大した文字数はありませんが、楽しんでいってもらえると幸いです。
○トレーニング開始
「それじゃ、今日から歌のトレーニングを始めていくよ。準備はいいかい?」
「うん。任せて」
「ところで......初めに断っておきたいんだけど」
「なに?」
「僕は人に何かを教えた事が一度もない」
「つまり?」
「何から教えればいいのかわからない」
「それはまずい。致命的」
「とは言え......流石にそれじゃまずいから、何か参考になるかと動画サイトで調べてみたんだよ」
「どうだった?」
「みんな言っていることがバラバラで、どれが正しいのか全く分からなかったんだよね」
「ふふ。困った」
「情報があり過ぎるのも困りものだね。......しかし!心配無用だよ、ヒロ。僕に任せてくれれば大丈夫さ」
「すごい自信。どうして?」
「彼らの動画を色々見てみて、一つ共通点があったんだ」
「共通点?」
「僕の方が歌が上手いということさ!」
「......」
「つまり、彼らより歌が上手い僕が思いのままに教えれば、自ずと歌が上手くなるってわけだ」
「...........結局、どうするの?」
「歌を聴いて、その都度教えるって形でいこうかな」
「わかった」
「それじゃ、まずはこのプレイリストの中からどれか一曲選んで歌ってみようか。それほど表現す力が必要な曲じゃないし、音程の動きも少ない、歌い易い曲を集めたからヒロでも歌えるはずだ」
「日本の曲が多い。準備してたんだ」
「む。流石に準備ぐらいはするとも」
「でも、なんで海外の曲じゃないの?」
「ヒロなら海外の曲も歌えるだろうけど、知ってる曲の方が早いだろうからね」
「そっか。じゃあ......これで」
「よし!それじゃあ伴奏を流すから歌ってみてくれ」
「分かった」
「ぜぇ......はぁ......ふぅ......ふふ......やり切った......」
「分かった。僕の想定が甘かった事は認めよう。それでも限度があると思うんだ」
「わ......わたしの......体力の無さを......舐めない方が......いい」
「そもそも、これ日本の童謡だよね?幼児でもこうはならないと思うんだけども」
「ふふ......手厳しい」
「というか、一曲歌うだけでこうなるんだ、少なくとも二曲目は絶対に無理だし、この様子だと数分待てば回復するって感じでも......」
「大......丈夫」
「......よし、今日は切り上げようか!」
「ま......まだ......歌える」
「いや、ちょっと考えてみて欲しいんだ」
「なに?」
「仮にこのまま続行して、そこで君が力尽きたとしよう」
「うん」
「そこを人に見られでもしたら、まず間違いなく警察を呼ばれてしまうだろうね」
「そうなの?」
「君と僕の体格差を考えると、さすがにね」
「それは、確かに」
「僕としてはここで君に力尽きられて前科を背負いたくないんだ。諦めてくれ」
「......なら、仕方ない」
「理解してくれたならよかった。明日はもう少し考えてメニューを組むようにするよ。それじゃあ、また明日」
「うん。じゃあね」
「......いつまでそこで座ってるんだい?」
「............歩けない」
「..................先は長そうだ」
○プロフェッショナル:根緒あさり
「......あさり先生」
「プロデューサーくん?どうかしましたか?」
「......仮に」
「?」
「仮に、自分の担当アイドルが......急に明日ライブをしたいと言い始めたとします」
「明日ですか?!初手から中々ヘビーですが......こほん。すみません、続けてください」
「......そのライブに、ーーさんのような世界的アーティストを招待するとします」
「......ええと?」
「もちろん、あさり先生程のプロフェッショナルであれば、簡単に解決してしまえる案件だとは思います」
「..................ま、まあ!プロデューサーくんの先生ですからね!......当然、そのような程度のことはこれまでに何度も経験......して......して......います!」
「そうですか!それなら良かった」
「............え?」
「実はですね、先ほどの例え話。今まさに私が直面している状況でして」
「......」
「さすがに私もこれは厳しいと思ったので......担当にできると言ってしまった手前、これで"出来ませんでした"だと、失望されてしまっても仕方ないと悩んでいたんですよ」
「............は」
「ですが、そうであるなら心強いです。単刀直入に聞きますが、この辺りで明日すぐに取れそうなライブハウスなどはーー」
「は か り ま し た ね!!!!」
「す、すみません。そうも言ってられる状況でなくて」
「プロデューサーくんにはがっかりです!どうせ!どーーせ!さっきのプロフェッショナル呼ばわりもお世辞だったんですよね!先生わかってますから!」
「いえ、あれは本音ですよ」
「え?」
「本音です。先生のことは尊敬していますので」
「そ、そうなのですか?」
「ええ。ですので、今回の件もアドバイスをいただけないものかと。ですが、このような形でお願いするのは間違っていました。申し訳ありません」
「プロデューサーくん?!頭を上げて!別に、気にしていませんから!」
「......今回の件も、大人しく篠澤さんに謝って日程を別にしてもらえるようにお願いしてみます。......無茶を言ってすみませんでした。では、失礼致します」
「ちょ、ちょーっと待ってください!」
「はい?」
「......いいでしょう。ライブ会場の確保は私の方でやってあげます」
「本当ですか!」
「で!す!が!直接会場に出向いてオーナーに交渉するのはプロデューサーくんがやること!」
「当然です」
「......そ、それとですね」
「?」
「さっき言っていた、ーーさんを招待するって話は本当なのですか?」
「ええ。篠澤さんがご友人だったそうで。私もいまだに信じられませんが」
「でしたら、くれぐれも失礼のないように。よく炎上する話も聞きますし、変わった感性をお持ちの方かもしれませんから......いや、プロデューサー君であればそこは心配しなくても大丈夫ですね。とにかく、上手くいかなくても落ち込まないでくださいね」
「分かりました。では、私は先方にご連絡しなければならないので、ここで失礼致します。改めて、すみませんでした」
「はい。今後は気をつけてくださいね」
「......押さえられそうなライブ会場を教えて欲しかっただけなのに、まさかこうなるとは......」
○篠澤広との出会い
「ん......んん............」
「目が覚めましたか?」
「......どこ?」
「保健室です。覚えていませんか?私があなたに声をかけた際、急に倒れてーー」
「覚えてる。運んでくれたの?ありがとう」
「......いえ、お気になさらず。もうすぐ保険医が戻ってくるはずなので、それまでベッドで休んでいてください」
「あなたは......プロデューサーの人?」
「ええ。今年からプロデューサー科に入学したものです」
「そっか。わたし、篠澤、広。あなたと同じ......一年生。はじめまして」
「こちらこそ。はじめまして」
「......なんで声をかけたの?」
「そうですね。篠澤さんがよろしければ、いくつかお尋ねしたい事がございまして」
「大丈夫」
「ありがとうございます。......失礼を重々承知の上で単刀直入に聞きますが。何故、アイドルを目指そうと?」
「......そんなおかしな事?」
「他の人であれば、確かにこんな疑問は持たなかったかもしれません。ですが、あなただけはどうしても気になってしまったもので」
「わたしのこと、知ってるの?」
「ええ。あなたはプロデューサー科の中ではとても有名ですから」
「そうなの?」
「14歳で大学を卒業した天才少女。日本有数の頭脳を持つ神童。そして、入学試験の実技で、あまりにも歪な成績を残した者」
「......照れる」
「一体どういった練習を積めば、歌唱評価だけが高得点で、それ以外の全評価が0点という珍妙な結果になるのですか」
「......歌、高得点だったんだ.....」
「あくまでも一般論として、ですが。アイドルを目指している人間が歌だけを練習し続けて、その肝心の歌に悪影響を及ぼすレベルにまで他のパフォーマンスを疎かにするのは、理解の範疇にない事でしたので」
「それで、わたしに?」
「ええ。なので、改めて聞かせていただきます。どうしてアイドルを?」
「わたしに......いちばん向いていないと思ったから、かな」
「......薄々そんな気はしていましたが。本当に意味がわからないですね」
「しばらく一緒にいれば、わかるかも?」
「勘弁してください」
「即答」
「それはそうでしょう。私にはあなたをトップアイドルにさせてあげられる自信が全くと言ってない」
「弱気だね」
「仕方もないでしょう。だってあなたは自分でも言うほどに、アイドルには絶対に向いていない」
「......ふふ、辛辣」
「失礼しました。ですが、そういうことですので。あなたをプロデュースすることはできません」
「......そっか。............プロデューサー」
「はい」
「わたしをプロデュースしてほしい」
「............はい?」
「えっと、わたしをプロデュースし」
「いえ、聞き取れなかったわけではなく。私の話を聞いていなかったのですか?」
「聞いてた、よ?」
「であれば、何故私にプロデュースを頼む流れに?先程はかなり酷い事を言った自覚があるのですが」
「自覚、あったんだ」
「話を逸らさないでください」
「わたしが......プロデュースしてほしいと思った、から?」
「その理由が知りたいのですが」
「おためし。いやになったら、契約解除すればいい」
「どうしてそこまで......」
「プロデューサーがいないと、アイドルになれないから」
「あなたに興味を持っていたプロデューサーは何人かいたはずですが」
「そうなの?」
「ええ。ですので、私があなたを担当する必要性はありません」
「......それでも、わたしはあなたがいいと思った、から」
「互いに、得する要素は何もないのに?」
「プロデューサーは、わたしを練習台だと思えばいい」
「......そこまでして、アイドルになりたいのですか?」
「うん」
「そうですか。......わかりました。プロデュースを引き受けましょう」
「......いいの?」
「......とりあえず、一ヶ月。お試しということで」
「うれしい」
「辛い道のりになりますよ」
「ふふ。むしろ......望むところ」
「そうですか。なら、遠慮はいりませんね」
「うん。厳しくして」
「分かりました」
「あのね。わたし......アイドルに、ちっとも向いていないけど。本気で、全力で、がんばるよ」
「......ええ」
「......それはきっと、楽しいから」
本作の登場人物紹介
篠澤広
本作の主人公的立ち位置。貧弱。
後述するーーは友人でありながら、歌の師匠でもある。
原作で彼女に友人がいなかった的なエピソードがあった事がこの話を作ろうと思ったきっかけだったりする。
歌唱力はかなり高くなった。が、ーーには遠く及ばない。およそのラインとしてはSyngUp!時代の手毬ぐらいという設定。ただし、歌唱を支える他の身体能力が軒並み最低限なため、成長速度は壊滅的。
大学時代の鬼トレーニングの結果原作よりは大幅にマシになっているものの、彼女の貧弱さは改善されなかった。......というか作者がしてはならないと感じた。
歌唱能力だけは秀でていたことで、何人かのプロデューサー科の生徒の目には止まったため、もしも目の前で倒れなかったら別のプロデューサーがついていたかもしれない。
作者の解釈として、原作での広のプロデューサーへの距離感の詰め方は、それまで友人がいなかった事でのコミュニケーション不足から来たものと考えており、彼女の好きには基本的に恋愛的な要素は微量ほどしか含まれていないと解釈している。
その為、あえて後日談ではポンコツ3人組の中で唯一異性の関係性を無くし、最後も誰とゴールインしたのかはぼかした。といった経緯。
無論、ーーに対してもそういった感情は向けていない。
ーー君
結局最後まで名前が出されなかった哀れなオリキャラ君。ここでは都合上傍線で表記。決してハジメハジメ君などでは無い。
広を超強化した歌ウマお兄さん。年齢は過去編だと19。当時の広に絡みに行ったと考えるとギリギリ犯罪的な絵面。お兄さんがイケメンなのと細身なことで許された。
作者の中での彼の容姿のイメージはルパコナのエミリオを金髪パーマにした感じ。
歌唱力は最強。しかし、広に教えていた当時は指導経験も全く無く、とにかく感覚的な指示をするタイプ。つまり向いてなかった。
アプリ版の初のプロデュースでは凄まじい速度でライブに漕ぎ着けてたのに本作では2年かけて歌唱力以外はまだ貧弱なのはそのせい。まあ教えるのは難しいよね。
広との別れの後は大学を中退。歌唱動画をネットに投稿し始め、瞬く間に有名シンガーに。本人のユーモアも相まって世界から愛されるアーティストになるが、自由すぎる性格故に定期的に炎上する。
プロデューサー
原作よりは苦労しなかった......と見せかけてむしろ胃痛の種が増えた苦労人。
原作とはプロデュース契約を結んだ経緯が少し異なっており、初期評価値は少しだけ上方修正されている。ただしその分彼の中でのハードルも上がっており、彼女の理解度が進むまではそこそこ荒んでいたような。
ーーのマネージャーとは苦労人仲間として定期的にオンライン飲み会が開催されている。その内容はもちろん担当の愚痴。ではなく意外と普通の世間話だったりする。聞かされはするが。なんだかんだで担当想いなのであまり外では愚痴は言わない。
その分本人に直接言っている。
ーーとは知り合い程度の関係。知名度は理解しているし、世間からの評価も理解しているものの、マネージャーからの愚痴のせいでイメージが完全にダメ男となっており、担当アイドルの歌の師匠という点以外であまり良いイメージを持っていない。
マネージャー
ーーのマネージャー。ーーがそこそこ有名になったタイミングで自ら志願し、個人的に契約してマネジメントをする事となった強火の元古参ファン。
しかし、マネージャーとして付き合っていく中で、彼の突拍子のない自由奔放っぷりに気がつけば熱も冷め、自分の目が届かないところで火種を生んで帰ってくるこの男にいつも胃を痛められている苦労人その2。
そんな男を世界的アーティストにのし上げる事に成功するぐらいには超有能マネージャー。なまじスペックが良すぎるあまりに、知り合いの異性は気が引けて寄って来ず、ストレスフルな独身生活を送っている。
そんな中で似た境遇のプロデューサーと出会った為、ものすごい勢いで意気投合した。海外在住の為、日本にはなかなか来れないものの、定期的にオンライン飲み会を開催しており、仕事が空けば来日してやっぱり飲み会をしている。
なお、顔を合わせる度にプロデューサーを誘惑しているものの、全く好感触を得られないことで自信を喪失している模様。
佑芽&千奈
原作通り、仲良しポンコツ3人組として行動している。筆者は佑芽のエミュレートが難しすぎて頭を抱えていた模様。
美鈴
原作通り。手毬ちゃんbot。
十王邦夫学園長
原作通り。プロデューサーへの信頼度は何故かカンスト済み。定期的に無茶振りをする。
あさり先生
原作通り。ただ、プロデューサーの性格を少し悪くしちゃった感じがあるので、原作より可哀想な立場となってしまった。
ポンコツすぎる故に婚活に失敗し続けて独身であることに嘆いているあさり先生概念誰か書いてください。