っていたら、酒場の街側にある入口から声が上がったのだ。

 

「誰だ、貴様等!」

 

 まさかのキャプテン登場である。

 来たのは1体だけだ。

 空気読めよ。

 

「チッ、いるんかよ。皆、撤収!」

 

 俺はそう言って、城塞側の入口を指差した。

 だが、上等兵であるキャプテンの動きは素早かった。

 

「逃がすか!」

「キャァ」

「マリア!」

 

 なんと、若干キャプテン寄りにいたマリアが、成す術無く捕まってしまったのだ。

 マリアの首はキャプテンの腕に絡めとられていた。万事休すである。

 ジタバタと必死にマリアはもがくが、キャプテンはまるで意に介さない。

 これは不味い事態だ。下手を打つと全滅である。

 

「マリアを放せ!」

 

 フリオニールは剣を抜き、叫んだ。

 ガイはスコットを背負ってる為、早く動けない。

 フリオニールは剣を抜いたが、流石にあの武器では、キャプテンのゴツい防具には歯が立たないだろう。

 見た目でわかるくらい、武具の性能差があり過ぎるからだ。

 ゼロダメージ間違いなしである。

 

「貴様等何者だ! 反乱軍か! 動くなよ、動けば、この女の首をへし折るぞ!」

 

 パラメキア兵はそう言って凄んできた。

 動いたら本当に、マリアを殺しかねない迫力である。

 俺はとりあえず、気を逸らす意味も込めて、奴に交渉してみた。

 

「可愛い女子の首をへし折るなんて、ひどい事するねぇ、パラメキア兵は。悪い事は言わない……その女を今すぐ放すんだ。そうすれば、俺も見逃してやるよ」

「はぁ? 何言ってる、貴様! 放すわけないだろ! 状況を見てモノを言え! 何者だ、貴様等!」

 

 とりあえず、ちょっとおちょくってやろう。

 

「しゃあねぇなぁ……俺達はパラメキア皇帝を始末する為に結成された謎の暗殺組織、ウボァー特戦隊だよ」

「ウ、ウボァートクセンタイ? なんだそれは? 反乱軍じゃないのか?」

 

 念の為、反乱軍の名は出さないでおこう。

 

「違うね。一緒にすんな。我々はもっと知的でユーモアがあり、そしてエレガントな存在だ。さてと、放すつもりがないようだし、交渉は終わりだ。フフフッ、用意が出来たみたいだ。後ろを見てみろよ」

「何?」

 

 馬鹿は振り返った。

 アホがみ~るぅ、豚のけ~つぅ。

 俺はその隙にキャプテンに接近した。

 

「何もないじゃないか……って、貴様ッ!? いつの間にッ!」

 

 敵の虚を突いた俺は、キャプテンの手首を(おもむろ)に掴んだ。

 気を逸らした事で力が抜けたので、奴の手は簡単に取れた。

 まぁ要は不意打ちみたいなもんである。

 

「グッ、貴様!」

 

 奴の手に力が籠もる。

 俺はそれに逆らわず、腕を引き、奴の体勢を少し崩した。

 その瞬間、マリアから奴の手が放れる。

 続けて俺は、身体を入れ替えるように、自分自身を回転させながら腕を捻り上げ、奴を投げたのだ。

 

「グァッ、なッ! ゲフッ!」

 

 その刹那、奴の身体は宙を舞い、背中から床に叩き付けられた。

 合気道の小手返しに似た投げ技だが、忍びの技なので、えげつない落とし方だ。

 だがこれで終わりではない。

 俺はそこで奴の首に手を回し、一気に頸動脈を締め上げたのである。

 一瞬ジタバタしたが、5秒ほどでパラメキア兵は動きを止めた。

 どうやら落ちたようである。

 俺はそこで手を離した。

 ちなみにこれは風魔の締め技で、篝締(かがりじ)めとか闇落としとかいう技だ。

 潜入で見つかった場合や事態を打開する時、都合の悪い相手を静かにさせる為のモノである。戦国時代はよく使われていたんだろう。

 

「さてと……こんなもんか。マリア、怪我はないか?」

「え、う、うん……大丈夫よ」

「凄いです……カザマさん。鮮やかに倒しましたね。武器も使わずに、今どうやって殺したんですか?」

 

 フリオニールは驚きの眼差しで俺を見ていた。

 

「殺してないよ。気絶させただけだ。ン? おッ、良いもの持ってんじゃんか、コイツ。貰ってくか」

 

 キャプテンの背中には弓と矢があった。

 赤い色をした弓で、弓柄に朱色の宝石みたいなのが埋め込まれている。

 もしかすると、炎の弓というやつかもしれない。

 こんなん問答無用でゲットやろ。

 ついでに、腰にある道具が入った革製の袋も頂戴しておいた。

 やってることは強盗だが、もうこの際、現実世界の倫理観は無視だぜ。

 本当は身ぐるみ剥がして、全部持って行きたいところだが、今は悠長にしてられないので、この辺にしとこう。

 

「よし、じゃあ行くぞ。またパラメキア兵が来ると不味いからな」

「は、はい」――

 

 

   [Ⅱ]

 

 

 酒場を出た俺達は、またガテアへと向かい移動を開始した。

 道中、ゴブリン等に何回か襲われたが、俺とフリオニールとマリアで、それらの対応をした。

 そして日が暮れ始めた頃、俺達はガルテアの湖付近の森で休むことにしたのである。

 怪我人がいるのでそんなに早くは移動できない上、幾ら体力あるガイ君でも、人を背負っての長い行軍は堪えるからだ。

 今回ばかりは野営しないと無理なのである。

 ちなみにだが、俺の場合、森の中で一晩明かすのは初めてではない。

 時々、俺もソロキャンプをする時があるので、そこまで嫌いでもなかったりするのだ。

 まぁそれはさておき、俺は地べたに腰を下ろし、木に背を預けた。

 他の皆も、そこで地面に腰を下ろす。

 ガイはゆっくりとスコットを寝かせた。

 ここからは一応、野宿である。

 

「さてと……この辺までくれば、パラメキア兵にもすぐには見つからないだろう。ガイ君、王子の様子はどんな感じだ? 道中、辛そうな感じとかはなかったか?」

「ずっと……眠ったまま」

「そうか。結構、体力失ってたからな。今はそっと寝かせとけ」

「わかった」

 

 そこでフリオニールが口を開いた。

 

「カザマさん……ミンウ様はフィンに行けと言ってましたが、スコット王子の事を知ってたんですね」

「いや、知らんだろ。酒場の親父も、誰か知らないと言ってたし。ただ、お偉いさんとはわかってたから、誰か確認したかったんじゃないのか。まぁとはいえ、不正確な情報を鵜呑みにも出来ないから、帝国に顔が知られてない俺達に行かせた……ってのが真相だと思うがね」

「あ、なるほど……そういうことか」

 

 コイツは心が綺麗なので、人を簡単に信じそうなタイプだ。

 マルチ商法にすぐ引っかかりそうである。

 

「まぁ何れにしろ、このまま王子を連れて帰れば、ヒルダ王女も流石にフリオニール達を認めると思うよ。君達は反乱軍になれるかもな」

「そうだと良いですね。でも……カザマさんはどうするんですか? カザマさんも反乱軍に?」

 

 俺は(かぶり)を振った。

 

「いや、俺は遠慮しとくよ。そういう殺伐としたモノは好きじゃないんでね。ま、といっても、報酬は要求するがな。ン?」

 

 するとマリアが、微妙な表情で俺を見ていたのである。

 何か言いたげであった。

 

「どうした、マリア? 何か言いたそうだけど」

 

 マリアは少し恥ずかしそうに口を開いた。

 

「あ、あの……さっきはありがとう。助けてくれて」

「ああ、それのことか。いいよ、気にしなくて。金になりそうな戦利品も手に入れたしね」

 

 俺はそこで、背中にある弓と、腰にある道具袋に視線を向けた。

 ちなみにこれは、炎の弓で間違いないそうだ。

 フリオニール曰わく、この弓で矢を射れば、炎の魔法が付加されるらしい。

 つまり、魔法の弓なのである。

 おまけに道具袋には、そこそこの金貨と、魔法書も入っていたのだ。

 まさかのキャプテン狩りで、ある意味、ラッキーな展開であった。

 

「そういうわけにいかないわよ。私、今度こそ死ぬかもって思って……だから……ありがとう、カザマさん。私……貴方に、何か出来ることあるかな」

 

 マリアは穏やかな表情で俺を見ていた。

 やや恥ずかしさが見え隠れするが、どうやら気を許してくれたようだ。

 ちょっとは信頼を得たみたいである。

 

「律儀だね、マリアは。俺達は今、旅の仲間だから、お互い様だよ」

「でも……」

「じゃあ今度、何か美味しいモノでも食べさせてよ。それでいいから」

「そんなのでいいの?」

「いいよ……ン?」

 

 するとそこで、呻き声が小さく聞こえてきたのである。

 

「う……うう、う……こ、ここは……」

 

 どうやら色男が目覚めたようだ。

 俺達の会話が目覚ましになったんだろう。

 

「おはよう、スコット王子。よく眠れたか」

 

 スコット王子は首を動かし、俺に視線を向けた。

 

「君達はさっきの……」――

 

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