□■ネクス平原
空を見上げれば、空を駆け、泳ぐ二頭の大亀。曳かれるのは、黄金都市。
現実離れした光景。
「来やがったねぇ……!!」
そう呟くのはマッドサイエンティスト、Mr.フランクリン。
口端は大きく歪み、その表情からは辛酸と苦渋、期待がない交ぜにされたようなものであった。
それはきっと、以前テゾーロに与えられた敗北から来る苦手意識、そして、執念深さから来るこれから行う復讐の機会への高揚だろう。
硬質な髪を振り乱し、フランクリンは自らの<エンブリオ>へと指示を出す。
────────シュウゥゥゥゥウウウウウゥゥゥウゥゥゥゥゥゥ…………
テゾーロの<エンブリオ>にも勝るとも劣らない巨躯のエンブリオが、複数ある内の扉を複数開放する。
地上により近い扉からは、甲羅に幾本もの砲塔が生えている亀の群体。
空に近い門からは、体に砲身や爆弾が埋め込まれた怪鳥や翼竜の群体。
それぞれが、《ストレージ》から解放され、空へと目を向けた。
スーサイドシリーズの中でも、対空戦闘の性能に秀でており、指示が聞かずとも空中の存在を優先的に攻撃する存在である。
元よりギデオンへの攻撃が主な旨であるため数こそ少ないものの、それぞれの戦闘力は亜竜から純竜級下位、対空存在への与ダメージだけなら純竜中位まで届くレベルの存在である。
『『『『『Ooooooohhhhhhhhhhhh!!!!!!!』』』』』
『『『『『Yecgaeehhhhhyyyyyyyy!!!!!!!』』』』』
亀の群体らは対空砲撃を開始、怪鳥や翼竜も群れを成して突撃を開始した。
だが、出現時と同じく大亀らも都市を曳くだけのただの騎獣ではなかった。
『『《──────────―》!!!』』
後はなるようになるのみ。
正しく豆鉄砲程度の威力に下がった砲弾の数々は、分厚く、硬く、そしてよくよく見ればびっしりと生え揃っている
何の痛痒も感じていないようであった。
「《竜王気》か!」
フランクリンが叫んだ。
《竜王気》。【竜王】の一族が持つ、共通のスキル。竜のUBMの大半が持っているスキルでもある。
能力としては、物理・魔法を問わずに威力を減衰させるというもの。
テゾーロの【エル・ドラード】を曳く騎獣の名は【ギガントタートル】。
またの名を【
絶対に《竜神装》に至ることはないが、彼らは《古龍細胞》を持ち、《竜王気》を操る。
それぞれが単体で伝説級UBMにも匹敵するステータススペック持ちうるが、テゾーロの<エンブリオ>の能力と、配下を強化し配下が多ければ多いほど強化値を増す【大社長】、特殊なカテゴリーの<エンブリオ>故の
【ギガントタートル】の役割こそ都市の牽引であるが、真価はそこではない。
Type:レギオンの名に恥じないれっきとした怪物なのだ。
真骨頂は
『『《────────────》》!!!!!!』』
再び吼え渡る叫声。
同時に都市の外壁がせり出し、幾種もの遠距離攻撃兵器が現れる。
そして始まるのは、さながら大怪獣バトルもかくやという対決。
地上から、空へ。
空から、空へ。
空から、地上へ。
幾重もの機銃のマズルフラッシュが瞬き、火薬の炎上が瞬きの間に放たれる。
地上では落下したモンスターに埋め込まれていた爆薬が派手に火柱を上げた。
「おいおい、私を前にして余所見か? ────―妬けるな!」
空戦ばかりにも目を向けていられない。
陸上では優勢だと思っていたフランクリンであったが、いつの間にかスーサイドシリーズも軒並み血の海に沈み、辺りには深紅に濡れた液状の黄金が侵略していた。
「それっ! 《ゴオン・スピディーノ》!」
射出されたかと見間違うばかりの黄金の伸縮。
棘状に伸び、飛翔する攻撃をフランクリンは……
「ク……ソッ!! ズルじゃないかなぁ! それぇ!」
騎乗していたモンスターを自爆させることで爆風に乗り難を逃れる。
MP回復ついでにエリクサーを
間髪を空けずに怪鳥系モンスターを呼び出す。
その鉤状の足に手を掛ければ、羽ばたきを強め宙を舞う。
すると、丁度つい先程まで居た場所の地面から黄金が噴き出す。
(【
《
それは、【黄金帝】のスキルである。
効能としては、「
例えばだが……黄金を高速で伸縮させる、や。黄金を形成する、だけでもアクティブスキルとして発動することが出来る。
このスキルにより彼は黄金を用いたあらゆる行動にアクティブスキルとしての処理を化し、スキルとしての上昇効果を見込むことが出来るのだ。
無論、欠点もある。
それは、一度に複数の行動をアクティブスキル化できず、一つの行為しかアクティブスキル化出来ないという点である。
しかし、それを以てしても尚、強すぎる効能であった。
「ふっ! くぅ!」
「どうした!? 逃げるだけなら見飽きたぞ!」
「うるさいねぇ! 今準備中だよ!」
次から次へと延び、死へいざなう黄金の
フランクリンは次々とモンスターを乗り換えながら難を逃れる。
「やれぇ!」
フランクリンの指示と共に、機銃を搭載した亀の銃口がテゾーロへと向く。
半機械したモンスターを操る特殊アイテムを中継した
ここ一番にて【エル・ドラード】への攻撃の手を緩め、本体への飽和攻撃へと変化させたのだ。
前・後衛に分かれ、機関銃での掃射と大砲による曲射を行う。
更には、空中から怪鳥がテゾーロへと四方八方から突撃を敢行。
【飛将軍】もかくやというバード・ストライク。
飽和する爆撃に飲まれたテゾーロは…………
「──────終わりか?」
「まだ……足りないねぇ……!」
球状の黄金に防がれる。
特殊製の爆薬や榴弾、特殊弾を用いた総攻撃であったが、防がれた。
完全とまではいかないが、テゾーロの負傷は前髪がやや乱れる程度で留まった。
「密度操作もお手のものってことかねぇ!? 上手くなり過ぎだよぁ!」
「褒めるなよ」
「皮肉だよ! このお馬鹿!」
肉盾として【PBS】シリーズの恐竜モンスターを配備するが、すぐさま貫かれ、砕かれ、
死んだモンスターらは、その身をその端々から黄金の彫像へと変貌させていっていた。
これこそが“黄金帝”である事由。
彼は【エル・ドラード】のスキル《
「このままだとジリ貧……いや!」
──────────―確実に負ける!
時間を経るごとに黄金は体積を増し、周囲を覆い尽くす。
そしてそれは、テゾーロが操れる黄金の総量が増えることと同義である。
このままであれば、フランクリンが負けるのは必至であった。
歯を食いしばりながら、必死に思考を回す。
(てか、<エンブリオ>の能力とのシナジーが有り過ぎる!)
そう。彼の強さを語る上で欠かすことの出来ない
能力としては単純にして明快。なれど、こと使用に関すれば難解。
名を《
これにより、現【財産王】テゾーロは理論上
能力としては、「所持している金額が10億リル毎にサブジョブのスキルを一つ使用可能になる」だ。
推定総資産1300兆リルのテゾーロからすれば、10億リルなど
彼は疑似的にではあるが【超闘士】の《
「ならこっちも、『奥の手』だ!」
白衣の内から取り出すのは、赤い丸スイッチが一つだけついたリモコン。
そのスイッチを叩くようにして押し潰す。
────────―Warning! Warning! Warning! Warning! Warning!
────────―【警告】<叡智の三角>及び、Mr.フランクリンへ告ぐ!
────────―【
────────―退避を開始してください! 退避を開始してください!
────────―繰り返します──―……
【パンデモニウム】各所に取り付けられた幾百もの赤い回転灯が忙しなく回り、眼に痛い刺激を叫ぶ。
無機的な機会音声がけたたましく鳴き、警告を知らせる。
テゾーロは、眼の色を変えて警戒。防御態勢を取った。
そして、数十秒のインターバルを挟み、それまで排出されていたモンスターは鳴りを潜め、ピタリと止んでいた。何よりも不気味だったのは【パンデモニウム】の正面、竜の瞳が妖しく煌々と光っていたことだった。
「半年前から君専用に造り上げておいた、モンスターだ!!!!」
歓喜の咆哮と共にフランクリンは大きく手を広げ、仰け反り狂笑を響かせた。
──────────────ドロリ
あるいは「デロリ」。
そんな様子で【パンデモニウム】の竜頭の眼孔と牙の合間から
「ずっと考えていたんだよねぇ。
徐々にその体積は指数関数的に増え、地面に達すると「にょろ」といった擬音が似合う動きで自立。そして、キョロキョロとその切っ先を迷わせ……テゾーロへと向き直った。
見た目だけであれば、【ミスリル・アームズ・スライム】などの金属性のスライム種に酷似している。
だが。
「対処しきれない程の数? いいや違う。絶対的な優位性を誇る質? いいや違う」
だが、ただ一点違う点を挙げるとするならば、そのスライムは────────
「
・《
……【黄金帝】のスキル。アクティブスキル。自身の操作下にある黄金での行動時にアクティブスキルとしての特性を付与する。一度に発動可能なアクションは一つずつであり、発動対象を変える場合はその都度「この行動への付与を外して、こっちの行動へ付与」みたいな感じに付け替えなければいけない。クールタイムは「その行為への難度」で決まる。テゾーロの場合は、《ゴオン・スピディーノ》という黄金を用いた刺突攻撃に使用している。これによりテゾーロは持ち前の攻撃力の低さを補いつつも、ただの刺突なのでクールタイムも少なく済んでいる。
・《
……テゾーロの<エンブリオ>のスキル。アクティブスキル。<エンブリオ>初期からある彼にとって最も馴染み深いスキル。HP・MP・SPのいずれかを消費し、指定した対象への黄金化を行う。そして触れた黄金、もしくは黄金化した対象への絶対的な操作能力を有する。この能力は<エンブリオ>の進化と共にその【対象】の【範囲】が広くなったり、黄金化出来る範囲や操作可能領域が拡張していったりした。この黄金化はマスターや特典武具にも適応でき、その対象のENDや潜在的なリソースを耐久値として参照して黄金化を行う。死体ならばよっぽどリソースを含んだものでもない限り無条件で黄金化出来る。しかし、一度完全に黄金化してしまったものは戻せない。
もしも、発動の途中にテゾーロが倒されたなら、黄金化途中の存在は黄金が完全に解除され開放される。また、体の一部を黄金化した場合でも、HPが減らない限りは生体部位は生き続ける(口や喉・心臓・内臓への黄金化は【窒息】【内臓不全】の状態異常を発生させる)。ゲーム的に言うならば、【黄金化】という特殊状態異常になる。エリクサーでは治らず、完全に黄金化するも、途中まで黄金化して元に戻すのもテゾーロ次第。醤油抗菌の【爆薬化】と同じジャンルの特殊状態異常となる。詳しくは、今後ちょっとずつ述べられたらと思っている。
余談だが、テゾーロは完全に黄金化する能力を多用するが、敵対した対象の体の一部を黄金化させた上で、そこの部位を操れば、その部位を丸ごと抉り出すこともできる。
・《
……テゾーロの<エンブリオ>のスキル。パッシブスキル。所持している金額が10億リル毎にサブジョブのスキルを一つ使用可能になる。ただし、必殺スキルに該当するスキルはそのジョブの必殺スキルを除く他のスキル全てを発動可能状態にしないと発動できない。【エル・ドラード】が第五形態への進化時に獲得したスキル。
・【
……【パンデモニウム】の必殺スキル《
余談ではあるが、この百体のスライムを生存させつつ統合・調整するのに、あのフランクリンが数百体もの【ミスリル・アームズ・スライム】を消費したという。
どんな話がいい?
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過去編(厳冬山脈とか超級職就職とか)
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原作介入
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オリジナルストーリー