カスレアモンスターに転生した最強の俺は再び頂点を目指す! 作:サニキ リオ
人間の身体を取り戻してからの日々は目まぐるしく過ぎていった。
ケイム・ブライヤは死亡したものとされていたため、生存が確認された後は石版管理局や警察、メディアの対応でてんやわんやだった。
神剋の称号も剥奪されており、ミシカライザーとしても俺は再出発を余儀なくされた。
「今日でしょ、神剋戦。頑張ってね」
自宅で朝食を取っていると妻に話しかけられた。
「ああ、また神剋に返り咲いてくるから期待してくれよ、アビィ」
彼女の名前はアビゲイル・ブライヤ。俺の妻である。
人間に戻り、まず初めにしたことがアビィへのプロポーズだった。
今までのことを全部謝罪して指輪を差し出した俺に対し、アビィは溜め込んだ鬱憤をぶつけながらもプロポーズを受けてくれた。
「余裕ぶっちゃってさ……レイナは強いよ」
「知ってるよ。誰よりもな」
「あれ、ケイムってそんなにレイナと面識あったっけ?」
「SOSのメッセージを飛ばすくらいには信頼してる」
「あはは、そうだったね」
かつて俺がカスレアとしてレイナのスマホから送った文字化けしたメッセージのことを思い出したのか、アビィは懐かし気に笑った。
「それより、アビィも無理して応援に来なくていいんだぞ。今は大事な時期なんだし」
「何言ってるの! お腹のこの子にスタジアムの熱狂を聞かせなくてどうするのよ!」
アビィのには新しい命が宿っている。出産予定日はまだ先だが、あまり負担をかけたくはない。
しかし、彼女は聞く耳を持たず、既に膨らんでいる腹部に手を当てながら言った。
「だって、ケイムとレイナの神剋の称号をかけた戦いは見なきゃ絶対に後悔するよ! 旦那と親友がミシカライザーの頂点で雌雄を決するなんて、普通の人にはあり得ない出来事なんだからね!?」
「わ、わかったからあまり興奮しないでくれ……体に障るだろ」
興奮気味に話す彼女に気圧されつつ、コーヒーを口に運ぶ。
「レイナの元にはもうアルコバレアスはいないとはいえ、苦戦必至の強敵だ。こっちも相棒と気合入れてかからないとな」
「言っとくけど、十年以上面倒見てミサキをもっと強くしたのは私だからね?」
「その節はご迷惑をおかけしました……」
バツの悪い俺はアビィに頭を下げる。結婚してからアビィは俺に一切遠慮することはなくなり、すっかり尻に敷かれてしまっている。でも、そんな日々を送れることは心から幸せだと思える。
「それじゃ、いってくる」
「ええ、いってらっしゃい」
俺は余裕をもって会場入りするため、朝食の片付けが終わるとスタジアムへと向かった。
アビィはあとで信頼できる知人が迎えに行ってくれることになっているため、控え室に入った俺はレイナとの戦いに備えて精神統一を行う。
「……よし、お前ら。今日はよろしく頼むな」
俺は控え室でやる気十分のモンスター達に声をかける。
「コーン!」
「ブルヒヒィン!」
「ヴェスス!」
「バウ!」
「グルァ!」
「グァ!」
人間に戻ったことで、モンスター達の言葉は通じなくなってしまった。
「ったく、緊張感がないというか……」
だが、言葉が通じなくともだいたい何が言いたいのかはニュアンスでわかるようになった。
「キューン、コンコーン」
「リラックスするのは良いこと? まあ、それはそうだけど」
「コーンコン」
「うっせ、俺はいつだって張り詰めて石版大戦に臨むだろ」
しばらくミサキと雑談ををしていると、控え室のドアがノックされた。
「ケイム選手、準備をお願いします!」
「はい、すぐに行きます!」
俺は会場スタッフに返事をすると、スマホを持って立ち上がる。
「それじゃ、気張ってくぞ!」
俺は使役するモンスター達をスマホに納め、共に観客と神剋のミシカライザーが待つ舞台へと向かう。
俺は入場ゲートを通り抜け、石版大戦の舞台へと足を踏み入れる。
そこには観客席を埋め尽くすほどの大勢の人が俺の登場を今か今かと待ち望んでいた。
『さあ、ついに長いときを経て復活した最強の名をほしいままにした元神剋のミシカライザー、ケイム選手が復活したァァァ!』
『うおおおおおおおおおおおおおお!』
熱の籠った実況と共に歓声が沸き起こり、スタジアムが揺れているような錯覚に陥る。
歓声に包まれる中、俺は悠然と玉座で待ち構えている王者へと視線を向ける。
「待っていましたよ、ケイム選手」
「待たせて悪かった……約束を果たしに来たぞ」
レイナがミシカライザーと再出発し、俺がカスレアに転生した運命の日に交わした約束――それを果たすときは今だ。
「セット、キュー・ビコリ」
「セット、デモンガイア」
この石版大戦を制して神剋のミシカライザーになるのは、俺だ!
「「ミシカライズ!」」