カスレアモンスターに転生した最強の俺は再び頂点を目指す! 作:サニキ リオ
「……ハッ」
目を覚ますと、そこは神秘の森の中にある広場のハンモックの上だった。
「だいぶ魘されてたみたいスけど、大丈夫スか?」
「マチョルか……」
ハンモックの横に立っていたマチョルが心配そうに声をかけてくる。
「ちょっと昔の夢を見ていただけだ。心配ない」
上半身を起こすと、俺は軽く伸びをする。
「それより、チャガとの戦いは一週間後だ。それまでに俺達も強くならないといけない」
「でも、オイラ達で勝てるんスか?」
不安そうな声を出すマチョルに、俺は不敵な笑みを浮かべて答える。
「厳しい戦いにはなるだろうが勝てる」
戦いは一週間後。その間に俺達はチャガを倒すための秘策を用意しなければならない。
チャガは徹底的にレイナの逃げ道を防ぐためか、SNSで大々的に宣伝までしていた。
試合会場まで抑えている徹底ぶりからは、よほどの自信があることがわかる。
「余裕ぶっこいてる暇はないぞ。少しでも強くなってなきゃ、レイナが出すであろう無茶な指示に応えるなんてできないからな」
「おりょ? もうお嬢に指示は一任しちゃっていいんスか?」
「よっぽどのことがなけれりゃ指示には従う。レイナも自分がどうするべきかわかったみたいだしな」
「なるほど……」
今回ばかりは俺が独断専行で魔力の籠もった指示を無視して勝てる相手ではない。
レイナが的確な指示を出し、それに従わなければ勝利は程遠いだろう。
「あの子、大丈夫ッスかね」
「サンドラのことか」
サンドラはモンスターの中でも人に近い姿をした珍しい種族だ。
人の姿でありながら竜の特性を兼ね備えたこのモンスターは見た目の良さから人気のモンスターとして有名だ。チャガがあんな扱いをして炎上したのも頷けるというものだ。
「使役されている以上、肉体はちゃんと回復するだろうな」
「オイラが心配しているのは心の方ッスよ」
いくら肉体の傷は癒えようと、心に受けた痛みまでは消えることはない。マチョルが言いたいのはそういうことなのだろう。
「敵の心配してる場合か」
「そうですよ、マチョル君。この方に人間らしい心を求めないことです」
いつの間にやってきたのか、ミサキが会話に入ってくる。
「どうせ、チャガのやり方も合理的だと思っているのでしょう?」
「そうだな。確かにあいつのやり方は合理的だ」
少ない労力で短期的にモンスターをパワーアップさせられるのは魅力的だ。事実、チャガは短期間の内に実力を伸ばし、結果を出している。
「だが、サンドラをただのパワーレベリングの装置に使ってる時点で実力は知れた。あれは楽な方法に流れたミシカライザーの末路だ」
「どういうことッスか?」
「サンドラはピンチになればなるほど炎の出力が上がるモンスターだ。仮に石版大戦で負けがほぼ確定しているような状況でも、火事場のバカ力で戦況をひっくり返せるんだぞ。こいつをただの養分にするなんてもったいないだろ」
それにチャガのやり方ではモンスター達の実戦経験が積めない。いくら肉体を強くしたところで、チャガもモンスター達も本質的に強くなったわけではないのだ。
「私が言いたいのはそういうことではなく……!」
長い付き合いだ。ミサキが何を言いたいのかなんてわかっている。
「わかってるよ」
あのサンドラが可哀そうだから、絶対に助ける。
そういったモンスターを思いやる心が俺に残っていると思いたいのだろう。
ミサキはあのサンドラに自分を重ねているのだ。
かつて、俺は厳しい訓練で立ち上がることができなくなるくらいミサキを痛めつけた。ミサキも必死に食らいつき、自分の価値を証明しようとしていた。
だが、俺はミサキに見切りをつけてアビィへと渡した。ミサキが俺を恨むのも当然だ。
「安心しろ。あの子は俺達が助ける」
こんなことで罪滅ぼしになるなんて思っちゃいない。それでも、サンドラを助けることでかつての相棒の気持ちが晴れるのならば、迷う必要はなかった。