最初の眷属としてサイラオーグ・バアル改めサイラオーグ・ウァプラを迎え入れた
家の者たちは最初こそ驚きはしていたものの遺伝という分野で理解があったためすぐに納得してくれた
……大王派からの嫌がらせなんかの心配はされたが
まあそっち方面も抜かりはない。遺伝という現実を綴った手紙といっしょに
こちらの意図としては「責任はこちらで持つから
家族仲がどうであれ、この辺は怠るわけにはいかない。あちらがあの2人にどんな価値を見出してるかわからない以上、どんな過程であれ妻子を奪うのだからこれは当然の義務だ
ちなみにサイラオーグに今後のことを訊ねてみたが、まずは己を見つめ返すことから始めるそうだ
良い傾向だと思う。これまではただ認められたい一心で動いていたからな。別にそれはそれで悪くはないが、バアルのような頭でっかちどもに認められるかどうかはわからないからな。なら本当に自分が成し遂げたいことを探すべきだ。それが見つかればあいつはもう道を間違ったりはしない。その時が楽しみだ
余談になるがサイラオーグとの修行で試行錯誤するうちに
簡潔に述べるなら、
もっともサイラオーグの場合は魔力を扱う技能自体が欠落しているからどのみち肉体しかないのだが……とはいえ、不死性の恩恵は受けられるので主である俺ほどではないにしろ常人離れした自然治癒力があるのは大きな武器だ
初めての弟子とでも呼べる眷属との修行の日々を送っていたある日のことだった
五大宗家の一角、姫島家次期当主からの嘆願とでも言うべき依頼
それを受けた理由はひとえに敬意だった
***
私――サーゼクス・ルシファーは現在、窮地に立たされていた
それは個人の力の大小では解決できない難題だった
……下手を打てば戦争にもなりかねないほどの超難題といえよう
つい先日、グレモリー家次期当主にして我が妹であるリアスがとある少女を連れてきた
リアスと変わらない歳の少女、なんでも堕天使と人間のハーフだという
それだけならばここまで焦りはしなかっただろう
だが件のその少女――姫島朱乃、その父親は雷光こと堕天使バラキエルだというのだ
しかもあろうことか存命にも関わらず許可を取っていないという。なんでだよ
死した母親の一族とは交渉しておきながら生きている父親に許可を取らずに連れてきた。これは紛れもない誘拐だ
私自身も妻とともに子どもの誕生を待つ身の上だったがゆえにバラキエル殿の心中は手に取るようにわかった
まだこれといった報告はなかったが、いつ攻め込まれてもおかしくはなかった
しかも内側にも警戒意識を向けなければならなかった
堕天使の幹部の娘――これは薄氷の上に成り立っている現状を簡単に壊せる爆弾だ
継戦派からすれば戦争を再開させる格好の火種となる
それ以外の派閥からしてもそんな爆弾を拾ってきたリアス――グレモリー家は糾弾すべき対象だ
正直言って手詰まりだった。もう黙殺する他に手はない、そう思っていた
しかしそんな私の前に救世主が舞い降りた。運命は私を見捨てていなかったのだ
***
私はいまグレモリー本邸の私室にてある男の帰りを待っていた
男の名はライザー・フェニックス。レーティングゲーム業界を中心にこの冥界で脚光を浴びている新進気鋭の若手悪魔だ。恐らくいま最も注目されている悪魔だろう
彼には個人的な興味と同時に魔王としても関心を寄せていた
七色の炎だけではない、基本的な能力のどこを見ても同世代はおろか悪魔全体でも高い水準にあった
私の本能が告げていた。彼は私やアジュカと同じなのだと
もちろん警戒もした。我々魔王をおびやかす存在が生まれてきたと。だがそんな心配は杞憂に終わった
彼はバアルの欠陥品と蔑まれていたサイラオーグを眷属に迎え入れた
力だけではない、慈悲深い心も兼ね備えた誇り高い男なのだと理解できた
そんな男から吉報とも言うべき報告が挙げられたのだ。「姫島家次期当主が件の少女の身を案じている」と――
なんでも姫島家次期当主は件の少女のいとこであり、数少ない味方だったそうだ
私は直感した。現状を打開する手が現れたのだと
それからの行動は早かった。手紙やら音声データやら姫島朱乃が無事だと示せる物をありったけ用意した
そしてそれらを持たせてライザーと、外交担当であるセラフォルー・レヴィアタンを人間界へ向かわせた
……本当なら私も向かいたかったのだが、魔王が2人も冥界を留守にするわけにもいかないうえにこちらはこちらで警戒を緩めるわけにはいかなかった
(そろそろ帰ってくる頃だが……)
そう思っているとドアがノックされる。入室を促せばセラフォルーとライザーだった
「まずは2人とも無事で何よりだ。それで姫島の次期当主はなんと?」
「そのまま伝えるね『朱乃に一切の危害を加えないならばこちらもおじ――バラキエルのことは抑えます……もっともこれ以上の選択肢がないのですがね』だって。賢いね、あの若さですごいよ」
「そうか……」
普段はおちゃらけているセラフォルーも真面目な顔で答える
当然だ、今回はそれだけの綱渡りだったのだから
(あのまま何もせずとも平穏は保たれていたかもしれないが……だがそれでも火種は消さなければならない。いまの平穏を手にするために我々は多くの犠牲を払ったのだから)
「なにはともあれ礼を言うよライザーくん。君が情報を提供してくれなければ今頃どうなっていたかわからない」
「やめてください。俺はただ、悪魔を頼ってでもいとこを守ろうとした姫島次期当主に敬意を評したまでです……連れ去ったのも悪魔ですが」
「ハハハ……もうこんなことがないようにしっかりと教育するよ」
(そう、我々は種の存続のためとはいえギリギリの綱渡りをしている。一歩間違えれば簡単に戦争という底なしの闇へと落ちる。だがそれでも私はこの道を選んだんだ、この先に希望があると信じて)
なんか執筆途中みたいな終わり方でモヤモヤしますけど、第2話でした!