女神と妖精をこき使って無人島を発展させよう!   作:サニキ リオ

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第42話 ニート、前夜祭を開く

 観光協会への協力を取り付けたことで、収穫祭の準備は嘘のように円滑に進んでいった。

 何よりも大きかったのはユイさんの力だ。ユイさんは観光協会に振れる仕事を遠慮の欠片もなくごっそりとブン投げていた。

 おかげで広報や資材調達周りの担当者の手がまるっと空いた。

 適材適所。本当の意味でのそれを一番理解していたのはユイさんだったのかもしれない。

 

「というわけで、いろいろありましたが皆様の頑張りのおかげで無事に収穫祭を迎えられます。本番は明日ですが、今日はゆっくりと羽を伸ばしてください」

 

 収穫祭前夜。事務所前の広場では、女神牧場の社員達を集め簡素な立食パーティーを開いていた。所謂、前夜祭というやつだ。

 

「ま、堅苦しいのはこの辺にしてひとまず準備お疲れ様でした! 本当にありがとう、乾杯!」

『乾杯!』

 

 俺の乾杯の音頭に社員達が応じる。そして、思い思いに歓談をし始める。

 そんな中、一人で黙々とビールを飲んでいるカイジの元へと向かう。

 この数日間は忙しかったのでゆっくりと話す時間が取れなかった。だからきちんとあのときのお礼が言えていなかったのだ。

 

「カイジ、ありがとな」

「ん、何がだ?」

 

 カイジは俺の言葉の意図がわからないのか、首をかしげている。

 

「俺達がお前の力だろうがって言ってくれただろ。あれ、嬉しかったんだ。だから、ありがとな」

「あれか。俺はただいつかの誰かさんと同じことを言っただけだ」

 

 ニヒルな笑みを浮かべるとカイジはコップの底に残っていたビールを一気に呷る。

 

「へぇ、カイジさんカッコいいじゃん」

「けほっ、げほっ、ユイさん!?」

 

 カイジがビールを呷ったのと同時にユイさんが声をかけてきた。そのせいでカイジは激しく咽て胸を叩き始める。最後まで締まらん奴だ。

 

「ユイさん、観光協会の方の前夜祭に参加しなくていいのか?」

「適当に酔わせて抜けてきたの。あっちにいても若い頃の自慢話や愚痴ばっかでつまんないし」

 

 ゲンナリした表情から普段の苦労が窺える。きっとユイさんも楽しくお酒が飲める場所に来たかったのだろう。

 

「ユイさーん! 今回は本っ当に助かりましら!」

「いいの、気にしないでエリシャ――って、顔真っ赤じゃん。まだ乾杯してそんな経ってないでしょ」

「大丈夫れす! 酔ってませんから!」

「あっ、ダメな奴だこれ」

 

 突撃してきた酔いどれ酒雑魚シスターエリシャにユイさんは呆れていた。この二人も今や言葉の壁などないかのように感じるくらい仲良くなったものである。

 

「あれ、メグミさんがいないな……」

 

 そういえば、乾杯した後からメグミさんの姿が見えない。意外とあの人、こういう賑やかな場は苦手なのだろうか。彼女も楽しんでもらえているといいのだが。

 一通りみんなの様子を見て回った後、俺はビールを持って毎日通っている泉までやってきた。

 

「ほれ女神、乾杯だ」

「がぼごぼっ……泉に直接ビール注ぐんじゃないわよ!」

 

 ビールを注ぐのと同時に、女神は口を開けながら勢いよく泉から飛び出してきた。

 えっ、何今の。おもろ。

 

「まったく、あんたの私に対する態度は相変わらずよね」

「なんだよ敬って欲しいのか?」

「うん、切実に……」

 

 女神はゲンナリした表情を浮かべていた。なんだろう、さっきこんな表情を見た気がする。

 

「ところで、ステーキは?」

「そういうのは明日の本番まで取っておけ。今日は前夜祭なんだから軽くでいいだろ」

「何よ、ケチな男ね」

「生憎、ニートから社長に転職したもんでね。ケチで結構」

 

 冷静に考えれば、とんでもないジョブチェンジである。何をどう間違ったらこうなるのか。

 いや、そもそも異世界転移から始まって無人島を開拓することになったのだから今更か。

 

「それより、明日は無人島だったとは思えないくらい人が来るんだ。女神パワーの回復も凄いことになるだろうよ」

「そうね。ダイヤモンドもらったときより力もらえるかもね」

「それ以上の力をくれてやるよ」

 

 軽口を叩き合うと女神は笑顔のまま泉の中へと戻っていった。

 毎回思うのだが、やっぱり人間っぽい見た目のものがゆっくりと入水していくのは絵面があまりよろしくない気がする。

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