反転好感度のデイバイデイズ   作:このむらりく

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第14話『後退無き獣達/恋獄の災厄』

「先生、私達にご相談とは何でしょう? シャーレ突入の手筈でしたら万事滞りなく進めておりますが」

「そのことについてなんだけどさ]

「ご心配なく。隊員一同、先生の赴く死線へと付いていく所存です。

 誰一人として、怖気づく者はおりません」

「えっと、ね? とても気負ってる所申し訳ないんだけどさ……」

 

 ベアトリーチェとの決戦前、装備のチェックをしているFOX小隊へと先生は声を掛ける。

これから、自分達――否、世界の存亡を懸けた戦争が始まるのだ、全員下準備には余念なく、真剣そのものだ。

もっとも、特殊部隊である彼女達がそういったことに手を抜くなど、ありえないけれど。

 

「君達はシャーレへと連れて行かない。陽動側に回ってほしい。

 突入するのは、私とシュロだけだ」

「は?」

「突入するのは、私とシュロだけにしようかなって」

「ほう?」

 

 瞬間、空気が冷えた気がした。多分めちゃくちゃ全員キレている。

クルミとユキノの一言がもう既に臨界点だ。人は一言だけでヤバいと理解できるのだ。

まるで自分達が信頼されていないと思っているのだろう、もう全員の真顔を見ているのがちょっと怖い。

 

「ちょっと待ってよ先生? まさか、あの嘘つき女だけを連れて突入するつもり?」

「そうだよ」

 

 もうこのまま見なかったことにするべきか――いや、それは逃避だ。明らかにFOX小隊全員の顔が真顔になった。

エアコンで冷房を全開にしているかのような寒さだ。

クルミはいつものへの字に曲がった口元は真一文字になり、明らかに苛立っている。

ニコについては表情こそ怖くないが、青筋が幾つも出ている。全弾装填済ロシアンルーレットをやった時と同じくらい、キレている。

これらはとてつもなくまずい兆候だ。オトギから連携を受けているFOX小隊ご機嫌マニュアルで言うと最低最悪の水準である。

 

「いやいやいや。先生、FOX小隊内の落ち着き常識ブレーキ役の私からしても、それは良くない提案だよ?

 というか、もう胃が痛いからやめてね? 殺気立ってる他三人を宥める忠犬ならぬ、忠狐の私の立場を考えてほしいなあって」

「忠狐なら受け入れてくれると、何卒何卒」

「畏まって頭を下げられても聞かないよ~。私だって、何でも受け入れる安い忠誠じゃないんだ」

 

 オトギだけはへらりとした態度を崩してはいなかったが、先生の下した決断については否定的だ。

それはそうだ。実際問題、彼女達は蚊帳の外及び置き去りにされることに対して神経質である。

SRTの廃校というFOX小隊の預かり知らぬ所で起こった事柄を考えると、当然反対する。

もしも、先生に蚊帳の外だと言外に言われたら、全員澱む。何なら無理矢理に付いていく動きへと切り替わる。

 

「ねぇ、先生?」

「……………………ニコだけにニッコリ笑顔だよ。こういう時こそね?」

「言っていい冗談もわからなくなりましたか? いよいよ一日付きっきりでお世話しないと駄目なんですかね?」

 

 試しに軽口を叩いてみたけれど、これはもうやらない方がいいだろう。

次はない。彼女の通告が胸に響く。話す度に彼女の引き金の重さが軽くなっている気がしてならい。

 

「全員落ち着け。ひとまず、先生の話を聞こう。至った理由。その決断に対しての正当性。

 糾弾するのは、それらを受け止めてからでも遅くはない」

「流石、隊長。助かるよ、ユキノ」

「言っておきますが、納得できる理由を提示いただけないのでしたら、従いませんよ」

「…………FOX小隊にはワカモの対応をしてほしいんだ」

 

 ああ、なるほど。それはそれで簡単に言ってくれるなあ。

いくら先生のお願いだからといって、限度がある。FOX小隊全員の気持ちはこの時、綺麗に合致していた。

 

「ワカモ、かぁ。確かに戦うとするなら、小隊全員で当たらないときついわね」

「それが先生の命なら、小隊全員、決死の覚悟で成し遂げますが」

 

 嘗て、FOX小隊が戦い、勝利を得た相手。

災厄の狐。破壊衝動に焦がれた七囚人の一人である狐坂ワカモ。

できれば二度とやり合いたくないし、次は勝てるかどうかわからない。

単体の力量ではワカモが圧倒的に格上。チームが全員十全であって初めて勝負になる。

 

「まあ、決戦となると。ベアトリーチェは遊撃としてワカモを確実に使ってくる。

 型に嵌めて使う……防衛とか、そういった用法では絶対に用いることはない。あの子にそういうのは向いてないしね。

 そうなると……」

「ゲリラ戦。自由に暴れ倒す駒として使うのが一番最良ですね」

「制御する手間を考えると、勝手に動いて敵を倒して。それが一番だもの。

 加えて、心理的な意味でも掌握してる以上、自分に向かってくることもない。

 はぁ、七囚人も迷走していて情けないったら。恋に盲目で己の正義がないのかしら!!」

「クルミも迷走していた癖に……」

「迷走していたのなんて、此処にいる全員でしょ、張り倒すわよ」

「張り倒されたら先生に介抱してもらうもんね~……うわ、マジ殺気」

 

 負けるつもりはない。しかし、勝てるとも断言はできない。

特殊作戦及び戦闘のプロフェッショナルである彼女達をして、ワカモは口をつぐむ強さだ。

 

「ユキノ。改めて、お願いしていい? 正直、足止めで十分。

 私とベアトリーチェが決着をつけるまで、戦線を維持して欲しい」

「我々は貴方の手札です。貴方が命ずるなら、全力で事に当たります。とはいえ、断言ができる相手ではありませんね」

「行動を計算しきれない相手というのは理解っている。それでも、私達の中で一番、ワカモを倒せる可能性があるのは、君達だ」

 

 とはいえ、FOX小隊はワカモとの戦闘経験がある。

お互い、手の内はある程度知っている以上、彼女との戦闘だけを考えると、千日手になる可能性がある。

そうなれば、蹂躙になる可能性は低く、膠着状態は作れる。時間稼ぎをしてくれるだけでもかなりありがたい。

 

「それじゃあ、算段を立てようか。とはいっても、今の彼女なら憎悪に眼が眩んでいる。

 なら、私がいるとかそういう噂を流すだけで勝手に来ると思うよ」

 

 そうなると、後はどれだけワカモに食らいつき、打ち破る手筈を先生が考えられるかに掛かっている。

勝ちに行くのだ、全員で。

 

「だから、後は倒し方だけ。異常なまでに鋭い直感、身体能力。災厄をどう攻略するか。

 皆の覚悟にかかっているけれど、乗ってくれるかい?」

「言ったはずです、私達は先生の為に生きると決めています。其処に躊躇などありません」

 

 頼もしい言葉だ。ならば、尚更気合を入れなくてはならない。

足止めだけでいいなんて、ぬるい結果ではなく、勝利を追い求めよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 晴れ渡る空だった。気持ちの良い快晴を尻目に、今から自分達は戦争をする。

割れたコンクリートの路面を踏み越え、折れ曲がった道路標識から鬱陶しげに目をそらし。

どれだけ壊してもいいということは、どれだけ相手を傷つけてもいいということだ。

廃棄された市街地にて、FOX小隊の3人は溜息をついた。

眼前にゆらりと立っている黒髪の少女は狐のお面にて、表情が見えない。

予め決めた手筈通り、わざと先生が此方にいるという情報を流し、ワカモを引き付けた。

情動で動く少女故に、簡単に乗ってくれたのは助かる。此処で彼女が乗らなければ、詰んでいた。

 

 ――勝率は何%?

 

 七囚人、狐坂ワカモ。

災厄の狐――情動のままに破壊を繰り返す激動の少女。

FOX小隊が戦った相手の中でも、群を抜いて危険性が高い生徒である。

特殊な能力を持っているとか、特異性が在るわけではなく、ただ単純に強い。

個々で戦うと敵うはずもない相手に、再びFOX小隊は挑まなくてはならない。

 

 ――考えるまでもなく、最低保証。

 

 はっきり言って、予測ができない。

気ままに、自由に。思うがままに動く災厄をどう鎮めたらいい。

そんな泣き言を零したくなるというのに。

 

「…………だが、約束の為には勝たねばならん」

 

 数日前だったらくだらないと吐き捨てた言葉を、ユキノはそっと口に出す。

玩具を与えられた子供のように。キラキラとした目力が湧き上がってくる。

我ながら現金なものだ。先生とのこれからを考えるだけでこうも行動力が湧いてくるか。

 

 ……最低保証も、あの人が信じてくれるなら、少しは跳ね上がるか。

 

 口元に浮かんだ緩い笑みは戦場には似つかわしくない。

SRT廃校の時から暫くはできなかった表情をさせてしまう、本当に卑怯な大人だ。

 

「それでは、災厄の再攻略といこう。各々、死力を尽くせ」

「しんどいなぁ」

「辛いわねぇ」

『正直、逃げ出したいよね』

 

 隊員から返ってくる言葉には憔悴が見えていた。嘗ての戦い――総てを出し尽くして尚、運に頼らざるを得なかったワカモとの戦い。

それの再演ともなると、表情も渋くなる。

気概はあれど、これからの艱難辛苦を考えると言葉の語気も小さい。

それもそうだ、勝ち目がギリギリのラインでしか見れない戦い。相手は過去最高最強最悪にブチギレている七囚人。

逃げれるものなら逃げ出したい。どれだけ十全であろうと確実性がないモノ程、厄介な事柄はない。

 

「その気持ちはわかる。死力を尽くすにも限度がある。

 仕方がないので、超過稼働分は先生に何らかの形で払ってもらおう」

「了解!」

「やってやるわぁ!」

『狙撃が唸るよぅ!』

 

 できる隊長は部下のコンディションを秒で改善できる。

方向性とか、単純さとか、何か色々と問い質したいことはあれど。

ひとまず、隊員全員明らかにやる気が上がっている。目に見えて声のハリが良くなった。

こいつら、本当に大丈夫か、と心配になるが、視えない聞こえない知らないふりだ。

過保護ボケ色ボケ親愛ボケ。ボケ三人組と成り果てた自らの隊員に頭を抱えつつも、表情を引き締める。

ととんとん、と。挨拶代わりに放ったリズミカルな銃弾とは裏腹に、ユキノの表情は暗い。

 

「あら、耳障り」

 

 まず、銃弾が当たらない。抉られるのは地面だけで、標的は何の手傷も負っていない。

僅かな隙間を擦り抜け、駆け上がるワカモに対して、狙いが定まらないまま、距離が縮まっていく。

射線上から逃れようとも、ワカモの俊敏さの方が速い。

 

「頭の貴方から死んでいただけます?」

 

 銃口がユキノの頭へと定まった。

放たれた銃弾は躱すも、そんなことは当然かのように更に接近。

振り抜かれた銀閃が、横に間引かれる。この女、何の躊躇もなく首筋狙いと来たものだ。

言葉の通り、殺意が凄い。

ワカモの愛銃である真紅の災厄に括り付けられた短刀――銘は知らない。

だが、決して鈍らではないだろう。ワカモが愛用しているということはそれだけ優れているというエビデンスへと繋がる。

業物の切れ味に、ユキノは油断することはない。

 

「変わらんな。あの頃と同じ、今もトチ狂った獣でいる気か?」

「そちらこそ。あの頃と同じ、正義に縛られた獣でいる気ですか?」

「ふん」

「はっ」

「余計なお世話だ――!」 「余計なお世話です――!」

 

 そのまま、二人は接近戦のインファイトへと突入した。

踏み込んで交差。互いに放った蹴りが腹部へと突き刺さるも、踏ん張る。

噛み締めた口内から呻き声を吐き出し、銃口を再度向け発砲した。

躱して、撃つ。その繰り返しを数度至近距離で行いつつ、半ば反射的な攻防を繰り広げている。

 

「さっさと倒れてくれません? 貴方達に手こずっている暇はありませんの」

「生憎と、先生との約束が控えているんだ。ここで倒れて、あの人との一時を台無しにするのはいただけない」

 

 あ、抜け駆け。後ろの隊員達からのブーイングが騒がしい。

クルミがマジギレ顔で叫んでいる。お前が一番色ボケだの、卑しい狐だの。

何を言うか、バカバカしい。そういった色ボケは今の所、クルミだけだ。

 

「……後ろが騒がしいようで。ちゃんと部下の躾はした方がよろしいかと。

 ああいった手合は抜け駆けには厳しいですし、面倒な事になりますわよ」

「善処する。全く、卑しい態度であの人が靡く訳がないというのに」

「聞こえてるっての!! どいつもこいつも馬鹿にして!」

 

 するりとユキノを抜けて、クルミ達へと発砲するも、二人はわかっていたかのように回避。

気の抜けたガヤを喚いていても、彼女達はなんだかんだで精鋭である。

装備は十全、やる気は満タン、迷いは欠片もなし。今のFOX小隊はかつてない程に、溢れている。

ワカモと正面から戦えているというだけでもキヴォトスでは上澄みなのだ。

 

「ところで、いつもの狙撃はお預けですか? あの方、存在感マシマシでアピールするタイプですのに。

 こんなにも隠密に徹するのは珍しいと思いまして」

「別任務中でな、呼んでこようか?」

「冗談。機会を狙って、潜んでいるのでしょう?」

「さて、どうだろうか。お前に割くリソースも有限でな。私達三人で十分だと言ったら?」

「減らず口を!」

 

 互いの愛銃から放たれる銃弾で砕かれたアスファルトの破片が宙を舞う。

忙しなく動く両者は未だ手傷らしい手傷を負っていない。

手の内がバレている相手故に、決定打が一向に訪れぬ状況が数分続く。

 

「倒れなさい、おらぁ! 手間かけさせないでくれる!?」

「めちゃくちゃ言ってるの理解してます!?」

「緊急事態なんだからしょうがないでしょーが!」

「えぇ……柄悪すぎません?」

「花の乙女になんてこというのよっ!」

「乙女はヤクザキックなんてしませんわ!」

 

 廃棄された街並みを四人が駆け抜ける。

クルミが先んじて銃弾で牽制しながら、接近。

もう片方の手に持ったバリスティックシールドで真紅の災厄をかち上げる。

そうして、がら空きの腹へとヤクザキック。 

衝撃をうまく分散させたのか、ワカモは吹っ飛ばず、流れるような動きで殴り返す。

 

 ――厄介ですわね!

 

 ワカモからすると、一度負けた相手だ。

大抵の生徒を屠れるこの自分が一向に崩せない部隊だ、当然全員が強者である。

短刀も銃弾もクルミの盾で全て阻まれる。

タンクの役割を抑えているからか、クルミは近接戦闘が巧い。

かといって、距離を取ると、中距離で待機しているユキノ達の掃射を食らってしまう。

更にワカモが気がかりなのは、スナイパーとしてこれでもかとアピールしてくるオトギが姿を現さないことだ。

本気で三人で勝ちに来ているのか。それとも、秘匿を貫いて、切り札とするのか。

彼女達の意図を読み切れていない以上、迂闊に判断を下すことはできない。

 

「アンタなんか狙撃無しで倒せるのよ、駄狐っ!」

「あ?」

「うっわ、図星ぃ!?」

「いつにも増して調子に乗られているようで!」

 

 暫く表舞台から消えていたこともあり、鈍っているかと思えば、全くそんなことはなかった。

トラッシュトークも切れ味抜群。ここまで高揚及び士気が高いのは珍しい。

FOX小隊は淡々と任務を遂行するイメージであったが、昔の野性味をどこで取り戻したのか。

 

「それにしても、貴方達はどういった気変わりで?

 数ヶ月前でしたか。偶然街中で見た際は表情も殺気も腑抜けた情けない有り様でした。

 何の意志もない、伽藍洞。嘗ては最強でありましたのに、随分とつまらない部隊に成り果てたものだと失望していたはずが……此処まで戻って来るとは」

「その通りだ、否定はしない」

「まぁ、そうだね」

「言い訳できないわ」

 

 大方、SRTの廃校関連で性根も腕前も腐ったのだと思っていた。

事実、彼女達の噂はほとんど聞こえなかった。あれだけ名声を得て、メディアにも出ていた彼女達が突如消え去った。

他の面々はヴァルキューレに編入されたり、公園でよくわからないストライキをやっていたり。

ばらばらになったSRTに価値はない、地に落ちた正義は何を為すこともない。

 

「今では、勇猛で、正義の名の下に。遍く総てを這い蹲らせる輝きが在る。

 私が屈辱を味わったあの時。怨敵と認め、胸中に刻んだ――心底恐れたFOX小隊ですわ。

 何が貴方達をそこまで研ぎ直させたのでしょう?」

「今の貴様に言ってもわからんさ」

 

 まさか、世界に嫌われ、排斥された人が、FOX小隊を蘇らせたなんて。

今のキヴォトスで喧伝しても、誰も信じはしないだろうから。

それを知っているのは、自分達だけでいい。否、自分達だけがいい。

先生とFOX小隊だけの思い出として、キヴォトスに遺ればいいのだから。

 

「…………まあ、いいでしょう。そもそも、私は後先を考えすぎていました。

 退路など必要ないというのに、先ばかりを考え、眼前の貴方達へと注視していなかった。

 怠慢ですわね、そんな余裕を以て対峙できる相手ではないとわかっていながら、私は甘えていた」

「なんだ、災厄の狐も存外考えているものなんだな」

「ええ。それはもう。貴方達を倒した後先を考えてこそ、先生の腹心ですの。

 本来なら、他の有象無象に先生を託すなど業腹ですのよ」

 

 怒りを抑えた声で、ワカモは言う。情動は、切れ切れに落ちていく。

仮面越しでもわかる、皺くちゃに歪んだ形相が容易に思い浮かぶ。

 

「私にも思う所があり、余力を残した状態で云々、と。行儀よく戦ってきましたけれど。

 もう、やめましょう。お互い気取った戦いで決着はつきませんわ」

 

 あっけらかんと。諦めたかのように。

 

「故に、私の任務は、貴方達の相手に絞ります。

 だから、此処で――死んで下さい」

「総員、警戒!」

 

 拙い。この場にいるFOX小隊の全員に戦慄が迸る。

こうして膠着状態で在るだけで、一定の成果は得れていた。

ワカモをシャーレから離れさせる。無論のこと、隙あらば倒すつもりではあったが。

ここからは全力の喰らい合いだ。

銃声が止まなく響く。舞い踊るように躱し、稲妻のように潜り込む。

それは三方向から迸る銃弾を躱しつつ、スレスレの射線外を疾走り切る曲芸技だ。

 

「……武器破壊!?」

「台無しにするのはこちらから」

 

 狙いは人ではなく、武器。

ワカモは愛銃に括り付けていた短刀を外し、勢い良くユキノの突撃銃へと突き刺した。

短刀が突き刺さった突撃銃は当然もう使い物にならない。

サイドアームである拳銃を抜かなければ。いいや、そのまま突撃銃を鈍器代わりにして格闘戦か。

数瞬、判断が迷う。どちらが最善か考えてしまった。故に、その一瞬、ユキノの動きが遅れることになる。

その遅れはワカモが必殺を決めるには十分過ぎるくらいの時間だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――ぶち抜きます」

 

 必殺が、刺さる。




次回

『踊り狂う駄獣達/それは刹那に煌めく正義』
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