風紀委員の一人が破天荒すぎる。   作:トリーズナー

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給食の時間

 

「うめっ。うめぇ。」

「食べながら喋るなよ……行儀悪いぞ?」

 

 ゲヘナ学園。食堂……昼過ぎの時間帯の為、人はほとんどいない中、席に座るのはトウジ。そしてトウジと同じく風紀委員会二年のイオリである。

 

 その日の献立はサバ味噌定食。トウジは只管にうまいうまいと呟きながら、イオリも静かに行儀よく定食に箸をつけていた。

 

「いやぁ、うめぇな。マジでうめぇ。」

「……あー、うん。」

 

 イオリは定食に箸をつけながらも、何処か微妙そうな顔をする……ゲヘナの食堂、と言うか給食部は基本的にほぼ部長のフウカのワンオペのような状態。

 

 そんな状態で1000人単位の給食を作らなければならないこともあって、質よりも量を取らねばならぬ事も多い。

 

 まぁ、身も蓋もない言い方をすれば、お世辞にもあまり美味い給食とは言えないのか実情だ。

 

 無論、これはフウカが悪いと言うかフウカ自身ワンオペで給食部を回せる程度には度の超えた料理人ではある為、給食部の環境が悪いと言える。

 

 トウジはパクパクと定食を減らし、食器を空にしながらながらつぶやく。

 

「この前は美食研究会の野郎共が壁をぶち抜いて来たからびっくりしたぜ。お陰で給食も食えなかったしな。」

「まったく。規則違反者にも困ったものだ。」

 

 イオリも、相変わらずの美食研究会に苦言を呈しながら箸を進める。すると、部長のフウカがジト目を向けながらトウジにおかわりを持ってくる。

 

「私としてはその美食研究会を追うために壁の穴を広げたトウジ君にも驚いたけどね……」

「……悪かったって。ちゃんと一夜で直したろ?」

「なんなら簀巻きにされた私ごと車殴り飛ばしたよね?」

「おいトウジ……」

「いや、それは……そのぉ……」

 

 イオリもなんとも言えない表情でトウジを見つめる……トウジとしては反論のハの字もでない。頭を掻いてごまかすので精一杯だ。

 

「……いや、それよりも今日の給食もうめぇな!うめぇうめぇ!」

(ごまかしたな。)

「まぁたそんな風に誤魔化して……お世辞言っても無駄だからね?……おかわりいる?」

「頼む!」

「はーい。」

 

 そう言ってフウカはあいた食器に定食のおかわりを注ぐ。美味い美味いと言われ機嫌が良くなってるのは、イオリの目でもわかる。

 

 イオリの目からはフウカが良いようにごまかされてるようにしか見えないが……少なくとも、トウジが美味い美味いと言っているのは本音なのは事実だ。

 

 トウジは嘘を付けるような器用な人間でもない。余計に質が悪いというのはそのとおりだ。

 

 すると、トウジにはどうにも解せないと言わんばかりの表情でつぶやく。

 

「だけどよぉ。こんなにうめぇのにクレーム多発するんだろ?ったく、どいつもこいつも勝手だな。飯なんかこうやって用意してもらえるだけでありがてぇってのに。」

「まぁ文句言いたいだけの奴も多いだろうがなぁ。」

 

 イオリが何とも言えない表情をする。ゲヘナは身勝手な連中もおおいから、そんなこともあるのだろうが……フウカはおかわりを持って引きつった笑顔を見せながらやって来る。

 

「しょうがないよ。お世辞にも手が込んでるとは言えないから……」

「予算の増加申請はまだ通らないのか?」

「前の食中毒事件があるからどうにも乗り気じゃないみたい……」

「あぁ……」

 

 その言葉を聞いて、イオリもトウジも納得した様に肩をすぼめる。調査員が同じく給食部の部員のジュリお手製のミックスジュースで部の評価を落とした事件は、2人も知らぬ話ではない。

 

「……フウカも苦労してるんだな。」

「まぁそこそこに……でも、風紀委員だって大変でしょ?」

 

 フウカの問いかけに、イオリはトウジの方をじっと見ながらつぶやく。

 

「あぁ、トウジが色々やらかすからな。」

「俺のせいかよ!?自分の尻拭いはちゃんと自分でしてるぞ!?」

「だとしてもだ。お前は色々やらかし過ぎなんだよ、脳筋。」

「お前にゃ言われたくねぇよ!?すぐに罠に引っかかるくせに!それに俺だってなそれなりに大変なんだぜ?今度だって万魔殿に――あ、そうだ。」

 

 トウジはおかわりに箸をつけながら、拳を握りしめてつぶやく。

 

「なんなら給食部の予算増加の件、俺なら万魔殿に直接言ってこようか?どうせ今度風紀委員の報告会があるし。もっと美味い飯が喰えるなら理由にもなるだろ。」

「えっ!?」

「トウジ……また万魔殿の会議室に風穴あけるつもりだな?やめてくれよ……それでどんだけ風紀委員がてんやわんやしたか……」

 

 万魔殿……と言うか会長のマコトが個人的な嫌がらせで風紀委員会への予算の削減やお小言を食らった際に、ブチギレたトウジが万魔殿の本部を開放的にして青空レストラン状態にした事件。

 

 通称『青空万魔殿事件』……それは、ゲヘナでは知らぬ人はいない大事件であり、トウジの名をゲヘナ、ひいてはキヴォトスに知らしめたきっかけでもある。

 

 あわや万魔殿と風紀委員の全面戦争も予感されたが、結果はなんとか譲歩しあい全面戦争は避けられた。

 

 当初は余計に風紀委員への嫌がらせが悪化するかと思われたが、逆にその地獄の惨状にこれ以上は流石にまずいと感じた万魔殿が風紀委員への手出しを渋る原因となった。

 

 結果的には良い方に転がったが……それでもそこまでになるまでかなり色々あったし、トウジもかなりヤバイ目に遭ったのも事実だ。

 

 だが、そんな経験をしても尚トウジはイオリに対して言い放つ。

 

「そーやってへーこらへーこらしてるから向こうが調子に乗るんだ。別に穏便に済ませるだけが正しい事じゃねぇ。徹底的に抗って反逆する事だって必要だろ。それに俺だって何もしてねぇ奴に風穴開ける趣味はねぇし、ちゃんとした話し合いでケリはつけるさ。」

 

 イオリは相変わらずな同級生に対して肩を竦ませて頭を抱える。

 

「お前らしいっちゃらしいけど……」

「……でも、トウジ君いいの?そもそも風紀委員の仕事でもないのに……」

「いいんだよ、俺がやりたいからやるんだ。何か下手な事があっても俺かクビになる程度だし大丈夫だろ。」

「クビになるほどのなんかをしでかすつもりなのか!?」

「ちげぇよ!?例えだよ例え!」

 

 仮に例えだとしても、それほどの事をしでかすと思われている時点でもはや何も言えまい。フウカはその光景に乾いた笑いを浮かべながら、トウジへお願いする。

 

「それじゃあお願いしても良い?私からも色々意見具申の書類は纏めておくから。」

「おうし、まぁあんま期待されても困るけど。なにもしねぇよりかはマシだろ。」

 

 トウジはそんな事を呟けば、いつの間にかおかわりやイオリも定食を食べ終えていたようで皿の上は空になっている。二人は手を合わせてご馳走様をすると、トウジは時計を見る。

 

「まだちぃと時間はあるな。せっかくだしデザートでも――――」

 

 次の瞬間、トウジとイオリの通信機に通信が入る。

 

「はい、こちらイオリ。」

「同じくトウジ、どうした?」

『た、大変です!温泉開発部がまた破壊活動を!ヒナ委員長は別件で不在ですので応援を!』

 

「――デザート食べる時間は無さそうだな。」

 

 イオリがジト目をトウジへ向けると、あからさまにトウジは苛ついた様子で拳を鳴らす。

 

「あんのクソガキ……行くかっ、イオリ!」

「あぁ、そうだな。フウカ、給食ありがとう。」

「ううん、また時間が空いたら来てね!」

 

 トウジとイオリは風紀委員の制服を羽織った後、食堂から足早くさっていく。

 

 その様子を見たフウカは、(風紀委員も大変だな……)と月並みな感想を持つと、食器を手に持って厨房へと下げる。

 

 ご飯粒一つも残っていないその食器たちを見ると、美味い美味いと美味しそうに食べていたトウジの顔が、当たり前のようにありがとうと言ってくれたイオリの顔が脳裏によぎり、フウカは思わず笑みをこぼすのだった。

 

(さて、もう少し頑張ろ!)

 




トウジ:青空万魔殿事件の主犯。イオリ以上に猪突猛進の脳筋気質。味音痴と言うか、ジュリの作った物ほど酷くなければ大抵何でも美味いと言う。唐揚げにレモンは掛けない派。

イオリ:同級生のトウジのIQが低すぎる為必然的に隣に置くと頭がよく見える。ただ野生の勘でトラップを回避するトウジと比べて単純な罠には引っかかりやすい方。唐揚げにレモンをかける派。

フウカ:トウジの事は美味しい美味しいと給食を食べてくれる良いお客さんと思っている。それはそれとして美食研究会に連れて行かれる度に車ごとぶっ飛ばすことについては常に恨み言をはいている。
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