“財産最強”ギルド・テゾーロ   作:陸神

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“フランクリンのゲーム”にて資本主義を叫ぶ⑥

 □■ネクス平原

 

 

『お前自慢のモンスターは───―─この【破壊王(キング・オブ・デストロイ)】がまとめて“破壊”してやる』

 

 

 

 

 

 シュウ・スターリングの宣言と同じく、ネクス平原北方にて。

 

 

 

 

「フフ……言うじゃあないか。それにしても、遂に“正体不明(アンノウン)”も引退かね、あれは」

 

 

 

 

 他意を大いに含んだ笑いが漏れる。

 

 いつもとはまた大きく違った様相の装いのテゾーロは、その身を黄金(こがね)と純白の配色のスーツに着替えていた。胸には、血のように真っ赤な薔薇が差してあり、シルクハットには星のブローチが取り付けてあった。

 

 かつて神話級のUBMを討伐した時に入手した特典武具であるそれは、性能もさることながら、テゾーロにとって戦衣装としてや晴れ舞台の衣装としても一張羅なのであった。

 

 

「<アルター王国三巨頭>が名実共に正体が明かされ、表舞台に立ったということは、ドライフ皇国もカルディナもこれまでのように並一通りとはいかないでしょう」

 

 

 傍に控えていたバカラがそう言うと、口元に手を当てて一つ、可愛らしく欠伸を漏らした。

 彼女は気恥ずかしそうに咳ばらいをニ、三度行う。やや小麦色の肌には薄く紅が差していた。

 

 

「済まないな、夜遅くに誘ってしまって。しかし、君らもいないと私のショーもままならないものでね」

 

 

 笑いながらステッキを回すテゾーロ。

 連れて「するるる」とタナカが歯を見せ笑い、ダイスが豪快な笑いを響かせた。

 

 一時朗らかな空気が流れるが、往々にして周囲は死屍累々然……あるいは異界染みた光景と化している。

 

 まず目につくのはその輝き。

 遠目──────それこそギデオンからでも目視できるほどの黄金の輝きが周囲一帯から溢れていた。更にその黄金の輝きは、()()()()()()()()()()()()

 

 丁度、テゾーロが腰掛けているものも、オキシジェンスライムの姿を模した──────否、そのものであった。辺り一帯に広がるモンスターの似姿を象った黄金の彫像らは全てテゾーロが<エンブリオ>の能力によって黄金化したものなのだ。

 

 

 ──────トッ

 

 

 テゾーロが彫像から飛び降りる。

 

 手のひらを合わせ、大きな伸びをする。

 ステッキをアイテムボックスへと放り込むと、口の端を歪めた。

 

 

 

「では…………仕事(ビジネス)の時間だ、諸君」

 

「「「はっ!!」」」

 

 

 

 かしずく三人。

 

 テゾーロは、放射状に平伏す三人の間を抜け、彫像の合間を通る。

 

 しかしその歩みを妨げる存在はこの場にあり溢れすぎていた。何を隠そう、このネクス平原にはフランクリンが<エンブリオ>によって生み出したモンスター群が数十万体いるのだ。

 

 先のシュウの宣言からそれらの“スーサイドシリーズ”は活動を開始し、活発化している。

 スーサイドシリーズは、フランクリンの作成したモンスター群の一種であり、『死ぬまで前に進む』『味方やフランクリンが創った生物以外を皆殺しにする』ことを細胞にプログラムされている。つまり、死ぬまで前進し殺し続ける生物兵器なのである。しかもその強さは亜竜級から純竜級まで存在するという強力無比振り。

 

 フランクリンは、生産したモンスターを従属キャパシティやパーティ枠に収めずあえて逃すことで膨大な数のモンスターを運用した。

 

 

『Gegyaaaaaaaahhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhh!!!!』

 

 

 テゾーロは背後から迫り来る恐竜型モンスター……【PBS(プレパレイティブ・ブルート・サウルス)】 と呼ばれるそれが顎で襲い来る。

 強さは量産型にして亜竜級。STRだけで言えば、上級職を備えた前衛をも屠る攻撃力を備えていた。

 

 

 

「む……雑魚も雑魚。嘗めて居るのか?」

 

 

 

 だが、それを阻むのは黄金色の触手であった。

 驚くべきはその黄金の触手が、周囲の彫像から伸びていることだ。

 テゾーロの手によって黄金像へと変えられた彫像から、その分の体積を減らして触手へと姿を変えていた。

 

 

 

「《ゴオン・スピディーノ》」

 

 

 

 腕を横一文字に一閃。

 演技染みた動きは、指揮者の指揮棒(タクト)使いに似ていた。

 

 変化は顕著。

 

 

『Guuueeeegyaaaahhhhhhhhhhh!?!?』

 

 

【PBS】を拘束していた黄金の触手が()()()()()

 眩く輝く金は、岩のように硬い鱗と皮膚を食い破り、体の至る所から棘が突き出る。噴き出した鮮血が月光に反射し、べったりと黄金に纏わりついた。

 

 

「噂によると王国側にもプレイヤーの裏切り者がいるらしい……タナカ!」

 

「はっ!」

 

「お前に任せる。出来ることなら情報を吐かせたいが……生死は問わん。始末しろ」

 

 

 返事もままに地面へと沈み込んでいく、タナカ。

 紫色のエフェクトを残し、消えた。

 

 

 

「ダイス!」

 

「うっす!」

 

「フランクリンが生み出したモンスターの中には古代伝説級のUBMにも匹敵するモンスターがいるらしいな。それもフランクリンが特別仕様(ワンオフ)として制作した奴らしいんだが……任せるが、良いな?」

 

「了解です! お任せあれ!」

 

 

 満面の凶悪な笑みを浮かべ、ハルバードを片手に群れの内部へと走っていくダイス。

 

 テゾーロはその姿を尻目に、薄く、鋭く伸ばした針状の黄金を素早く放つ。

 ドサッ、と空中から下半身が迷彩に透明化したモンスターが墜落した。

 

 

「覗き見か? 悪趣味な……バカラ!」

 

「ここに」

 

「聴くにギデオン内には、()()リリアーナ・グランドリアがいるらしい。彼女を手助け出来れば将来的に我々に利益を齎すだろうとも。それに現状のアルター王国軍ではモンスターの相手はでは厳しかろうとも……頼めるかね?」

 

「──────お任せを」

 

 

 バカラは優雅な礼を以て、モンスター群の中へと進み往く。

 

 テゾーロは、大丈夫だろう、と目線を外す。その遠い目線は空を映して────―

 

 

 

 

「やぁ……最近、見なかったけど元気だったかい、テゾーロォ?」

 

 

 

 

 バフン!

 

 辺りの土煙と金粉を巻き上げて着地した竜……と何かのキメラのようなモンスター。そして、その背には耳まで裂けんばかりの笑みを浮かべたフランクリンと、簀巻きになりながらも高貴然とした雰囲気を崩さない少女……アルター王国第二王女エリザベート・S(スフェーン)・アルターがいた。

 

 その様子にテゾーロは眉を寄せた。

 

 

 

「これは……エリザベート王女殿下ではありませんか……如何様なご用件でこちらに?」

 

「うむ! わらわはげんじょう『ゆーかい』されちゅうなのだ!」

 

「…………おや。……いや、本当にどういう状況だ」

 

 

 

 口縄を解いたらしかったエリザベートに、こめかみを抑えるテゾーロ。

 

 彼と彼女は実の所、テゾーロが<騎鋼戦争>後にアルター王国復興の名目で支援金の話を王国へ持ちかけた際に知己となっていた。……もっとも、会談中にエリザベートが乱入した結果であったが。

 

 

 

「王女を誘拐しているとなると……いよいよ本格的に王国侵略をするつもりだったのか、あのお嬢様は」

 

「アハハッ! ウチのお姫サマがそんなつまんない嘘つくと思ってたのかねぇ! 本気も本気さ!」

 

「しかし……傷付けてもいかんな……────―それ」

 

 

 

 掛け声と共にフランクリンの騎乗するモンスターの真下から触手が突き出す。

 

 

「チッ」

 

 

 フランクリンは虎の子のモンスターをすぐさま見捨てて、乗り捨てる。

 が、その選択はすぐに正解であったことが知らされることとなる。乗っていたモンスターは地中から這い出た触手に貫かれ、ポリゴンへと変わる。

 

 そして、宙に浮いたエリザベートを触手が絡めとる。

 

 

「ご無事ですかな?」

 

「うむ! うむうむ! とてもすりりんぐだったのじゃ!」

 

(これは豪胆と言うべきか、天然だとも言うべきか……)

 

 

 口をへの字にして見つめるテゾーロ。

 

 しばらくして考えがまとまったのか、ニヤリと笑って、触手によって宙ぶらりんとなったエリザべートへと言った。

 

 

 

「──────ブランコはお好きですか?」

 

「ん? うむ。あれはよいものじゃ。ふゆーかんが、とてもえきさいてぃんぐじゃ!」

 

 

 

 腕を組み、うんうんと頷くエリザベート。

 テゾーロはそれに相槌を打つと、微笑んでいった。

 

 彼女を掴む触手は既にぐるんぐるんと回転し、遠心力を得ていた。

 

 

 

「では……快適な空の旅をご堪能下さい」

 

「んむ? ────────のののおおおおおおおおおおおおおおお!?」

 

 

 

 幼い悲鳴が闇夜の夜空に響き──────……黒づくめの女性に空中でキャッチされ、二人分の人影はモンスターを足場にして遠ざかっていく。

 

 

 

「これで、心置きなく戦えるな。それに…………【破壊王】も随分と派手に暴れている」

 

 

 

 そう言うテゾーロの視線の先には、フランクリンが造り出したモンスターが一挙に百、二百と宙を舞い、バラバラに()()されている光景。

 

 凡そ正気を疑う光景だが、【破壊王】シュウ・スターリングのSTRは装備の補正込みで二〇万を超え、【獣王】ベヘモットやレヴィアタンと並ぶ程である。

 いかに純竜級のモンスターといえども、所詮、HPは数十万。ENDに至っては数千から一万強が良いとこ。《破壊権限(デストロイオーダー)》が組み合わされば、耐えられようはずもなかった。

 

 

 

「あれは……酷いねぇ。STRが二〇万を超えて尚、上昇してる……。彼、もしかすると“怪獣女王”にも匹敵するじゃあないかい……?」

 

「匹敵、ではなく超えているよ。アレはな。ベヘモットのアレは必殺スキルないし巨体での攻撃で最強を誇るが……シュウ・スターリングのあれはSTRに加え、技術も神がかっている。それこそ“技巧最強”のレベルまでな」

 

「君ぃ、“技巧最強”に会ったことがあるのかい……? まあいい。それよりも、こちらも始めようかねぇ?」

 

 

 

 フランクリンがそう言うと、真夜中の戦火中に晒されたのかその姿が、()()()()に覆われる。

 

 いつの間にか、フランクリンの背後には巨大な────―全長1㎞を超す程の大きさを持つ、建造物がそそり立っていた。特異的であろうには、その建造物は幾つもの工場や建造物をごちゃ混ぜにしたような見た目であり、最たる特徴は機械で出来た脚が生えていることであった。

 

 それこそがMr.フランクリンを象徴する<エンブリオ>、通称“怖いハ○ルの動き城”こと【魔獣工場 パンデモニウム】である。スキルによってモンスターの大量生産、格納を行い、そしてモンスターのオーダーメイド生産を可能とする<エンブリオ>である。

 

【魔獣工場 パンデモニウム】はその巨体を《光学偽装》によって隠蔽し、移動してきていたのだ。

 

 地獄の首都の名を冠するその<エンブリオ>は、蒸気と機械音を鳴らし、その地獄の釜ならぬ地獄の口を開口した。

 

 

「君の為に態々、あっちこっちに飛んで()()と捕まえて来たんだよぉ!」

 

 

 禍々しい紫煙に紛れて、【パンデモニウム】の《ストレージ》から解放された一万と余体の多種多様な姿を持つモンスターは、それぞれがステータス特化型逸話級UBMに匹敵する程のステータスを有していた。

 

 それに対し、

 

 

 

 

「ああ、いいだろう……私としてもお前をブチ殺したくてしょうがなかった」

 

 

 

 

 首を鳴らしたテゾーロは、ネクタイを片手で緩め……ニッと笑った。

 

 そして、左手を掲げ、高らかに宣言する。

 

 

 

 

 

 

 

「来い!」

 

 

 

 

 

 

 

 左手の甲に刻印された【金貨と星】の紋章が赤く発光し──────。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ―――――――――――――――――――世界が【黄金】に包まれた。




始まる……決戦―――――――

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  • 過去編(厳冬山脈とか超級職就職とか)
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  • オリジナルストーリー
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