クロスアンジュ 天使と竜の輪舞~とあるノーマになった少年は 作:カオスサイン
なんとか隊長さんを間一髪助け出す事に成功し帰投した翌日。
ドラゴンの攻撃が余程効いたのか隊長さんは瀕死の重傷を負っていて目を覚まさなかった。
「ゾーラ・・ねえ起きてよ!・・ねえってばぁ!」
ヒルダさんが必死に呼びかけるがその声は届かない。
「あう?・・」
そこで隊長さんがこんな大怪我を負う原因を作った隣のベッドに寝かされていた皇女さまが目を覚ます。
「パラメイル五機大破、内メイルライダー一名が死亡、一名が植物状態になるという重傷
一人に至っては遺体収容もできていない。
しかもドラゴンは撃ち漏らしたか。
お前の敵前逃亡がもたらした結果だ。どんな気分だ皇女殿下?」
ジルが戦果を伝える。
ちなみに俺が使っていた機体は無理な行動を取らせすぎたのが原因なのかオーバーヒート状態で使い物にならなくなっていた。
「なんとか言えよ!おい」
ロザリーさんが皇女さまへの怒りを露わにし怪我人の彼女につっかかろうとする。
「手出すなよ一応は負傷者だからな」
「・・チッ・・」
がミギーさんにロザリーさんは止められ渋々引き下がる。
「私は国へ帰ろうとしただけです・・何も悪い事はしていません・・」
「お前がお姉様をあんな状態に!・・この人でなし、人でなしィ!」
「ココもアンジュのせいで死んだようなものじゃない!この人殺し!」
「人でなし?人殺し?・・ノーマは人間ではないのですから・・」
「アンタ痛すぎだよ・・このっ!・・」
「最低ね・・」
「アンタいい加減にふざけるなあ!」
「!?」
ロザリーさんとミランダちゃんが怒りの言葉をぶつけるも当の皇女さまは全く反省の色を見せる様子も無く尚ノーマを人ではないと否定する彼女の言葉に俺もついにブチ切れた。
皇女さまに蹴りを入れようとしたヒルダさんも驚いているが。
「アンタ・・アンタのその自己中心的な行動のせいでココちゃんが死にミランダちゃんまで危うく死にそうになって隊長さんまでもがあんな事になってもまだ否定して分かろうとしないのか!?
この分からず屋が!」
「・・・」
危うく手も出しそうになった俺だったがなんとか抑える。
「サリア」
「はい指令なんでしょう?」
「動けないゾーラの代役として今日から第一中隊隊長として動け。副隊長はヒルダいいね?」
ジルがサリアさんとヒルダさんを格上げ処置を取ったようだ。
「「はい!」」
「撃ち漏らしたドラゴンが発見され次第行動に移れ」
「イェス、マム!」
ジルの指令を聞いた俺とミランダちゃん以外のメンバーが退出していく。
「ココ・・」
「ミランダちゃん・・いこうか」
廊下
「サリア~この前のクイズ!アンジュもカリトも生き残ったねえ~!」
「私達これからどうなるのかしらね?・・」
「・・」
ヴィヴィアンとエルシャの言葉にサリアはあの二人の事、そしてゾーラの代役としちゃんと務められるのか等これからの事について思案していた。
五分後、食堂
あのままあれ以上皇女さまを責め続けていても仕方が無いと俺は考えミランダちゃんと二人だけで話をしようと思い彼女を食堂へと誘った。
「・・ええっと・・ココちゃんの事本当に残念だった・・俺があの時あの皇女が起こしそうな行動を予測していればきっと彼女を助けられたかもしれないのに!・・」
俺は己の不甲斐無さも呪いミランダちゃんへ謝罪する。
「・・ううん・・カリト兄ぃは悪くないよ・・」
ミランダちゃんはそう言ってくれはするが気持ちの整理がまだ出来ていないのかこちらと顔は合わせてくれない。
「でも許せないよなココちゃんが精一杯の気持ちであげたプリンをあの皇女は・・」
皇女さま自身の口からこの事を聞いて更に俺達は悲しくなった。
「・・ねえカリト兄ぃ私・・一体どうすればいいのかな?・・」
ミランダちゃんが顔を俯かせ聞いてくる。
「ココちゃんの分まで一生懸命生きていけばいいさ・・俺は少なくともそう思っている、俺がついているから」
「・・そう・・だよね・・」
「ここにいたか二人共くるんだ」
「?」
ジルが突然割り込んできて俺達をある場所へと連れてくる。
「ここは・・」
「ノーマの・・兵士として死んでいった者達の墓標なのか・・」
「・・」
「アンタ・・その後ろにあるのは・・」
皇女さまはジルに何かを運ばされていて俺はそれに気が付く。
「ココ・リーヴ、あの子の親が付けた本当の名前さ良い名前だねえ。
此処にいる子はね死んだ時に本当の名が戻るのさ」
「そう・・なんだ・・う・・うあああー!」
「ミランダちゃん落ち着いて!それにしてもココ・リーヴか・・本当に良い名前だな」
ジャスミンさんの説明にミランダちゃんはココちゃんの本当の名前を知って驚き、遂に耐えられなくなったのかその場で泣きだしたので俺は慌てて彼女をなだめる。
でも皇女さまがココちゃんの墓石を運んでいるのが俺達には解せない。
「・・これからどうなるのですか?ミスルギ皇国もなくなったと聞かされて・・」
「何!?それは本当なのか!?」
聞き捨てならない事を聞いて俺は皇女さまにつっかかる。
「ああそれは事実だ。皇女殿下がノーマだという事があきらかになったからな。
大方大多数の者がブチ切れて革命でも起こしたって所だろう」
ジルがそう告げる。
恐れていた事態が現実になってしまったのか!?・・
姉さん・・リンナ・・ケイ・・学院の皆は大丈夫なのか?・・
俺は家族や学院の友達を思う。
「ほんの少しマナが使えないだけではないですか!それだけでこんな地獄に!・・」
「お前はお前達の作ったルールで此処にいる」
ジルはそう冷徹に皇女さまに言い放つ。
「わ、私は決してノーマなどでは・・」
「じゃあアンタは一体何々だ?まだ幼かったココちゃんを死に追い詰めたその上に隊長さんまであんな植物人間状態に追い込んだお前は一体何様のつもりなんだよ!?」
「ッ!・・私は・・」
ジルがそれ私の台詞だみたいな顔をしてきているが俺はかまわずに続ける。
「ココちゃんがアンタに渡してきたプリンの事。
あのプリンに込められたココちゃんの思いそれがどんなものだったのかを今のアンタに分かるか?!
まあ分かっていないのだろうな・・でも嫌でもその身に分からせてもらうぞ!」
「・・私は・・あああああ!・・」
俺の気迫に圧倒されたのか皇女さまは泣きだし項垂れた。
「死にたいのなら戦って死ね・・」
ジルは皇女さまに更に言い放った。
「指令!」
サリアさんが向こうから駆けて告げてくる。
「ドラゴンの出現が確認されました」
「そうか・・アンジュ、カリトお前達も出てもらうぞ」
「え?ですが二人の機体は・・」
「あるじゃないかとっておきのがさ」
疑問を浮かべるサリアさんにジルは答える。
そして俺達はジルに格納庫に連れて行かれた。
格納庫
「コイツがお前の機体だ。名はヴィルキスかなり古い機体でな・・まともに動かせる奴がいないのだがお前にコイツを任せよう。死にたいのならばうってつけだろ?」
「ヴィルキス・・」
皇女さまはひどく埃が被り今にも壊れるんじゃないか?と危惧される機体ヴィルキスを見て小さく呟いていた。
「あれ?俺ののは?」
「ああ分かっている」
「こっちだよ」
忘れさられているのかと一瞬思った俺だったがジルとパラメイルメカニック主任の少女、メイに案内される。
「コイツは!・・」
案の定予感はしたが皇女さまの機体と同じように埃が被っていた。
「ついこの間掘り起こされたばかりの機体だ。
恐らく皇女殿下のヴィルキスと並ぶ性能を持ち合わせている筈だ。
だがまだコイツには名前が無いライダーのお前が付ける事を許可してやってもいいが」
「後で決めるさ」
「なら早く出撃準備しろ」
俺は急いで出撃準備に向かった。
出撃デッキ前
「カリト兄ぃ、どうか死なないで帰ってきてね・・」
まだ機体の修理が出来ておらず出撃出来ないミランダちゃんが俺を心配してかけてくる。
「ああ、俺は必ず帰ってくるさ!そんじゃあいってくるよ」
「「サリア隊、出撃するわよ」」
「ああ、カリト出る!」
俺はミランダちゃんにその言葉をかけ出撃した。
戦闘区域
「お姉様をあんな目に遭わした奴と一緒に出撃ィ!?」
「殺す、殺す、ブチ殺す・・」
皇女さまの姿を見たロザリーさんは不満を漏らし、クリスちゃんは物騒な事を呟く。
「死ににいくそうだよアイツ」
「何?」
ヒルダさんの言葉に二人は首を傾げる。
「見せてもらおうじゃないかイタ姫さまの死にっぷりをさあ!」
「おぉ?なあじゃああの機体!?ねえサリアサリア!あのパラメイルドキドキしない?!ねサリア~?」
「作戦中よヴィヴィアン。皆くるぞ!」
ガレオン級ドラゴンが姿を現す。
「「どうする隊長?」」
「奴は瀕死よ一気にトドメを刺す!全機駆逐形態・・」
「イェス、マム!」
「了解!」
俺もフライトモードからデストロイヤーモードへと変形させ、凍結バレットを準備し突撃しようとした。
だが
「ギャオオオー!」
「!?」
「隊長、下からくるみたいだ!」
ガレオン級ドラゴンは下に攻撃陣を発生させ攻撃してきた。
俺も急いで回避行動を取るが何故か上手く機体が作動せず何発か被弾する。
「グッ!?・・なんだよこのポンコツは!・・」
「こんな攻撃してくるなんて・・過去のデータには無い・・」
「ハッ!?」
見るとサリアさんが固まっていた。
どうやら予測外のドラゴンの攻撃に頭が混乱してしまっているようだった。
「どうすれば・・」
「「サリアちゃんどうするの?隊長は貴方なのよ!」」
エルシャさんが必死に指示を仰ごうとする。
「か、回避!」
だがそれは遅くサリアさんの機体はドラゴンの片翼に捕まってしまった。
「「サリア!?」」
「隊長!」
「クッ!・・」
それでも機体外に出てマシンガンでドラゴンを迎撃するサリアだったがドラゴンにはほとんど効いておらず段々と彼女に迫ろうとしていた。
「ちゃんと死ななきゃ・・」
だがその時皇女さまのヴィルキスと呼ばれた機体がフラつきながら真っ直ぐ向かってくる。
「アイツ、何をしようとしているんだ!?・・まさか本当に死ぬ気か!?・・」
俺には嫌他の皆にはそのような行動を取っているようにしか見えなかった。
「いけない・・もう一度ちゃんと・・これでさよならできる・・嫌ああああああああー!」
だけどやはり死ぬ覚悟ができていないのか単に怖いのか回避行動を取っている。
「あの馬鹿野郎!・・動け、動いてくれよこのポンコツ!
俺はあの馬鹿を止めて隊長を助けにいかないとならないんだ!・・俺はもう二度とココちゃんみたいな事にはなってほしくなんかないんだよ!」
未だに上手く動作しない機体に俺は苛立ちをぶつける。
「!なんだ?・・」
突如皇女さまのヴィルキスが白銀の輝きを放ったかと思うと今度は俺の機体が輝きを放ったかと思うと機体色が灰色から漆黒の色へと変化していたのだ。
その輝きに目をくらまされたドラゴンは苦しみサリアさんの機体を離した。
「・・ブレイヴス・スフィーア・・それがお前の名前なのか!・・やっと素直になってくれたか!
そんじゃあいくぜ!」
本当の俺のパラメイルとなったブレイヴス・スフィーアでまずはサリアさん救出へと向かった。
「隊長!無事だよな?」
「カリト!?・・その機体は・・」
サリアさんも俺のブレイヴス・スフィーアに驚きを隠せないようだった。
「お前が死ねぇー!」
完全にヴィルキスを自分の物とした皇女さまはロングソードの一太刀をドラゴンに浴びせていた。
「俺も負けてはいられないな!うおおおおー!」
負けじと俺はブレイヴス・スフィーアのブースター全開でブレイヴブレードを振るいヴィルキスの攻撃で怯んだドラゴンに突撃する。
「コイツでトドメだあ!」
俺は凍結バレットを充填させた右手の連続射出砲手スフィーアスエンドを最大出力でドラゴンに叩き込んだ。
それを受けたドラゴンは息絶え海中へと沈んでいった。