女神と妖精をこき使って無人島を発展させよう!   作:サニキ リオ

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第5話 ニート、周囲とのコミュニケーションが廃絶する

 それからは特に何をするでもなく一日が終わり、次の日からも昼起きて食べて寝ての毎日を繰り返した。

 生活だけ見ればニートだった頃と何も変わっていないように見えるが、ネットやゲームなどの娯楽がないのは苦痛だ。せめて漫画くらいは欲しいものである。

 

 ご近所付き合いなどするわけもなく、俺の話し相手と言えば妖精のコナーか女神の奴くらいのものだ。というか、人外としか会話してなかったりする。

 コナー達が収穫した作物もゴンさんの家の前にある出荷箱に入れてるから、まず彼らと会うことはない。そもそも、ゴンさん達も農場には来ないのだ。

 

 金に関しては、出荷箱にそのまま入金されている。どうやら船が直ったようでゴンさんとクダイさんが近場の街まで行って取引をしてきたらしいのだ。俺は報告を受けてないからよくは知らない。

 最近ちょっとずつではあるが、新しい家が建ち始めている。俺の知らない間に住民は増えつつあるようだ。

 

 そして、すっかり周囲とのコミュニケーションが廃絶して約二ヶ月が経った。

 季節は春の中頃。

 春と言ってもこの島の気候の影響かまだまだ肌寒い季節だ。

 要するに外出には適さない季節ということだ。

 

「いらっしゃいませ! ……なんだネイトか」

「ど、どうも」

 

 ユイさんは俺の顔を見るなり営業スマイルを引っ込めてつまらないものを見るような顔になった。そんな扱いではあるが、これでもユイさんは島の住民の中ではまともに話せる方なのだ。出荷や買い出しの時は必然的に顔を合わせるからである。

 

「はい、これ。どうせ小麦粉でしょ?」

「あ、ありがとうございます」

 

 予め俺が来ることを予想していたのか、ユイさんは纏めておいた小麦粉をすぐに出してくれた。相変わらず仕事が早い。

 

「まったく、どんだけ小麦粉使うのよ……」

 

 呆れたように呟いてカウンターへと戻るユイさん。考えてみれば週一単位で50kgの小麦粉を買っていくなんて不自然だったか。

 

「俺はパン派なんですよ」

「そ、あたしもパン派よ。父さんは米派だけど」

「何かイメージ通りですね。都会っ子が田舎暮らしに憧れる親父に連れてこられた的な」

 

 ユイさんは見るからにギャルっぽい見た目だったため、俺は感じた印象をそのまま口にした。

 すると、ユイさんは顔を顰めて俺の言葉を肯定した。

 

「や、事実その通りだし」

「と、言うと?」

「あたしは嫌って言ったのに父さんに無理矢理連れてこられたの。結局、流れ着いたのは田舎より酷いとこだったけどね。ま、今は高校の時にやってたバイトと近いことできて悪くはないけど」

 

 話によれば、昔は都会の方で雑貨屋アルバイトをしていたらしい。高校卒業と同時にゴンさんに連れてこられる形で船に乗り現在に至るのだとか。

 

「高校卒業ってことは、ユイさんって俺の五つ下だったんですね」

「あんた私より五つも上だったの……その割には苦労してなさそうな顔してるけど」

「そうですかね」

 

 ただ単に童顔なだけだと思っていたのだが……。どうやら俺は思ったよりもニートが刻まれた顔をしていたらしい。

 

「てか、あたしより年上なら敬語やめなよ」

「いや、まあ、はい……わかり、わかった、よ」

 

 たどたどしくタメ口を聞く俺に、ユイさんは呆れたようにため息をつくのだった。

 

「……そんな卑屈になんなくてもいいでしょ。少なくともあんたがいなきゃこの島の人達はまともに暮らせてないんだから」

「そ、そうか?」

 

 正直、俺なんていない方がいいくらいに思われてそうなんだけど。

 

「あんたが食べ物を供給してくれたから、私達は生きてる。あんたが質の良い野菜を育ててくれたから、父さんは取引相手を見つけられた。これだけやってれば十分でしょ」

 

 そう言われると凄いことをしている気分になるが、実際に頑張っているのはコナー達だ。俺が受け取っていい言葉じゃない。

 

「ありがとう、でも俺は本当に大したことはしてないんだ」

「……ま、あんたが言うんならそうなんでしょ」

 

 俺の言葉から何かを感じ取ったのか、ユイさんはそう言ったきり黙りこんでしまった。俺に関しては言わずもがなである。

 

「「……………………」」

 

 か、会話が続かない……これはさっさと退散した方がいいな。

 

「じゃ、じゃあ俺はこれで」

「またの御来店をお待ちしてます」

 

 逃げるように雑貨屋を後にした俺に、ユイさんはどこまでも事務的に対応するのだった。

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