女神と妖精をこき使って無人島を発展させよう!   作:サニキ リオ

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第45話 ニート、シスターを幸せにする

 港に到着した俺達を待っていたのは、既に出港準備を終えた定期船だった。

 乗船待ちで列をなす人々の中、必死に辺りを見渡すがマザーダリアの姿は見えない。既に出港してしまっているのか、それとも人気が少なくなるタイミングを見計らってなのか。

 

「くそっ、人が多すぎて探すに探せないぞこれ……」

 

 隣へ視線を向ければ、そこには今にも泣きそうなエリシャの横顔があった。

 

「安心しろ、絶対に見つける」

「ネイトさん……」

 

 安心させるようにエリシャへ告げると、体に宿っている女神の加護を通して女神へと祈る。

 

「頼むぞ、女神……!」

 

 こういうときの神頼みだ。いくら駄女神といえど、肝心なときには頼りになることは俺が一番よくわかっている。

 

『任せなさい。女神たるこの私が導いたげる』

 

 そんな祈りが通じたかはわからないが、女神の声が脳内に響いた。口調こそいつもの調子だったが、その声には不思議となんとかしてくれるんじゃないかと思わせる頼もしさがあった。

 すると、港のレストランから一人の修道服に身を包んだ女性が出てきた。

 

「なんだい、女神の奴。急に脳内に語り掛けてくるなんて……」

「マザーダリア!」

 

 その女性の姿を見るや否や、エリシャは弾かれたように駆け出した。

 マザーダリアと呼ばれた女性は、そんなエリシャの姿に一瞬だけ目を見開いた。

 

「エリシャ、どうしてここに」

「それはこちらの台詞です!」

 

 困惑するマザーダリアを前に、エリシャは嗚咽混じりに叫ぶ。

 

「私があのときどんな気持ちで……!」

 

 エリシャの瞳からは止めどなく涙が溢れていた。

 

「すまなかったね、エリシャ……こんな立派に育って」

 

 マザーダリアはそんなエリシャの頭にそっと手を乗せ、優しく撫でた。

 その表情は優しげで、全てを包み込むようなマザーの名にふさわしい慈愛の満ちた顔だった。

 

「私、二十歳になりました。世界を旅して様々な人に出会って、今こうしてこの島で暮らしています」

 

 嗚咽混じりに、エリシャは今までの自分を語る。マザーダリアはそんなエリシャの話をただ静かに聞いていた。

 

「私は出会いに恵まれました。マザーや孤児院のみんな、そしてネイトさんを始めとしたこの島で出会った人達。みんな私にとってかけがえのない宝物です」

 

 そこまで語ったエリシャは、マザーダリアと向かい合って目をまっすぐ見つめる。

 

「私は今、最高に幸せなんです……だから、私を拾って育ててくれて、本当に……! ありがとうございます!」

 

 そして、エリシャは涙に濡れた顔のまま、マザーダリアの胸に飛び込むと、今まで我慢していた思いをぶちまけるように泣きじゃくった。

マザーダリアはそんなエリシャを受け止め、そっと抱きしめた。

 

「……そうかい、そいつは何よりだ」

 

 マザーダリアは多くを語らなかったが、その短い言葉にはエリシャへの想いが溢れていた。

 それから、ひとしきり泣いて落ち着いたのか、エリシャはゆっくりとマザーダリアから離れると涙を拭った。

 気がつけばすっかり出航時間間際になってしまったらしく、乗船待ちの客達は慌ただしく船に乗り込みはじめる。

 船に乗り込む人達をどこか遠い目で眺めていたマザーダリアはポツリと呟いた。

 

「さて、どうしたもんかね」

「一緒に住めばいいじゃないですか。せっかく、再会したんですし」

 

 ここぞとばかりに提案してみれば、マザーダリアは複雑そうな表情を浮かべた。

 

「今更、誰かの世話になるつもりはないさね。私は旅を続けるよ」

「そう、ですか……」

 

 マザーダリアの言葉にエリシャはしょんぼりと肩を落とす。そんな彼女を見かねてか、マザーダリアはポリポリと頭をかきながら口を開いた。

 

「でもまあ、たまには娘に顔を見せに来るものいいかもね」

 

 マザーダリアのその言葉を聞くと、エリシャはパァと表情を輝かせる。その光景を見てつい笑みが零れてしまう。

 

「素直じゃないですね」

「どうせ坊やも似たようなもんだろうに」

 

 鼻を鳴らすと、マザーダリアはカツカツとヒールを鳴らして乗船口へと向かう。

 そして、何かを思い出したかのように振り向くと一言だけ俺に告げた。

 

「坊や、エリシャのことをよろしく頼むよ。私の自慢の娘さね」

「はい、もちろんです」

 

 俺の返事に、マザーダリアは僅かに笑みを浮かべると今度こそ港を去るのであった。

 

「行っちゃったな」

「そうですね」

 

 ゆっくりと港から離れて行く定期船もとうに見えなくなり、俺達だけが取り残される。

 その様子をどこか遠い目で眺めていたエリシャはポツリと呟いた。

 

「私、この島に来て良かったです」

 

 その顔には、晴れやかな笑顔が浮かんでいた。

 

「ネイトさん。私を幸せにしてくれてありがとうございます」

「安心しろ。これからもっと幸せにしてやる」

「ふふっ、楽しみにしてますね」

 

 きっとこれからも騒がしくも楽しい日々が続いていく。

 そんな予感めいたものを感じ、俺達は互いに笑みを浮かべるのであった。

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