カスレアモンスターに転生した最強の俺は再び頂点を目指す! 作:サニキ リオ
「インプリズン!」
炎に焼かれているバニラの召喚を慌てて解く。
今回の石版大戦のルールは二対二。あたしの使役しているモンスターはバニラが残り、チャガには残っていない。
それはこの石版大戦の勝者はあたしであるという他ならない証明だった。
「バカな、この俺が石版大戦で負けた……だと……」
モンスターの心配もせずに、チャガはただ呆然と呟く。
サンドラを利用したパワーレベリングによって強化されたモンスターを使って、今まで負けなしだった彼にとって、あたしに負けたことは信じられない出来事だっただろう。
まだ格上のミシカライザーに負けたのならば納得がいったはずだ。
でも、相手は過去の栄光にすがるオワコンミシカライザー。その上、使役するモンスターも世間的には弱いと言われるモンスターばかりだ。チャガが負けたという現実を受け入れられないのも無理はないだろう。
『勝者、レイナ・ケーモント』
無機質な音声が流れ、静まり返った会場にあたしの勝利が宣言される。
『うおおおおおおおおお!』
そして静寂の後、はち切れんばかりの歓声があたしの頭上に降り注いだ。
「あ……」
久しく向けられていなかった自分への賞賛の声。それを聞いた瞬間、胸の奥から突き抜けるような快感が迸る。勝利に酔いしれるこの感覚をまた味わえるなんて思わなかった。
「あたし、戻ってきたんだ」
実況こそ自動音声だったが、スタジアムという戦場で自分のミシカライザーとしての価値を知らしめる勝利。
それを再び得ることができたのは、紛れもなくマチョルとバニラが頑張ってくれたからだ。
「レイナ! おめでとう!」
泣きそうになるのを堪えて勝利を噛み締めていると、観客席からアビィさんが飛び出してきて抱き着いてきた。彼女の柔らかさと温もりに包まれた途端、安心感が溢れ出してきてあたしの目からは堪えていた涙がこぼれ落ちていた。
「さっき、編集長から連絡があってさ……次の週刊ミシカライザーの表紙、レイナで決まりだって!」
「それは、喜んでいいんですかね?」
アビィさんを怒鳴りつけていたあの編集長のことを思うと複雑な気分だが、アビィさんの職場での立場が良くなったのならひとまずは喜んでおこう。
「それよりレイナ。観客のみんなに応えないと!」
そう言って、アビィさんはあたしの手を引いてスタジアムの中央まで歩き出す。
「レイナ! すごい試合だったぞー!」
「神童のミシカライザー復活だな!」
「これからも応援してるから頑張って!」
開戦前の野次とは違う賞賛の声。
あたしは大きく息を吸って気持ちを整えてから、右手を勢いよく突き上げた。
「応援ありがとう! この石版大戦、あたし達の勝ちよ!」
勝利宣言と同時に先ほどよりも大きな歓声がスタジアムに響き渡った。
そこで、あたしは肝心なことがまだ終わっていないことを思い出した。
「レイナ?」
あたしは未だに茫然自失とするチャガに告げる。
「サンドラはもらっていくわ。そういう条件だったわよね」
石版大戦の条件通りに所有権がチャガからあたしに移ったことで、チャガのスマホからあたしのスマホへとサンドラの石版が転送されてくる。
そして、スマホの画面には【Sundra】という文字とトカゲのような絵が描かれた茶色の石版が表示された。
「これからよろしくね」
届かないと知りつつも画面に表示される石版に声をかけると、大量に魔力を消費した影響で立ちくらみを起こしそうになってしまう。
そんなあたしを横からアビィさんが支えてくれた。
「お疲れ様。すごかったよ。まるでケイムの戦いを見てるみたいだった」
「……ありがとう、ございます。最高の褒め言葉ですね」
薄れゆく意識の中、あたしは苦笑しながらアビィさんに身を委ねた。