ヒロアカ世界転生者掲示板 〜AFOぶん殴りツアー 転生者御一行様〜 作:黒酢大葉マヲ(真ヨ中マヲ)
という訳で、新章に行く前に予想以上に長くなった間話を一つ…二つ…
今までの掲示板で散々匂わせておいた血を二回に分けて採血します。
遡る事数年前…まだ彼女達が幼かった頃の話。
「む…これは…血の匂いじゃ!」
とある日の昼下がり。
ワシがいい感じの木の枝を片手に当てもなくぶらついておると、かすかな血の匂いが鼻を擽った。
ひとまず耳を澄ましてみるが、辺りからは人の悲鳴も爆発音も喧しいサイレンも全く聞こえぬ。
ということは…
「飲んで良し、ということじゃな!」
ワシは即座に木の枝を放り捨て、血の匂いを辿って駆け出した。
前に事件現場で転がっとった怪我人から血を飲もうとしたら、その場に居合わせたヒーローとやらにこっぴどく叱られたが…
何の事件も起きてないならきっと
「やはりワシはIQが高いのう!がはははははは!」
路地を走り、
「狭い!ワシのためにもっと広げんか!」
角を曲がり、
「曲がる時に速度を落とすのはノロマのやる事じゃあ〜!」
猫を追いかけ、
「おいそこの三毛猫!待て!待つのじゃ!」
排水溝を飛び越す。
「この程度でワシを止めようとは…舐められたもんじゃのお!」
そうして走る事暫く。
「おお!ここじゃな!」
ワシは血の匂いを発する家の前に辿り着いた。
…今気づいたが匂いが大分薄いのお。
この感じは大した出血じゃなさそうじゃが…まぁ良い!難儀じゃが止血ついでに傷口を掻っ捌いて頂くとしよう!
血に飢えたワシはこんな些細な事で止まらんからのお!
「ふんっ!」
血でできた杭を塀に突き刺し、壁にかかっておる植木鉢を足場によじ登る。
そのままワシは塀の上に置いてあったよく分からん置物を叩き落とすと、手を引っ掛けて中を覗き込んだ。
さーて、ワシの血は何処じゃ!
「…お?」
覗き込まねば見えぬような陰気臭い庭の隅。
そこで隠れるように小さな身を屈めながら、ケガをした雀の血を吸う人間がおった。
なんじゃ雀の血か…
………
……
…
この人間…随分と美味そうに飲むのお…
「…おい、そこの人間」
「っ!だれ!?」
ワシが声を掛けた途端、少女は弾かれたように顔を上げワシに怯えた目を向けてきおった。
一目でワシの恐ろしさに気づくとはなかなかに見込みがあるヤツじゃが…今はそんな事どーでも良い!
「随分愛おしそうに飲んどるが…そんなにウマいならワシにも寄越せ!」
「…!?」
少女が心底驚いたという風に目を見開く。
ウヌも血を吸うとるのに何を驚いとる?…む?味を気にした事がない…こやつ急に意識高い系みたいな事を言うのぉ…
…
「味がうっすいのお…これなら豚や牛の方がよっぽどマシじゃ」
結局、雀の血はマズかった。
水を入れすぎたカルピスみたいなモンじゃな…飲めんことははないが気分が下がるタイプのヤツじゃ。
「やはり人間の血以外はゴミじゃな…」
「あっ…」
ワシが失血で一層死にかけとる雀を突き返すと、女子はそれを大事そうに受け取った。
こんな不味い血を大切にするとはこの女子は変わっておるのお…ひょっとしてバカ舌というやつか?
ううむ…それにしても後味が悪い…
…はっ!そうじゃ!
「おい人間!口直しにウヌの血を飲ませろ!」
「…!?!!?」
女子が持っていた雀を取り落とし、わたわたと尻餅をつく。
普段から『血を飲む時は許可を取れ』と口酸っぱく言われておるが、初対面でもワシと同じように血を吸う人間ならイケる筈じゃ!
やはりワシは天才じゃな!じゃぱんめんさとかいうグループのオーディションを受けた方がいいかもしれん!
…おい人間、なんで顔を赤くしとるんじゃ。
何?プロポーズ?コイビト?…何じゃそれは?何でそうなるんじゃ?
まぁよく分からんが何でも良い!早くウヌの血を寄越せ!
「ど、どうぞ…」
「うむ!くるしゅうないぞ人間!」
ワシは顔を赤らめる女子の手を取ると、差し出された腕に歯を突き立てた。
「…っ!?」
な、なんじゃコレは!?
まるで熟成されたスープのように美味い…コヤツ…普段一体何を食っておるのじゃ!?
血を吸っとるからか?それともこの人間の個性が…
「おっと、危ないのお!」
「っ…」
咄嗟に思考を引き戻し、腕から口を離す。
危うく止まらなくなるところじゃった。
これほど美味い血を吸い尽くしてしまうのはあまりに勿体無い。
…よし…決めた!この人間をワシの下僕にしてやろう!
ワシは目先の血より未来の血を取れる女じゃからのお!がはははは!
「おい人間!ワシの名はパワー!ウヌの名は何じゃ!」
ワシは血を操って女子の腕を止血しながら問いかける。
「ひみこ…とが…ひみこ…」
女子…もといヒミコは、ワシのつけた歯型を愛おしそうに撫でながら答える。
「喜べヒミコ!今からウヌはワシのモノじゃ!」
「えへへ…ふつつかものですが…よろしくなのです」
ヒミコは満面の笑みを浮かべると、ぺこりと頭を下げた。
…
…む?ワシの血をチウチウさせて欲しい?
下僕如きが抱えるには傲慢な望みじゃが…今のワシは最高に気分が良い!ウヌの血に免じて特別に吸わせてやろう!ホレ!
…何じゃその目は。
ワシは今長袖じゃぞ?
袖を捲るのは面倒じゃし、噛むなら腕より肩の方が汚れんじゃろ…カアイイ?何じゃ!?どーゆう意味じゃ!?
▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽
数ヶ月後。
ワシは今日もヒミコの家に向かっておった。
「三日ぶりじゃのお!ヒミコもきっと寂しがっておるじゃろうなあ〜!」
ワシはヒミコの親の目を盗んで何度もヒミコの血を飲んでいたが、そのせいで輸血パックの血が味気なくなった。
対してヒミコは相変わらず味を気にしておらん変なヤツじゃが…ワシの血を飲んだ後、よく笑うようになった。
そう言えばヒミコの親は笑顔を怖がっておるらしい。
未だ会った事はないが、笑顔を怖がるとはとてつもなく貧弱じゃのお…ならワシを見たら泡を吹いて即死するんじゃろうか?
まぁ、どんな理由があろうとヒミコは既にワシのモノじゃからな!怖がるなら勝手に怖がらせておけば良いじゃろう!
「ヒミコの親は頼りにならん…やはり下僕の面倒はワシが見てやらねばならんのお!」
そしてワシは見返りとして血を要求する!これぞ血税じゃな!
…
…さて。
「むっ…」
ヒミコの家に辿り着いたはいいが…塀をよじ登っても、肝心のヒミコが何処にも見当たらん。
恐らく家の中におるのじゃろう。玄関から行くのも良いが…
「ワシには全く関係ないのお!」
ヒミコは既にワシのモノじゃ!
つまりヒミコの家もワシのモノじゃ!好きに押し入ってもかまわんじゃろう!
「邪魔するぞ!」
ワシは植木鉢を踏みつけながら身を翻して庭に降り立つと、ベランダに駆け寄ってカーテンの隙間から中を覗き込んだ。
『ひぐっ…ぐすっ…』
「…?」
ガラス戸の向こう側。
怒声をあげる両親の前で、ヒミコがポロポロと泣いておった。
「ヒミコのヤツ…腹でも下したか?」
ワシも拾い食いした時は酷い目にあったのお…
ま、ヒミコの場合は恐らく雀の血を吸ったからじゃろうな。
あんなに不味い血ばかり飲んでおったら腹を下して当然じゃ!うはははは!
『被身子!また友達の血を吸ったんだって!?』
『違うの!パワーちゃんが吸って良いって言うからチウチウしたの!』
『そんなのまともじゃない!普通になりたくないのか!』
ははは…は………………
『どうして普通に生きれないの!』
………は?
…何故ガラスに映っとるワシは、腕を振り上げておる?
ガシャァァァァアアアンッ!!
叩きつけたハンマーが戸を打ち砕き、室内にガラスの砕ける音が響く。
「きゃあああっ!?」
「き、急に何するんだ!」
「チッ…邪魔じゃ!」
ワシはガラス片の突き刺さった腕を振るい、飛び散った血でヒミコの両親の目を一時的に見えなくする。
「ウヌらはそこで呆けておれ!」
目を抑えてうずくまる愚か者どもを横目に、ワシは床に散らばるガラスをバキバキと足で掻き分けながらヒミコの元に向かう。
「おうおうおう!折角来てやったのに挨拶もないとはひどいヤツじゃのお!」
「ぐすっ…パワーちゃん…なんで…」
「知るか!」
なんせ
まぁ
「それより、早速やるぞヒミコ!」
「…やるって…何を?」
「家出じゃ!」
ワシは返事も待たずにヒミコを背負うと、手元のハンマーを鉈に変えて玄関のドアをぶち破る。
玄関に飛び散るガラス。
無惨に砕け散る木片。
ひしゃげた蝶番。
カラカラと転がるドアノブ。
「ワシからヒミコを奪おうなど100万年早いわ!がははは!」
それら一切を悉く踏み砕きながら、ワシとヒミコは家の外に躍り出た。
「あなた!被身子が…被身子が…!」
「いますぐ警察を呼べ!娘がヴィランに…いや、悪魔に攫われた!」
背後から聞こえてくる切羽詰まった愉快な声に、ワシの口角が自然と釣り上がる。
「やはりあの人間共は愚かで傲慢じゃな!娘を奪われて初めてワシの恐ろしさに気づくとはのお!」
排水溝を飛び越し、
「今回は二人じゃから念入りじゃあ〜!」
「そんなに高く跳ばなくても落ちないのです…」
猫を追いかけ、
「む!あの三毛猫…ひょっとしてニャーコか!?」
「そんな事してる場合じゃないのです!パワーちゃん?…パワーちゃん!?」
角を曲がり、
「っ!?誰か追いかけて来てるのです!」
「よく見ておけヒミコ!ワシのコーナリングは…ノロマを突き放すためにある!」
路地を走り抜ける。
「狭い!ワシとヒミコのためにもっと広げんか!」
「無茶なのです…」
そうして走る事暫く。
いつしか空は橙色に染まり、追手の姿は見えなくなっていた。
「悪魔のワシに掛かれば楽勝じゃな!がははは!」
高笑いするワシの背にしがみつくヒミコは、どこかグッタリとしながらも、顔を上げて笑みを浮かべる。
「悪魔は悪魔でも…パワーちゃんは、とってもカアイイ悪魔なのです」
「当然じゃ!ワシは気高く美しいからのお!がはははははははは!」
俄かに騒然とする住宅街を、二人分の影が駆け抜ける。
足跡のように滴る血の雫と腕から生えたガラス片が、夕日を受けて燃えるようにキラキラと輝いていた
違う世界では血の悪魔だった少女と、
とある世界線で両親に悪魔と呼ばれた少女。
因みにこのパワーは血の悪魔に準拠した個性を持っていますが普通に種族は人間です。
虚言は多少薄まっても傲慢さはデフォルト。だってパワー成分のクセが強すぎるもの。