呪術界でデスノを拾ったら   作:かりん2022

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お待たせしました、五条視点です!


敵襲ー!

始まりは凶報だった。

 

百鬼夜行を越すレベルの大暴走。

傑が手加減していたのだとはっきりとわかる、その惨状。

爆心地には、頭に縫い痕のある傑の遺体。

 

傑が生きていた?

なんらかの原因で死んだ?

 

何も状況はわからない。

ただ呪霊を祓っていった。

 

そんな中、補助監督から連絡が来た。

真相を知ってそうな者が現れたが、子供で色々と条件をつけようとして聞き取りが進んでいないということ。入学を希望しているということ。

 

 僕はすぐに飛んだ。

 

「詳しい内容を教えてもらおうか。ある程度の条件も飲むよ」

 

 まだ呪霊を祓いきれていない。一刻も早く戻らなければならないが、真相は聞きたい。聞かなければならない。

 ワタワタとしていた女の子は、僕でもちょっとびっくりするほど可愛い子だった。

 その子が、驚きのあまりツインテールをぴょこんと跳ねさせる。

 

「イケメン!!!」

 

 はぁ? いやまあ、聞き慣れてるけど。早く聞き出さないと。

 

「はう、私、一目惚れしちゃました! 目隠しの下はどうなってるんですかぁ? 写真撮らせてください!」

「はぁ?」

「そしたら何でも話しちゃいます!!」

「遊んでるんじゃないんだよ」

 

 思わず言ってしまう。大事件なのに、この子供は全然ことの重大さをわかっていない。いや、相手は子供なんだ。その上どう見ても非術師。自分を押さえないと。

 

「化け物が関わってるんでしょ、明日死ぬかもしれないくらいわかってます! じゃあ悔いの残る人生なんて出来ないじゃん!!! 私は! 今!!! イケメンの!!! 写真が欲しい!!!!」

「……はぁ、わかったよ。でも、約束通りちゃんと話してね? 後から条件増やすのもなし!」

「わかりました」

 

 条件を後から追加されるのも困るしごねてたのも知っているので、自分の外見をこの際、最大限使う事にする。それに、正直嫌いな性格ではない。呪術師向きの性格の子だ。

 子供は、真剣に頷いた。

 一発で済ませようと、サービスして目隠しも取って笑顔で写真を撮ってやる。

 すると、子供は成仏したような顔で拝んできた。

 

「何でも話します……」

 

 今までのはなんだったのかというほど、子供は情報を吐きまくった。

 今日ほど、顔の良さがあってホッとした事はない。

 

 いわく。教団で、頭に大きな縫いあとがあって、それを取って中の脳みそが喋っているのを見てしまった。

 いわく。呪物を飲まされかけた。他の人も飲まされ気絶していた。

 いわく。いきなり教祖が倒れて死んで、教祖から化け物が出てきた。

 いわく。その時から化け物が見えるようになった。

 

 縫跡は確かにあった。信じがたいが、体を乗っ取る術式か、呪霊だったのだろうか。いきなり死んだということは、やはり呪詛師で、病気か何かで急死してしまったのだろうか。何もわからない。

 

「その脳みそ、何か喋ってた?」

「そういえば、高専と賀茂家に潜り込ませている間者達からの情報はどうなってる? って。漏瑚や真人、花御に無事夏油傑の体と術式を得たことも連絡しないと、とも言ってました」

 

 傑が狙われていた? まさか、離反も自分が傑の体を硝子に渡さないのも、誘導されていた? ……違うと言い切れないのが、呪術界の腐った所だ。

 僕が、傑の死体をきちんと弔ってやらなかったばっかりに……。

 だが、傑をあれ以上傷つけるなんて僕には。それに、信頼のおける人間を頼って死体を埋めたつもりだが、どうやらどこかで情報を抜かれていたらしい。それもまた問題だった。

 

「……他には?」

「えっと、教団の幹部の名前が、美々子ちゃん、菜々子ちゃん……あとはわからなくて。ごめんなさい」

 

 そうだ。傑の育てていた子供。彼らの安全も確かめないと。

 

「それ、大勢の人の前で話せる?」

「話せます!」

 

 またツインテールが跳ねる。

 普段なら可愛いと思っていたのだろうが、今はその可愛さすら煩わしかった。

 だが、顔の良さで情報が得られて円滑にことが進むなら、存分に使ってやろう。

 

「イケメンの写真、僕以外のもあげるからさ。頑張ってよ」

「ええ!? じゃあ私、すっごく頑張ります!!!」

 

 大喜びする子供。

 あとを伊地知に任せて、即座に会議を招集。集まるまで呪霊狩り。

 未曾有の事件だけあり、一時間で人は集まった。

 

 子供は、言葉通り頑張って話してくれた。

 

「偽りなのではないか。脳みそが喋るなど信じられん。六眼が呪霊操術を庇っていたのではないのか。脳みその呪力と肉体の呪力が違うなど我らにはわからん」

「えっと、何とか死体を探して、脳みそと体のDNA検査をするのは駄目なんですか?」

「……」

「傑の死体は保存しているし、できるね。すぐしよう」

 

 咄嗟にその言葉が出るということは、印象と違い、頭はいい子なんだな。

 硝子が今、遺体の死因を調べてくれている。

 すぐに燃やさず、硝子に任せていて本当によかった。

 

 子供、夜神 月の事もその頃には判明していた。

 教団に傾倒した両親に捧げられた子供。それが夜神らしい。

 

 売られ、呪物を飲まされかけ、目の前で人が死に、決死の大脱出をして、それで呪術の事を突き止めて即座に学校に乗り込んで情報の代わりに自分の処遇を保証させようと奮闘する。

 前言撤回。かなり頭のいい子だ。

 

 顔のいい相手に全てをぶん投げちゃう所はあるけれど、非術師ではあるけど優秀で肝の据わった子供なんだと思う。

 なんていうか、呪術師の才能のある子だ。見えるだけで、呪術の才能は皆無だけど。

 

「君のご両親は残念だけど……」

「いいんです。見えるようになったので、この学校に是非入学したいです。見えれば入れるんですよね?」

 

 孤児になった少女は、その言葉に眉ひとつ動かさず、必死に言い募った。

 おそらく、生きていたと言っても同じだったのではないだろうか。

 捨てられた以上、少女は自分でなんとかしなくてはならないとわかっているのだ。

 本当にしっかりした子だ。

 しかし。それでもこの子は一般人。こんな子が入っても一瞬で死ぬだけだ。

 

「……君は呪力も術式もないし、本当に見えるだけだよ? あ、呪力っていうのは霊能力見たいな、化け物を倒す力の事ね。それと、この学校は化け物と戦う者を養育する学校だよ」

「生活の為です。頑張ります」

「努力でどうにかなるわけじゃないんだけどなぁ……」

 

 月はガバッと頭を下げた。

 

「お願いします!」

 

 僕はため息をつく。あれほどの地獄を生き抜いたんだ。

 写真を強請った時の啖呵を聞くに、覚悟はできてるだろう。

 少なくとも、覚悟したつもりにはなっている。実際に死を前にしたらどうするかはわからないが。僕は夜蛾学長に任せる事にした。

 

「学長に話してはみるけど」

「よろしくお願いします!」

 

 再度、月はガバッと頭を下げる。

 僕は学長に話をした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ほぼ一般人か……」

 

 難しい顔で、学長はいう。そうだよね。僕もおすすめしない。

 こんな可愛い子が、普通に生きれるのに、地獄に来る必要はない。可愛くなくても、だけど。

 

「ぬいぐるみかわいい! 学長も眼鏡取ったら目が輝いてたりするんですかぁ!? サングラス取ってください! 一緒に写真撮りましょ、ほらチーズ!」

 

 僕たちの心配を尻目に、この騒ぎよう。絶対何もわかってない。

 

「しかもミーハーか……。呪術界で生きて行けるとは思えん」

「僕もそう思う。今からでも止めない? 情報料として今後の生活のサポートくらいするよ? 窓っていう、バケモノの居場所を教えるだけのバイトも紹介するし」

「ヤダヤダヤダ、イケメンの先生の学校に通います!!!」

 

 そのイケメンへの熱量なんなの? 推し活とかいうものの為に死んでもいいの?

 

「「はぁ……」では、試験を行う」

 

 そうして、夜蛾学長の試験が始まった。

 

 

 

 

「何の為にこの学校に来た」

 

 学長の言葉に、月は胸を張る。

 

「日常を守る為です!」

 

 地獄に飛びこんでおいて、何言ってんだこいつ。

 頭に傑の顔がよぎる。世の中の平和を守りたいってこと? 一般人そのものな呪力で? それはちょっと傲慢すぎるというものだ。

 

「わからんな。日常を守る為と言いつつ、何故危険に飛び込む」

「化け物がいるって知っちゃったから。私が普通に生きてても大丈夫なんだって納得できるまでは、とことん頑張ります!!」

「その為に死ぬ事になってもか」

「んー」

 

 月は悩んだ様子を見せる。今気づいた、というわけではなく、説明に窮している顔だ。

 

「例えばですね。竜巻が目の前に迫ってるとして。どんなに頑張っても逃げるのは無理ゲーって分かりきってるとして」

「うむ」

「それでも、走って逃げるなり、物陰に隠れようとしたり、なんとかしようとするのは、当たり前だと思うんです。今の私に取って、それが化け物! まあでも、竜巻と思っていたものが実は傘さえ差せばいい通り雨だったとか、納得や安心したら引退しますよ。その時生きてたらですが」

「よくわからんな」

 

 僕もよくわからない。

 

「自分に出来る事をやった上で逃げたいって事です。それに、先生イケメンだし、命を賭ける価値はあるかなーと」

 

 火に飛び入る虫みたいな子だな、この子。

 いやぁ。その火は、目の前で女の子が焼け死ぬのを見て悲しむ火なんですがね。

 僕の美貌が罪すぎる。

 

「君、変わってるね」

「普通ですよ」

 

 いーや、変わってる。

 

「命を賭ける。それがどんな意味を持っているかわかっているのか」

「わかるわけないじゃん。でも、やるしかない。だからやる。以上!」

「では、その覚悟を試してやろう!」

 

 ぬいぐるみが動く。

 

「うっしゃやったるぞー!」

 

 月は隠し持っていたナイフを振り抜き、ぬいぐるみに襲いかかった。

 あ、この子、しっかり自分の世界と覚悟を持っている子だ。

 ちゃんとナイフだって用意してきたわけだし。

 両親に対する切り捨てっぷりといい、性格だけは……術師向きなんだよなぁ。

 同じ大義を掲げるのでも、なんなら傑より安心感がある。

 いやしかし……。

 

 

 

 

 

 

 

 よわっ!!!

 

 

 

 

 

 

 

 ボッコボコにされたけど、月は諦めなかった。

 床にガリガリと爪を立て、綺麗な顔を見るも無惨に腫らしても、なお気合い十分。

 そこで僕は気づいた。この子、爪も切ってる。

 身元調査の時の写真は爪が長かった。ちゃんとこの子なりに戦う準備と覚悟をしてきたんだ。

 

 最後には、学長が折れる形で許可した。

 嘘だろ、不合格にしてよ学長。

 4級ですら厳しいよ、この子。

 

「あんまりにもすぐ死にそうなのは、僕も心が痛むからあんまり入学して欲しくないんだけど」

「大丈夫です! 4月1日までは生きてます! 最悪そこまで生きてればモーマンタイです!」

「問題あるだろ!?」

 

 月はヘラヘラと笑う。

 なんで安心したかのような、納得したかのような、嬉しそうな、満足げな表情なんだよ。

 

 

 

 ほんっとに意味わかんない。

 この時、僕はすでに、今まであった非術師の中では一番心を動かされていたんだと思う。非術師なんて完全に別世界の話だと思ってたけど。

 思えばこの子は、出会った当初から次元の壁を飛び越えて、僕の心の屋敷の扉に丸太をぶち込んでくるような子だった。

 そうして、僕は情を移させられてなるものかと、心の戸締りをしっかりしたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 あ、硝子が怪我は綺麗に治してくれた。僕も夜蛾先生も、それを込みで試験をしていたのだけれど、硝子にはやりすぎだと怒られてしまった。反省。




マシュマロ
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