無限の成層圏 虹になった男   作:syunin

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 あえてこの二次創作は徹底した一人称視点で描いています。
 つまり、適当に流されたりそもそも描写されない部分は「シャアにとってどうでもいい場面」という事です。
 


三話

 

 そして翌週。

 その間、一夏の幼馴染である篠ノ之箒がかのISを開発した篠ノ之束の妹である、なんて事が判明したり。

 一夏が私に「秘密だからな!」と言って謎の特訓をしていたり。

 そんなこともあり、決闘の当日。ピット搬入口にて、私がISを展開する。

 ハイパーセンサーに反応有り。非武装、IS待機状態の女性が一名。

 

 「どうやら、準備はよろしくて」

 

 セシリアが話しかけて来た。

 

 「ああ、いつも通りだ」

 

 「いつも通り。ISの起動ではなく搭乗が二度目の方が言うセリフではありませんわ」

 

 セシリアの言葉に、そういえばそうかと笑ってしまう。

 

 「まったく、自覚がありませんの?その経歴で、その腕前。全IS搭乗者を代表して言わせてもらいますわ、理不尽だと」

 

 「そういわれてもな。私は全力を尽くしているだけだ」

 

 「全力、アレでですわね。……織斑さんも導いて(・・・)差し上げるのですの?」

 

 「さてな。それは彼次第だろう」

 

 そう言うと、セシリアは笑った。

 

 「まったく、織斑さんには困ってしまいますわ。まさか自分が逃げるためにわたくしをクラス代表に推薦するだなんて」

 

 「そう言ってやるな。我々男性は、それだけでこの学園では目立つものだ」

 

 「目立ってなんぼのもの。そういう男らしさを見せて欲しいものですわね」

 

 「それは難しい事だ」

 

 セシリアの言葉に、私は苦笑しながら返した。

 

 「我々は本来、異物だ。せめてこの学園生活だけでも穏当に、と思うのも無理はない」

 

 「シャアさんもそうなのですか?」

 

 「まさか(・・・)

 

 「やっぱり。……不思議な人ですわね。優しくて、でもその瞳には何か野望のようなものを秘めている」

 

 セシリアの言葉に、私は素直に驚いた。

 この感受性、もしかしてセシリアも……?私との接触が、何かをひらめかせたとでもいうのだろうか。

 まあいい。今は目の前の勝負だ。

 

 「ではな。……精々、無様は見せないようにしよう」

 

 「どちらがですか(・・・・・・・)?」

 

 セシリアの言葉にあえて返さず、私はアリーナに出た。

 

 アリーナに出ると、既に一夏が待っていた。

 

 「よお、シャア……勝ちに来たぜ」

 

 「ならば見せてみるがいい。君の力を、今ここで」

 

 そうして、決闘の火蓋が切って落とされた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「よお、シャア……勝ちに来たぜ」

 

 俺、織斑一夏がこういうと、シャアはこう返す。

 

 「ならば見せてみるがいい。君の力を、今ここで」

 

 そうして、シャアは無造作に片手に持つライフルの様な銃を俺に放った。

 即座にブースターを吹かす。レーザーはさっきまで俺のいた所を通り過ぎていった。

 さらに二射、三射と続くシャアの攻撃を、すんでのところで回避する。

 俺の手札は近接ブレードしかない。それには驚いたし、遠距離武器の一つでも欲しいものだが無い物強請りをしている暇はない。

 どんどん攻撃が苛烈さを増す。しかし、こちらも最初こそこちらの機体____白式に振り回されていたが、制御が追いつく。

 こちらの勝ち筋は接近戦によるもののみ、ならば前に出るしかない。

 シャアの射撃を宙返りで避けるようにしつつ、そのまま高度をとる。

 そして一気にスラスターの出力を上げた。

 上空からの急降下、少しでも速度を乗せるため重力を味方につける。

 シャアの正確無比な攻撃を右へ左へ最小限の動きで避ける。多少被弾するが、それも覚悟のうちだ。

 

 「うおおおおお!」

 

 そして上段の構えから振り下ろされた一撃は、シャアの左手に展開されたブレードに受け止められる。

 鍔迫り合い。それは旋回するような形で行われた。こいつ、旋回の動きで力を受け流している!

 

 「成程……秘密の特訓とは、剣道の事だったか」

 

 「ああ、ISの機動はシャアが教えてくれたからな!」

 

 「だが、私もフェンシングなら少し心得があってな。受けて立つ!」

 

 シャアの言葉に、俺は強引に斬り上げ鍔迫り合いを終わらせる。瞬間、シャアの姿が一気に離れる。

 これが瞬時加速(イグニッションブースト)か!即座に機動へ、俺はシャアを中心とした円状に急速機動へ移行する。

 再びシャアの射撃。避けれると思ったそれは、白式の中心部分への被弾によって考えを改めさせられる。

 糞っ、進行方向を予測された!ただの機動じゃ無理だ。どうにかして、フェイントを混ぜながら接近するんだ!

 そのまま高機動戦にもつれ込ませようとするが、シャアがふと声を上げる。

 

 「そういえば一夏君。君は遠距離攻撃はしないのか」

 

 「生憎と何もないもんでね!」

 

 「そうか、……このまま引き打ちというのもつまらんな。どれ」

 

 そう言うと、再びシャアの姿がぶれる。

 

 「少し、斬り結んでみようか」

 

 瞬間、目の前にシャアの姿、左上段から袈裟斬りの構え。

 

 「上等だ!」

 

 シャアの斬撃をいなす。今度はこちらの番だ。

 逆袈裟、真向、左一文字斬りの三段攻撃は、しかしシャアにすべていなし、躱され、受け止められる。

 再びの鍔迫り合いの中、シャアに叫ぶ。

 

 「フェンシングってのも侮れないな!」

 

 「まあその技は今は使えるような状態じゃないがな」

 

 鍔迫り合いは、今度はシャアの方が切り上げた。

 またシャアの姿がぶれる。俺はそれを待っていた!

 

 「ほう、ついてくるか!」

 

 「やっと追いついたぜ!」

 

 シャアの瞬時加速に、俺の瞬時加速を合わせる。なるほど、こういう風に使うのか、瞬時加速ってのは!

 そのまま真向にブレードを振り下ろす。しかし、またシャアの姿がぶれる。

 

 「なんだよそれ!」

 

 「こういう風な使い方もできる」

 

 シャアの姿がまた遠く離れていき、レーザーが飛んでくる。

 思わず被弾しちまったが、まだまだやれる!

 

 「まだまだ、行くぞシャア!」

 

 「来るがいい!」

 

 本来なら間違いなく歯が立たない相手。しかし、俺は今実力を全部出しきっている!

 不思議な高揚感とともに俺はシャアのもとへスラスターを吹かした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「個別連続瞬時加速(リボルバーイグニッションブースト)!?何故アズナブル君が!?」

 

 真耶の驚く声が耳に入る。それもそのはず、今アズナブルが使った技術は高等技術、国家代表でも成功率は低い。

 

 「恐らく、知識として得ていたのではない。使える(・・・)と感じ取ったのだろうな、アズナブルは」

 

 私、織斑千冬がそう答えた。

 しかし、あの身のこなし、戦術眼、武器の取捨選択……アズナブルは化け物か?

 

 「しかし、アズナブルの動きには不可解な点が多いな」

 

 「不可解な点、とは……?」

 

 私の言葉に、真耶が聞き返す。

 

 「アズナブルの動きは、明らかに戦闘馴れ……いや、戦場馴れ(・・・・)している。……一体、どこであいつは学んだ?」

 

 「そんな、織斑君が見つかってまだ半年と経っていないんですよ!?なのに……」

 

 「だが事実、アズナブルは高等テクニックを易々と使いこなしている。明らかに戦場に出たことのある動きだ」

 

 さらに言うなれば、動きには我流が目立つ。何かしらの流派といったこだわりは見えないな。

 

 「しかし、アズナブル君の経歴には戦場に出たという形跡はありません。間違いなく、孤児院で普通に育ったと……」

 

 「もう一度洗いだしてみるべきかもな。ところで、気づいたか?真耶」

 

 「気づいたって、何がですか?」

 

 「アズナブルが個別瞬時加速を使ったのは、織斑が瞬時加速を使った瞬間だ」

 

 「まさか……」

 

 「解っていたのだろう、織斑が瞬時加速を使えるようになったと」

 

 それは最早審美眼や戦術眼といった様なものではない。予知に近い何かだ。

 

 「まさか!それじゃあまるで、一夏君の行動を予知したというんですか!?」

 

 「解らない。が、あの少年……」

 

 私は思わず笑う。

 

 「私とも勝負になるかもな」

 

 「そんな、まさか……」

 

 真耶が呟く。もし、仮にだ。

 アズナブルがそれ相応の経験を積めば。いや、積まなくとも。

 あいつに見合った機体(・・・・・・・・・・)があれば、私と対等に渡り合える存在になる。

 久々の強敵の出現に、思わず武者震いをする。

 そして、遠いどこかで活動しているであろう、世界に失望した友人の事を考えた。

 

 「なあ、束。見ているか?」

 

 お前が思っている以上に、この世界は広いかもしれないぞ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 およそ二十五分。シャアさんと、織斑さんの決闘は続いた。

 わたくしにとって、それはあまりに無謀で。だけど羨ましくて。

 なんとも複雑な感情を抱きながら、わたくしはこの決闘を見続けている。

 まるでシャアさんに導かれるかのように、織斑さんは練度を増している。

 しかし、シャアさんにはまるで届かず。

 内容は、わたくしの時とは打って変わって見えた。

 わたくしの時は、突き放すようで手綱を決して離さない。

 織斑さんの時は、赤子に歩き方を教えるように。しかし、要所要所で獅子が赤子を崖から突き落とすかのような苛烈さが待っている。

 両方とも、過程は違えど結果は同じ。最後に立っているのは、やはりシャアさんだろう。

 

 「言った通りになりましたわね」

 

 結局、わたくしも、ましては最近乗ったばかりの織斑さんではシャアさんの足元にも及ばない。

 届くのは、もしかしたらあのブリュンヒルデ……いえ、そこまでは考えすぎだ。

 

 「でも、シャアさんなら……」

 

 思わず、そう考えてしまうのは彼の圧倒的な強さか、魔性に感じるカリスマ性か、もしくはその両方か。

 そんなことを考えているうちに、決闘に動きがあった。

 織斑さんが中段から放った斬り払いをよけ、腹部に蹴りを入れるシャアさん。

 まったく、足技が好きなのですね……と思わず考えると、織斑さんの機体の姿が変わる。

 砂煙が晴れた先に現れた機体はより洗練され、白に輝いていた。

 

 「まさか、一次移行(ファースト・シフト)!?織斑さんは初期状態で、あそこまでの動きを!?」

 

 思わず呟く。初期状態であの動き、いくらシャアさんに導かれているとはいえ、あまりにも桁外れな潜在能力。

 そして、彼の両手に掴まれた剣。それが何なのかを、セシリアは直感的に理解した。

 

 「雪片(ゆきひら)____!」

 

 IS搭乗者なら誰も知っている武器。最強の象徴にして、織斑千冬のメインウェポン。

 織斑さんは軽く雪片を振ると、シャアさんを目掛けて一気にスラスターを吹かす。

 シャアさんが手に持つ試作型スターライトを放つが、織斑さんは雪片でそれを打ち消していく。

 そして、織斑さんが雪片を振りかぶり____

 

 『試合終了____勝者、シャア・アズナブル』

 

 ____決闘の決着がついた。なんともあっけなく。

 決定打は織斑さんの雪片使用によるシールドエネルギー切れ。要するに自滅だ。

 雪片は自身のシールドエネルギーを使い、シールドバリアーを斬り裂いて相手のシールドエネルギーに直接ダメージを与えられるまさに諸刃の剣。

 織斑さんは、最後にその使いどころを間違えた。

 まあ、もしもの話だが。

 

 「……ふん」

 

 織斑さんが使いどころをわかっていても、勝負にはならなかっただろうが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「ちくしょう……っ!」

 

 壁にこぶしを打ち付ける。こぶしが傷つくほどの気力は、残っていなかった。

 そのまま何度も壁を打っていると、声をかけてくる存在が一人。

 

 「一夏、大丈夫か」

 

 篠ノ之箒だ。

 彼女は何とも言えない表情で、一夏に声をかける。

 

 「決闘、惜しかったじゃないか。あと少しで____」

 

 「____惜しかった!あれ(・・)がか!?」

 

 一夏が思わず声を荒げる。

 

 「一夏……」

 

 「……ごめん、箒。つい辛く当たっちまって」

 

 「いや、いいんだ」

 

 箒の言葉に、一夏が謝る。

 少し考えるような素振りを見せた後、箒が言う。

 

 「でも、惜しかったんじゃないか?最後の一撃が当たれば、そのまま逆転で来たんじゃ……」

 

 「違う、あれは完全に避けられていた」

 

 一夏がそう返す。箒が驚いたような顔をする。

 

 「あいつは、シャアは何もしなかった(・・・・・・・)。俺がシールドエネルギー切れで負けるところまで予測していた。避けようと思えば避けていた」

 

 一夏は続ける。

 

 「俺が雪片を使った時、あいつはレーザーを撃ってきた。それで雪片の消耗具合を確かめていた」

 

 まるで絞り出すように一夏が言うと、それでも元気づけようと箒が言う。

 

 「でもすごいじゃないか、あんな操縦技術を持つ奴と互角に戦えて」

 

 「少しも互角じゃなかった!俺はシャアの手のひらの上だった!」

 

 思わずといった様子で、一夏が叫んだ。

 

 「なあ箒……あいつがさっきの決闘で、一回でもBT兵器を使ったか?」

 

 「まさか……」

 

 「結局のところ、俺は歯牙にもかけられていなかった」

 

 一夏が思わず箒に縋りつき、箒が赤面する。

 

 「なっ、一夏____」

 

 「____箒、強くなりてぇよ……っ!」

 

 一夏の言葉に、箒が黙り込む。

 

 「強くなりてぇ、少しでもあいつに、シャアの隣に立ちてぇ!」

 

 「……ああ、強くなろう。一緒に」

 

 思わず涙が目からにじみ出る一夏を、そっと箒が抱きしめた。

 そして、それを陰で眺めながら。

 

 「まったく、あれで折れんか。……強くなったな」

 

 自分の弟の強さを確認し、私、織斑千冬は、その場を後にした。

 





 実のところ、これってアムロ版とハサウェイ版も構想にあったりします。
 でもシャアの方が勝手に色々抱え込んで悲壮感を勝手に醸し出して面白いかなと思い、シャアにしました。
 ハサウェイだとマフティーってしまいそうだし……
 というか、この短い文字数で場面が何回変わるんだ?素人か俺は。いや素人だが。
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