女神と妖精をこき使って無人島を発展させよう!   作:サニキ リオ

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第15話 ニート、牧場経営を視野に入れる

 次の日、俺はエリシャに口を酸っぱくしてあまり森に入らないように注意されてしまった。

 

 俺自身が大丈夫だとしても、うっかり俺を追いかけて森に入った人間が大怪我をするから、とのことだ。そもそも俺を追いかけてくる奴なんてエリシャくらいしかいないと思うのだが。

 仕方なく、今日の俺はエリシャの挨拶回りに付きそうことにしたのだ。

 

「いらっしゃいませ! あっ、エリシャとネイトじゃん」

 

 やはりというか、真っ先に向かうのはユイさんの雑貨屋だ。試しに二人の言葉がどれくらい通じているのか知りたくなったため、俺は女神の加護を切ってみることにした。

 

「ぐっどもーにんぐ、エリシャ」

「オハヨゴザイマス、ユイサン」

 

 ただの挨拶でもこの片言具合ではあるが、エリシャもユイさんもお互いに意味は通じているようで、そのまま普通に会話を始めたので俺も再び加護をオンにした。

 

「ユイさん、聞いてくださいよ! ネイトさんったらクマの巣穴に入っちゃって大変だったんですから!」

「クマの巣穴って……あんたよく生きてたね」

 

 ユイさんは呆れきった様子でため息をつく。

 

「まあ、クマは不在だったからな」

「え、ええ、そうですね。運良く不在でした」

 

 女神の加護の話をするわけにもいかないので、クマは初めからいなかったという体で話を進める。

 

「ネイトもあんま無茶してこの子に心配かけちゃダメだよ。この子にとっちゃあんたが頼りなんだから」

「今ならユイさんでも大丈夫だろ」

「あたしは細かいニュアンスまでわかんないっての。その点、あんたはそこまでわかってるっぽいじゃん?」

 

 ユイさんの勘の良さに冷や汗をかく。この人にはできるだけ隠し事は避けよう。期を見て女神の加護のことも話した方が良さそうだな。

 

「まあ、一緒に住んでるからな。それより、ユイさん。ゴンさんに頼んでた件、どうなった?」

 

 話題を変えるため、俺は前にユイさんを経由して頼んでいたことを聞くことにした。

 

「ああ、牛のことね。父さんも牛の善し悪しはわからないけど、業者を紹介するくらいはできるってさ」

「ありがとう。助かるよ」

「今度は酪農でも始めるの?」

「まあな」

 

 考えていたのはコナーだが、俺もその案は悪くないと思っている。

 

 前から考えていたのだ。この寂れた島に人を呼び込むにはどうしたら良いか。

 エリシャのおかげで女神を信仰していようと姿が見えないとわかった今、俺が女神に切り捨てられるリスクは少ない。それなら、女神に力を回復させて俺の受ける加護の量を増やした方が得になる。

 だったら、いっそのこと牧場を建ててこの島の特産品を増やした方がいいと考えたのだ。

 そのためにもまずは動物に詳しい奴を連れてこないといけない。

 

「詳しい日程はまた連絡するよ」

「オッケー、あたしからも父さんに伝えておく。きっと、おいしい牛乳が飲めるって大喜びするだろうね」

 

 その姿は想像に難くない。ゴンさんはスローライフに憧れているからな。結局やっていることはやり手のサラリーマンになってしまっているが。

 なんだかんだで彼も都会の人間だということだ。きっと土をいじるような仕事は性に合わなかったのだろう。社畜の悲しい性である。

 住民達への挨拶回りを一通り終えた俺とエリシャは自宅で夕食をとった後、まったりと輸入品の牛乳を飲んでいた。

 

「そういえば、動物に詳しい人なんているんですか?」

 

 エリシャは朝に話していた牧場の件が気になっていたようだ。

 ゴンさんが紹介してくれるという業者がどういう人かはわからないが、いい牛をくれと言って素直に一番いい牛をくれるとは思えない。できるだけ身内で牛の目利きができる奴を連れて行きたいところである。

 

「コナーに聞けば誰か紹介してくれるだろ」

 

 大地の妖精がいるんだし、牛の妖精くらいいるだろう。

 

「結局コナーさん任せじゃないですか……」

「適材適所だよ」

「あのネイトさん。それって自分が何もできないことの免罪符になりませんからね?」

 

 こいつニートに向かってキツい言葉を……。俺としては、もう少し甘やかして欲しいところだ。

 

「しかしまあ、資金繰りが厳しいな」

 

 俺はコナーから受け取った野菜の売り上げを見て頭を抱える。種や苗などの初期投資と、肥料などの諸経費がないということもあり、かなりの利益は出ているが、所詮はまだ二ヶ月だ。ここから牧場にも手を出すとなると、出費がかなりキツい。

 

「牛ってどのくらいするんですか?」

「種類によるけど、調べた感じ仔牛で数十万だからな。ミルクが出る状態で買えばいくらになることやら……」

 

 いくら稼いでいるとはいえ、そんな大金を一度に出すのは不可能だ。ダイヤモンドはちょっとずつ換金しないと怪しまれるし、今貯まっている貯金は家の改築で半分以上使ってしまった。

 ここから質のいい牛を何頭も買うとなれば、その出費はあまりにも痛い。

 牛舎も建てなければいけないし、餌を保存するサイロも建てなければいけない。

 

 要するに、初期費用があまりにも高いのだ。

 初めは牛二頭くらいで始めた方がいいかもしれないな。

 

「さて、今日はもう寝るか」

「ええ、おやすみなさい」

 

 俺とエリシャは基本的に夜更かしをしない。エリシャは元々の生活リズムがそうだったし、俺の場合はスマホがないからである。

 今日もエリシャは床で寝る。最近はマットを買ったため、寝心地はバスタオルよりマシだろうが、体には良くないだろう。

 早く大工のクダイさんの改築が終わればいいのだが、何せ大工は彼しかいない。いくら凄腕といってもゲームのように数日で完成させるのは厳しいだろう。

 

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