風紀委員の一人が破天荒すぎる。   作:トリーズナー

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俺が地獄(ゲヘナ)だ!

 

 ゲヘナ学園

 

 トリニティ、ミレニアムと合わせてキヴォトス3大学園とも呼ばれるマンモス校。その校風は自由と混沌……治安の悪さはキヴォトスでも随一だ。

 

 テロリスト共が部活と称して好き勝手に暴れまくるのは日常茶飯事。爆破事件はルーティン。給食部の部長は攫われまくる。生徒会の万魔殿はロリ娘ファースト。マトモなのは風紀委員長だけ。

 

 良い所は……基本何をしても退学にならないから、学籍だけは手に入れられる点くらいか。

 

 まぁ、普通ならこんな過酷な環境に耐えきれずに退学するのが普通なのだが……ゲヘナなんて名のつく学園に好んで入学するのは基本的にロクデナシ共ばかりだ。

 

 ……そしてこの地に住まう一番の甲斐性ナシのロクデナシは誰か?そこにクズとウスノロを足したような人間は誰か?

 

 キヴォトスでも物珍しいその漢は、武器らしい武器を持たない。基本的にキヴォトスは銃社会だ、銃を持たない人間は普通なら格好のカモを

 

 しかし、キヴォトスに住まいながらも武器を持たないのは、それだけの理由があるということ。

 

 男が持つ武器は、純粋愚直な拳一つ。

 相手が誰だろうが立ちはだかる壁は殴って突破。

 

 ゲヘナ屈指の問題児で野蛮人。地獄の作り手。彼がいるからこそゲヘナが地獄になる。というか、彼自身が地獄(ゲヘナ)

 

 

 散々な言われようだが、それを言われてもしょうがないほどのやらかしをしてきたのが彼――名は『阿月(アツキ)トウジ』ゲヘナ学園二年生、ゲヘナの治安を護る風紀委員所属の生徒である。

 

 

 

 その日も、ゲヘナは喧騒に溢れていた。まさにゲヘナの名の通りの地獄絵図……しかし、その中でも特に地獄のような光景が広がる場所があった。

 

 ゲヘナの道路を走る車が1台、周りの人間は喧嘩をしている人間も含めて、その車……厳密には車に乗る人を見た瞬間、人々は道を開ける。

 

 そして、その後ろから地面を殴ってその衝撃で前の車を追いかける男を見た瞬間、なぜか諦めに満ちた顔をする。

 

 艷やかな黒色にツンツンヘアー。その腕には白色のガントレット。その特徴を持つのはキヴォトス広しと言えどただ一人――『地獄(ゲヘナ)を作る漢』の異名を持つ阿月トウジである。

 

 車を運転しながら、トウジから逃げるのはキヴォトスでも屈指のテロ組――美食家。美食研究会の面々。その部長たるハルナは、苦虫を噛み潰したような顔で呟く。

 

「ぐっ……流石にしつこいですね、風紀委員。まさか、トウジさんに捕まるとは……」

「む〜!!む〜!!」

 

 そのそばには簀巻きにされた給食部部長のフウカの姿が……もはや見慣れた光景だが、当人からすればたまった話ではない。

 

 しかし、美食研究会としては非常にまずい状態だ。まさか、風紀委員会で最も危険な男に追われる羽目になるとは……部員のジュンコが焦ったように呟く。

 

「ど、どうするの!?私達ひき肉にされちゃうよ!?」

「ひき肉ですめばいいですね、下手をすれば塵芥になります……まったく……がっつく殿方は嫌われますのに。けれど、トウジさんに貪られるのなら……キャッ♡」

「ねぇアカリ!?惚けるのはあとにしてくれないかなぁ!?イズミちゃんの惨状見た!?壁につき刺さっちゃったんだよ!?」

 

 コントのようなやりとりをする美食研究会。しかし、それに近づく影が一つ……風紀委員、トウジだ。彼は、風紀委員とは思えないほどの悪鬼の如く形相で叫ぶ。

 

「待ちやがれテメェらァッ!逮捕だ逮捕!そんでもってテメェらは、豚箱行きだァァァァァァッ!!」

「来たァァァァァァ!?」

「む〜!?む〜!?」

 

 ジュンコと巻き込まれそうになったフウカが泣き叫ぶと同時に、勢いよくトウジはその拳を走る車へと叩きつけた。

 

「どぉぉぉぉりゃぁぁぁぁぁ!!!」

 

 次の瞬間、車は爆散にその衝撃で美食研究会のメンバーは吹き飛ばされバタンキューと地面に倒れる……部長のハルナとその脇に抱えられたフウカ以外は。ハルナはトウジを見てため息交じりに呟く。

 

「くっ……流石に手荒過ぎますよ、トウジさん。まったく、酷い仕打ちです!」

「いや、フウカを簀巻きして誘拐のほうがよっぽどヒデェ仕打ちだと思うが……」

 

 そのフウカごとぶっ飛ばそうとしたトウジも大概である。ハルナはプンプンと擬音がでそうな勢いで怒る。

 

「まったく。なぜフウカさんをさらったくらいで追いかけるのですか!?」

「ソイツにゃ俺の昼メシ作って貰わにゃ困るんでな……!まったく、食堂で飯待ってたらお前らが来てフウカさらっていくからビックリしたぜ。」

 

 トウジはその美食研究会を追うために壁を殴り壊して追ったのでどっちもどっちである。

 

「ふっ……しかし、無駄です。フウカさんは我々と美食の道を征く同志!貴方如きに私はしません!」

「む〜!?む〜!?」

 

 すると、トウジはガントレットのついた右腕を突き出してゆっくりと、力強く握りしめる。そして、白いギザ歯を剥き出しにしてニヤリと笑ってみせた。

 

「いいぜ、ならば元不良の俺らしく――――カツアゲさ(奪わ)せて貰うぜ

「ふっ、美食を貫く為には時には戦う事も必要――!!行きますよ!!」

 

 こうして、美食研究会会長と地獄を作る男の激突が始まった!!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 因みに、トウジの実力がどれほどなのかについてだが……ごくごく単純なタイマン勝負であれば風紀委員会委員長の空崎ヒナともタメを張れる程度である。

 

 まぁ、つまり……簡単に言えばこうだ。

 このあと滅茶苦茶逮捕した。

 


 

 風紀委員会。ゲヘナの治安を護る委員会、その委員長室で一人の男が正座させられていた。美食研究会との交戦を終えたトウジである。

 

 その目の前には、鬼の形相の風紀委員長、空崎ヒナが仁王立ちしていた。彼女は、冷たい口調で言い放つ。

 

「……ねぇ、トウジ。」

「うっす。」

「美食研究会の被害よりも、追った貴方による被害の方が多いんだけど、どうするの?」

「……悪かったって、ごめんな、わりぃ、すまねぇ、ゆるせ。」

「減給ね。」

「マコットに申し訳ありゃぁせんでした!!!」

 

 トウジは見るも綺麗に土下座をした。それをみて溜息をつくヒナに、キャンキャンと喚く風紀委員会の行政官のアコ。

 

「まったく!委員長!やはり彼は風紀委員会から外すべきです!」

 

 ある種ご最も内見だが、トウジはギロリとアコを睨みつけて言い放つ。

 

「キャンキャンうるせぇぞ犬っころ。発情期じゃねぇんだから。」

「はぁぁぁぁ!?」

「アコ、うるさい。トウジも煽らないで。」

「うっ、すみません……」

「さァせん。」

「はぁ……兎に角、トウジは反省文と事後処理、分かった?」

「はい」

 

 ヒナとしては頭が痛くなるばっかりだ。トウジの存在はヒナと並ぶ抑止力でもあり、その傍若無人さは生徒会たる万魔殿が風紀委員会への手出しを渋る原因にもなっている。

 

 以前、万魔殿の長であるマコトが個人的ないたずらで風紀委員会に嫌がらせをした際にはブチギレたトウジざ特攻。曰く、「こっちの仕事やヒナの気苦労知らねぇクセに好き勝手抜かしてんじゃねぇっ!」との事。その結果万魔殿本部が実に開放的な空間になったことがある。

 

 そんな事をしでかすトウジだ。仮に風紀委員会でなかったら今よりも面倒くさいことになったであろう。その点に関しては不幸中の幸いだ。考えれば考えるほど頭が痛くなる。

 

「……取り敢えずアコ。一旦席を外して、トウジはもう少し話があるから待機。」

「わ、わかりました!」

「あぁい。」

 

 アコはそう言って委員長室から一足先に出る……すると、ヒナは途端に少々情けない声でトウジに声を掛ける。

 

「トウジ……また定例の万魔殿への報告会があるから一緒に来てくれる?」

「あいよ。いざとなったら殴り飛ばすから安心してくれや。」

「安心できない……」

 

 その様子を見ると、トウジは少しやりづらそうに頭を搔く。万魔殿をぶっ飛ばした辺だろうか……偶にこうやって二人っきりになるとヒナがシナシナになる事がある。

 

 正直トウジとしてはやりづらいことこの上ないが……まぁ、ヒナも無理を押していることはトウジも、無論他の風紀委員もわかってるつもりだ。当人なりの息抜きだろう。トウジは軽く溜息をつくと、一つの提案を挙げる。

 

「あぁ、あれだ。今度皆でぱぁーっとポテチとコーラで映画鑑賞でもしてこいよ。その間の仕事俺がやっとくから。」

「……いいの?」

「別にいいだろそんくらい。」

「……ありがと。」

 

 トウジとしては別に風紀委員の仕事は苦ではない。戦うのは好きだし、ヒナが無理してやりたくない仕事をするくらいなら自分がやれば良いとも思っている。

 

 トウジとしては身勝手な心遣いだが、ヒナにとってはその身勝手が、ありがたく感じるのだ。




トウジ:風紀委員会の暴れん坊将軍。細かいことは殴れば解決すると思ってる生粋のバカ。因みにトウジの使うガントレットのイメージはシェルブリットや赤龍帝の篭手。ガントレットってガンってついてるしほぼ銃でしょ!()

美食研究会:滅茶苦茶留置所行きになった。

ヒナ:トウジが積極的に仕事を変わったり万魔殿をぶっ飛ばして黙らせているので比較的落ち着いている。それでも尚ゲヘナは地獄である。


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