反転好感度のデイバイデイズ   作:このむらりく

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第11話『あまねく絶望の始発点/錯綜する少女達のアーカイブ』

 

 

 

 

 

 

 世界の中心――シャーレから離れた場所で、生徒達の約束された物語が狂い始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 夜闇に紛れて少女が廃墟の街を歩く。その制服がお嬢様学校であるトリニティであることを顧みると、あり得ない光景だ。

不良生徒ですら寄り付かない、荒れ果てた町並みだ。民家は崩れ落ち、至る所にコンクリートの破片が転がっている。

歩くだけでも一苦労な路面を、少女は何の苦もせず歩く。白銀の髪をたなびかせ、鋭く細められた目に油断はない。

そうして、歩くこと数分。何処ともしれぬ廃墟の前にて、少女はぽつりと呟いた。

 

「サオリ。そんなにずっと観察しても、私以外誰もいない」

「……万が一に備えて、だ。お前の友達はしつこいからな。

 こんな事を言っておいて、後ろから現れるかもしれん」

「今回は絶対油断しない。どんな結末であれ、ヒフミ達を巻き込めないから」

 

 ぬるり、と。少女の後ろから影が現れる。

音もなく声をかけられても、少女は顔色一つ変えず、返答する。

当然だ、少女は元々彼女とは知古の関係だった。白洲アズサと錠前サオリは師弟であったのだから。

 

「何故、来た。連絡をした私が言うことでもないが、招集に応じないという選択肢もあったはずだ」

「そんな選択肢は最初からない。それに、サオリから連絡をくれるなんて、よっぽどのことだから」

「確かに、な」

「それに受けた連絡の内容は無視できるものではなかった。何かが狂っている、真実は隠されている。

 なら、その是非を直接確かめに行くのは道理だと思う」

 

 エデンの戦いで自分達は知ったはずだ。

踊らされて、嘲笑われて、血飛沫へと沈んでいく。

そうして、何も知らぬまま。最後まで蚊帳の外など、ごめんだ。

 

「もし、私に何かあったとしても。それはヒフミ達が預かり知らぬこととして処理される。

 それに……ちゃんと、退部届は出してきた。今の私は皆とは無関係の生徒だ」

「いいのか? 本当に、後悔しないか?」

「サオリ、しつこい。どんな形であれ、皆を巻き込む訳にはいかない。だって、これは“アリウススクワッド”の戦争だから」

「…………ならば、何も言うまい。あんなことがあっても、まだ私達と共に歩くというのか」

「そういう訳だから、サオリの配下に入るよ。それで、他の皆は?」

「向こうで待っている。賭けは私の負けだ。全員、お前が来ないかもしれない、と。

 ミーティングで疑う者はいなかった。疑っていたのは私だけだ」

「サオリはそういうとこがある。全部自分の中で解決しようとする。

 私達は仲間でしょ? 今回だって教えてくれなかったら、すごく……恨んだ」

 

 サオリだけが全く考えていなかったのだ。また、こうやって共に歩けるなんて。

とはいえ、今回の一件がない限り、違う道を歩いて、再度同じ部隊として戦うなんて未来はアズサも思いつかないものだった。

トリニティとアリウス。隔絶は依然として残ったままだし、戦いが終わっても総てが解決した訳でもない。

それでも、個人間から、解決できるものだってある。

 

「また、私達が揃うとはな」

「トリニティに潜入した時から今に至るまで。私はアリウススクワッドを抜けた覚えはない。

 本当に反省して。サオリは、いつも私をのけ者にする。勝手に仲間外れにするのはよくない」

「エデン条約の際、敵対しただろう。私も、それを顧みて……だな」

「それはそれ、これはこれ」

 

 ぷんすこ、と。不満げな声色でアズサは返す。

護りたいモノ、許せないモノ。見解の違いで嘗ては殺し合いを繰り広げた間柄だった。

それでも、自分達は同郷であり、同じ道を歩いていた仲間だ。

敵対し、銃を向け合っても、過去が消えることはない。

けれど、未来は変えられる。

 

「ゲマトリア。あの黒服から聞いた真実が本当かどうか。見極める必要がある。

 マダムと同じ界隈という時点で信用はないが……」

「でも、今の情勢に対しての辻褄はあっている。でしょう?

 それに、マダムならやりかねない」

「ああ。だから、確かめに行こう。アリウススクワッドとして、世界の真実を見極めに」

 

 目的地はシャーレ。標的は未だ霧の中。

それでも、此処で動かなくてはならない焦燥感だけは確かだ。

何も出来ずに、奪われるままであることなど、許容できない。

これもまた、一つのイフ。子供達は正しく在れる未来を求め続ける。

揃うことのなかったアリウススクワッドが欠けることなく、揃う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 はぁ、と。懊悩を顔いっぱいに塗りたくった表情が消えてくれない。

尾刃カンナは、公安局のオフィスにて深い溜息をついた。

机に肩ひじを付いて、首を軽く回す。ごきり、と。カチコチの肩が疲弊を訴えてくる。

窓から見える空は晴れやかだと言うのに、どうも胸中は暗く淀んでいる。

何かがおかしい。いや、何もおかしくはない。

違和感と納得が混ざりあった気持ちが優れないのは、コーヒーの飲み過ぎか。

 

 ……下らない。

 

変わりがあったとすれば、前々から評判の悪かったシャーレの先生が交代したことか。

カンナ自身も嫌悪感がないといえば嘘になる。むしろ、今回の交代劇は望む所であった。

世界は間違いなくいい方向へと向かっている。正しさは機能し、生徒達は快活だ。

生徒達から嫌悪感を抱かれ、クレームを出されていたシャーレの先生も罷免された。

カンナ自身も強い嫌悪感を抱いていた為、文句はない。

後任で就任した女性の先生はカンナ自身強い好感を抱いていたし、個人的な間柄も密接だ。

 

 ……本当に?

 

 何かの歯車が狂っている。自分達が取り返しのつかない間違いを犯した気がしてならない。

頭の片隅で、手遅れになってしまった世界を嘆く声が聞こえてくる。

 

「おつかれっすー、姉御」

「……あぁ」

「うへ~、相変わらず、表情が渋い。気さくな挨拶に仏頂面」

「副局長の提出書類が一向に上がってこないんだ。局長として笑顔になるはずもあるまい」

 

 へらへらとした笑みで副局長であるコノカが、馴れ馴れしく声をかけてくる。

各地方に散らばっているヴァルキューレの生徒達を見て回っていた為、あまり遭遇することはなかったが、息災なようだ。

 

「ちゃんとデッドラインには間に合わせるんでいけますって!

 も~、局長の立場だからってのはわかりますけどぉ、最近は特に眉間のシワが深くて、困っちゃいますって」

「軽口を叩きに来たのなら、仕事に戻れ。書類をさっさと作成して、提出しろ」

「まあまあ。局長と副局長がギスってたら、部下も不安ですって~。

 そういう些細なことから瓦解してくんすよ? 空気感とか馬鹿にできないって理解るでしょ?」

 

 それくらい、カンナだって知っている。

ただでさえ狂犬だの物騒な呼び名が付いていて、周囲を怖がらせているのだ。

加えて、人相も悪い。

職務を全うする上ではストロングポイントになる要素も、コミュニケーションになるとウィークポイントになる。

それらを理解してフォローしてくれるコノカには感謝しているが、限度はある。

日頃の立ち振舞いのふらふらさを正してくれたら、こうも小言を言わなくても済むのに。

 

「という訳で。まあ、雑談ついでに聞いてみたかったことがあって。

 前々から思ってたんすよね、姉御達ってどうして先生を嫌い始めたんすか。

 生活安全局のあの二人も含めて、掌返した理由ってちゃんと聞いてないなーって」

「待て、お前は先生のことを」

「そんなありえねーって顔しないでくださいよ。

 会ったどころかやり取りもしてねー人を嫌う云々はないでしょ。面識ねぇ人に対して、情を抱けっかって言うと、無理ですってば。

 あたしとしてはそんな興味もないから文句もないだけってことっす」

 

 コノカの問に対して、幾許かの空白が生まれた。

そもそも、嫌悪感というものを深掘りできる人間は少ない。

それも、小さなものならともかく、強烈に。行動に影響するものなら尚更だ。

生理的な理由であると、解決方法なんて接しない以外ないだろうし、その理由を分析するなど、難しい。

 

「つっても、今回はちょっと話が違うって感じでいまいちピンと来なくて。姉御達が理由もなしに嫌うって釈然としないっていうか。

 いやー、まあそんなもんっすけどね、皆。

 基本キヴォトスってそういう雰囲気と情動で動く奴らばっかですし? だから、周りの嫌悪に充てられて~ってのはわかるっちゃあわかる。

 でも、姉御は違うでしょ? キヴォトスでは超絶激レアの理性300%な人が、まーた珍しく感情で物事を考えてるんす、気になっちゃいますよ。

 細かいこと深掘りしなくていいのにってものまで深掘りして。あたしから見てもこまけー姉御が理由もなく嫌うって何かあったんすかね、って」

「それ、は……」

 

 《反転》とは、情動ありきの嫌悪感。存在そのものが気に入らない、理屈を抜きにした嫌悪だ。

理由なんて、説明しようがなかった。

 

「別に答えたくないことがあるならいいっすよ。知っての通り、そこまで興味がある訳じゃないんで」

 

 記憶を掘り返してみると、カンナはなぜ、と。

何処で感情はズレていった? 否、明確なズレはなかったはずだ。

だが、この胸から湧き出る感情は正真正銘の本物である。

 

 ……それでも?

 

 思い返しても、理由の起因がわからない。

不知火カヤのように権力を振り翳されたり、無茶振りで徹夜を強いられることになったり。

人事異動に口出しをしてきて、胃薬が増えたりなんてことはされていない。

 

「傍から言わないとわかんないもんではありますけど」

 

 ただ、ただ。情動だけが行動に波及して突き動かしている。

この情動が厄介なのは、唐突に発生したのではなく、徐々に発生しているといった点だ。

本人さえ気づかない、段階を踏んで生まれた嫌悪感だ。

自身で気づくことは難しいし、それを面と向かって指摘する者なんて少ない。

そもそもの話、大抵の生徒達が大なり小なり先生のことを好いているのだ。つまり、《反転》も満遍なく広がることになる。

そういった影響で嫌う生徒以外にも、同調圧力に呑まれて、“何となく”嫌悪感が生まれてしまった生徒達もいるのだから。

 

「本当にどうしたんすか、そんな顔をして。嫌う理由があるから、嫌ってるんすよね?」

 

嫌悪感の強弱はあれど、先生を擁護し、味方になる生徒など、打算在りきのカヤくらいだ。

加えて、次点として挙げられるのは、接点もない、強い興味もないから向けている感情もフラットなコノカみたいな生徒だ。

《反転》しようがしまいが変わらない。ある意味、我が道を征く――周りの同調圧力に屈しない生徒ともなると限られてくる。

 

「理由、理由は……」

 

 感情を完全に排して考えると、違和感は浮き出てくる。

良好だった間柄は何を原因に現状へと至らせた? 記憶を塗り潰し、過去を振り返ることのない情動は何処から産まれ落ちた?

内的要因をどれだけ捏ねくり回しても、尾刃カンナが先生を嫌っている理由は情動の一言で終わる。

それじゃあ、視点を変えて、思考を切り替える。

 

 外的要因。生徒達が先生を嫌うことで利益が生まれる存在がいるとしたらどうなる。

 

 それは言葉にすると容易いが、元凶と呼べるものだろう。

ありえない、その結論を受け入れるには懊悩が強すぎる。

奇跡でも起こらない限り、生徒達の感情が裏返るなど、信じられるものではないのだから。

だって、その結論の先にいるのは。今一番、先生がシャーレから排除されて利益を得ているモノは。

カンナが恋慕にも近い尊敬を抱いている人。その感情が総て嘘だとしたら、自分はどうしたら良い。

 

「ありえない」

 

 ボソリと漏れ出た愕然は到底抑えることができない。

気づいてしまった。気づきたくなかった。何かが間違っている――その疑念が正しかったと仮定したら、自分達の未来は、潰えている。

生徒達は、キヴォトスは、壊してはいけないものに手を出してしまったのではないか。

 

「局長、大変です!!!!ゲヘナより連絡! カイザーPMCによる大規模な封鎖が行われているとのこと!

 生徒達が暴動を始めて、手がつけられません!」

 

 部下の慌てた声が思考を打ち切りにする。はぁ!?と、隣のコノカが悲鳴を上げた。

 

「トリニティから、入電! 正体不明の化物の群れが現れた、と! 現在、交戦中で支援求む、とのことです!!!!」

「ミレニアムの救援要請! 無人ロボットの暴走が大量に発生! 襲撃者の正体は不明!!

 セキュリティも陥落し、孤立無援です! 学園として機能停止!」

「山海経より、緊急の! “五塵の獼猴”が現れ、全部、台無しに! た、たすけてください!!!!

 このままだと、滅茶苦茶に!!」

「レッド・ウィンターで革命勃発! …………いや、これはいつものことですね。無視で大丈夫です」

 

 部下から立て続けに舞い込んでくる連絡は、懸念していたこれからを予測させるには十分過ぎるものだった。

戦争が、始まった。誰も彼も狂い踊って、代価を払う時が来た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 忘れ得ぬ記憶。褪せぬ故に振り落とせない、過去。

ミレニアムの生徒会室にて、生塩ノアは深くため息をついた。

歯車が噛み合わない。浮かぬ表情には、疲弊が多分に混じっていた。

記憶の中で綺麗な思い出として遺っているモノが消えない、忘れられない、汚れない。

この胸中にある複雑な感情は、今も全く迷い子のままだというのに。

何が正しくて、何が間違っているか。選んで、進んで、委ねてしまえ。

ノアに垂らされた選択肢は2つだった。

記憶に従うか。情動に従うか。

最初は前者を選んでいたノアも、やがて後者を選んでしまった。

自分が抱いている情動が偽りであると受け入れるのは難しいし、日を経ることで強くなっていく嫌悪感を否定することは並大抵の難易度ではない。

ましてや、強い想いを抱いている生徒達こそ、その落差は大きい。

 

 ……悩ましい。

 

 それでも、どんなに嫌悪感が強まっても。

選ばなかった前者の存在は、ノアの中でずっと燻っていた。

今赴任している先生に対して、ノアは惜しみのない、強い愛情を抱いている。

そして、排斥した先生に対して、煮え滾る憎悪を抱いている。

通常ならば、そのまま情動の赴くままに、先生へと剥き出しの憎悪を向けるだろう。

しかし、ノアが持ち得る特異性――映像記憶。

その双眼にて見定めたモノは忘れない。そして、決して色褪せることはない。

故に、どれだけ憎悪に焦がれていても、先生と過ごした思い出は正確に残っている。

それを楽しんだという自身の思いも含めて、彼女は忘れることが出来なかった。

憎悪に天秤が傾いても尚、片方の皿が完全に沈まない。

 

「湿気た面してんな。最近はずっと塞ぎ込んでるみてぇだが、いきいき仕事に勤しんでいる相方さんを見習ったらどうだ?」

「……貴方が此処を訪ねてくるのは珍しいですね。器物損壊の謝罪ですか?」

「人を何だと思ってんだ、キレっぞ?」

 

 とっくにキレてるじゃないですか、と。人が悩んでる時に何用だ、この先輩。

着崩したメイド服にスカジャンを羽織った健康最強口悪少女。

美甘ネルは平常と変わらず、泰然自若だ。

それにしても、器物損壊の報告以外でネルが生徒会室を訪ねてくることは珍しい。

大抵、こういった謝罪行脚含めて大概的な対応はアカネ辺りがやっていたはずだ。

 

「別に、あたしの用事じゃねーよ。まぁ、なんだ……ちょっとした付き添いだ。

 荒唐無稽でよくわかんねーって話を持ってきたんだけどよ。ノアなら通じるかもしれねぇかもなって」

 

 渋い表情で吐き捨てたネルの言葉には困惑が見て取れる。

何でも白黒はっきりさせる彼女からすると珍しい、言い淀みが含まれていた。

 

「おい、チビ。さっき、あたしに話した内容をこいつにも話してみな」

 

 ひょっこり、と。ネルの背後に隠れていた少女が姿を現した。

背負ったレールガンと長い髪からして、正直隠れている時点で誰かわかっていたけれど。

 

「あら、アリスちゃん」

「こんにちは、ノア先輩」

 

 天童アリスは眉をへの字にし、いつもの快活さが見られない泣きそうな顔だ。

彼女が相談を持ち寄るならば、ゲーム開発部だったり、早瀬ユウカだと思うが、珍しい。

 

「あの、怒らないで聞いて下さい」

 

 そうして、アリスが語り始めたのは本来あるべきだった物語。

魔女に歪められず、正しく認識された愛と勇気と友情のアーカイブ。

 

「……信じられませんね」

「そりゃそうだ。あたしも聞いた瞬間、普通に訳わかんなかったぜ? 今も信じてねぇしな」

「ですが、私はそのお話を……否定しきれません」

「ノア先輩!」

「かといって、手放しに信じることは、難しいです。どれだけ証拠を揃えても、感情を消し殺すことなんてできませんからね」

 

 とはいえ、ノア達からすると、その物語――アリスが話す内容は到底信じられないものだった。

追放した先生が正しくて、今いる先生が間違っている。

それが根幹にある以上、過去も現在も歪められる。それが、明晰な頭脳を持ち、記憶を色褪せさせず保持できる生塩ノアでなければ、一蹴できたのだ。

 

「けど、これで目星はついたんじゃね? ノアが何か引っかかる表情してるってことは、アリスの言う話も切り捨てるには重い。

 ま、あたしは一旦様子見するぜ。錯綜してて、何が正しいか見極める時間が必要だ。

 それによ……裏に、とんでもねぇ悪意が潜んでて、あたしらを狂わせてんなら、それを正すのは――勇者の務めだ。だろ?」

「アリス、嘘ついてません! ネル先輩……!」

「わーってる。けどよ、手放しにその話を信じれねぇってのもある。

 チビ一人が騒いでるんじゃ、誰も信じねぇよ。実際、アリスが今までだんまりだった理由もそれだろ?

 あたし達に打ち明ける前に、ユウカやゲーム開発部にこっ酷く否定されただろうしな」

「はい……皆怖い顔でした……」

「そりゃ口も噤む。トラウマにもなっちまうわな。あたし達みてぇにブチギレねぇで話を聞くだけ、マシか」

「ネル先輩はもっと怒り狂うと思っていました、バーサーカーです! ゲームと同じようにブチギレ確定です!」

「アレはお前が煽るからだろうが! ったく、ある程度は物事視て考えなきゃ、C&Cのリーダーは出来ねーよ」

 

 記憶の上で、彼が自分達に対して嫌がらせをしたことはなかった。

アリスの言う通り、何かが狂っているとしたら、自分達が推し進めていることはどんな結果をもたらすのか。

では、この胸を支配している嫌悪感と憎悪は一体なんだというのだろう。

 

「そんじゃ、仮にアリスが正しいとすんぞ。どうして、アリスだけまともか。まあ、その理由も……あるっちゃあるか。

 深掘りしようにも、サンプルがアリスだけだったら何もわかんねぇ。もし、お前以外にも同じ意見だって奴がいるなら、アリスの仮説も信憑性がつく」

「だったら、アリスは旅をします! 仲間を見つけて、連れてきます! その時はネル先輩達も仲間になってくれますよね!」

「連れて来る奴にもよるがな、あんまりにもボンクラだったら、あたし達もこの話はなしにする。

 ともかく、だ! キヴォトスを歩き回れば、仲間も見つかるかもしれねぇ。つーか、アリスの言う先生は、シャーレの防衛室のトップと一緒に逃避行してるらしいぜ?」

「先生……」

 

 機械仕掛けの勇者。仲間も居場所も失い、たった一人の勇者。

それでも、立ち上がる。天童アリスはもうくじけない。

瞬間、轟音と共に警報が鳴る。機械音、銃声、そして、人の悲鳴。

何かが始まり、終わろうとしている。

 

「ナイスタイミング。おい、アリス。旅をしなくても、答え合わせの時間だ。

 ノア! わかってるよな!?」

「そのようですね。私達は今、試されているのかもしれません」

「世界とあたし達が間違っているか。それとも、アリスと『先生』が間違っているか」

 

 さてと、どうする。挑発的な笑みで、ネルは問いかける。

問いはもう投げられた。解答者はキヴォトス。そして、生徒達。

世界の底が抜けるこの瞬間、どこにいようが戦争の最前線だ。

 

 

 

 

 

 

「カチコミしてきた奴が連れてってくれるさ。――――“物語”の先頭に」

 

 

 

 

 

 

 




次回

『嘘吐き達の孤独な戦争/最恐VS最強』
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