反転好感度のデイバイデイズ   作:このむらりく

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第12話『嘘吐き達の孤独な戦争/最恐VS最強』

 《戦争》が始まった。全員戦場に繰り出されて、今頃は銃火器片手に鉄火場の境界線で躍っている。

言葉にしてしまえば、なんてことのない、決戦だ。

アンニュイな表情で溜息をつきつつ、コクリコは《トリニティ》にある高台から俯瞰する。

今頃各地にて陽動の《戦争》が始まったことだろう。各地で上がった戦火を直接見れないことを残念に思うが、その辺りは後日先生に責任を取ってもらうことにしよう。

三大学園は直接自分達が、それ以外の学園は黒服及び先生の預かり知らぬ所で集めた戦力が煽動含めて荒らしていくらしい。

 

「それにしても、トリニティを荒らすのは我一人だけとは、先生の信頼が重くて困ったものよ」

 

 ミレニアムはリオ。遊撃としてFOX小隊は、後輩であるRABBIT小隊や災厄といった主要戦力を抑えると言っていた。

各々死力を尽くす覚悟で臨んでいるはずだし、シャーレ突入にはシュロがついているから、最低限の戦線は敷けている。

《怪書》もある以上、手数は揃えられるから、よっぽどのことがない限りは、ベアトリーチェの下へと送り届けられるはずだ。

それにあの黒服のことだ、自分達以外にも手札を送り込んでサポートしているだろう。

 

 ……カイザーコーポレーションがこっちにつくのは訳がわからんけどな。

 

 話を聞くと、彼らは先生及びシャーレとの間柄は良くなかったはずだ。

カヤはこっそりと手を組んでいたらしいが、それはあくまでも打算と金銭が在るからこそ。

今回のような子供達の戦争に自ら首を突っ込んでくるとは、よっぽど札束で叩かれたか。それとも、何か先生に対して強い想いがあったのか。

五塵の獼猴といった七囚人も取り込んで、どうやらあの黒服は相当に先生へと肩入れしている。

得体が知れぬと警戒していたが、存外その情動への行動力でわかりやすいのかもしれない。

まあ、どうでもいい話だ。興味も湧かぬ相手に思考を割く程、コクリコは暇ではない。

 

 ……反転は生徒だけにかかるものじゃなかったら、文字通り世界そのものを塗り替える奇跡って訳か。

 

 それでも、思案に入ってしまうのは悪い癖だ。

改めて、コクリコからすると、思案する時間も無駄な議題ではあるが、まあ味方となるならそれでいい。

カイザーコーポレーションの圧倒的物量、均一に動ける戦力は、この状況においては非常に助かる。

ゲヘナはたぶん、これで動きが封じられ、抑え込まれるだろう。

 

「あの風紀委員長はどうせ、シャーレの方で護衛やろうし。シュロがどれだけ気張れるかにかかってんなぁ」

 

 先生が何も言わない以上、自分が口を出すつもりはない。火の粉が此方へと移らない限り、ひとまずはおいておくとしよう。

ゲヘナは統率できぬ無軌道で何でもありの暴れ者集団。勝手に仲間割れもしそうだし、考えても無駄だ。

きっと、物量で雑多に締め付けるのだろう。変に計画性を入念にしても、彼女達のような無法者には効果がない。

 

「とはいえ、我も程々に暴れんと。予行演習にはお誂え向きの舞台にシナリオ――なら、精々演じてやろう」

 

 役者は全員舞台の上。阿鼻叫喚をご要望なのだ、コクリコも手が抜けぬ。

懐の怪書から溢れ出す呪いは、際限なくトリニティの学園へと進行している。

破壊。破壊。破壊。燃え盛る炎と崩れ落ちる瓦礫は暴虐の証跡だ。

この学園、相当呪われてるのか知らないが、幾らでも化生を生み出せる。

怨念は土地や建物にこびりつく。どれだけ血を洗い落とし、臭いを消そうとも、其処で上げた慟哭と憎悪は決して、消えやしない。

 

 ……先生に誓った以上、ヘイロー破壊はやらんけど。

 

 楽な陽動。下らない足止め。傑物たる生徒数名が無双の如き活躍を眼下にて見せているが、此処まで届くことは決してない。

土地の相性もいいからか、化生は無限に現れ、無限に襲い、無限に壊す。

何かを護りながら戦っているお利口さんの生徒達はその被害を見過ごせないはずだ。

正しく生きて、正しく紡ぐ、わかりやすい人種を読むなど、造作もない。

 

「まあ、踊り狂えや、トリニティ。化性相手にどこまでやれんのか。アンタらの出来次第で、我らの予定も変わるんやから」

 

 向こうの決着がつくまで混迷と膠着で戦線を維持する。

その上で、できる限り、被害は抑えてほしいという顧問からの要望だ。

善処はするが、ある程度は許してくれるだろう。半端なやり口だと此方が食い破られてしまう。

 

「ティーパーティー。正義実現委員会。シスターフッド。救護騎士団。何処が最初に潰れるかねぇ」

 

 侮りはない。油断はない。呪いの女王は決して、享楽と趣に妥協を許さない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 どすん、とすん、どすん、とすん。

断続的に響く銃声と人が倒れる音。シャーレに突入して幾許か。

シュロと先生。たった二人の突入劇は順調そのものだった。

シャーレのビルへの秘密裏の潜入。とはいえ、その過程で敵と遭遇することはままある。

都度現れる警備の生徒をシュロは手際よく倒していく。一片の危機もない、圧倒的な蹂躙だった。

シュロが一般生徒より格段に強いと言う事実もあるが、他の学園で騒ぎを起こした結果、それへの対応に人員を割かれているのだろう。

シャーレ建物内の人員は明らかに少ない。拍子抜けなのか、シュロも退屈そうに欠伸までしている始末だ。

 

「はい、全員昏倒ですよっと。流石ですねぇ、先生。戦術と戦略、どちらも完璧でした。

 まあ、こんな有象無象に手を尽くす必要性は皆無ですけど」

「油断と慢心で足元を掬われるなんて、笑い話にもならないから。それにしても、君からそうも素直に褒められると、煽りに聞こえるね」

「手厳しい。手前は先生の忠実なる生徒だというのに」

 

とはいえ、油断は禁物だ。

ゲマトリアの奇跡で他学園にいる生徒達も召喚してしまうのかもしれない。

結局の所、陽動をしてくれているFOX小隊やリオ、コクリコ達が撃破されたらその次は先生達だ。

あのベアトリーチェのことだ、手札はまだ伏せられているし、自分を最大級に絶望させる為に、道中をわざと通している可能性だってある。

ある程度の練度ならば、総てシュロが屠ってくれるが、それこそ学園の最大戦力が敵として現れたら――。

 

「油断はしていませんが、退屈なのには変わりなく。この逼迫した状況ではありますが、少々お話を致しません?

 なぁに、すぐ終わりますとも」

「……お話なら、昨晩のうちにしておくべきじゃないの?」

「それもそうですが! こういった後先がない窮地でないと滲み出ないモノもあります故に」

「よく言うね。敵地で悠長に言葉遊びをしに来た訳じゃないでしょ」

「其処はほら。敵が来たら中断です。まあ、いいではないですか」

 

 気まぐれで、無軌道。されど、その振る舞いこそが箭吹シュロの真骨頂。

下手をしたらコクリコ以上に行動が読めない刹那主義者だ。

にたりにたり。気色の悪い笑みを浮かべながら、シュロは問う。

 

「コクリコ様との怪談にて魅せた純度の高い狂気、手前も認めております。

 ただ、我ながら強欲で、その先もお聞きしたく」

「……聞かなくてもわかるだろう?」

「直接聞く聞かないには大きな差がありますよぉ。手前様に、キヴォトス……あるいは生徒達。それらに対する愛着はまだ残っているのですか?」

「……」

「其処にあるのは責務と役割。断じて、手前様個人の想いではない。

 先生であり大人。そんな大層ご立派な理想だけで世界と生徒、両方救おうとするのはどんな気分なのかな、と。

 救世主? 英雄? 勇者? まあ華美なお言葉大いに結構。褒め称えますよぅ?」

 

 犯した、罪。継いだ、罰。

全部理解っていながら、それを明かさぬ想いに意味はあるのか。

救う必要なんてない。こんな世界、全部台無しにしてしまっても良かったのに。

シュロは提示しているのだ。何をそんなに本気でやっているのだ。こんな世界も、生徒も、全部捨てろ。諦めて逃げてしまえばいい、と。

乗るも反るもどちらでも構わなかった。飽きてしまえば、愚弄に塗れて潰せばいい。

 

「それを聞いて、シュロの何になる」

「何にもなりませんよ。ただ、手前が従う相手の真意ぐらい知りたいのは当然では?」

「よく言うね。隙あらば煽り倒して呪いへと沈める一手としたいだけだろうに」

 

 だって、それが――箭吹シュロの風流なのだから。

 

「愛着や気分なんて、私のそういった自己満足は生徒達には関係ないよ。

 彼女達の青春に混ぜ込むなんてとんでもない」

 

 彼女への流儀に対して、先生ができるのはただ真摯に回答を返すだけ。

そんな個人的な贔屓で救う対象を選ばないし、護られるべき生徒は庇護する。

先生と生徒。大人と子供。何度でも、どれだけ疑問を呈されても、そのスタンスを崩すつもりはない。

 

「役割と責務を背負った以上、誰であっても。

 私の生徒である限り、子供である限り。救うことを諦めないし、護ることを揺らがせない」

 

 生きていく限り、ずっと。

いいや、人をやめて、死んでしまっても。

世界を越えても尚、色彩に侵された残骸であっても、最期まで貫いた願い。

 

「その上で、それらが私の傲慢かもしれない。いつか、罪罰を受ける。いや、私はもうとっくに受けているか。

 だって、救うということが罪だと知っている。継ぐということが罰であると知っている」

 

 それは、あの方舟で自身が犯した罪。それは、別世界線の自分が悔いた罰。

別世界の生徒を救って、別世界の己を継いだ。

少女が望んだ結末を覆して、物語を終わらせなかったのは自分だ。

己の最期の願いを継いで、少女を赦してしまったのは自分だ。

 

「救わないべきだったかもしれない。赦すべきではなかったかもしれない」

 

本当はあの場で死なせてあげることのほうが、彼女にとっては楽だっただろう。

安易な赦しなど、世界を破滅に導いた彼女にとって、逆に艱難辛苦の道程へと案内するようなものだ。

ただ一人、異物である世界。最後に残った大切な人もいなくなった一人ぼっちの世界。

その上で、赦された以上、生き続けなくてはならない。それがどれだけの重みになったか。

 

「それでも、救って継ぐと決めた以上、私は救うよ。例え、その果てに色がなくてもね」

「世界と生徒が望む望まないに関わらず、手前様は気取るんですか? 救世主を」

「救世主なんかじゃない。私はただ…………諦められなかった。

 あんな終わり方をしていい子じゃないって、傲慢にも願った」

 

 けれど、諦めたくなかった。

“砂狼シロコと先生”が求めたモノはもう永遠に手に入らないと理解した上で、拭いたかった。

救いたかった。継ぎたかった。

あんな箱舟で何の赦しも救いも得れない結末は嫌だったのだ。

 

「…………ま、手前は空が赤くなったあの時、何も知らない関わり合いもない。

 だからそんなに言葉を弄する事はできませんが。それでも言わせていただくならば、その傲慢が自身を潰しますよ。

 手前様が背負うには世界も、生徒も。全部余す所なく、なんて……身の丈を超えてるんですってば。

 誰も彼も救って、自身を救えない様が滑稽と言わず何と言いましょう」

「ははっ…………。でも、伸ばせる手は伸ばしてしまうのが、私の悪い癖だし、これから先も、治ることはないんだろうね」

 

 自分と彼女が選んだ解答が正解か否か。それは、きっと――己が死ぬまで確定しないだろう。

いつか必ず。奇跡の代価を払う時が来る。確定された結末を曲げて救った結果が、この世界だ。

終わりの続きを見せた、罪。そして、継いで護るという罰。

 

「結局、私は諦めと我慢がうまくできない……ベアトリーチェが生徒と世界に良い兆しであると理解できないだけなんだ。

 そうなると、衝突しかない。どちらが正しいか、どちらがくたばるか。君はどっちに賭ける?」

「こうして、手を貸しているのです、答えずとも理解してほしいですねぇ」

「愚問だったか。でも、直接、シュロの口から言葉で欲しいな。――――――私に賭けろ。言ったはずだよ、君もコクリコも最期まで愉しませると」

 

 その果てに辿るであろう結末は、言葉には出さなかった。

世界は色褪せていく。青が灰へと堕ちていく。無意味で無価値なモノへと成り下がっていく。

それは自身も例外ではない。自分がいなくとも、世界が続いていくように。

 

「私は君達の愉悦を証明し続ける。それを私が裏切った時は……好きにしたらいい」

「強がりで煙に巻かないで下さいよぅ。はぁ、突っついても蛇すらも出ないとは……長期戦になりそうです」

「少なくとも、私はまだキヴォトスを立ち去ることはできないからね」

「はいはい。救って護りたい生徒達がいるからですよね? 偽善者の綺麗事ご苦労様です」

「まあ、それもあるとして。君達はその枠組から抜けてる風だって言うけど、違うよ?

 私にとって花鳥風月部も生徒の一員だし、そもそもこんな問題児を放置できないでしょ」

「ほぇ?」

 

 きょとん、と。何を言ってるのかわからないといった顔で、シュロは続きを促した。

 

「君達が風流を貫く限り、それを止める立場《顧問》は立ち去れない。

 監督不行き届きは出されたくないんでね」

「………………与太話を真に受けるような人でしたかね、手前様」

「与太話も何度か語らえば、与太じゃなくなるさ」

 

 彼女達にとっての風流は、刹那的な破滅。

絶望と嘘。青春《イマ》を生きる生徒達を脅かす宿敵《アークエネミー》。

もしも、このような事態がなければこうして肩を並べることもなかったであろう、生徒達。

なればこそ、絆を結んでしまった以上、彼女達が起こすかもしれない破滅を止めるのは、自分でなければならない。

その役目は自分が担う。誰にも譲らないし、歪ませない。

 

「コクリコとシュロが世界の敵を気取るなら、私は何度でも打ち砕くよ。

 何時でも来てほしいな、砕かれたくなったら」

「顧問と部員ってそんな殺伐な間柄でしたっけ?」

「君達が折れてくれるなら、間柄は丸くなるよ」

「ありえませんね」

「だと思った。そういうことだから、根比べになるね」

「一応釘を刺しておきますけれど、手前もコクリコ様も折れませんよ?

 呉越同舟――今はただ、相対する敵が共通しているから手を結んでいるだけに過ぎません」

「理解ってるよ。折れるか、貫くか。ただ、その結末を見届ける為には、歪んだ世界を元通りにする必要がある」

「花鳥風月部と先生は決して相容れない。破綻が視えている上で、言うんですから始末が悪い。

 先生は本当に理解してるんですかねぇ」

 

 いつか破綻する関係でも。最初から間違っている絆でも。

それを結ばないという選択肢はありえない。彼が先生で、彼女達が生徒である限り。

その願いを貫くことを選んだ果てが見えなくとも、きっと。

 

「その時はその時だよ。相容れず別れた時は、また明日って手を振ればいい」

「…………気色悪。ですが、そこまで傾かれるのも才能ですね。

 見習いたくもないですし、手前がそんな緩やかに屈するのは不可能なのですが」

 

 ゲロを吐くポーズで心底拒絶を表すが、シュロの言葉の色に閉塞的なモノは見受けられなかった。

絶対的な輝き。革命的な風流。それらを何度でも。どれほど夜を超えても。シュロに魅せると誓った決意を言葉へと刻み込む。

 

「そこまで言の葉を紡ぐなら改めて。手前に約束してください。何が何でも、先生は最期まで貫いて下さい。

 その光景を手前に見せる前に死んでしまったり、諦めてしまうことは許しません。

「……ああ。重い期待だ。でも、君達の力を借りるにはそれくらいは必要だよね、やっぱり」

「これはコクリコ様も含めた花鳥風月部の総意と捉えていただければ。

 手前が先生を黄昏へと貶すまで、意地でも這い蹲って生きて下さい」

「それじゃあ、私からも。風流と称して、皆に迷惑をかけるのをやめてくれると嬉しいな」

「厳しいお言葉。ですが、今、この瞬間だけはいいでしょう」

「…………うん。そうだね」

 

 

 

 

 

「――――――――約束だ」      「――――――――約束です」

 

 

 

 

 

 

 その約束を履行することが何よりも難しいと、お互いに知っている。

それでも、厳しい条件を突きつけたのは奇妙な絆が生まれていたからか。

約束は交わさなければ始まらない。物語も続きが紡がれない。選択は強いられなければ選べない。

いよいよ、シャーレの屋上へと続く階段前。駒を配置するなら最適の設置位置。

誰かが門番として置かれているに決まっているし、先生もシュロも素通りできるとは思っていなかった。

 

「御話はここまで。それじゃあ、お互いやるべきことを果たすとしましょうか」

 

 眼前に佇む“最強”を。空崎ヒナを倒す為には、これくらいの気付けは必要だろう。

 

「では、先生はちゃちゃっと元凶を倒してきて下さい。足止めがどれくらいできるかわかりませんが、此処は手前が引き受けます」

「大丈夫?」

「大丈夫な訳ないでしょう。無茶無謀無理を重ねまくっても、空崎ヒナ相手は無理ですねぇ。

 でも、足止め“程度”できなければ、約束の価値も上がらぬというもの。それくらい出来ずして、先生の生徒を自称できません」

「そこまで気負う必要はないんだけどね」

「いけませんねぇ。こういう時、手前に言う言葉なんて一言でいいんです。お“願い”と」

 

 勝算はゼロ。無茶無謀無理の三重苦は付き纏う。

断言してもいい。キヴォトスにて最強のカテゴリに入るヒナ相手に単独で挑むなど、馬鹿げている。

規格外の枠を越えた規格外。如何にシュロといえども、あの荒れ狂ったゲヘナを武力で鎮められる少女を相手取るには不足がある。

自殺行為だ。己の詰みを認めながらも、シュロは振り返らなかった。

 

「――少しでいい。お願い」

「――承知致しました。怪談家の名に懸けて、必ず」

 

 それでも、たった一度のくらいは。先生の生徒らしい、馬鹿げたことをしてもいいと思った。

気まぐれで、次はないだろうと確信できる、端役の役割。それをこのシュロに演じさせるとは。

喉が渇かない内に迎えに来て下さいよ、と。軽い小言を言いつつ、シュロは先へと進む先生を見送った。

真っ直ぐに頼られるというのは、こそばゆいものだ。ありえなかった邂逅と対峙は、シュロを高ぶらせる。

 

「邪魔、しないんですね。手前――余所見する程度の端役ですよ、今回は」

「そうしたら、その邪魔を邪魔するんでしょう? それに、貴方は目を離していい端役ではない。

 何を抱えているのかは知らないけれど、異質で、歪んでいるわ、貴方」

「まったく。油断してくれたら、楽に転がせられるのに。鉄火場では一番やりにくい相手です」

 

 最強である事に胡座をかいて、慢心していたら良かったのに。

心身共に強いのだからやっていられない。早速、交わした約束は破談になりそうだ。

何せ、迷惑どころか、相手を殺す気概でいかないと、抑えられる気はしないから。

最恐を以て、最強を制するには、些か懸けなくてはいけないものが多すぎる。

 

「花鳥風月部――怪談家、箭吹シュロ。『先生』の生徒です。以後お見知りおきを」

「ゲヘナ風紀委員長、空崎ヒナ。誰であっても、『先生』に迷惑をかけるなら、容赦はしない」

 

 銃を取り、決意を滾らせる。

彼女達の流儀は、正義は、本来の始発点では生み出されなかった戦いとして結実する。

瞬間、二人の姿が掻き消えて、激突した。

 

 




次回

『罪と罰と贖いの少女達/カルマ』
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