ウマドルが油断してたら大好きな幼馴染を同室の閃光に奪われかける話   作:shch

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1.閃光

 

 

 

『アイドル』

 

みんなかわいくて、いつも笑顔でキラキラ輝いていて…

 

私はそんなアイドルが大好きで、将来は絶対にアイドルになるんだって信じてた。

 

だからいつも練習してた。歌って、踊って、たまに河川敷でライブなんてっしちゃったりして…

 

まだファンどころか観客もいないけど、私は練習をやめるつもりは無かった。

 

だってそれくらい『アイドル』が大好きだから。

 

いつも通りの朝、いつもと同じように小学校へと向かい、教室の扉に手を掛ける。

 

その時に聞こえた。同じクラスの女の子の言葉

 

「ねぇ知ってる?ファル子ちゃんっていつもあの河川敷で一人でライブみたいなことしてるらしいよ」

 

「えぇー、なんか必死すぎてウケるんだけど、しかもそんだけやってファンの1人もいないとか、私なら恥ずかしくてできないわ」

 

「いっつもアイドルアイドルって言ってるけど、そんなことしててほんとになれるの??」

 

(え?)

 

そう言って笑い合う女の子達、扉にかけた手が震える。

 

悔しかった。

 

別に陰口を言われたのが悔しかったわけではない。

 

これまで自分の夢を叶えるために、自分なりに頑張って努力してきたつもりだ。

 

それを笑われた。少し悪口を言われたくらいで自分の夢に、自分のしている事に疑問を持ってしまった。心が折れかけてしまった。惨めな気持ちになってしまった。

 

その事実が何よりも悔しい。

 

震える手で扉を開けようとする。しかし、思うように体が動かない。

 

「「「キャハハ!!」」」

 

女の子達のバカにするような笑い声が頭に響く。

 

(…もう…やめてよ…)

 

そんな時だった。

 

「もうやめなよ」

 

そんな声が教室に響いた。

 

言ったのはいつも教室の端っこで本を読んでいる男の子。

 

いつもはほとんど喋らないその男の子、私自身ともほとんど面識がなかった。

 

でもその男の子は続ける。

 

「人が一生懸命頑張ってることを笑ったらダメだよ」

 

(え…)

 

その子の言葉に私は思わず驚いてしまう。

 

しかし、女の子達はその男の子に言葉を返す。

 

「なに言ってんのコイツ私達に文句??」

 

「そんな怒るとかもしかしてファル子ちゃんのこと好きなんじゃないコイツ?」

 

「えーキモーい」

 

そんな声に動じず男の子が答える

 

「うん、好きだよ」

 

(えーーーーー!!!)

 

自身の顔が熱くなっている事を感じる。いくら面識がないと言っても、同級生にいきなり好意を伝えられたのだ(伝えられてはない)。嬉しくないはずがない。

 

男の子は続ける

 

「少なくともコソコソ陰口を言っているだけの君たちよりは夢に向かってひたむきに努力しているファルコンさんの方がキラキラに輝いていて、魅力的で好きだよ」

 

この言葉を聞いて、スッと心の中に立ち込めていた悪いものが一気に晴れていくのを感じる。

 

もう、手は震えていなかった。

 

ガラッ!

 

勢いよく私は教室の扉を開き、ズンズンとその子の元へ進んでいく。

 

そしてグッと顔を近くに寄せる。

 

「え?何急に?ちょっと怖いんだけど…」

 

困惑するその子に私は話す。

 

「あなた!名前は!?」

 

「え…優…だけど」

 

その子の名前は優らしい、クラスメイトなのに名前を知らなかっていうのも変なんだけど…

 

でも今はそんなことはどうでもいい

 

「優くん!あなたを今日のファル子のライブに特別招待します!場所は河川敷!時間は放課後!待ってるからね!」

 

そう言って自分の席へと向かい、着席して考える。

 

(ちょっと強引だったかな…?)

 

でも私はこの感謝の気持ちをいち早く伝えたかった。

 

自分にできる最大限の方法で。

 

だって、私は…

 

(『アイドル』になるんだから!)

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

数年後…

 

 

 

 

 

「ーー・~~♪~♪~♪」

 

女の子の歌声が夕焼けの河川敷に響く。

 

そしてその目の前では…

 

「ファル子ー!!!今日もかわいいぞー!!」

 

そう叫びながらサイリウムを振る男が一人

 

「えへへっ・・・・♪」

 

そんな声に対してファル子と呼ばれた女の子はそう叫ぶ男にウインクする。

 

「うおお!!ファル子ー!!」

 

とびっきりのファンサービスを頂いた男はさらにテンションを上げて叫ぶ。

 

しばらく、女の子の歌と踊りは続いた…

 

「今日はありがとうございました!!またね~!」

 

数曲を歌い終えた彼女は元気よくお礼を言い。

 

 

 

みかんが描かれた段ボールで作られたステージを降りる。

 

「ふぅ・・」

 

と一息ついた彼女こと『スマートファルコン』は目の前の男、『黒木 

優』に声を掛ける

 

「優くん!どうだったどうだった!?今日のファル子!?」

 

数曲を歌いながら踊り切った後とは思えないほど元気な様子で自分に声を掛けてくるファル子。

 

そんな様子を見て、優くんと呼ばれた男は感心しながらグッと親指を突き出し答える。

 

「ああ!やっぱり今日のファル子も最強だった!」

 

そんな優の声にファル子は満面の笑みを浮かべて喜ぶ

 

「やったやった!!優くんに褒められた!ねね、撫でて撫でて!」

 

そう言ってグイと頭を優の方に寄せるファル子、それに対して優は言う

 

「はいはい、ファル子ーすごいぞーえらいぞーかわいいぞー」

 

そう言って手を突き出されたファル子の頭にのせて撫でまわす。

 

「えへへ~」

 

とろけ切った声を出しながらだらしない顔をするファル子。

 

優はしばらく撫でると、口を開いた。

 

「じゃあそろそろ撤収しようぜ」

 

歌い始めたころは夕方であったが、現在は日が落ちかけている。

 

「えー…もうちょっと撫でてよー!」

 

駄々をこねるファル子であったが、男は言う。

 

「ダメだ、早く帰らないとファル子の寮の門限が来ちゃうだろ?」

 

するとファル子は観念したように言う。

 

「ええん…わかりましたぁー」

 

ファル子はそう言うと足元の段ボールを畳み脇に抱える。

 

優も自身が持っているサイリウムをスクールバックに収める。

 

「じゃあ帰ろう」

 

「はぁい…」

 

まだ元気のないファル子の返事が気になり優は帰路を歩きながら話す

 

「…なにしょぼくれた顔してるんだよファル子?」

 

そう言うとファル子は頬を膨らませながら答える。

 

「むぅ…だって今日も結局お客さんは優くん一人だけだった…」

 

彼女は小学生の頃からアイドルを志しており、定期的に今日のようなライブ練習を河川敷で行う。

 

最初こそ一人でやっていたものの、ある時を境に優がファル子のライブを見に来るようになった。

 

しかしそこから観客は増えることなく、現在2人は高校生まで成長していた。

 

まぁ無理もない、まず場所が河川敷で音響も照明もない、あるのは段ボール箱だけ。

 

そんな路上ライブとも呼べるかわからない何かに少し足を止める人がいても、優のように熱心にライブを見る人は中々いない。

 

「まぁそんなに落ち込むなって、ファル子がレースでデビューすればファル子の魅力に皆が気づくハズ…俺はファル子ならファン2兆人も夢じゃないと思うな」

 

「うーん…」

 

「ファル子は『ウマドル』になるんだろ??」

 

まだ不安げな様子のファル子に優がそう言った。

 

『ウマドル』

 

それは……正式な名称では無く、ファル子が勝手に名付けて目指しているものなのだが。

 

簡単に言うと他のウマ娘たちのようにレースもしてウイニングライブもしてアイドルのようにキラキラに輝いて誰もに希望を与えられる存在……らしい

 

ファル子は最初は普通のアイドルを目指していたのだが、ある日ウマ娘たちのレースを見に行くことになった。

 

そこで見たウイニングライブに彼女の心はがっちりと掴まれ、その日から彼女の夢は『アイドル』から『ウマドル』になったのだ。

 

「そう……だよね、うん!ファル子!頑張る!」

 

そう言って「おー!」と拳を突き上げた彼女に優は少しからかうように言う

 

「まあウイニングライブをするには早くトレーナーを見つけてデビューしないとなぁ」

 

そう言うと張り切っていたファル子の肩がガクッと沈む

 

「ああ……そうだった…」

 

ファル子は今年の春にトレセン学園に高等部の一年生として入学した。

 

普通ならばそこからパートナーとなるトレーナーを見つけて、デビューしてレースを走るのだが…

 

どうもそのトレーナーがウマ娘を見極める『選抜レース』いうレースでファル子はあまり良い結果が出せておらずに、いまだに専属のトレーナーが付いていないようなのだ。

 

「はぁ…もう優くんがトレーナーやってくれたらいいのに…」

 

そんなファル子の声に優は答える。

 

「冗談言うなよ、こんな高校生の子供に中央のトレーナー資格なんて取れるわけないし、それに俺は理学療法士になるんだ、トレーナーにはならない」

 

優はファル子と同い年。

 

自身の父親と同じようにウマ娘やスポーツマンたちの体のサポートを行う理学療法士になるため、今年の春に医療専門の学校に入学した。

 

その学校はトレセン学園と提携しており、立地もトレセン学園の隣と、トレセン学園と関わりの大きい全国有数の有名な医療学校だ。

 

ちなみに父はかなり有名な療法士で現在は海外でその腕を振るっている。

 

1人日本に残してしまった優が心配だからという理由で優は学校の寮に住ませている。

 

母はいない。

 

「ええー優くんならきっと良いトレーナーになれるのに…」

 

そんなことを話しているといつの間にかトレセン学園の正門前に着いていた。

 

「お、着いたな、じゃあまたなファル子!またライブがあったら呼んでくれよ」

 

そう言ってファル子に背を向けて歩き出す優。

 

ファル子もスターウマ娘を目指すウマ娘の一人、日々の練習を怠ることはできない。

 

そして優も全国有数の医療学校の勉強に遅れをとらないよう、日々勉学に励んでいる。

 

つまり、二人ともそれなりに忙しいのだ。

 

だからこうやって二人が集まれるのは1週間に一回ファル子の練習がオフの日だけだ。

 

そんな週に一回しか会うことのできない優の背中を見てファル子はおもむろに駆けだす。

 

そしてガバッと勢いよく優の首元に腕を巻き付けるようにして抱き着く

 

「ッ!バカ!やめろファル子!こんなとこ誰かに見られたら…」

 

急に後ろから抱きつかれた優は驚き焦るようにそう言う。

 

「あ!優くん照れてる!かわいいー!」

 

そんな声を気にせんとばかりに抱きつきながらそう言うファル子

 

「これから一週間会えないんだもん!成分を充電しておかなきゃ!」

 

そう言って優の首元に顔を沈めるファル子、こうなってしまってはファル子が満足するまで離してはくれない。

 

振りほどこうったって、ウマ娘の力には勝てるはずもない。

 

優は観念したようにため息を漏らして言う。

 

「はぁー、わかったわかった…好きなだけどうぞ…」

 

「やったー!!えへへ…」

 

喜ぶファル子の顔を見るとつい頬が緩んでしまうのを優は感じる。

 

しかしこんなところ他の誰かに見られるわけにはいかないのは本当なので、優は辺りをキョロキョロと見回す。

 

この充電行為、実は高校に入ってから優とファル子が別れる際は必ず行われている。

 

こんなことを続けていれば、今はまだ誰にも見られてないようだが、誰かに見つかるのは時間の問題。

 

『ウマドル』を目指す彼女にとってそれは、障害になるのではないか。

 

そんなことをいつも優は考える。

 

いつもは考えるだけなのだが、今回初めて優は口を開いた。

 

「なあファル子、毎回別れるたびにこれやるの…もうやめない??」

 

そう優が言った瞬間だった。

 

バッとファル子が顔を上げ口を開く。

 

「…なんで?」

 

表情は先程の嬉しそうな表情とは打って変わって無表情。

 

そしてその無表情から放たれた、抑揚の無い「なんで」の三文字。

 

いつもハイテンションな彼女とのギャップに優は一瞬ゾクリと恐怖のようなものを感じる。

 

「な、なんでって…ていうか、どうしたファル子?…ちょっと怖いぞ」

 

恐る恐る優は無表情の彼女に話しかけた。

 

「…なんでもないよ!そうだよね!こういうのは人前でするのはダメだよね!」

 

ファル子はいつもの表情に戻って、元気よくそう答えて、優の首元から腕を離す。

 

(さっきのは気のせいだったか?)

 

元の笑顔に戻ったファル子を見ながら優はそう考える。

 

「じゃあ次は人目の付かない所でやるね!じゃあ優くん!また来週ね!バイバイ!」

 

「…おーまたなー」

 

(……人目のつかないとこでもやめてほしいんだけど…)

 

そんなことを考えながらも優はトレセン学園の隣にある自身が通う高校の寮への帰路を歩くのであった。

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

Q.お名前を教えてください。

 

A.黒木優です。

 

Q.現在お付き合いされている方はいらっしゃいますか?

 

A.いません。

 

Q.スマートファルコンさんとずいぶん親しい様子でしたがどういうご関係ですか?

 

A.え?ファル子?なんでそんなことを…?…まあただのウマドルとファンの関係ですけど。

 

Q.彼女のことをどう思ってますか?

 

A.なんだこの質問…まあファル子はいつも元気で笑顔で、一緒にいるとこっちまで元気をもらえる、それに小さい頃から自分の夢に向かって真っ直ぐ努力しています。その姿は、本人には直接言ったこと無いですけど尊敬しています。

 

Q.現在、恋人が欲しいと思ったことはありますか?

 

A.いや、今は特に思って無いですね。色々忙しいですし…あとちょっと色々あって昔から女性があまり得意じゃなくて…

 

Q.そうでしたか…でもスマートファルコンさんとは仲が良いんですね。

 

A.まぁファル子とは昔からの仲なので…まぁそのファル子とも最初の頃は上手く話せなかったのですが、ファル子が結構グイグイ距離を縮めてきたもんで、いつの間にか俺も話せるようになっていました。

 

Q.じゃあ将来的にスマートファルコンさんとの交際とかは…?

 

A.無いと思います。彼女も「ウマドルは恋愛禁止なのっ!!」って昔言ってましたし笑、それにファンかつ友人として過ごしてきた時間がかなり長いので、もう恋人としてはお互いのことを見れなくなってると思います。少なくとも俺はファル子のことは恋人としては見れないですかね…

 

Q.…本当にスマートファルコンさんのことを恋人として見れないんですか?

 

A.……あ…た、確かに…昔は好き…だった、いや今は好きじゃないというわけでは無いけど、昔は『恋愛的』な意味で好きだった。彼女の太陽のように明るい笑顔やその泥臭くも夢に努力していく姿勢、好きにならない訳がない。でも彼女の夢は『ウマドル』俺は彼女を好きという気持ちより彼女の夢を全力で応援したいという気持ちが強かった。さっきも言ったけど彼女曰くウマドルに恋愛なんて言語道断みたいだった…だから当時の俺は諦めた。その気持ちを胸の奥深くにしまったんだ。そのまま時は経って気が付いたらその気持ちはもう無くなっていた。だから本当に今は彼女を恋人として見れなくなってる。

 

Q.将来、結婚願望とかはありますか?

 

A.結婚?…話が急に変わるな…うーん、でも最近は自分の女性への苦手意識もファル子のおかげで少しずつ治ってきている気がするので、良い人がいれば結婚はしたいですね、父さんに孫の顔も見せたいし…

 

Q.そうですか、では結婚したい人のタイプなどはありますか?

 

A.うーん、強いて言えば…俺はスケジュールとか時間とかを管理するのがあまり得意ではないので、そういう所がキチンとしている人…とかですかね。

 

Q.なるほどですね…じゃあインタビューはここまでとなります。ご協力ありがとうございました。

 

A.いえいえ…ってコレどこのなんのインタビューだよ??どこに需要あるの??てかまずアンタ誰だよ…っていない…??あれ??

 

「はッ!!」

 

優はベッドの上で目を覚ます。

 

見慣れた寮の自室の天井が目に入る。

 

「…ゆ、夢??変な夢もあるもんだな…」

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

Q.お名前を教えてください。

 

A.スマートファルコンでーすっ!!ファル子って呼んでね☆

 

Q.…ではファルコンさん、現在お付き合いされている方はいらっしゃいますか?

 

A.ファル子はウマドルなので今はお付き合いしている人はいません!

 

Q.黒木優さんとずいぶん親しい様子でしたがどういうご関係ですか?

 

A.優くん?優くんはファル子の未来の旦那様なの!

 

Q.え?ああ、そうですか…ではファルコンさんは優さんのことが好き…ということですか?

 

A.うん!初めて会った時から大好きです!

 

Q.彼のどこが好きなんですか?

 

A.全部!いつも優しいしカッコいいし…ファル子のライブの練習に付き合ってくれるし…とにかく優くんの全部がファル子大好きなの!

 

Q.そうでしたか…では彼とは婚約的なことをされているということでしょうか?

 

A.え?してないよ?

 

Q.??…では先程の「未来の旦那様」…というのは…?

 

A.優くんはね、女の子がちょっと苦手なの…でもファル子にだけはいつも「かわいい」「最高」「えらい」って褒めてくれるの!それに、何かあるたびにウマインで報告してきたり!これって彼もファル子のこと好きってことだよね!ファル子も彼が好きで彼もファル子が好き。ってことはファル子将来、優くんと絶対結婚すると思うの!

 

Q.…そうですか…でもそんなに好き同士なのにお付き合いはしていないんですね

 

A.ウマドルは恋愛禁止なの!だから優くんとお付き合いして結婚するのはファル子がウマドルを引退した後!

 

Q.なるほど…ですが、ファルコンさんがウマドルとして活動をしている間に彼が他の人を好きになったりするかもしれませんよ?

 

A.大丈夫!優くんはファル子にゾッコンだから!優くんにはファル子しかいないの!それに優くんは女の子が苦手だから…ずっとに一緒にいたけど、ファル子以外の女のこと褒めたところすらみたことないもん!だから優くんもファル子が引退するまで待っててくれると思うの!

 

Q.それはすごいですね…ところでファルコンさん以外の女性を褒めたこと無い…とのことですが今後彼が他の女性を褒めたらどうされますか?

 

A.…うーん、そんな事は絶対無いと思うから大丈夫! 

 

Q.そうですか…先程その優さんにもインタビューをしたんですけど、結婚したい女性のタイプが「時間やスケジュールの管理がキチンとした人」らしいのですが、これについては…

 

A.えー!優くんそこは「ファル子」って言ってほしかったなあ…でも優くんは照れ屋さんだからしょうがないか!ファル子時間やスケジュールは…あれ?

 

Q.どうされましたかファルコンさん、急に黙ってしまって…

 

A.ううん!大丈夫!ちょっと考え事してただけ!

 

Q.そうでしたか。それなら今日のインタビューは終了させていただきます。ご協力ありがとうございました。

 

A.はい!こちらこそありがとうございました!

 

「……ルコンさん?…ファルコンさん?そろそろ起きてください」

 

「え?」

 

自分の名前を呼ぶ声とゆさゆさと体を揺さぶられる振動でファル子は目を覚ました。

 

(さっきの…夢?)

 

真っ先に目に入ったのは寮で同室のエイシンフラッシュの顔だった。

 

「…うーん…フラッシュさん?どうしたの?」

 

ファル子はベッドの上で伸びをしながらフラッシュに声を掛ける

 

「ファルコンさん、もう6時32分です。今日は私と7時15分から一緒に朝の練習に行くはずでしょう?」

 

そんなことを言うフラッシュはもうすでに着替えを済ませてジャージ姿である。

 

対して自分はまだパジャマで髪も寝ぐせだらけでボサボサだ。

 

「ほんとだ!もうこんな時間!急がなきゃ!」

 

そう言ってせわしなく準備を始めるファル子。

 

そんなファル子を見て、フラッシュは少し笑いながら言う

 

「フフ……ファルコンさん、そんなに急がなくても十分間に合いますよ」

 

そんな声は急いでいるファル子には聞こえていないようで、ファル子はドタバタと準備を進める。

 

「でもあの様子だと私が起こさないとファルコンさんは起きなかっただろうし…ファルコンさんの時間にルーズなところ、この先ちょっと心配ですね…」

 

慌てるファル子を見ながらフラッシュはそう呟くのであった。

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

今日はファル子の週に一度の休みの日。

 

いつものようにファル子は河川敷でライブの練習を行い、優がそれを見守る。

 

だがその日は昨日の疲れがファル子に残っていたようで、いつもより早めにライブを切り上げた。

 

そして現在二人は河川敷の堤防に並んで座り、夕日を眺めていた。

 

「優くん」

 

ファル子が口を開いた。

 

「どうしたファル子?」

 

「優くんは最近学校どう?お友達とかちゃんといる?」

 

「なんだその母ちゃんみたいな質問…まぁそれなりにいるけど」

 

ファル子の質問に優が答える。確かに優にもちゃんと高校の友達は出来ている。男ばかりだが…

 

「…それって女の子?」

 

ファル子は追加でそう優に聞く。

 

ファル子は頭の中にはいつか見た夢の中で言われた「ファルコンさんがウマドルとして活動をしている間に彼が他の人を好きになったりするかもしれない」という言葉がずっと引っかかっていたのだ。

 

(まぁ優くんにはファル子しかいないと思うけど…念の為ね!)

 

小さな不安を払拭するためのファル子の質問、それに対して優が答える。

 

「いやいや、俺が女の人が苦手なの知ってるだろ?友達は男ばっかりだよ、クラスの女の子とはまだ全然仲良くない」

 

それを聞いたファル子はパァと少し顔を明るくして話す。

 

「だ、だよねだよね!優くんが女の子のお友達なんて作れるわけないよね!ファル子何聞いてるんだろ!」

 

そんな発言に対して優は言う

 

「なんでちょっと嬉しそうなんだよ…あとちょっとバカにしてんだろ…まぁ何も言い返せないんだけどさ」

 

それを聞いたファル子は誤魔化すように笑いながら言う

 

「えへへ…でも優くんにはファル子がいるから!大丈夫でしょ??」

 

明るい声でそういうファル子

 

「…確かにな今はファル子がいてくれるから俺は頑張れてる。いつもありがとな」

 

そう言ってファル子の頭に手を置いて、わしゃわしゃと頭を撫でる優。

 

確かにファル子の頑張る姿やいつも元気なその笑顔に励まされて優は厳しい学校の勉強を乗り越えられている。

 

そのお礼の気持ちを込めて頭を撫でる。ファル子がいつもねだってくるので頭を撫でられるのが好きなことはわかっていた。

 

頭を撫でてくる優に対してファル子は撫でやすいように体を優の肩に預けて言う

 

「えへへっ、優くんから撫でてくれるの珍しいから嬉しい~」

 

目を細めながら気持ちよさそうに自身の肩に体を預けるファル子を見て、優は心が安らいでいくのを感じていた。

 

(なんかこういう時は猫みたいだな…)

 

そんなことを優は思っていると、自分の撫でている手がファル子のリボンに少し当たってしまい、その結び目が少しほつれる。

 

そしてちょうどその瞬間、

 

ビュー!と突風が吹いた。

 

「あ」

 

その拍子に結び目が緩んでいたファル子のリボンは堤防の上の道に風に乗って飛んで行ってしまった。

 

「どうしたの優くん?」

 

リボンが飛んでしまったことに気が付いていないファル子は優にそう言う。

 

「いや、ファル子の髪についてるリボン、一個飛んでっちゃった。取ってくるよ」

 

そう言って優は立ち上がりリボンが飛んで行った方へと足を進めた。

 

そしてリボンの元へたどり着き、優はリボンを拾おうと屈む…

 

その時だった。

 

優とは反対方向からリボンに向かって優とは違う人の手が伸びる。

 

そしてリボンを拾おうと出した優の手と反対方向から伸びてきた他の人の手が重なった。

 

「「あっ」」

 

優とリボンを拾おうとしたもう一人が手が重なったことに対して驚きの声を上げて、両者とも手を引っ込める。

 

反射的に優は顔を上げて前方に視線を送る。

 

そこには…

 

綺麗な黒髪を風になびかせ、凛とした表情で佇む一人の美しいウマ娘がいた。

 

そしてそんな彼女と目が合った。

 

その瞬間まるで自分の目の前に閃光が現れたかのようにその女性は優にとって輝いて見えた。

 

 

(き、綺麗だ…) 

 

 

こんなことを女性に思うのはいつ以来だっただろうか…

 

・・・・・・・・・・・・・

 

(優くん、遅いな…そんなに遠くまでリボン取りに行ったのかな?ファル子も一緒に行けばよかった)

 

そう思ったファル子は立ち上がり、先程優が歩いて行った方向へと自分も足を進める。

 

歩くとすぐに、優の姿が見えてくる。

 

しかし、そこには優だけではなく他にもウマ娘と思わしき人影があった。

 

ウマ娘と優が向き合っていて、ウマ娘の方が何かをしゃべっている。それに対して優は固まったまま。

 

(優くんは女の子が苦手だから、早く行ってあげないと!)

 

心配になったファル子は足早で優の元へ向かう。

 

近づいて行くと次第にウマ娘の方も自分の見覚えのある人物ということに気が付き、ファル子は思わず口を開く。

 

「フ、フラッシュさん!?」

 

そう、優の対面にいたのはファル子の寮の同室のエイシンフラッシュだった。

 

ファル子の声を聞いたフラッシュは顔をファル子の方は向けて口を開いた。

 

「あ、ファルコンさん」

 

ファル子は駆け足でフラッシュと優の元へ向かう。

 

そして、ファル子は目を見開き固まったままの優を見て、状況をフラッシュに聞いた。

 

「フラッシュさん!これどういう状況??」

 

するとフラッシュは答えた。

 

「いえ、今日はオフだったので少し気分転換に散歩を…と思って歩いていたんですが、道に見覚えのあるリボンが落ちてることに気がついて拾いに行ったんですが…」

 

フラッシュは続ける

 

「…拾おうとした時にそこの彼と手がぶつかってしまって…謝ろうと思って前を向いて、彼と目が合った瞬間、何故か彼が固まってしまって…どうしようかと思っていたところ、今ファルコンさんが来てくれたと言う時状況です」

 

一通り説明を終えたフラッシュは手に持ったリボンをファル子に差し出した。

 

「でもやっぱりこのリボンはファルコンさんのものだったんですね、通りで見覚えが…それで、この固まっている彼は知り合いですか?」

 

ファル子は「ありがとうフラッシュさん」と言いながらリボンを受け取る。

 

そしてまた口を開いた。

 

「そう、いつも話してる優くんだよ」

 

「ああ、彼が…一度ご挨拶したいと思っていたんです。」

 

そう言って優の方に向き直るフラッシュ。

 

「初めまして優さん、エイシンフラッシュと申します。」

 

「……」

 

そんなフラッシュの自己紹介を聞いても、未だ固まったままの優。

 

「…シャイな方なんですね」

 

固まったままの優に気まずそうに言葉を漏らすフラッシュ

 

「そ、そうなの!優くんは女の子があんまり得意じゃなくて!」

 

(…でも苦手と言っても日常会話くらいなら出来ていたのに…なんで優くんは固まったままなの!?)

 

疑問を感じたファル子だったが、原因は不明だ。

 

「そうでしたか…おや、あと5分31秒で学園に戻らないとトレーナーさんとの約束が…それではファルコンさん、優さん、お先に失礼します。」

 

フラッシュがスマホで時間を確認してそう言うと、サッとその場を去ってしまった。

 

ファル子は固まったままの優を揺さぶる。

 

「優くん優くん、どうしちゃったの?」

 

ファル子に揺さぶられた優はようやく口を開く。

 

「……ファル子、さっきのあの人、知り合いか?」

 

そんな優の疑問にファル子は答える。

 

「…うん寮で同室なの」

 

すると優はまたも聞いてくる。

 

「……そうか…名前は??」

 

「エイシンフラッシュさんだよ!ほらよくファル子が話に出すでしょ?ってさっき本人が自己紹介してたよ!?」

 

「ごめん、ちょっと記憶が…エイシンフラッシュさん…ああ…確か、ファル子と同室の…」

 

この時点で少しファル子に嫌な予感が走っていた。

 

優がこんなに女性について聞いてくることは未だかつて無かったからだ。

 

それにあんなに長い時間硬直していたことも初めてだった。

 

(気のせいだよね…優くんがファル子以外の女の人に興味持つ事なんて絶対無いもん!)

 

優が口を開く。

 

「…なぁファル子…エイシンフラッシュさんってさ」

 

(優くんはファル子以外褒めた事ないもん、ファル子しか眼中に無いはずだもん!)

 

優は続けて言った。

 

 

 

 

「めちゃくちゃ()()な人だな…」

 

 

 

「は?」

 

 

思わず出てしまった優のその言葉、それに対して辺りに響いたのは氷点下よりも低いファル子の声だった。

 

そしてファル子の目からはハイライトが消え真っ黒な視線が優に向けられる。

 

(…え?今のファル子の声?あんな低い怖い声どっから出た?そしてこの表情は何!?)

 

「ファ、ファル子?ど、どうした?」

 

急変したファル子に動揺する優だったが、そんなことはお構いなし。

 

ファル子は凍り付いた表情のままゆっくりと優に近づいて行くのであった…

 

 

 

 

言い忘れていたが、この小説は自分の事だけを好きでいてくれると思っていた幼馴染が油断していると自分の同室の女に寝取られ()()()お話だ。

 

 

 

この先この3人の関係がどうなっていくのかはまだ誰にもわからない…

 

 

 

 

 

 






誤字脱字等ありましたらお知らせください。

勝敗予想(希望可)

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