“財産最強”ギルド・テゾーロ   作:陸神

3 / 11
“フランクリンのゲーム”にて資本主義を叫ぶ①

 □■アルター王国・王都アルテア

 

 

 アルター王国。

 

 中央大陸西部に位置する西方三国の内の一国である。

 北にドライフ皇国、南にレジェンダリア、東にカルディナを隣国に持つ屈指の国際的激戦区である。

 

 しかし、それも<マスター>の登場から落ち着きを見せていた。

 

 というのも、不死身かつ驚異的なまでの成長率を持つ<マスター>に、各国が慎重な対応を求められたためである。

 

 

 ……まあ、それも、<騎鋼戦争>という例外が記憶に新しいが。

 

 

 ──────何はともあれ、<騎鋼戦争>から現実時間(リアルタイム)で数か月も経過し、王都は落ち着きを見せ、一時は不安視されていた<マスター>と<ティアン>の不和も大分緩和されてきた頃である。

 

 それは、奪われた領地が荒廃した土地である旧ルニングス公爵領であったということもあり、アルター王国がマスター間で屈指の人気──────取得できるジョブの数や他国へのアクセス──────を誇っているということもあり、ティアン、マスター、双方を理由として、以前の興りを持ち直していた。

 

 そして、首都・アルテア。

 通称、王都。

 

 白亜の外壁を持つ王城が最たるシンボルであるその都市は、実にアルター王国の首都である。

 円形の高い外壁と、東西南北へと続く門は堅牢さと威圧的な風貌を兼ね備えている。

 

 

 

「…………成程、これは……壮観だな」

 

 

 

 ほう。

 

 感嘆の溜め息を吐いたのは、いつもとは趣向を変えた藍色(インディゴ)のスーツを着た偉丈夫──────ギルド・テゾーロである。

 彼は現在、王都の某所カフェのテラス席にいた。

 

 視線の先には、巨大な風貌を惜しげもなく晒す王城。

 幾ら目の肥えたテゾーロと言えども、ここまで巨大かつ意匠も凝らした巨大建築物を目にすることは中々ない。

 

 殊の外そう感じるのは、やはり、デンドロ世界であるだろうからか。

 

 

 

「現実じゃ、城を建てるのにこうも上手くはいかんだろうとも」

 

「……まあ、まず城を建てようとするのは、かの夢の国(テーマパーク)ぐらいというのもありますが……そもそも、観光地にするとしても、ここまで美術的で実用的な城をこの規模で作ってしまえば、費用対効果もあまり見込めないでしょう」

 

「ふふ……ちょっとしたジョークだったんだがな」

 

「……あら」

 

 

 

 テゾーロの呟き応じたのは黒いドレスを着た赤髪の美女……バカラである。そのドレスの背中側は大きく開かれていて、()()()煽情的に見えた。

 

 

「だが……そうだな。着工までの十年弱、早くとも五年。完成までに十年二十年規模。そして、黒字経営を目指すなら、城内(なか)にテナントやアトラクションも誘致して……長期的に見積もって、開園から十五年弱かね」

 

「……もう少し早いのでは?」

 

「これは、作業員や従業員のインフラや社会保険料、福利厚生を合わせた整備や人件費を合わせて見積もったのさ」

 

 

 

 やるわけないがね。

 

 と、笑うテゾーロ。その片腕にはデフォルメナイズされたクマのキャラクターがプリントされたポップコーンが抱えられていた。

 

 一粒を指先で摘まみ、口に運ぶ。

 程よい塩味と上品な甘み……甘味?

 

 

(バターか……? それにしては、フレッシュで軽めだ……)

 

 

 ポップコーンのフレーバーに頭を捻るテゾーロへと、横合いから声が掛かる。

 

 

 

「よう……クマ」

 

 

 

 それは、クマであった。

 

 いいや、比喩でも冗談でもなく、字面通りにまんまクマであった。

 より正確に言うのであれば、クマの着ぐるみである。それも、二メテル半程の大きさの着ぐるみであった。もふもふであった。

 

 掛けられた声に彼は、今一度、目をパチンと瞬かせ、納得したような顔で笑った。猛禽のそれである。

 

 

「なんだ……遅かったじゃないか」

 

「子供たちにポップコーンを売ってたクマよ。てか、大体、伝言一つで『話がしたい』って呼び付けたのはそっちクマ。文句を言うなクマ」

 

 

 肩を竦めて、首をやれやれと振る。

 

 

 

 ──────イラッ

 

 

 

 やけにコミカルな動きが余計に腹立たしさを強調させる。

 

 

「おい、コイツ本当にあの【破壊王(キング・オブ・デストロイ)】なんだろうな。パチモンじゃないだろうな、タナカ?」

 

「……正真正銘、【破壊王】シュウ・スターリングです……そのはずです」

 

「なんだ……珍しく弱気だな」

 

「何と申しましょうか……《看破》が効きません」

 

「いやーん覗き魔クマー」

 

 

 タナカが困ったような動作で眉根を顰める。

 

 テゾーロも驚きに目を見開く。

 タナカの《看破》のレベルはサブジョブの恩恵もあり高く、<エンブリオ>の特性も相まって、よほど隠蔽や偽装に特化したエンブリオや超級職でもなければ防げないはずである。それこそ、【絶影】や【暗殺王】でもなければ。

 

 

 

「…………タナカ、お前、レベル幾つだ?」

 

「……? 合計で822ほどですが……」

 

「ぶー、答えに辿り着くのが早すぎるクマー……」

 

 

 

 身体をぐでーと伸ばし切り、空を見上げる着ぐるみ(ゲテモノ)

 

 

 

「やはりレベル差で効果を上昇させるタイプのスキルか。見るに、アクセかその着ぐるみの効果か。お前のエンブリオはそんなチャチな効果はないだろう」

 

「そうクマだけどー……てか、それを言い出せば、お前も大概だろクマ。俺のレベル幾つだと思ってるクマ? なのに、一ミリどころか、名前すら見れないクマなんだけど……」

 

「ふっふっふ! 最近はその手の輩と出会うことが多くてな、対策も一入(ひとしお)だとも」

 

 

 

 してやったりとしたり顔。

 

 

「よいしょ」

 

 

 テゾーロの隣の席に座るシュウ。

 身に着けていたエプロンを器用に脱ぐ。……その手でどうやって結び紐を解いて、デカい頭部を通したのかは不明である。

 

 見た目こそふざけてはいるが、その身に纏う着ぐるみは古代伝説級の特典武具であり、実力もデンドロのプレイヤーの中でも一握りほどの実力である。

 

 その奥底から放たれる射貫くような視線はテゾーロを捉えて離さない。

 まるで、「少しでも怪しい動きを見せたら……わかってんな」とでも言いたげな動きであった。

 

 

 

「安心しろよ。何もしない…………()()()()

 

「最悪だ……お前が一枚噛むほどの何かがあるのか……クマ」

 

「…………とってつけたような語尾を止めろ」

 

「何ぉう! これは、きぐるみを着た者の宿命だ! ……クマ」

 

「…………本人が満足してるならいいがね。それで、本日の要件だが……近くにキミの友人が大活躍するイベントがあるだろ? 流石に知らないとは言わせん」

 

「……<超級激突>──────テメェ」

 

 

 

 ガタッ!

 

 立ち上がりかけたシュウの首元に添えられるハルバードに頭部に照準されたピストル。

 ダイスとタナカである。

 立ち上がれば、どうなるかは一目瞭然だった。

 

 

「止めろ。お前らでは、シュウ・スターリングに勝てんよ。()()()なら話は変わるが。そして、ついさっき言ったばかりだろう……今はまだ、だと」

 

 

 二人を諫めるテゾーロ。

 言葉のまま武器をしまう二人に、持ち上げた腰を静かに下ろすシュウ。

 

 

「…………何をさせたいんクマ? 裏切れーとか、協力しろーとかならお断りクマ」

 

「違う違う。寧ろ、()()

 

「──────逆?」

 

「YES。私は本件について、依頼を受けて、スポンサーの立場ではあるが実動隊ではなく、その目的は私の道理と意義に反するのだよ」

 

「本当にござるクマかー? お前が<騎鋼戦争>時にドライフ皇国に手を貸していたことは既に調べ済みクマ。白状するクマ。何を目論んでいる……いや、()()()()()()()()()()()()()

 

「……一つ訂正しておこう、あれはドライフ皇国との取引ではなく、ドライフに所属しているたった……()()()()()()()()()()()()()()()だ。私としては、ドライフに手を貸したつもりはないのだよ。あと再三言っているが、私としても防ぎたいことこの上ないのだよ」

 

 

 至って真剣な眼差しでシュウを見つめるテゾーロ。

 見返すシュウ。

 

 何秒経ったか、交差した視線がぶつりと切れる。

 先に視線を逸らしたのはシュウの方であった。

 投げやりに足を放り出した彼は、着ぐるみを《瞬間装着》で着替える。

 

 どんな冗談か、現れたのはテゾーロに負けるとも劣らない美男であった。

 

 

 

「…………いいぜ、今回だけだ。で、何があるってんだ、<超級激突>で」

 

 

 

<超級激突>。

 

 それは、決闘都市ギデオンで行われる<超級>と<超級>による全力勝負である。

 

 更に、まま行われる<超級激突>でも、その対戦カードの内の片方は、<アルター王国三巨頭>“無限連鎖”【超闘士】フィガロ。そして、相対するは、黄河帝国の決闘ランキング二位、<黄河四霊>“応龍”【尸解仙】迅羽である。

 

 加えて、今回はアルター王国王女エリザベート・S(スフェーン)・アルターとその婚約者である黄河帝国第三皇子、蒼龍人越も観覧に訪れる、国を挙げて行われる一大行事であった。

 

 

「ふむ……まずその話をするには、デンドロ内時間で一か月ほど時間を遡って話をしなければなるまい」

 

「あっ、そういうのいいから、なるべく早く(なるはや)で」

 

「殺すぞ…………ンン゛ッ、それで、一か月前の話だ」

 

「ああ、そう……そのまま続けるんだ」

 

「そう、あれは私がカルディナの皇宮に招かれた時のことだ──────」

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。