無謀なる者達   作:芥川賞候補者

7 / 9
六話

戦闘が始まると、まず最初にロア先輩が”金獅子の咆哮(ゴールデン・ロア)”を、正面から突っ込んでくるゴブリン達に打ち込んだ。

 

装弾数が9発と大容量かつ、12mmを超える口径と、専用の銃弾である「Crusher13」を扱う”金獅子の咆哮”は、全長50㎝と重量6㎏という、ハンドガンというより、「小型の大砲」と言うべきものである。

 

一発撃つたびに、獅子の咆哮と聞き間違うほどの、耳を劈く音が鳴り響き、空気が震える。そんな並みの者では片手ではもちろんの事、両手で包み込んでも撃つことが困難である化け物を、ロア先輩は片手で軽々と扱い、流れるように9連発する。

 

不幸にも集団の先頭におり、まともに近距離での一発を喰らった9匹はゴブリンは、それぞれ体に巨大な穴が開き、あまりの威力に40㎏はありそうな体が、後ろを巻き込みながら5mは吹っ飛んだ。

 

文句なしの一発一殺(ワンショット・ワンキル)、いつみても背筋が凍る威力だ。

 

「ふぅーむ。なかなか突進の勢いが落ちないね」

 

改めてゴブリン達を見ると、瞳孔が開き、口は半開きで涎が垂れている。獲物が無いため、極度の空腹状態に陥っているのだろう。

 

「周りを見ずに突っ込んでくれるなんて、絶好の的でしかないんだけど…。ちょっと装填が間に合わないな」

「この数だとリアシュの魔法で一掃するのが良さそうだ。俺とカイトで前線を張る、その間にリアシュは詠唱しておけ。アルトは…、うん、まぁ、頑張れ」

『了解』

「おいなんか言えよ」

 

使えないと思われてるのが露骨すぎて泣きそう。まぁ現に役に立たないからしょうがないな!やっぱり泣きそう泣くわ。

 

いっとけど、アンタらが異常なだけで、俺が戦えない訳じゃないんだからね!

 

気を取り直そう。ロア先輩の小規模でありながらも、強烈な威力の弾幕の途切れを補うように、カイト先輩と団長が前線に立った。

 

カイト先輩の戦闘スタイルは、腰に10個ほど備えたトマホークを駆使して、近距離から切りつけたり、遠距離から投擲するなどの、遠近柔軟なトリッキーな物である。

 

しかし単に色物な訳ではなく、随所に確かな技術が垣間見える。四方から来る攻撃を両手の斧で受け、腕を素早く後ろに戻す事で相手の姿勢を崩し、その隙を狙って正面に斧を投擲。すかさず腰にある予備を構え、阿保面を晒している左右のゴブリンの脳髄にそれぞれ刃を突き立てた。

 

華麗と言う言葉が似合う、余りにも鮮やかな戦い方である。俺が女だったら惚れてた。

 

「もう一丁!どっこイ、トマホォォク!」

 

前言撤回掛け声が余りにダサい。しっかり狙った相手をヘッドショットしてるのは凄いが、これでは千年の恋も冷めるというもの。

 

ストーカー癖と言い、サイコパスと言い、ありとあらゆるところで残念過ぎる男だ。

 

続いて団長、団長は…、うーん凄い団長してる。

 

団長のメインウェポンは二つの槍だ。一つは黒色の槍、もう一つは白色の槍である。

 

「しかしまぁ、いつみても常識を疑うような武器だなぁ…」

 

『冒険者は槍を持つな』、誰が言ったかはわからない、一種のことわざのような物だが、それほどまでにダンジョンで槍を持つというのは推奨されていない。

 

ダンジョンの内部は比較的に狭く生成される事が多い。洞窟や密林、城塞をベースとしたダンジョンは特にだ。

 

そういったダンジョンの中で、広い場所でなければ振り回しにくく、突きもしづらい槍と言うのは、多大なハンデを負う。

 

それに、近距離なら剣の方が取り回しが優れ、中距離なら銃という誰でも使えて威力も高い武器が存在しているのだ。

 

これを踏まえ、団長の武器を再び見てみよう。二つの槍は190cmはある身長の団長の背を僅かに超える程長く、先端に刃がついていない。もはや、槍と言うよりは棒だ。

 

見る者が見れば泡を吹いて倒れ、使用者は自信と無謀を踏み間違えた愚か者か、デメリットを理解できない馬鹿のどちらだ?と聞きそうなものである。

 

だが、団長が馬鹿であるというのは事実であるものの、その槍使いと戦い方は到底尋常と言える物ではない。

 

ロア先輩とカイト先輩によって空白ができた集団の一部に突貫し、二つの槍を手足のように縦横自在に操りながら、並み居るゴブリンの悉くを撃ち滅ぼしている。

 

一見すれば、ただ槍を振り回しているだけに見えるだろう。団長の一連の動作には、基礎的な物が一切ないからだ。動きも多彩に過ぎて、適当に技を繰り出しているだけに見える。

 

しかし、一度でも槍を用いた者ならば理解できるだろう。両手に在る槍を、それぞれ十全に扱いながら、一匹の打ち漏らし無く捌き、尚且つ前進する事の難しさを。

 

突き、払い、打つという、一見すれば殺傷能力に欠ける攻撃を、人智を越えた技量で持って、一撃で生物を殺すに足る物にしている事を。

 

そして、団長の恐ろしい所はこの技術だけではない。

 

「団長!後ろから一匹来てますよ!」

「ん?気づかなかった。大丈夫だ、筋肉で受ける」

 

決死の覚悟で団長の背後から奇襲をかけたゴブリン。しかし無情にも、その一撃は傷をつける事すら敵わなかった。

 

マジでどういう体してんだよ。明らかに人間辞めてんだろ。ゴブリン君も心なしか「そんなの有りかよ」って顔してるよ。あ、槍で吹き飛ばされた。流石に可哀想。

 

来世は人間に生まれるよう願ってやろう、まぁ次生まれる時まで人間が生き残ってるかはわからないけどなハハハ!

 

「半分くらいは減らせたな。リアシュ準備できたか?」

「オッケーだよ団長ちゃん!いつでもイケる!」

「よし、お前ら全速力で離れるぞ。巻き込まれたら自己責任だ」

「いや団長信じて!私を信じて!大丈夫だって!今回は詠唱は完璧だし、魔力も落ち着いているから!」

「お前の大丈夫が大丈夫だった事ねぇだろ!」

「アルトちゃんは黙って!」

 

22回。この数がわかるか?俺がお前の魔法が原因で教会送りになった回数だ。お前マジでいい加減にしろよ。

 

「よーし!十分離れられただろ、もう撃っていいぞ!くれぐれもこっちに向けて撃つなよ!あと威力を今回は抑えろ!いっつも過剰なんだよ馬鹿!」

「アルト君待って!ずっと後ろにいた君と違って、僕結構前に出てたんだよ!まだそんなに離れられてない!」

「団長とカイト先輩はもう来てるぞ!アンタの努力不足だ!」

「人外達と比べないでよ!」

「ええい、うるさーい!ちょっとはマジで信用しろぉー!行くぞお!《黄金の怒り(ゴールデン・レイジ)》!」

 

星の輝きと見紛う程の閃光が満ち、一瞬の静寂ののち、空と大地を力任せに裂いたかのような轟音が鳴り響く。こえー、地下大水道の時あれレベルの魔法が、俺の至近距離で暴発したの思い出したらもっとこえー。

 

辺り一面に立ち込めた土煙と、破砕した石たちの雨が止み終わると、先程までいたゴブリン達は一つの塵すら残すことなく消え去っていた。

 

「うわぁ…すっげえ…」

「いつもの事とは言エ、やっぱりあの威力は凄いネ…。惚れ惚れしちゃうヨ」

「お前が言うと事案だな」

「ちょっト団長!ボクまだ若い方なんだけド!ロリコンじゃないっテ!」

「そもそもリアシュちゃんは小さいだけでロリじゃない…。あれ?そういえばリアシュちゃんは?」

『あ』

 

周りを見たが、何処にもいない。やべぇ、もしかして巻き込まれたか?だからあれほど威力を少しは抑えろと言ったのに!

 

「ここだよー…」

 

ん?何処かからか細い蚊の如き音が…

 

「こぉこだよー…!」

 

うわああいたああああああ

 

「上半身完全に土に埋まっててワロタ」

「おーウ。これが因果応報って奴かナ?」

「いつも巻き込まれてる僕達を見かねた天罰かな…」

「めっちゃ面白い絵面だな。リアシュ、こりゃ宴会のいいネタになるぞ」

「そういうの良いから早く助けて…。いや、マジで息できなくて死ぬから」

 

しょうがないから全員で足をひぱって助けた。小さい頃やったカブの収穫みたいで楽しかったです。

 

団長が力加減ミスってリアシュが泣いたの、可哀想だったけど凄い面白かった。カイト先輩が女性の泣き顔にカタルシスを感じる理由がちょっとわかってやだ。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。