同じシーンが続いてて申し訳ありません。
伊地知から合格を貰った月は、慌てた様子で転がるように走ってきた。
「五条せんせー! あのお金で欲しいもの考えたんですけど!」
「うん、小刀とかのタイプの呪具かな?」
「呪胎九相図と宿儺の指ください!!」
「なんて?」
「ハイパー受肉エクセレント術式習得セットください!」
呪具ですらないし!!! っていうか、呪胎九相図については一般人が知れるものじゃないよね!? 勉強してたのは知ってたけど!
「はあ!? 誰から聞いたの? そしてどうして譲ってもらえるなんて思ったの?」
「ワンチャン聞いてみるだけならタダかなって。呪具より術式が欲しいし」
「何を言ってるかわかってる?」
「多分わかってない……」
僕はため息をついた。
これはちゃんと話さないと。
それに、月は伊地知が許可した以上、正式な僕の生徒なのだ。
夜蛾学長に進路指導室を使う事と状況を報告する。
「ついにお前も問題児を指導する時が来たか……」
「なに、感慨深く言ってるんですか」
「確か、彼女は受肉させられる所だったらしいな。受肉すれば術式を得られたかもしれないと、どこぞの術師から聞いたのかもな」
「じょーだん。術式は得られるでしょうが、乗っ取られて終わりですよ。月はすぐに死ぬでしょうが、流石にそんな死に方はさせられません。ちゃんと説明します」
「今度ばかりはしっかり理解するまで教えてやれ。そうか、悟が問題児を指導するように……ついに私の気持ちがわかる時が……」
「だから変なことで感動しないでくださいってば」
一応、宿儺の指と呪胎九相図についての資料を確認し、月によさそうで金額もあう呪具の情報を頭に叩き込んでおく。
説得の準備をする僕を、夜蛾学長が温かい目で見守っていた。うざ。
進路指導室に行くと、月はそわそわした様子ですでに座っていた。
僕は向かいに座って、しっかり説明する。
「受肉っていうのはね、呪物を取り込み、呪霊が持ち主の体を乗っ取る事を意味するんだ。君が君のままでいられる事は100パーない。術式を得られるなんて誰が嘘をついたのかわからないけど」
「あ、私が使うんじゃないです。まだ悩んでるんですけど、使いたい人がいて」
「は? 他者に呪物を使うって普通に殺人だけど?」
何を言ってるんだこいつは。まさか、イケメンに頼まれた? いや、そんなアホな事を頼むアホがいるはずがない。そもそも受肉が自殺行為なのだ。
「そっかぁ……。そうだよね」
さっぱりわからないが、わかってもらえたのだろうか。
「じゃあ、すでに死んでる四番から九番なら買い取れます? それなら危険性も少ないでしょう?」
何もわかってなかった。
っていうか、4番から9番が死んでるなんて、僕でさえ資料を見るまで知らなかったんだけど? っていうか、死んでても呪物はそもそも毒なんだけど。
「……なんで君がそれを知っているかも疑問なんだけど。呪物は毒だよ。誰が使いたいって言ってるの」
僕は困惑しながら問いかける。
「んと。使いたいとかじゃなくて。えっとですね。教祖様が亡くなられたじゃないですか。あっ本物じゃなくて偽物の方のことです」
「……そうだね」
そのことを考えると気持ちが沈む。仇をとってやることさえ出来なかったんだ。
死因は心臓麻痺だそうだが、そんなのあり得ない。だって、件の術師は脳みそだけで体を渡り歩く術式持ち。そんな死亡要因、どう考えてもあり得ない。
「教祖様の秘蔵っ子に宿儺の檻がいるんですよ。というか、教祖様が作った呪胎九相図の後継に当たる最高傑作で、来年度から高校生らしいんですけど」
「はぁ?」
ちょっと待って、初耳なんだけど。宿儺の檻? 最高傑作? 呪胎九相図を教祖様が作った? 作成者はずっと昔の、加茂家の……体を渡り歩く術式か!!! 相当前の術師だった!? 最高傑作ってなんだそれ。
とんでもない事を、隣の家の息子さんが高校生になったんだって、というのりで言わないで欲しい。この部屋、セキュリティ的にどうなんだっけ?
「宿儺すら、一気に大量に指を飲まなければなんとか封印できる器で、兄である4番から9番であれば、問題なく取り込んで術式を得られる、はずなんですけど」
はずなんですけどって。なんでそんなに詳しい?
単なる被害者って嘘だった? 考えてみれば、信者としての家族ぐるみの交流はあったはずなんだ。昨日今日攫われた被害者じゃない。
もっと教団の事情について聞くべきだったか。月に隠す意思も素振りもなさそうだ。それこそ、聞かれなかったから言わなかった事なのだろう。
傑の仲間を捕まえたくなくて、呪霊騒ぎのドタバタにかこつけて放置したツケが来たらしい。
「それほどの逸材が放置されるのはあまりにも勿体なさすぎるかな、と。宿儺って厄ネタを処分出来るチャンスはこれきりかもしれないわけですから。でも、かといって宿儺強すぎて、後世に先送りするのも立派な作戦だし、宿儺の指を半分くらい取り込ませて殺すのが一番ベターかなとは思うんですけど、それはあまりにも人の心がなさすぎるかなって。とりあえず、4番から9番なら危険もないし、ひとまずそれで術式手に入れてもらって呪術師勧誘するのはどうかなぁって。でも一般人を術師に誘うのも十分残酷ですよね。五条先生。私はどうしたらいいと思います?」
「何もしないで欲しいかな……。あと、ちゃんと報告はしようね」
さも呪術界を代表するかのような言葉。
君が対処できる問題でも君が決めていい問題でも全然ないだろ。何者だよ、月。
君は生徒! 一般人!! 一年生!!
「大体、君に何ができるっていうんだよ」
「とりあえず、呪胎九相図を買い取って虎杖くんのお口にシュート! エキサイティン! ですかね」
「シュートもエキサイティングしないでね? それやったら呪詛師認定だから!」
「あと、呪物が死んでるなら、ワンチャン私も取り込んで術式得られないかなって」
「やめて。君が毒に耐えられるとは思えない。間違いなく死ぬよ」
「ダメかぁ……。いけるかと思ったんだけどなー」
「むしろどうしていけると思った」
「それでですね。その偽教祖、羂索っていうんですけど、羂索って、日本人を一体の呪霊にしてみてひょっとこみたいだったら面白いねって性格の人なんですけど」
「自分が何言ってるか、わかってる?」
意味がわからない。メリットとかデメリットを遥か超えたところにある所、術師はそもそもイカれた人間が多い事が信憑性を持たせる。
あ、この子、ガッツリ信者だ。
それもかなり深いとこにいた信者の子だ。
その子は、愚痴愚痴と傑の呪霊操術と真人という特級呪霊と天元様を利用した邪悪な計画について告げていく。
ちょっと待って。確かに、恵の姉を筆頭に、急に倒れている人はいるけど。千の呪物? 術師達の幸せ未来世界転生計画? 死滅回遊? あっ 北海道でそういえば事件があったような。
嘘っぽいほど大それた計画だが、実際の事件などがそれらを真実かもしれないと教えてくれる。
「そもそも、私が捕まって受肉させられかけてたのも、死滅回遊の為なんですよね。だから、私としても関係者ですしなんとかしなくっちゃって」
被害者が責任を感じて関係者だからなんとかするって、ないでしょ。ないよね? こんな一般人ですみたいな顔して極悪人とかそんなバカな……あっ この子、呪術師向きの性格で最初から覚悟決まってたななんて思い出して。
「それ関係者って言わないから。お願いだから何もしないで。報告だけして。あと何か黙ってることある?」
情報の本流。お願いだから待って欲しい。
「えっと。メカ丸って子が健康な体を欲しがってるから勧誘できそうって話してました」
「君、実は教団の幹部だったりする?」
そうとしか思えない。
「気にする必要もないくらい路傍の石です。受肉させられるくらい死んでいい存在です……」
「そ、そう……」
地雷を踏んでしまったようで、死んだ目をする月。
「日車さんと高羽さんには特に期待してたみたいですけど、いい術式があっても脳みそが術師にできないんじゃ駄目ですよね。呪霊操術で真人を操ることももうできない訳ですし、呪霊と取引も難しそうですし。死後の暴走による呪霊被害も凄かったみたいですし、教祖様が死んでやったーにはならないんですね……」
「君、もしかして羂索ぶっ殺してない?」
もしくは、計画を呪詛師に乗っ取られた羂索本人だったりしない?
「出来ると思います?」
「思わない……」
そう。この子は術式がない。呪力がない。才能がない。ないないない。
だから年齢も偽れない。
この年の子が、こんなにも才能に恵まれない子が、そんな大それた計画をできるはずがない。
存在がバグっぽい月は、年相応の少女の顔をして、今日のテスト結果に悩む顔をして、呪術界の大事件について悩んでいる。
それっぽい術式さえあれば、こいつが黒幕だー!!! っていうんだけど。
残念ながら、この子はどこまでも普通の女の子で、つい最近まで非術師だった子だ。
「とりあえず、虎杖悠仁は裏梅ってのに攫われる前に保護する。君はこの部屋から出ちゃ駄目だよ」
鳩が豆鉄砲喰らった顔をするなよ、当たり前だろ。
大事件すぎる。確かのこの部屋セキュリティは良かったし、とりあえず悠仁だけは確保して、もろもろの裏取りと調査と対策をしないと。
「お手洗いは?」
「すぐ戻ってくるからおとなしくしててね、まじで」
本当大物だな、この子!!!
マシュマロ
https://marshmallow-qa.com/lucaluca
今度からマシュマロ返信していくことにしたので、よろしくお願いします!
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